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雀絽

選出作品 (投稿日時順 / 全2作)

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じぃちゃんへ。

  雀絽

うすい

じぃちゃんは
しょっぱいものが
嫌いみたいだった

ばぁちゃんのつくった
味噌汁にお湯を注ぎ足しては
濃い濃いと言っていた


うすい

じぃちゃんの
後頭部、
光があたると
ぴかり、ぴかぴか、
髪の毛が 産毛に見えた

それでも散髪屋に行って
髪を撫でてくる
ばぁちゃんは
意味ない意味ないと
何度も言っていた


うすい

じぃちゃんの
老人という自覚
まだまだ これから

青春がこれからだといいのに、と
ばぁちゃんは言ったけれど
じぃちゃんたちの青春がこれからなら
私は まだ ここにいなかったのかな



じぃちゃん
じぃちゃん、

ばぁちゃん

けれども
じぃちゃん、



そんな うすいガウンなら
風邪をひいてしまうから

白髪の透き通る 色
以前の黒の色が記憶のよう
白髪頭になるにつれ、
たくさんのことを忘れているよう

いつか 忘れてしまうのではないかな
いつか 何もわからなくなってしまって
いつか じぃちゃんが忘れても


ねぇ じぃちゃん。

そんなうすっぺらな気持ちじゃないよ
私のじぃちゃん大好きは

なぁ、じぃちゃん。


そんな うすいガウンなら
風邪をひいてしまうから


じぃちゃんの後頭部
また うすくなったみたい
きれいにひかってる


空虚

  雀絽



   僕たちは
   頭を空に
   託して

   足を
   地面に
   さした


   何億のマッチ棒が
   頭をさすり
   転びながら
   這いつくばりながら
   
   いずれは
   死に
   小さくなっていく
   ことを 悟りながら
   


   僕たちは
   空があおいと知り 
   海があおいと知り
   鳥はとべることを知った

   
   頭ばかり 空に向かい
   足は 頭がぶっとぶのを とめた

   どこかにいってしまうんではないかと 
   いつか あの空の星になってしまうんではないかと
   いつも 頭を なだめて  
   

   僕たちは
   いずれ死ぬことを知り、
   自分の死んだ場所に
   花が残ることは知らない まま

文学極道

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