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早奈朗

選出作品 (投稿日時順 / 全2作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


みずのながれ

  早奈朗

息を、つむぐ

ひろがる花びらのまろやかな落ちこみに尾翼をつらぬいて、わたしは生成する。落ちるそこのところから、くつ跡のくぼみを音楽にかえて、色になりぶあつい花弁を胸のなかでふくらませる。ティッシュをとじこまれ、ゆるやかなすき間のうちをわずかずつ揺れながら息を落とす。みるまにひびき匂やかになる。本をひらき塗っていくことば。くろくなりつつある貝がらにふくれた花弁をつけたして、わたしとひろい海がかきこむ旋律。嬰音と休符のあいだにあみで引きよせるシロナガスクジラ。みずが潮をよび、潮がふかみをよぶ。銀のいろがみが波をおりたたんでいく。ひどくさざめきをくわえられて、ながれる海は、ひびけ、よろこび、霧になってちれ。わたしは飛行機だ。首をかたむけて風をきこう。あり方をちぢめよう。ひろがりの沃地はいつも泥にうずめられているから、そこでかけられる音楽はラジカセがぬまに埋もれて、ききとりにくい弦楽器がおどろきのようにあふれる。原住民はおどり、足かせをはめ、ことばをうたう。たがやす土波は都会をおおい、アンクレットがたがいにふれあいたたかわす。ちりがきょうの空にうかぶ。天はひろくつぼまっているから、雨がふる。わたしたちはよろこびをわかち、はんぶんにしてそれぞれ持っていく。家には塔がたてられている。そこにくもつをおき、煮立ちをかこつ。炎のはしらが立ち、それを演奏している。つえの先に火がなめらかにあり、それをのむ。ことばが侵入する。わたしは火を発ちてみちをいく。のむようにことばの家がゆれている。わたしはそれを統御しない。だからうめこまれもしない。そして雲をあつめて、笛をふく。雲がちぎれてむらさきいろの糸があらわれる。それでくみしき毛布をつくって、ひろく地球にしく。こんな物語のあとで地球がばくはつする。太陽系にとびだす。火星にいじゅうする。そして麺をすすり地球をなつかしむ。だけどわたしたちは飛行機だから、羽をひらき、うもうになれる。そしてかたく空をとぶ。うちゅうをとぶ。宝石のきりをめずらかに袋からはなつ。それは街に生えるだろう。そしてひとびとが萌えでる芽をふみつける。「それはひつようか」「ひつようだ」「ふくろからとびだそう」「そんなこともあるな」「ある」切り出される鉱石をわってなかからとび出てきたみずをひろくしきちりばめる。胸を宇宙のきぼにのばして、息をあたたかくすっている。とびこむ文字はうおになり胸をきり裂いていく。みどりのちしおにぬれ、雪をふくみながらたっている。

わくせいよふるえに触れて、みどりごえの藻せん毛の手を生やしてはえてこい。かみつくひとみのなごりをコップにかきくだいて、みる目をつぶる。あなたのことばをあけると、グライダーがきばをひらいて、のみこむ。みずべのきしにいつまでだって ぬれている ねこになる黒いつばさの男のひとみ、なん着陸して 読むことを解きほぐして小石がひびくまで池をわる。
ががーりんの はっけんに

みぶるいする ころも
○がとどく。家が折れて、つつみこまれるまで腕をのばして丸天井に桟敷をしき広げる。あおくなるまで川をせおってうってたとう。ながれるがらんに刻みこまれた文字は浮き喉にまで達するからそれをはきださなければならない。わたしが少しずつ皮ふを四角にはがしていって打ちつけるぬり壁の奥には歴史が書かれているから、それをとりだすために、一歩わにになって、絵本をころして、さつ戮の嵐が、ふきあれていって、文字をことばでよべば、「おまえはどこにいるか」
「ぼくはどこにもいない」
「それならば腕はどこにあるのか」
「腕は、ここにある。見せようか」
「ぼくたちは見せなくていい」「だから、川にながれる」「文字が川にながれていく」「すり切れるような布を小石のひょうめんにあてて、こすりつける。それがむかしからの作法だから、わたしたちは川に面した町でこうして行商をやっている」「あなたは老婦人だ」「わたしは老婦人の乳をもつ」「それならばしわぶきのむこうの町で酸化しながら、あなたはひだを表面ずつひらいて、わたしをねむらせるつもりなのか」「草はらでねむりなさい」「あなたは眠りのあい言葉をもつ。わたしは、あおを塗るすべを見つける」「見つけよ」

繰りくだるうちに穿孔が花ひらいて濃霧から氷になるためにことばが文字になったのじゃなかったか。氷をやぶるためにあなたの目がひらく地底のしもはむれて赤くゆれている。手がむすうに生えるのなら指がとどくためにたくさんの距離を経て、ぼくの舟は座礁する。いみがしもになるならばあふれるような腕は指揮のほうこうを海のなかにとどくように、引っ張りあげて、地面がゆれる。声がはり叫ぶ。腕のゆび先がいかになって、海に向かって青くなりのびていっても、地はだが海面にふれていっても、記述する糸がぼくはほしい。みずがしたたりぼたぼたになる。音をたてて炎になってゆく。海をこえられるのなら、その上を歩けるのなら、つばさになり黒ぐろとひろがれるのなら、波になろう

くずなみになろう

たちかえることが、波のあい間から声を立ちのぼらせることならば、みどりを踏みつけていって青をこぼらせる演奏のかん隔のかごの中からみどりとりんごとふくれあがるならば,記述するそばから、たくさん歩け。わたしのことばの窓から、いっぱいこぼれ落ちろ。ぬり薬をぬって、絵をえがいて、網のあいだから木を見つめよう。みずがひいていく。いけ、おがわ。「製鉄になれ」

ぬりぐすりをぬっていく。静脈がひらいていく。みどりがこんで、気がつくとたきぎが燃えている。まちがえることもなく、最後にはみずをきりぬけろよ、ことば。水をかこんで、ふるえる間欠泉を譜面としてながめて、まよい出す音をものかごにひろおう。魚をつくろう。いきてとびこむさかなを。うおがせびれになり、いきかえるとき、いみがことばになりおおきな山をつくる。のぼらなくてもいいから、穿とう。流れをくずしていこう。岩にしがみついて血をなめ、けずろう。歯をみせる。うかびあがって消去になる。身が、音符になるとき、たよるものが、雪崩のじくにあるとき、ゆきをむかえるために、あるくこと、時計をもつこと。しし髪に、櫛をさし込んで、草原がひろがる。大地にねざすこと、たゆむこと。みどりがおおきくなり枯れてゆくこと。よびこみの声が、わずかずつ小さくなっていくこと。そして、つぼみがひらくこと。

冬の波がきて、つゆをふくむこと。月にながれること。重心を、引っ張って、ずらすこと。わかれていって、つながらないしもや、もやを、どのようにうまく切れるか、きそいあっている小人になる。そして、夢のなかで、かえってくる。家がたおれて、メスをいれる。氷になり、うかぶ。ぼくははきだされている小石につかまり、からだのすみずみまでゆびになり刺しゅうを入れる。なかがわから見てくれていることを、ひろがる海の内がわのなみをそっと引きしぼって、弓になる。髪のすみずみまで/貝がらになり/くちてゆき/また再生する。記述することばは、くちてゆき、しかし洗いながされない。泥のなかから、たまっていく。


  早奈朗

ぼくは 詩になりたい ことばのすべてになりたい みずではさんしたい 5おく個を けしつぶすぞ。 おまえらのわきざしをおるぞ。山はだからくだってくる詩のやまもろともせかいや街にぶつけてしまえ。そしたらわれたところからのめるみずがどくどくとでてくるだろうから、のんだらきりにしてはいてしまおう。ふんむ器になろう。川どこになり、きざもう。雪をたたえよう。あたらしくであう道すじのために1キロあるかなくてはならない。あるいた先には、みずがふき出、口から岩がつぎつぎに生まれる。ふりさいていけ、いわ。つきなみもいわがしまもすべて転がして、あなにおとしてしまおう。そこから海があいて大地ひらめく。のがれる小なみのあしからとどく手になっていく。ふんさいしていけよ、あな。きみがおってたつんだぞ、あな。ふかくあさくところどころ波になりながら、しずくがみなもにはじけていく受けとめの場所だ、穴。きつつきもねんえきをのこしながら生まれきたる。宝石もたくさん生まれるから、買いあさることはない。土を売りとばしながら売りあげのことばになろう。なみになって消えてしまおう。さかなをばんさんとして、夜はくらくなる。むりやりにでもあかるくして、夜間を“ひるま”といつわって、うごきまわるわにになりしっぽをふりまわそう。いきおいのあまりしゅごしんをはかいしよう。もちろんしゅごしんのはかいにことばはいらない。かわりに火がいるね。だい二指だけもえさかってすべてに火をつけてこう。もえたたせてこう。ざんしんはかいのアイディアをおもいつこう。そしたらそこからうみになり、ふかくはまる。ふかくおちつく。

ぼくはぜんぶになろう ぜんぶになればたのしい ぜんぶになればつきづきしい 掘りゆきてみずになる みずになったらごみになる 愛軍といって あいぼうの鴨をよぶ たいぐんの鴨をよぶ ぼくのことばはさいこうだ あいぐんといおう 砂にながれよう ひとしずくがひと波に そしてだいまおうが長崎に いって何をする? 行ってかりをする すずめをかるぞ さんば よんわ ごせんびき かって 空にはなとう。雪ぐさりになろう。雪のかたりぐさになろう。しぶがきの皮がはくらくしていけば みえるのは目と 歯 芽と 葉 いまは のびるなよ。 がまんしろよ わに。 がまんしろよ おまえたち。 雪のちぐさ。 名前のない花。 きょうちくとうのそばで くきのかたちをして 揺れている。 もーふぃんの そばのかたちを いっしょうけんめい ゆきは はつめいして ぼくたちに 食わせてくれる。 しかくくちぐさになって どこまでも 食わせてくれる。 ねえ さけ。 ねえ さかな。 ねえ すべてのものたち。 さけはどうくうの? さかなはどういうなまえなの? 風がたち、 ぬかたが起き、 風はどういう名前をまとえばいいのか分からないように、ぼくはすべてになりゆくためにまずいっこの名前が定まらない。口を開けてあるくために、龍の名前がぼくにはひつようだ。だから名前をあけてよぼう、りゅう、こい。みどりをみるな、うまをふめ、からだでながしたら保つために二おくかいちりしけ、さながらロードのようにな。ごみさっきんのようにな。 塔をこわしていったら 国税局から でもね あなた しゅうふくしなさい もしくはしゅうふくひをながしなさい と いわれるから わかった といって しゅうふくのためのぬのをあつめて とうきょうドームをつくる。 でも これは ちがうよね だけど わたし こうきゅうだから ありがたくうけとっておくわ。 おたっしが ついたのは1ヶ月ごで とうきょうドーム12こぶんは 土のなかで成長している。 12ねんご からをやぶって出てくる とうきょうドーム12こぶんこ。 そこには 花があるかな 歴史があるかな 川がながれるみぞはできているだろうか できていたら だれがつくるのだろうか ひとがつくった 水から できあがった ひとが ぼうきゅうのために いっしょうけんめい やまとたにを けんせつしたよ。 「やぶるためになにをみればいい?」 「やぶるためにこれをみればいいです」 「ひとか」 「いいえ ちずです。」 「ちずならやぶれるじゃないか このように。」 「いいえ。 やぶってはいけなかった」 「そうとも。 知ってるさ」 「知っているけれど」 「きみははげたかになれないたいぷ ぼくは山やはげたかや みどりのはけがくもをえがくすがたになるのさ」 「わたしは点呼のかかりだから 点呼をします。いち にがみつからない」 「にはみつけたよ とってきたよ。これははげたかのえもの わたしははげたか きものを着たはげたか」 「じゃあわたしはさんせん」 「山川だね。やまになってかわになって、じゃあわたしははげたかと同時に谷になろう うえから見る したでながれる ながれるのはきみか」 「わたしはきろくがかりだから ながれるのもきみでいい。そして文字になればいい」 「文字になりとび立つんだな はねをひろげて ながれてゆけるんだな。 さあ」 「つながるの?」 「はばたくよ」 「まいごみになるよ」 「ひろげよう とり。やま。かわ。たに。」 「きこえないだろうふうあつで あなたのしたから もぐりだすさまざまなせいめいの 谷や かわや 山が おお波になりとぎれる」 「ながれてゆけると いっただろう。」 「海においがするから」 「粉のよろこびがかたまりになって海に投げられるね」 「浜なんてうつくしい」 「みどりなんてな」 「名前はりゅうだから」 「はかいしていこうか」 「あかさたなになっていこうか」 「それは砂になるということ」 「夜になるということ」 「りゅうはかたちをもって火をふくよ」 「服はめらめらだ 焼けただれて」 「もちろんみずになるのさ からだのみぞからあふれだすよ」 「ぼくはレモンのようだ」 「ぼくはレモンになる」 「ちょうになり」 「ため息になろう。」 「すべてになろう からだをひろげて すべてのことばを入れよう 服になる 息になる こどもになる ひよどりになる ものすごくなる。冷たい川のすじが 山はだまでふれるよ。そこに街ができるよ。そしたら たおすよ。」 たかのりゅうきだから しまりゅうをもって すべてのくるまがくどうするさき 川がもしも割れたら 文字がわれる われたところからりゅうがのぼって 記憶をはこんでく。ぼくの名前はりゅうだ だから 名前のうごく通りに 腕をふりまわして 火災を起こして みるみるうちにちぢんでいく。 いっぱくご のびていく。 まじないのせいかかな さかなのひあがったのかな スタンプがいっこずつ出来て いっこずつ押していこう。川ながれのりゅうになるのなら ずいぶん楽だから うろこ 取れるたび 生えていって たくさんのうろこが川どこにしきつもり「ぼくは貝づかだ」といっている。 「なるほど きみは貝づかだ。」「きみはなんなの」 「ぼくはりゅうでなくなった だから みまもっている」 「見まもり隊か でも ふん火するよな」 「ええ こんなふうに。どおーん」 「ああ ふん火した。これが 火の うみだ。」 「そうだとも 剣は 王の いかり。ぼくは りゅうの なごり。」 「ふっかざんだね」 「ふっかざんだ よってたつぞ」 「ならばあざやかにしょうれいしよう」 「しょうれいしてみせろ 鐘。」 みずがはだにいたくないか、りゅう。つかれたらやすんでいい。雲のしたで、あおく舌をながせばいい。 火は都会にあつまるから、ぎょうしゅくされて、肩ならしに振りまわされる。 「もう りゅうでなければ いみがないね。」 「ぼくはりゅうだ りゅうだったものが そのままりゅうになる そのまま違うなまえになる」 「名前をはぎ取ってやる」 「はぎ取られた」 「それでもなにか言えるか」 「いえる」 「たとえばどんなことが」 「たとえばさくらのことが」 「たとえばさくらのことか 橋をかけるんだな。」 「橋が すこし みずにぬれて」 「いわなくてもわかる」 「わからせない」 「さくらふぶき」 「氷ふぶき」 「ふぶく夜はきけんですからお下がりください」 「どこまでも 下がったよ。りゅうだから その名前がはぎ取られても、池のどこかに落ちてるはずだから」 「おまえはりゅうであるまえはりゅうでなかった」 「そうかな りゅうであったよ」 「それはだましだ」 「めくらましさ さくらの道さ。」 「さくらがふぶいてるよ」 「雪もふっているよ」 「しかしふっているな」 「しかしふっているね。」 「お前はりゅうか」 「ちがう」 「ではなんだ」 「ではなんだ」 「ではなんだ」 「ではなんだ」 「お前はりゅうか」 「そうだ」 「そうであるならば」 「うん」 「剣をぬきとられよ」 「剣はもってないよ なくしちゃったよ とちゅうの池に落としたから そこで名前もひろってきたから」 「りゅうめ」 「りゅうだよ」 「まちをはかいしやがって」 「とうきょうドームもはかいするよ やまも ゆきもはかいするよ ぼくはりゅうという名前をとり戻したもの」 「つぎはうばってやるぞ」 「桜ふぶき」 「わたしは橋かけだ」 「そうだろうと思っていた」 「橋をかけてやるぞ」.

文学極道

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