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鷹枕可 - 2016年分

選出作品 (投稿日時順 / 全14作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


緋を撒く鳩卵に係る鉛球の死、それら苦艾に附いて

  鷹枕可

――
言葉が嘱目を遁れる、瓦礫の鳥瞰図の様に
                 ――
      *

閉塞の蒼顔が燃焼室にガラス片の祈念を唾する
肺腑の市庁舎前には幌附自動車の、受話器の、蝋管の隠喩が新しく刷られ、錆朽ちて以後始めて破綻を赦された

浅橋桁にチェロの屍骸が舫いながら、水滴の絃を振り翳した
洗面器には三人目の姉妹の頬白い刎首が置かれた

磔刑像を遠く潜望鏡に泛べながら、二十一世紀は酸素罐の気泡を畏敬する蜘蛛の花を置いた
飛躍の無い四大季節、
近代建築家は
滂沱するアルミニウムの夜に積る煤煙の円筒を辺縁に、
歯茎の潤滑液を航海する輸血車輌を採算に宛てたが、
煙草の葉、或は樹脂は
セロファンの侮蔑を灌漑塩湖の死以降である食卓に縹渺と展開をした

      *

――
即物が抽象を遁れる、植物写真家の幾多の指列の様に
                      ――

褪色の雪柳花は瞼の幾何学の残影に
仕事台の焼鏝と、
砂糖漬の
膵臓腑に添えた漿果、迄を被殻に泛ばしめ乍
冬薔薇の主題に拠る
円筒形歌劇の燦爛を嘲笑っていた
眼が禽を追随する様に
或は施錠された
禽舎錆鉛の
格子戸は
水銀液に熔融されたエスキスを起草した
眼はつまり散開を、
若葉色に
蜻蛉の悉く白い唇舌として記述するであろうが
彼等抑留者は、
酸い青紫陽花を、
人間像を咀嚼するべき歯肉より取除いた

倦厭と陰鬱に拠る手仕事は
洞窟修道院の以降、
悔悟する
巨躯の鍾乳円錐形の静置切窓、
その衣類は
凡庸な駅舎広場の凋落でもあった
閑散たる群像に結膜の繊維組織を捩り
黒蝶の被覆された五指は
瓦斯管の塩粒程の堕落は
果して、
死後の精神的存続を絶無へと復すか、

石炭燃焼室と塑像の、つまり
痰壺の房事
真鍮歯車は即物網膜を裂罅の緞帳へ隠匿した
瑠璃青は
死者の様に聖母子像に腐蝕を及ぼし
又、眼球の部屋は
濁流の
既製剥製美術の驚愕へ
一擲程の価値をも否認した
二十世紀は煤煙の第六天体、斯く印象を場所さえも勿く
橄欖色と書簡に移譲し
些末な骨盤骨は
静物の蝶翅であった

巨躯の銅球、
地球儀には盲目の類型が紡錘車を廻し
火薬の趨趨たる沓音は
些かも新聞紙のインクを固着し得ない、
眼底を奔逸する、
彼等の緘黙は
夜々の機械工場に人物的影像を展開するだろう
菱花鏡の口唇は喃語に欹てられ、
蝸牛は粘膜の器官に
包装材の美術に葬礼を執り行うだろう

運命は、死であり
過程は、苦悩の頤を懐疑した

見よ、汝汚濁の神経樹を、

すなわち透澄なゼラチンの血塊が、
総ての咽喉骨を
間断勿く呵責する死海の乾板写真より裂断し、縫綴じる時刻、
亜鉛緑礬に縁る秘跡の懸架を、
抑留の眼へ眼を以て、
復讐の指勿き復讐の様に、科す

      *

――
印象が物象を遁れる、間歇噴泉の様に
               ――

製図の薔薇が硬く、建築家の扁桃腺にアダム氏の眼底骨を投射している、
  鏡の死は鏡を遁れる事は叶わず
    総ての棗樹の影像が貴方たちを愛している訳ではない
  翼の容の花々に
    眼が開戸の死者を燈す様に、
        書簡は鳩の一週間を蹴り遣ったが、凡ての壜乾燥器は緩やかに旋回するべきであり
      彼等の存続は矮小な些事に過ぎず
   一擲の橄欖実は錫の罪科を、のみならず乾花の砂糖へ換骨するに留まらず、
     瓦解した筈であった
        天堂球体に磔像の売却許諾書を認めた、
  それら彼此とも勿く、
 喚き嘆く奴婢や、端正な胸像群に於ける模倣の起源は話言葉の端著な蠅の棲処であり、
   アダム氏の眼窩には
     血盟聖書に基づく卑俗的存在者への呵責が
    聳える水煙の間歇泉の様に傾聴に組織化さるべき群衆を離散せしめた
  拡声器には安易な私語が在り、静穏には瞬膜が在り、
       実存の確かな絶無が
   彼等の襟頚の釦を翳し、逆円錐の建築はペルシャザルの死と等しく、
     曇窓に指されるだろうか

      *

――
条理が条理を覆した、樹々の様に
             ――

鍾舌の確実な悔恨は、
  彼等越境者が死の臨床に安寧を仰臥せしめたことであったが
 それすらも辺縁を置く、
   檸檬の炸薬や、菱の鉄槌に縋る殉教徒達の精神を鵜呑みにはしなかったであろう
       喘息の磨硝子は隔絶された、
  柩の純全たる疱瘡、それらの被膜に拠って
          機械的な聖像礼拝は、又、機械的な破壊者達に縁り批難され、
   潰滅に晒された者達、
      焼夷爆撃機の花束に葬婚の容貌を投影する様に、
        死期は窓を叩き、誕生花は尚も翰墨に在り、麦熟時の髄に有らんとする
     肉叢の眼はすなわち血の鉱脈に凝縮した
  萵苣の裂断を夥多な坩堝群の鉛液に混濁せしめつつ、
          腿の鬱蒼鏡に彼等の醜怪且つ優美な観察眼を投影した
              正義とは趨勢の一過であり、悪は人物像に於いての現実であった
         揺籃期への物象、
   つまり組織繊維の神経は雲迄をも攫む下腕の剰余な俘虜を蔑視し、
      刎頚は青草色の、蛾蘭の茎を吐露したが
 気圏は既に蕨と薇の刎頚を拒み創めていたゆえに、舞踏の両脚は弧線を画かず、
    各世紀を跨ぐ国家論は、
         今絶えた鹹い灌漑の沃野に過ぎない、
            そして亡命者達は夜々の鱗茎蝶を壜詰の真鍮螺旋の器官に、鏡の投身を遂せたのか

      *

――
迷宮建築家の胸倉には砂鉄の聖母が指する既製の薬籠棚が在り、地下霊安所の白熱燈が網膜的即物を謳う
     それらは純粋な緋色の鳩卵である
                  ――


近代的人間に拠るポートフォリオ

  鷹枕可

鎧戸の堕落が
一際燦然たる街燈を嘲笑っていた
既に私は、
詩人では勿く
詩人を韜晦した過去に
甘く鹹い縫留の秒針を降した

死を被覆する営為が
遅く、鈍重なバラストの滑稽劇に
喝采の不義を嗜み
脱輪した貨物車の様に
時間は美しい静物としての死を肯った

サン・ジャックの向日葵の黒い影像は
喪われた
過剰凝縮の星々を
総て
人物的な事象の半身である夜に綯い、
或は績む言葉の死、迄も
火薬の慈善修道会である旧世紀へ

蒸気霧の硝壜を置いた

      :

見よ 夜は果ても無く渦巻き
われらの最も確かな靴音を踏み躙る
われわれの為の咽喉が
あの粘液質の時鐘を建築したとき
われわれの時間と 
幾許かの肉声を受話器に奪われたことを
この夜に燻った
曇壜の花は憶えているだろうか

われわれの樹を樹立たらしめる
それは臓腑を吊るした娼婦の痰であり
程良く調味された
呼称さえもひとつの痴夢に
連続する
幽霊の投身の様に
果敢無くも愚かしいものだ

自己と他者の咽喉に
幾許かの相違があるとするならば
それは美しい泥の眼の様に
美しい母親から憎まれた
幼時の濁声を憶えては呵責し已まない

私の時間は
既に
零年の呪わしさのなかで、
柱時計の飛花の印象のなかで、
遂には誰でも無い 
あなたを許しはしないだろう

許された者は何処にもいない、
ただ
許しを必要としない新しい人々を見た
それだけのこと

腐敗した白熱電球の中を飛び
落葉樹林の
幾多の掌を蹂躙した 
あの嵐の窓を越境した者は一人もいない
私はそれでも見ようとするのだ
夥しい裂罅に覆われた
鳩卵の恢癒を
そして水膨の靴を

われわれの樹は
聯続しない残骸の様に暴風の時刻線を謳った
造語と 諸々の季節は
コールタールの添花の様に静物となり
静物は
無機物か有機物の瞳孔に
化学的錯体の構造を非対称とした

見よ 鐘は理由も無く鳴り響き
    われわれはその時を知るだろう


弛緩する淡湖

  鷹枕可


   
               ※                                  ※
                白鳥は昼夜の距離を測る為の薔薇である頭部を擡げたまま静止している   洗滌槽に四肢末節の建築物が翰墨液の鋼版を拡げ狩猟協会会員の部屋には時報電話の絶無が延展する恰幅を齎した

          それは純朴な悪魔の薔薇であり証拠としての偽証である影像に傾く幾多の時計である   内視鏡を咽ぶ山百合の茎髄脈には楕円劇場の継母を貫き通す伝書鳩の両翼がまるで喜歌か悲歌の様に展翅されていた

               鈍鉄の交歓は一個の鶏卵殻のなかで黒い殻と赤い蝶番を産み落としている   表象の麗しい懐胎が振舞われていたが機械の美術世紀は錆びた眦の裂罅陶片を細緻に亙り素描し続けた

               四旬節は透明となった白薔薇の訃報と誕生を呑み逆円錐形の噴水を掲げた *  墨染の櫻花への物象と興趣 国家勃興樹立記念塔に幽霊達の噂を闡明するひとつの隧道が着眼されるだろう

  斜塔建築は林檎の地球儀に拠る叡智の世界像から放逐された白昼の夢遊病の椿事として噂されるだろう   死の軌跡は鏡像を綯う老嬢nより成婚の呵責を遠海に流刑地として擱いた

        羊水液胎膜の花々は細胞組織と絹の繊維に抱卵された紫葡萄の収穫期を遂には流し遣った   純粋精神の誤謬は骨肉を麺麭と呼びつつ遂にブド―の濁滓は秘匿された柩にもその食指を壜詰の様に列ねた

    書物の自由は人物の想像を頑なに拒み、それは暴風の様に膨張した褐色の腹腔としての萵苣である   泥濘の眼底騎行曲を異端の迫撃者へ帆立殻に拠る世界像としての縮図に閉じ込めた

                                         *                *
 ※                                                ※
  洗面台の胸に開く蝶形の石鹸液は凝膠の嘆願書を受領した労働協会の唯一にして夥多な成果証明である   浮腫結節の脳髄は外世界の暮方 建築家のエスキスを竈か飛蝗か巨躯でもある聖母へ贈与した

橄欖果は生命保険規約に翻って惹起された死の舌鋒を単眼の嬰児に一度ならず繰返し広報紙に拠り梱包した   炸薬は慈善募金箱に巧緻にも貨幣と落花を避ける様に窒素劇場へと充満し靴跡は聯続する時制への懐疑を首肯する

                   百合根の鱗茎を慈善とも呼称する胸像の溜飲には壜の書簡が滞る   総ては零年の絶無であり 又 濫觴の覆水は豊穣な死を想像力に縁って転覆せしめた

               硫酸の雌花は完膚球体の地球儀に蹲る一個の少年期と運命附録を換骨した *  聖霊気息の爾後現代は未来の理想形たる自働昇降室の些事を悪魔の旧約七十人訳聖書へ紛糾の胚種として抱卵した

                      霜薔薇の頤は溶解する鏡の全貌を果して知悉していたのか   薔薇色の近似つまり大理石を渦巻く鸚鵡貝の積層殻は人間存在へ一週間程の鹹塩と花崗岩の縊死を緘黙させるだろうか

   自然史の叫喚が指し示す裂罅蒼穹の五指は黒蜘蛛の採光窓より零落した軍歌-革命歌の数多を篭絡した   網膜の鏡台が倒錯体n´の肉体像を空洞の後悔に宛がう頃 釣鐘の快癒は草案の一過的な鬨の叫喚に過ぎない

     前衛運動は幾度と勿く銅鑼を打ち 熔鋼の群像は幾度と勿く青年の朽葉の様な季節を踏み均した   草の棘と天球儀のひとつが等しく麗らかな絞首台に鉛の臓腑を撒く まるで具象主義者の極微-極限の相似への遭遇の様に

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               ※                                  ※
               白鳥は昼夜の距離を測る為の薔薇である頭部を擡げたまま静止している   洗滌槽に四肢末節の建築物が翰墨液の鋼版を拡げ狩猟協会会員の部屋には時報電話の絶無が延展する恰幅を齎した

          それは純朴な悪魔の薔薇であり証拠としての偽証である影像に傾く幾多の時計である   内視鏡を咽ぶ山百合の茎髄脈には楕円劇場の継母を貫き通す伝書鳩の両翼がまるで喜歌か悲歌の様に展翅されていた

               鈍鉄の交歓は一個の鶏卵殻のなかで黒い殻と赤い蝶番を産み落としている   表象の麗しい懐胎が振舞われていたが機械の美術世紀は錆びた眦の裂罅陶片を細緻に亙り素描し続けた

               四旬節は透明となった白薔薇の訃報と誕生を呑み逆円錐形の噴水を掲げた *  墨染の櫻花への物象と興趣 国家勃興樹立記念塔に幽霊達の噂を闡明するひとつの隧道が着眼されるだろう

  斜塔建築は林檎の地球儀に拠る叡智の世界像から放逐された白昼の夢遊病の椿事として噂されるだろう   死の軌跡は鏡像を綯う老嬢nより成婚の呵責を遠海に流刑地として擱いた

        羊水液胎膜の花々は細胞組織と絹の繊維に抱卵された紫葡萄の収穫期を遂には流し遣った   純粋精神の誤謬は骨肉を麺麭と呼びつつ遂にブド―の濁滓は秘匿された柩にもその食指を壜詰の様に列ねた

    書物の自由は人物の想像を頑なに拒み、それは暴風の様に膨張した褐色の腹腔としての萵苣である   泥濘の眼底騎行曲を異端の迫撃者へ帆立殻に拠る世界像としての縮図に閉じ込めた

                                         *                *
 ※                                                ※
  洗面台の胸に開く蝶形の石鹸液は凝膠の嘆願書を受領した労働協会の唯一にして夥多な成果証明である   浮腫結節の脳髄は外世界の暮方 建築家のエスキスを竈か飛蝗か巨躯でもある聖母へ贈与した

橄欖果は生命保険規約に翻って惹起された死の舌鋒を単眼の嬰児に一度ならず繰返し広報紙に拠り梱包した   炸薬は慈善募金箱に巧緻にも貨幣と落花を避ける様に窒素劇場へと充満し靴跡は聯続する時制への懐疑を首肯する

                   百合根の鱗茎を慈善とも呼称する胸像の溜飲には壜の書簡が滞る   総ては零年の絶無であり 又 濫觴の覆水は豊穣な死を想像力に縁って転覆せしめた

               硫酸の雌花は完膚球体の地球儀に蹲る一個の少年期と運命附録を換骨した *  聖霊気息の爾後現代は未来の理想形たる自働昇降室の些事を悪魔の旧約七十人訳聖書へ紛糾の胚種として抱卵した

                      霜薔薇の頤は溶解する鏡の全貌を果して知悉していたのか   薔薇色の近似つまり大理石を渦巻く鸚鵡貝の積層殻は人間存在へ一週間程の鹹塩と花崗岩の縊死を緘黙させるだろうか

   自然史の叫喚が指し示す裂罅蒼穹の五指は黒蜘蛛の採光窓より零落した軍歌-革命歌の数多を篭絡した   網膜の鏡台が倒錯体n´の肉体像を空洞の後悔に宛がう頃 釣鐘の快癒は草案の一過的な鬨の叫喚に過ぎない

     前衛運動は幾度と勿く銅鑼を打ち 熔鋼の群像は幾度と勿く青年の朽葉の様な季節を踏み均した   草の棘と天球儀のひとつが等しく麗らかな絞首台に鉛の臓腑を撒く まるで具象主義者の極微-極限の相似への遭遇の様に
                                                                                                        D.S.
 


                                             
[「D.S.」はDal Segno,「※」は segno の慣用符。


S氏への敬愛告白に固執した理髪店員の球瓶計に附いて

  鷹枕可

踝のない婦人と擦れ違った絹製の傘のような容貌はまるで海綿のそれであった
レエスの尺度が薔薇の質問ではない時に、果たして誰が椋鳥の蝶形の両腿を貫き通すのか
時間は浮遊して留まっていた、器官の確実な蕨の無限に接吻するように
夜が夜を呼び昼は昼を呼ぶ、
観念は全てであり前衛の街角を照明したりはしないだろう、
臍の球体が績まれ績むものはみずからなおも
白薔薇色の振子に眠りつづけているあの鐘形を銅貨の確かめられることなき石炭のエネルゲイアに偏移するのか

弔辞を記帖しながら善を韜晦する壜は、蟻の航海録の一時ならず船底に覆る生卵の流布を固着させた
見よ、完全な死体などは無く、未完全な死体としてと言ったのは敬虔な唯物ではあったが、
不確実な私達の綺語はおしなべて孵卵器の美しい少年期の地球室の様でもあった
採光部屋の煤埃が飛花粉の口数を押し隠して行ったのか、それとも
或は別の隠喩としてたちどころには推理され得ない緋の立棺が君達の眼前にあるのか、
構造体としての永続の扉もやはり緋であると言うべきなのか、
閉じた楕円は始源の涙ぐましい長机に、
なおも傾倒しようとする葉花として一包装紙が滴る様に

およそ及ばぬ扁平の秘跡の名辞は、
且ての私達を来る私達の遭遇者へと委託せずには口吻を緩めることすら侭ならなかった
一睡も齎されなかった季節の椅子には鶏頭花が生長する街灯を渦巻く様に並べ置くだろうとしても
黒い遠近鏡は幼時のダヴィデを、まるで受難の過程に返る椿花とプラスティックの闡明に押流しては
静物と呼び、不出来な巻貝の殻にはアリアドネの目覚めのみが運命であった
気体瓶50cc程の、気候試験紙の乾燥は程なくして矩形の帆柱に落ちた窓板を刳り貫くだろう
それは水母の解剖である

     *

海綿の容貌
婦人の機関紙諜報係の死
盗聴機械を探す滑稽麗人二千里の邂逅 
褪緋の町角、
混淆-涅槃晦冥絡紡錘形は
緋鯛幾何学スゥイートピー懸架腑-翼廊
静物わたし思惑する淡海印璽紋章考現附録
修道寺院アタランテ偶像製造癒着希臘学
目深腿の遅抗隧道鉄路、
無垢無窮体球体テアトル
あなた寄附基金死亡通知、
教会伽藍共同仮構緋扉の受花

神品致命n私製隔絶の機械
翰墨薔薇印字は黒鉛瓦斯炎
霧笛晦瞑鏡天鵞絨劇場
白痴夢としての砂時計と有棘紙片戴冠綱目
置換薔薇徽章
自働琴花の死は今しも
幻想植物図案集
裂罅それは麺麭の肉体
壁龕餐室腐黴切窓、
あなた乾塩塩湖の羅針指巨躯幼時
汝、刻一刻と鉱脈を擱き、汝が私を覚ゆるべし
クロミュウム電解乖離被子、
あなたたち菱十字濁凝眼たる
綺羅綺麗楕球卵臍帯の訃報
畏敬尊厳存在被写静置、虜囚

被子殻鳩舎双嬰児の薔薇蜜縷々のソフィア
死海乾板写真十紙の感光時計
自在律あなたたち
死後濛々たる市街地に縁る長椅子の聴音機よ
蝸牛体-交錯形立方体飛翔する白の球瓶
つまり
吐瀉物の河
指標000自在尊厳の縮痴人工景観都市ヘクトプラズマ
デウスの慈善雨環鉱植物
鎧戸の町燭台樹樹脂プラスティックと嬰児
辺縁遺骸厩の生誕蝕既
関節茎
受肉有翼エピメティウス訃報代理人の致死
存続者鞦韆電球燈の自尊振子
幾多抑留の垂線 
自働ナルシス網膜腑炎
受難の建築 創造凱旋車の花綱修飾史
濃乳色、或は電気広告燈の為の十字間歇泉
土地橄欖
わたしたち無窮鏡像相違鑰 
昏婚化粧壜液、
第零世紀遺骸櫃の移殖医
少年期地球室明暗法よりたちあらはるるものすなはち錆釘なり

畏敬鋭角美術抽象
わたし空想静物交換魔術劇
グラスモザイコ飛鳩緘黙
ああ 釣鍾草と幽冥鏡の往還装置
人の姿、鐡の人体模型鍾乳形而下の私続
処刑室000に睡眠者を
麻酔液と解剖台の人力飛行機レタトリンの墜落
薔薇茎葉の結節
飽食饗悪の美璽と苦蓬畑、
平面幾何学、構図模像擬似録ベルナルディノルイーニ氏の振子


第六曜日の骰子に中る天球想像家の結膜炎に於ける深海棲天使綱目の腐錆に附いて

  鷹枕可

    ―――
I,屈折しない極光、或は歌劇と時刻の諍う処
               ―― 


false.


   ――
II,今なき柩への手簡
      ――


階級支配の美葡萄が輸液される時刻、
  善悪からなる植物質肉体は黒檀彫像の傅く静葬室に一把の花綱飾を落した
    巡礼者達は総て薬莢-柘榴樹櫃を崇敬しながらも
       麗しい柩その電気工事である採掘場の部屋部屋を俯瞰したが
   下頤の白紫陽花は
 乾燥体の謀議への惹起に縁り型紙のカフスを鹹水瓶に泛ばしめた
     見よ、悪魔のイスラエル憧憬癖、天使の無調和に基づく鶏卵を息吹する季節偏西風は鑓の鈍角であり
    最後の密告人アントニ史は美釘を薇の素焼に合致せしめた
        そして歯朶は痴夢の鋳物であり乍ら奇蹟の新約を列記し
  整流調整器のアルミニュウム硬殻は
荒野に於ての房事と火葬を同じくする様に脱穀される籾殻の双眼を穿ちつつ
    緘口-臓腑の遙かな近似的様相を火薬庫の継母へ託つだろう、
  そして死後の影像は冀願をする骨関節に縺れ縺れた無棘蔓植物の額へ裂罅を来す、
      それは鏡台の黎明である


  ――
III,球体禽舎【円錐形地球工房】命数数奇骰子
          ――


既に臓腑の勿い人間達が績まれつつ繭の包帯を受けた
映像撮影機とは瞬断の聯なり
間隔には浸食された海岸の帆立船が遠近鏡に黒の燦然たる瓦斯燈を屹立せしめ
粉飾とは矩形の薔薇箱であるならば箱庭療法に於ける快癒は、
混淆虚実であった筈の自働階段は、
地勢の世界地図に一幅の静物を執り行った彼等の、永続の死の糧である種子
無窮身廊としての穹窿を闊歩する透明なプラスティックの裂罅は疱瘡より血の紫陽花を懐胎するだろう
然し過程は彼等虜囚の癒着、
華氏零度の存在観測計をも係る民間鍼灸医の詐術に基づき紛糾を励起せざるを得ない


 ――
IV,死後の葡萄収穫夫、貨物車の話言葉
           ――


少年期は速やかに颯颯たり、
     鞦韆の歌
   または楕円鏡の操舵員は黄薔薇水葬に被写された移植医の容貌を確かな印刷機に吐露し
  凹レンズの孤絶は堕落した叛意識的無知を斯様に晒した、
        一人ならず聯続するティタノスの踵には鶏頭花への蹂躙、
愈々潤滑な歯肉を鬱蒼境へ投影し
      唯物的実像-想像家の書肆に拠る趨勢、或は橄欖樹との癒着液
    懸る自働律は薔薇花圏の華氏、機械遠近法の死そして骨壺
  鉱脈の炸薬装置が現象体の純粋紡錘形を
        寧ろ礼讃頌歌に拠る蝸牛殻の様に衣類棚に置く
観念は肉体附属であり唯私的精神でもあるとするならば、
  観察眼は 迂遠にも自死過程の鐘塔建築家に齎された謂わば形而下的抽象態の地底であり
    旱魃の町にはアポロンの無蓋車が燦燦たる黒を撒き散らしていた


     ――
V,電気に拠る人体実験、痙攣の観測機
               ――



常緑樹花の終焉が往復動の薬莢ならば機械創造の美術家は一世紀程の乾燥剤を増加-膾炙せしめるべきだろう
細緻な修飾、鉤針に拠る鳥瞰眼、空襲機の墜落、その肉体像の静置は
或はオルフェの冥鏡であり、
鹹い純粋結晶は鉱体図鑑-型録に一束の銃剣を抛物として鋏み、腐錆を泛べるだろう
遙か塩の渓谷は鈍らな網膜病つまり建築への審議審問を復り
自他省察は凡その鋳物を散弾の飛花粉より擬似態へ転移しつつ
尚も破壊運動に基づく絶無を
咽喉が裂開する解剖台の血塊に於いて、肖像写真乾板を反転させるのか


    ―――
VI,死体としてのイデー、自働製紙所
            ―― 


死者竈闇鏡の云々
私属苛性白草の迷宮オートマタ広辞苑の漠々たる寂寥よ
訓戒血薬薬莢耳鳴琴の橘花紀
樹言葉絞首言葉の光つまり
観光客の無絶後溶解する砂時計伽藍部屋の鴫擡げる鱗茎節よ
石英溶融計-秒針影像時計白蜘蛛対置
機知枢軸は蓄膿橄欖葉蹄鉄体
球体クロルプロマジン溶液美容貌手術室
シッディム交響楽団
歌劇場は遺骸骨の吹き晒し
機械侏儒あなた
擬劇肖像俳優紙
転変遷移聴音機に多翼不織緞帳石裸婦ハルピュイアの飛散葉刎計
歯車-炸薬室わたし
レシプロエンジン麗句実験工房
地下階隔世の薔薇獄舎、籠目

第零世紀死都メトロポリス籠裂疵鳩尾椿事
瓦斯網膜天体室β鑰録
万物常軌無蓋馬車
凱旋門眼科医の長針
釣鐘≠釣鐘状遭遇邸宅建築家
地震計の振動子
あなたたち機械要素独身者
十二の抽象体-天球アンモニタル螺旋紙
炎を撒く一と傍線
辺縁幼時施術圧搾樹
地球肺腑、或はプラスティック復眼鏡既述の死

履帯財閥家家庭は禁錮房目録の辺縁
白樺は蒸気霧少年揺籃期
ダフニス樹像堆肥黴蝕現象学
因果律機構つまり雌雄両価の天球始源-ウラノス冥闇楕鏡静物
自在律わたしのヘクトル
交歓婚姻四方の季節窓
死の埋葬史或は除酵週間の為の十余り花婿衣裳磔刑爾後典籍
機関紙ガシュリン液膜の虹彩眼
鳴琴鏡叫喚秘跡四大経緯計の紙張子
菫色地球-石鹸創造過程の嘲嘲たるくちなはは梔子の雌花を麺麭以て穢すべし

死語録プラネタリュウム私続自働影像の観照
蒟蒻花と無謬意識野に震顫する経帷子裁縫家過失
アナソフィア受闇房多翼象徴学
扁平は鳩尾と葡萄樹なる奇蹟の姦淫運動抽象体
ブラウン氏鞦韆気体花瓶録
被子植物門秘積未遂死の弔電球体槽触媒管
天球創造柩体内穹窿は仮死薇
流麗嚢、叛知能
頭骸は青薔薇地球誕生忌

飢餓魔術劇箱庭美術管の約款
回線絶縁被膜躑躅花
わたし臓腑フラスコ綱蔓薔薇青年の濁奔流
力働無窮揺籃-嬰児殲滅の炎霰
刻一刻一刻一刻一刻刻刻一刻と石英グラス繊維紡錘車
飛行機史と熱気球呼吸する知識医の乾酪と衣類よ
あなた緞帳ヴェヌスの遺失
街燈広告パリの虜囚
緋螺子蝶番の鉄仮面とて
双子相似鏡像過程の樹茎に裂開せる鋭角迂路に過ぎざらむ、とはいへ

死亡通知郵便脚夫より000-000-0000への真鍮線放電室
ヒュドラ虫綱アドルフ目の臍帯
あなたたち精神病院の私以後より書簡
第四官界と水芙蓉の複眼結晶硝瓶機構、遅滞
十字閉架闡明者煽動
乾乳粉袋と美聖母子破壊運動の基礎剤よ
蘇生卵膜胚殻は姿位尺度と天球時計の弛緩麻酔手術医
地球自働昇降室
地下階は骨灰展覧会の切窓明闇ヘルマングリッド
煤竈蜘蛛のダンテル紙
滑車、蠕蠕と天蛾の白繭液
機械式鸚鵡貝、或は城塞建築家の私物としてのシアノイド鉱胎、個物史


類想

  鷹枕可

屡々草案は夜の緞帳を延焼し
復と勿く
異物の夢は純粋な黒体放射の降注ぐ
逃れた亡命者達の撒く
始源の胎膜に縁るダリアに
枯死した荒地を延展せしめた
潰滅し、
彌撒曲の骸骨は鬱血した黒森の中で絞首をされた
少年期の、
穹窿建築への復讐に明け暮れた
糜爛と受苦を喚き
酪乳製の回廊には主題勿き残骸の霧鐘が
永続の永続的限界に於いて
一つの告発文を解し
絶対零度への終極、
扁桃腺に拠り膨張を来した護謨の俯瞰者を哂う

地球と謂う橄欖
窒素劇場を心像の映写室が翻って嚥み啜る様に
六芒星形の花の窓、
約款の印璽
禽籠の擦過傷は厖大な議事録の只中に在って
渦巻く泥濘のエネルギイ
その腎臓を開く閂に篭絡され、
縺れ縺れた
青い蝶形骨盤骨の花受に、
垂涎するテアトルの夥多なるオペラグラスは嘱望する
顔覆布の霊安室に於いて
取引は常に流竄の葦茎であり
瓦斯燈と常夜の警邏人
明暗法に拠り受難者の結節に最も近しい
血縁者は
午餐の牡蠣肉に近似した痰を吐き
人物像とは散乱した裂罅の楕鏡に過ぎない、

多者の謗りが流麗な茎に展化され
絹の飛行機、
旧世紀の痴夢は既にプラスティックの季候風土に溶解した
鹸化反応としての脂肪酸、
跳躍勿く、静置勿く即物写真の余命死は改訂され
電離反応槽のプラチニュウムは
確かな現実を刻刻と丸時計に
固着の凝縮液の様に取計った

若し、
誰でも勿く私達の私でもある影像を
洞察した
起源の風洞、
風葬の部屋部屋に
響き亙った鍾乳窟の建築体が
呼吸する炭素繊維を概念下に拘留しなかったならば
一時ならず繰返される
円盤の惑乱は
洗顔室に切窓の牡牛を呵責し
容貌の勿い埋葬人の代理手続を執り
確執の精神は円錐形を辺縁に並べ
歳月の涯に
永続の尊厳死を魘夢の如く陳列したりはしなかっただろう

蜂窩建築の都市に
羊皮紙と
翰墨に拠る
明暗法が地球殻元素の希臘数字を鏤刻し
墨染の鱗茎は
鉈の鈍角にコンクリートを吐瀉し続けるだろう
美少年の成果は周期性機軸の摩擦係数を諳んじる
コンセルヴァトワールよ薔薇の交配は巧緻な骨である
幼時の変貌は止血され、
天球室の命数は幾許も勿い


贋作としての胸像、蜂巣静物画

  鷹枕可

     :
 
触既 厩舎 既にして死線を喚呼す
双嬰児
胎 翳像を逸す
果断せよ 
汝救済の壮語を撃つべく 
挫かれて尚
石を裂く
雲霞のごとく猖獗を露悪として
  
飛花耀耀として晩鐘に紛る 
午睡の惨禍
乳母車に飽ひて葬と為す
やはらかき棘を打て
飛語は奇異ならむ
復も凡庸たる瑕疵に落ちてゐる故に

     : 
卑者曰く、
     
総て
人体は迷宮建築なり
燦然と緋断の門は聳え建つ
私が露悪が仮葬室に継続の剰死を垂れるとも
揺振子の機械像たる
α昼顔の螺旋繊維は
血塊翼果を
汝が運動態に現象せよ
凝濁の鹹塩
私属たる呼吸
量らず測らず進捗するホログラフの蛇足
扁桃体劇場に悪罵数多なる
繁殖の城砦を
夢想-緩衝しつつ
瓦解の薔薇鏤刻
戒律は針の疵たらんとする

静餐の長机
凄絶たる爾後
遺骸櫃に噴き零る椿花
そは知識勿き白痴なるとも
静物の尺度を凌ぎ
凱旋車輌の魘夢
純黒の羊頭を刎ね落しつつ
をを
眼窓に懸れる梯子を有翼の御使が死を
その驚愕驚嘆を披瀝せんと
天鵞絨の鉤裂を
衣類棚の憎悪
緑礬の結節
斯く迄も
刳貫かれたる実母の網膜へ
乳母車揺籃と擱き
捨てよ

「私が懐胎したのは白凌霄花/
 /血の蝕既が流す」
    瓦礫の鞦韆だけが朽果てて遺って鞦韆を運動する振子の死、迄を


ドレスコードを闊歩する巨鳥の為の広告塔

  鷹枕可

嵐を呼吸する曇窓に
水滴を溶闇を吸う試薬試験紙が赤黒く偏移し
血塊の禽達は
各々の多翼風車塔に砕け散った
尊厳を謳う革命家はやはり自己の尊厳死から遁れ得ない
私書箱と云う居留地を逸し
閲覧者勿き
種々の幽霊実験室の
古典物理学的現象は橄欖の歌よりも
現実に於ける放縦な奇跡を偏重し
見よ、
始祖の数奇ならぬ浮薄
流亡の一群は
地球黎明の熔鉱炉より受胎された骨格の終極である

抑留者の遺骸は
紙幣の花よりも
増幅し積層する罪科を誇張する
窮めて相似をする露悪の執行人
そして楕円鏡の代理人
籾殻の言葉が
人物像の起源以後を縁取る
機械時計が真鍮修飾からなる供物であるならば
旱魃の季節は悪辣であるが如くに
飢餓の市外地を静かに静物の死へと画き続けた

斜塔を呑む影
穹窿に聯続する卵殻
掌握の瑕疵を受け
地下隧道の白熱電球は釣鐘草の結露
雪花石膏を開く納骨室の精緻、潔白は
盲人に
恢癒無き時間を刻一刻と宣告し
昏迷を鳴り亙る受話器には独身者の濁声が渦巻き
睡眠者の晩年は
純粋なる悪趣味としての記述を諾うだろう

酸い芍薬
そして
深海を驕り綻ぶ百合を以て
積乱する蜘蛛の雲窓を採取せんとする
博物学者がつぶさにも観察鏡を宛がう瞭然の門は
且て衰亡を逸り馳せた競翔鳩の書簡に
殲滅爾後の霰の干潟と
鳥篭と乾燥花の断絶を
まるで幼時洗礼への復讐者の様に嵌め殺した

想像の死と存続の血が総て均しくなり
引力圏を慣性運動をする鉛球には
一把の誤謬としての薔薇の指が
死後生の虚飾と苦い死の行進を記帖していた

各々の命運を硬く憶えよ

それらは瞬間と永続を分ち隔絶する鏡像であり
間歇的な叫喚は
人体機関と咽喉を響き亙る
鍾乳窟修道院の容貌勿き修道尼の白昼夢でしかないだろう
電気機関と磁気嵐、
自働の機械
死に追随する幾多の暴風よ
悲願の拠地へと帆立殻を吊るし
越境せよ


構図VII_α 構図VII_β

  鷹枕可

_α


縋り歎く実母を洗面鏡に閉じ嵌殺した侭
放埓の華を撃つ青年
華の実像は
概念の禽よりも
遠く愚かしい季節を福音として喚起した

  血の代価を啜る吸血蝶の頤には
  観念としての花蘂が両性具有の彫塑を瞠目していた
  そして人間は知るだろう
  記憶の水が死者達の晦渋を
  簡素な磔刑に科す
  溶暗の部屋に綻ぶ
  山査子の麗しき可憐呵責を

祈念者の蒼顔は魘夢の
   途轍を敷く凱旋車への喝采であり
      死の葡萄樹は普遍概念の双嬰児を虚誕とした
   併し何者が知悉し得るであろうか
醜貌の観測機械に過る
  皆既蝕に転動を及ぼすテスラの可視を

砂である謎への訴求は
 退く銅版画の虚実離散より以後
果物籠の起草を
 倦厭する拠地へ振り撒くだろう
自由は劃して死せる
 雲霞の聖霊を鉛丹に塗り潰す様に隔絶した

孤絶の境涯を
臨む
華々は麗らかでも優美でも勿い
鉄錆の死が灌漑に拠る肥沃に一頻の誤謬を諜報する頃には
誰でも勿い私属が
血脈の終端に斃れた百合の様に睡る



_β


人々が緘黙するとき花籠は気泡のような眼球を裂開し植物写真を抱く狂人を喚いた
無価値な死後を余暇というべき少女の様な絞首体が流れていった
砂塵粉塵散々の季節風が死を明るみながら瓦礫は二十世紀の置時計のなかで乱鐘を逸りつつ幾つも砲撃した
簡素抽象の今を復複製する事は勿い想像下の現実の様に
螺子の様に曳き潰された肉体像が軋みながら永続の銅球の中で叫ぶのを夕刻の鶏頭と火夫は愉悦しながら
それ以降夕刻毎に晩年を諸々の禽の様に開いた 

羅馬に転倒し希臘に観閲された霧鐘塔が合成繊維の藤袴を纏わりつつ
美しい重箱を螺鈿の様な継母の死体へ射精した 
狂った眼鏡の狭窄の狂った人工知能技術は復健全且つ瑕疵勿き鉄条網の棘に
未来派に於いての華々しい煽動家の様に謳った 
しかし誰が聴くのか庭球場の音叉を反復する自動溶鋼施設の遂死迄の過程を

彼等の影像は脳髄の炸薬火薬は病み微睡む様な人工の死体を垂下させ全盲の禽に花言葉を教示していた
青い試験紙が赤く捻転する回転扉には理髪師が轢死体を嘆きながら赦していた
痴愚に過ぎない扁桃体の視野には亡骸の花草飾が狂乱するウェヌスの両腕に摘み取られて行った
復素抽象としてのコンポジションVIIには半具象の矩形を崇拝する劇作家達の木椅子が聳え立ち頂きには塑像を戴冠していた
1945年以降と名付けられた廃棄物時計は鋼鉄の詩や鵜呑みの欺瞞を露呈告発していた
世界された国家或は国家された世界には総てが領有権を謳うとテレヴィジョンの罅割れたブラウン管が唸りを上げていた

塵の様な遺灰が降頻る標本化されたアウシュビッツの黒薔薇を指示しながら回顧展は極めて優美な緘口令を敷くだろう


絶句_eフォルマヴィシオン

  鷹枕可

死の網膜
卑劣たる聖人
嘲弄残虐の塹壕帯
燦爛鏡より陰鬱鏡へ亙る
双児-影像対称体
カスパー・ハウザー悲運の柩に孵りつつ
世界終端の想像世紀、
自働説機械設計の愉悦人よ蝕身倒錯を放て

異人追放
そして
国家崇拝の普遍卵殻に
未死露悪の放埓なる
薔薇 復 帆船を
巨躯と矮小の遠近法を喧しく宣伝せよ
窮鼠に拠る国粋主義よ

飽食卿の死骸
割礼の華蘂瞠目、
眼球葬礼家と果実籠の静物
捻転 捻転 捻転
有棘領野を闊歩する
霊柩車の聖霊週間に於ける吐露機関の舌禍

そは
忌々しくも
純潔且つ峻厳なり
昏婚者達の断絶、
誓約を
飽く迄も帰趨白百合の記録帖へ隠避しつつ

鉛丹の精神病院
恫喝的影像の追随魘夢を跨ぐを首肯せず
矩形蛾たるデフォルマシオン
即物より叛抽象へ
興趣昏迷の人物は
経緯度計の揺動花菱にも指針を捺すか

地球の鳥瞰鏡を
絶対絶句なる自明死、曇窓とも喚呼し
鳴啼する卵膜の前世紀は畸形の厩舎たる
嬰児、落花迄の繁栄を謳歌せよ

瑕疵死斑枷鎖繋がらずして
放埓と秘匿花よ
堕罪自裁の自存者E氏
古代螺旋劇場の虚実、不幸を喚起し
闡明者E氏、自が両眼を抉り
運命と呼ぶべき弛緩野に血髄を滴らせたり


          *


     概念建築播種器の亡命歌よ
    蒸気罐の熾烈なる臼歯は
   存続し継続し痙攣せよ
  近似的存在機構の縊死体F
 吐瀉喀血麗かな錯綜よ
黒森黒薔薇黒石網膜
 蒐集家無惨なる悪辣者
  汚辱殉卿坩堝渦巻城砦の歪曲
   弛緩薬シアン死す死者 
    緑色卵膜帯係留の繊維剤
     不落鹹湖に蝕既剃刀を愚挙せよ

               緋の銅鑼 否
                萵苣の脳髄鬱屈たる
               冀願の安楽死
                鐘乳と石筍と鱗茎
               螺旋邸宅建築家の敷衍
                駅舎の幽霊夥多に
               ガシュリンの角膜炎を喚べ

              類似の花々
            朽葉の創 
          裂開された眼球-人働飛行翼
        瞭然明瞭と瞠られた耳殻に聴音機械
      ヴァイオリン縦横果断なる切開より
    過り堕ち平面幾何学伽藍の紙生穹窿
未明死の塩基六芒奇聞たる忌憚楕鏡眼球‐気密室
 
在る時をわたし在り 無き時にわたし在る 追難 追難 追難 
鳴鐘たる叱責者 牡蠣綻ぶ葡萄樹に自ら逸す
   さはされど丹色の扉を翻翻と集くは黒死菌を運命たる係累におぞめかしめる闇翅蝶ならざるを

麗句審問は弛緩譲与の鬱屈を擬似臓腑病慈愛の既望に仮託し
遅行劇物番号256_眼球悲愴曲のための標榜を掲揚した
萵苣と薔薇の洞窟修道院長が肩を互みに揺動する
精神病の颯爽たる巧緻痙攣が赤十字の影像に
患者Sの支離籠絡を領域に仮想の華々と
撞着された真空管の塩粒に鹹くも死
を謳い創める創造説の卵殻には
アダン氏の捻転する筋線維
が暫く硬い衝撃運動を
後顧の蒙昧主義を
播種収穫した
網膜野に
蜉蝣


     自 
    働
   式昇降室
    裸   
     婦
      像――頤に巨躯の花籠
 暴落する、暴落する暴騰
   炎天の市街地
  給水塔の球体、動力矮躯
      近似的鱗翅類の落涙
    貽貝ひとつ
       擬真珠の偽造紙幣に 
             遁れ行く過程死、眼底骨
緑内障その新緑を写し  
  斯く壊滅の戦禍を喚べ
       死と死の死、永続程の白痴夢に 復 流刑地の塹壕掘削器に
死夢、落盤 
   比喩の禽籠と 叛煽動家に鋳抜かれた視野は禽勿き鳴啼鐘塔の水死


ふたたびを欺瞞される物語その蝶番の開閉へ

  鷹枕可

夜よ 擲たれたただひとつの粘液質の膠の眠りよ、
今はおまえを探すまい、その咽喉を張りつめる走査線の中を疾駆する乳母車を
玩具の捺花の灰塵がその矮小な町の窓を翳り、見捨てられた群衆の、峡間の橋梁の叫びは誰の鼓膜を軋むのか
しかしおまえが愚劣なヴァイオリン群の偏西風を屈み跪かなったならば、共感質の死が訪れていたことであろう
誰ひとりとしておまえの沓跡を礼拝しない
誰ひとりとしておまえの外套を崇敬しない
郊外より吹く曇雲よ、確実の丘陵に翼を打て
知悉された欺瞞、復は薔薇
その期間を誇る週間が、か細い受苦を歎き亙る迄を、
膠着した峻厳な街路を逸る厩の臍帯が逃すものさえ無い
そしてわたしは知るのだ、夜が切れる間に産み落された幾多の死嬰児の声ならぬ声を

哀悼を告げよ、失われた諸々の春花のために
貪婪な無産階級の疵を疵する網膜のために
そして遂に万物に於いて全能たり得なかった寵児アポロンの紙片を、
齧歯質の鱗粉の燭火が燃やし尽しても尽きない秋霜が、おまえに向い始めて死を告げたとき、
驕り昂る飛蝗培養槽には複眼が切窓の夕刻を鳴鐘していたというに、
総ての美術家は、散逸した花被の終りを炸薬質の工廠に偽造し続けるのだろうか

固着したゾルの河に干乾びた珪藻類が屍を抱く、
それは恩寵であった筈の死後生を酷く陰惨な地下納骨堂の些事に縛り
死の欲動は確たる視野を地底鍾乳洞へ流した 
不確実にも今という過程は未だ誰の眼にも瞠目たる蜂鳥の鋼鉄籠と智慧のフリジアを発露しなくなるだろう
瞭然且つ明暗なる優劣がおまえを色浅くまた深く縁取る様に
居寓者は表象された肉体の樹をもはや死体としての未然の胎に赦すのみだろう

笑った薔薇の季節のなかで
白鳥の脊髄はコールタールの様に燃焼するだろう
自由は鉄鎚の縊死に拠り齎された叛理性主義のなかで
沸騰する暴風雨を喚き
その口角は鶴嘴の風景画に裂開を及ぼすだろう
生長なき種子より曇窓を狙撃手から逃がし
逃がされた乳母車は終に霞の季候を攫む腕となった

多頭蛇海棲百合の棘茎
戴冠せる鱗翅目の聖母遺骸櫃へ落花纏わり
燦燦たる悪事をたくらみて
死後を醒め
途轍も勿き報いを跪き受けよ

聖像たる偶像
概念たる主従転倒
創物家の創造物に於ける優悦を吐き
現世紀たる断食蝕既は
群像人物
復 黄昏時計を留め鳴鐘するよ

瑠璃青たれ
眼窩眼底骨の腐敗沃野より遁れる幌馬車よ
永続の結像体 
現象を撃つを
容貌綻ぶ
巨躯の紙製薔薇より放て

鹹海は懊悩者を放逐し
紫陽花の色なす凱旋門は昼夜の滑車を逸らせたり 

閂に隠匿さる房事  
眩暈を
眩暈は幻視し
非的存在たる巡礼者の外套は喚呼し已まず
ヘルマングリッドの鳩舎は
臓腑室の細緻記録を明滅せる白熱灯なり

写像陰画紙の腑を穿ちて
懐胎想像妊娠の寡婦より逃妄は既製となりぬ

短絡電球の異端嬰児に
蝸牛殻の誕生を
垂涎せる
外科医院の黎明観測家は死に到りつつ
秘蹟の癒着ならず
独尊たる峻厳者
瓦斯室に累々たる多者を未だ人間に拠る尊厳死と云わなく


私が生きている、従って私が死に、嬰児は且て喃語を秩序とした

  鷹枕可

_I,自死を未遂する青年期の反復記述


誰にでも届くことばを書こう
誰のものでもないミモザに
燦爛たる扇越しに
囁き交すピウス14世の母、
記念碑は倒されるが倒される毎に より壮麗に縁取られてゆくのだ赤いリボンテープの十字に拠って
玩具の兵隊が暖炉の畔より死の行進をはじめた
爆ぜる薪は心臓を愚かに註解し、未踏のバレリーナは天井を這う
乱雑な痴夢の断末魔のなかで
より美しい或青年は四肢姿態が月桂樹に酷似していた咎で冷淡なアポロンの凱旋車に誘拐されてしまった
彫刻家ベルニーニ氏の霊感と気息が
退屈な退屈な退屈な弥撒弥撒弥撒曲群の自罰を罷免されるがために

揺るぎない血と木漏れ日の闘争の季節の中で
私は人知れず人を知り
人は最后の檸檬の肉としての苦渋を噛締めるのか
轟き已まない遮断機の眠りを否み
従属と蹂躙の中で襤褸布となりはてた反抗の季節よ
際限なき呵責にひしがれた矯正のための声よ
青春期とは云う迄もなく擦過された咽喉である
従って存在しない血塊を受け蝙蝠傘が散開をする不誠実な私を残して残して
ほどよい飽食で満たされた困窮よ
印刷機に輪転するレミング共への侮蔑よ
侮蔑が侮蔑をよび思想は自ら根幹を断つだろう

憎悪に燦然と充ちた紙幣の慈善より美しいものはない
施しと誓約で刷られたヒステリーを起す群衆の幽霊よ
静寂の為にこそ声はあり
騒乱の為にこそ死は掲揚をされるのだ



_II,変哲の髄


螺旋礎の硬き未遂碑撃つ侭に
滑稽の餐室
慈善の魔笛
霧鐘塔の海嘯
検体身躯を晦冥に捕縛するも
知悉よ鳴け
悲歎臼時計の海底建築物を
修飾且つ簡素たる
無棘薔薇莟緩み綻びあり
婀娜たる死の無き死を迷妄するが如く

大腿を縫綴じ指を呪いある
時間の警喩
燦然蝶の玻璃戸に
黒蜘蛛は
夥多たる人物群群像の容貌を踏襲しつつ
尚懐胎と想像に
無原罪の磔刑
弛緩液化せる
偶像叡智の血塊たる多翼象徴体を
粛粛と火葬室に処したり

舌禍饒舌記念碑を崇敬をもせず
放埓たれ  
鹹湖を逡巡せる遅行帆船よ
悪辣と整然に
泥濘人物起源の庭園は
落胤を追随し已まずとも
絶望へ渇望へ
威嚇の領野は魘夢がごとくにも終端勿く
円環劇場を叫喚せる
視線私製の零落を現象体の欺瞞に晒しぬ

概念機関と社会的隷属が均しく有りつつ
非確実なる存在を咎め
公営納骨所の贖罪
咽喉を焼く骨壺そして
人工の既製としての希臘彫刻
外燈を打建てよ
邁進す躍進す
破壊者が展望を巻く逆円錐
地下階を
苦役たらしめたる
死者の嘱望よ



_III,精神を反抗する精神


新しい薔薇のための衣類を
偏綺な死の森の磔杭のために委ねよう
花々で造された肝臓の荒野を越えて
黎明は今や瓦斯に張りつき
黄昏は麦の椅子に純粋な血族を銃座のように並べ列ねるだろう
修道院は盲いた広報紙のなかで叫ぶだろう
科学 科学 科学

吃音の矯正器のためのもろもろの硬殻よ
胡桃には永続への街宣車が咽喉の飾り釦のように轍を逸れてゆく
そして歯科医の検死室を朗らかなラヴェルの晩年が通り過ぎていった
縛鎖に縺れ絡まる机上よ
絶後の死を恍惚と語る敬虔な数学よ
総ては均整と整列された概念の愉悦であるならば
絶対的な破壊
頑迷な人工調和、
その血液採取のための安天鵞絨の窒息は猿轡より滑落した拇指の穹窿ではないと
だれが断絶し得るのか
青い試験紙のテープに録音をされた偶然の秤量は
シャンソンの腐敗と同じく
零落してゆく遊戯用木馬を公開議会の鈍鉄製の梯子より取除くだろう

安寧の機嫌を甚だしく損ねつつ綿菓子の紡錘機より雲の腕を攫むことは可能だろうか
若し峻厳な枢機卿の肖像に二十日鼠を放つならば
熱気球は墜落と上昇に均しく引き裂かれ
凡庸な刺繍製の
呆けた松葉杖と何ら変わらなくなるであろう
殴り付けられた懐中に鹹湖が渺渺と毒の棘を排気し
乾燥する凝膠を擦過してゆく現代的人間精神とは
既に腐朽した前近代的機械製造工場に於いて試みられた愚昧な想像に縁る錬金術の復興でしかないであろう

見よ、全ては既視的な現象に没落していたが
全てが苦難の前に倒された訳ではない
見よ、新しい薔薇のために
刷新された不調和と左右非対称の人工庭園を誇るべき破壊運動が巻き起こってゆくのを


自由へと

  鷹枕可

透明なトルソの確かな炎の樹の
冬の乳房から滴り落ちた無垢の棘達よ
一週間の街燈を
隈なく張り巡る電流の鳥たちへ
荊の醸造工場が叩き落とした
灰と煤と塵
瓦斯室の瞋りを
それも後ろめたき吐露が懺悔し
赤葡萄の様に壊滅した諸々の嵐を咀嚼として

倦厭と惑乱
錻力のミニチュア蒐集家
裸の靴
水滴を纏う劇場
聯想は想像に撤かれた一握りの包帯でしかない

しかし誰が覗くというのか
永続に亙り時間を
斃れた時計の背後たる運命の偶然と
宣告をする
受話器の裁縫と解剖を

諸々の風洞に惧れ慄く絹の草花の
死後の窓縁から攫まれた趨勢の石臼達よ
林檎樹の一時刻を
寡婦達の
昏く長い喪葬へと続く黒森の炎へ擱け
血の棘達よ
白い墓地の瞋りを出生として


     /


横臥する花束
生きた霧鐘より滴る劇場
渦を巻く逆円錐の建築門
低く高い多翼の額装に縁取られた丘陵のうえの一台の楕鏡
真鍮の蛇を巡る炎
脆く研磨をされた現像を撒く
誰か過ぎ去った椅子
咽喉への編集
映像としてのヴィジョン
老嬢を花殻を印象を隔絶せよ

佇む壁の前の
ガーベラの軸芯に開く囁き声
地下隧道の私も知れぬ埋葬
黄昏の優麗なる翼人達
或は幽霊共のオペラ
望遠鏡に過去を与えたもう網膜
網膜を外に
鼓膜の内に
茫洋として海棲の百合の殻を眺めた

死の死たる趨勢のさなか
飽食を来す機械的季候
幾つか忘れやらぬ瞳の記憶
戦禍に次ぐ戦禍
破壊を免れた
小さな修道院の
胸倉の小さな鳩の鳩舎

エリュアールの呼ぶ自由と
私達の呼ぶ自由
二十一世紀間に亙る
それぞれの制約を越境し
死者と私達が繋がることはできうるだろうか

そして、安らかに静謐を迎え
すべての沸騰花が時間より離れ来るまで


     *


パウル・ツェラン頌・或は罌粟と無花果

  鷹枕可

I,右手の為の、


黄昏を飲む
ミルクを飲む
黎明を飲む
すなわち瞭然の轍が刻む
ゲットー 傷痍の包帯
ゲットー 腐敗した彼等
ゲットー ポーランドの陰鬱と激情と暴風雪に満ちたマズルカを啜り泣く寡婦よ
生を生とする迄懺悔に暮れる 
異邦の異人を

焼夷弾 糜爛たる皮膚と肉の燃焼を
劈く咽喉 惨死たる子供達の靴を積む
焼却炉は
骨を
肉塊の樹と神経髄の炎に抱く
聖母は御子とともに
熔融し
機銃操縦桿を握れ
薬莢の鋳物を
薔薇と兵士より
轢死の姿勢は機械矯正器に磔けられた
別の歌を唄う
鸚哥の去ったケージ 総て且つ唯一を沸騰する心像樹の、ミルクの、

舗装路の
隧道の花々は愈々濁りつつ
人間の尊厳は紙幣印刷場のインクより齎され
聖霊は世界焼却の荘厳彌撒を執り行う
囁きを囁きながら
世界像の晦冥と亙る茫洋を 
検閲され花束となる
その
称讃辞の屍骸

人類の祝祭を揚げよ
ゲットー 壊疽は柩に擱く
ゲットー 根は労働を退化してゆき
ゲットー 復も採鉱夫は血を嘔吐する

後悔は二十日鼠 それを引裂く鉤爪は想像力
ゆえにこそ汝は在り汝の脳髄を
脳髄を働かせよ汝はゆえに
ゲットー 恢癒なき今を今瞠る その時



II,ひだりてのための、



きみのやわらかな髪
血のミルクを飲む
それらは夕刻に来る
戸口を叩く朝な夕な
静かに柩が燃える
罌粟の日々に

アメリカ人おまえはユダヤ人のゲットーを築く
もっと死を汚らしく縁取れ 
瞋りやまない正義の
純血の麗しいメルセデスきみのやわらかな髪
混血の麗しいユディットきみの頑なな瞳
きみが別たれる時近く遠い時
そして書く
死に遭いみまわれる罌粟の日々
埃及の少年達の

星々のダイナモを動かす鋼鉄の頽廃を呈した首都
そしてそう書く
そこも悪くはないだろう アメリカの窓には
バビロンおまえは墓を掘る朝な夕な
アメリカよおまえはユダヤ人のための火薬庫
アメリカ人よおまえは神経病質なオルガナイザーの
調律しろもっと煽情にシンセサイザーを
ユダヤ人の墓を掘れおまえはアメリカから神経病質なオルガナイザーの

血のミルクを飲む
朝な夕な青空に墓を掘れそこはきっと佳い所
もっと汚らしく火薬庫を縁取れ純血の麗しいメルセデス
アメリカの窓瞋りやまない正義の
そしてきみは書くアメリカの窓に
汚らしく神経病シンセサイザーよもっと麗しく墓を掘れ
朝な夕な血のミルクを飲む
朝な夕な死に遭いみまわれるメルセデスきみのやわらかな髪
罌粟の日々に
血のミルクを視る者を悉くを破壊する
埃及の少年達の
混血の麗しいユディットきみの頑なな瞳

朝な夕な雲に墓を掘れそこはきっと佳い所
調律しろもっと煽情にシンセサイザーを
バビロンは時近く遠く時近く書く
もっと逞しくダイナモを動かせ頽廃をして鋼鉄する首都
ユダヤ人おまえは
静かに柩が燃える朝な夕な

混血の麗しいメルセデスきみのやわらかな瞳
純血の麗しいユディットきみの頑なな髪
混血の麗しいメルセデスきみのやわらかな髪
純血の麗しいユディットきみの頑なな瞳

静かに柩が燃えるユダヤきみの

文学極道

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