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村田 麻衣子 (村田麻衣子) - 2011年分

選出作品 (投稿日時順 / 全3作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


I-my-me [pupet makes people]

  村田麻衣子


 仮縫いみたいに 新聞を縫いつけられて
 テディベアはなんさいなの 読んだばか
 りなのに忘れてくのは、360°をまのあ
 たりにしたあらゆる内角だから ちっぽ
 けなこどもは大人に 先に言わないで!
 て 未来を先読みしてる 型紙のまある
 さを、尖った輪郭に触れるみたいになに
 この美しい子はって噛ませてあげて だ
 って熊なんだから。
 
 ここからここが、腕です。ここからこ
 こは、ないぞうよくたべるこで顔の付
 近がきゅうきゅうになるくらい綿をつ
 めこまれて、目が×になっちゃうくら
 い! 
 
 合唱てのは、一斉にみんなで声をだす
 から人体実験みたい 声をそろえてひ
 とつのことをして、いろんな声が聴こ
 えるようにしてくれますか 口を縫わ
 れているからそれはやっぱり内蔵され
 たスピーカーみたいで 衣類の裏地を
 つっきる 今季初めてのコートは、と
 ても暖かいけれどそれだけで ふわふ
 わにはんのうするだけ ちっともかわ
 いくなんかない
 
 わたしに所有格はないので、いちばん
 やわらかい大腿内側だけは剥がされな
 いようにしようって あのこと約束し
 たの ぬいぐるみはわたしのものよ。
 まっくろのボタンの目がとれたら、ひ
 とのせいにしようってもっと黒く塗り
 つぶしてるとこ。どんな色が映ります
 か? って実験は続いてて目をあけろ
  窓をあけろっ 足をひらけって命令
 されて目がとれた 耳もとれた こん
 んなにもろいなら わたし誰の代わり
 にもなれるわってしゅっけつしてたら
 所詮おまえはかわいいあのこのストラ
 ップさ って言われて てもとれた 
 あしもとれた

 おなかがすいても たべるとかたべな
 いとかそうゆう問題ではなく 抱えら
 れるまでもないやさしさばかりがめり
 こむので剥がすのはたいへん 詰め込
 むのは栄養になるまでが待ち遠しい 
 今日また廃棄されます もうしゃべん
 なくていいでしょう内蔵されたスピー
 カーが壊れないうちにオフにして。は
 んぶんは社会のものだからなんて あ
 のこだってぴんときてないって顔して
 るでしょ わたしはかおをかく めを
 くろくして あんな代物、まのあたり
 にして生存してるなんてひとでないか
 ら考えられることすら 労働くらいに
 しか思ってないわ。


シャットダウン(#idou doubutsuen.)

  村田麻衣子

パソコンのうえ あたまくっつけて冷たくなってたのにベ
ッドに連れてってくれるひとはいないの ごそごそ顔につ
いた跡にびっくりして 気にしながら起きる ひとりで暮
らしてるから ひとりで眠るのには、もう耐えらんないわ
 電気も朝までつけっぱなしだし デスクのうらがわには
なにがあるかわかんない 壁にあたまくっつけた わかん
ないから怖いの いらないなんにもいらない。 顔に、ひ
っかき傷みっけ

ひらがながカタカナ変換になってるのにいつまでも気づか
ないで書いてた 最近思うこと、みんなカタカナでいいや
ー きみといるときの快楽とか、ひとりでいくらことばに
してかんがえてても、それねむるとかねむらないとかそう
いうもんだいじゃない ねむたいってのと、きみといたい
ってのはおんなじ

受話器越しにきみが、眠がってるのがわかってしまって 
ごそごそ 騒がしい音してるから もう「いいよ」って言
って「イイワケナイジャナイ」って言った たいしたこと
が起こってる わかられてしまうなんて、わかんないなわ
かんないでも愛してるって言って、がちゃんって 受話器
きった。なんなのなんなのっっ

あたしのパンテイにもいろんな うらがえしがあって、衣
類がちらかってるこの部屋は汚くてきらいなの なんなの
なんなのでも だれのかわかんない毛布かぶってたらもう
わたしだれだかわかんなくなってパジャマのなかのふわふ
わを感じるあのいっしゅんをうわまわってくれないし わ
たしがこのかんかくに囚われてないとってあわてて部屋を
片付けて、鏡をみたら知らないひとみたいな顔してるから
、しらんぷり ピンポーンてあなたがきて わたし暗がり
が好きだから電気つけないし、そのまま玄関とびだして「
わたしいまマネキンみたいな顔してたの」 って言ったら
「そんな子、知らないよ」って 毛布ごと抱きしめてくれ
たから。


インファントフロー

  村田麻衣子

#She is fine.

あのこは、からだを「く」の字にして眠っている。胎児の
翳がある、ただ どの部位にいるかわからないのでからだ
をていねいにたたんで眠った ぶかぶかのバレエダンサー
が身につけるような ソックスだけを履いたあのこが、か
らだを売ったベッドでひからびたティッシュだらけになっ
て、あれでドレスメーキングされる。粘膜をひたひたにし
てさわられたいけど 大概が乱暴な手つきだから、破れた。 
踊らないマネキンの腕はとれ、あたまどこだかわかんない 
し、誰かの匂いがするけど、誰のか知らない。誰の腕なの
、手首なの わたしのおんぼろの毛布 とりあげたパパも
いないママもいなくなった

さわられなれた雛鳥は、ある周期の乱れみたいに、#Fが
鳴り途切れたところで 平衡を、踊りながら下手なりに顔
立ちすら端整に見えて 玩具箱をひっくり返すしゅんかん
、鳥篭からいなくなる。ひたひたの神経回路に浸かってて
羽毛よりやわらかい 溺れるまでもないのに、暗い淡い翳
がありましたが そこごと羊水をわたしの肺に撒き散らし 
憶えていないあなたの浅はかさがあったので、洩れなく溢
れた酸素がルームエアーでひかるひかる、それほどにまで
美しくひかる

パパはいませんママもいません ママにあらう順番を教え
てもらったのに やぶってムービーヒロインみたいにてき
とうに石鹸でからだを洗ってたから 土曜日の朝の映画の
色彩は、弧に。視線を、めりこませ 弧から弧を。二つめ
の海を錯覚するように。そらごとにひらかれた午後へ、漣
に繋がる白黒以前に、やけにはっきりと意識に残る。そし
て、やわらかくふやけるもっと内部で、

黒い薔薇の皮膜の中で眠った 重なりあう音域にある熱量
、37℃で 常軌を逸して高ぶるわたしたち ぶれた瞬間 
貪欲にやせっぽちだから、だとか皮膜越しにでもあなたを
映した細胞わたしのだからもっともっと内部へ めりこん
だ視線みたいに欲した弧を。やわらかくふやけ 起きたら
ガーゼをまとっていたあのこの手や足を見つけては わた
しがやさしく包みこんであげるから、

文学極道

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