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小西

選出作品 (投稿日時順 / 全4作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


女の子

  小西

お母さんが好きな蝶を燃やして得た光じゃないと君は輝かなかった
その日、君はいつもと同じように登校してテストを受けた
[2]問7 次の英文を訳しなさい
My mother died 3days ago
訳:わたしは星のない夜にはセックスをしない
そこだけを埋めて君はペンを置いた
すました顔で君が提出したほとんど白紙の解答用紙に僕は何点をつければいいんだろう
結局テスト返しの授業をさぼって君は教頭先生と二人でプールで泳いだ
私が卒業したら国会議事堂の前で政治的なキスをしよう、と君は教頭に言った
2年1組の教室の窓からは相変わらずこの町が見えるだけだった


10進法

  小西

僕たちはふたりとも10進法を生きていた
1→10→100 同じタイミングで桁が上がるのを楽しんだ
ただ彼女はときどき僕が知らない数字を使った
3ЖとかЦ7とか
ロシア語の文字と同じみたいだけど彼女がどういう数を表したいのかはわからなかった。彼女がそういう数字を使うと僕は何らかの印象を受けたけどそれが良い印象なのか悪い印象なのか自分でもわからなかった。 人に相談したら「プラスでもマイナスでもないんじゃない?」と言われるだろうか。
彼女が僕が知らない数字を使うことで僕は彼女のことをより好きになってるのかその逆なのかわからなかった。
小学生のときに1クラスに何人いたかみたいにどうでもいいことなのかもしれない。彼女が一人ぼっちで授業を受けようが1000人入るホールで授業を受けようが僕の彼女に対する愛は変わらない。
期末テストが返ってきて、彼女に「英語何点だった?」と聞かれたから僕は「8Ф」と言った
彼女は、私も同じだよと言って笑った
僕たちの桁が一つ上がった


19歳

  小西

僕の体のどこかに東京と同じ大きさの穴が開いている気がする


初恋

  小西

14年間のキスが終わると
ふるさとごと奪い取られたみたいに
もう何も残っていなかった

文学極道

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