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鯨 勇魚。

選出作品 (投稿日時順 / 全1作)

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日没

  鯨 勇魚。



『境界』
春の砂浜にも眠気がありました
くるぶしあたりを行き来します
つめたいって声がよく笑いすぎる
何度だって挨拶を交わしながら
波打ちたくなる感覚に
初めて足の親指を口に含まれ
不意に悶えてしまう流れのようです



『声』
睫毛も疲れて滲むのでしょう
童顔した人の名前にもたれ掛かり 
乳首に爪を立てられたあとの
優しさで感じる事という曖昧は力無く 
聞こえないふりをしていたら
たもっていけるものか
大丈夫なはずがない
とにかくあれだ
大丈夫なはずがないんだったら



『連結』
そっとしておいて欲しいと
車窓の向こうを見つめ
移りこんだ素顔が邪魔をして
余計に世界が滲むように
思えませんか
透き通っている
淡い光は流れて残光
どこかしらに集まり
ひしめき合いながら
夜も余白のように
輝いてしまうのですか
唐草模様した線路沿いだけが生きています
目線足元景色に巻きつきながら
ぼやけて過ぎていきます
人間との関係に似ている
巻きついてみようか悩む硝子は硬いって事



『@依存』
遠くに波打つ一線
とくん。と、
脈打つ首を指先愛おしいのだけれど
静かに火がありますから
つめたいね、それは
海岸線のむこうがわ
地平線との境
あの境界線境界線きょうかいせん
今日描いた線それぞれの今
窓のほとりまで押し寄せた
宵闇の子供達の言う
「あのね」に集まる
たくさんの
ミリアンペア海路
奇麗なのだけれど
だからと決めつけながら
帰れなくなるのじゃあないだろうか
列車が巻き起こした風に動き
冷えたコロッケをほお張り
そう慕う



『トニック!』
もう涙は一直線に床に落ちていった

(大丈夫なはずはない)

気にかけるなんて
卑怯すぎる秘密がひみつ
うつむき目を閉じて
生きてる事を体感しながら
記憶のピントが
眠りのふちで雪が降って
不思議に暖かく
耳たぶを紅くしていた



『強制』
ノックしています
入ってます
もうすぐ出ます
能動と受動が遊泳している
あのね、あのね、あのね
言葉がおいつかない
もどかしい失望感
忙しいんだから
あとにしてくれないか
あまりにも憐れな鳴き声に
耳を塞ぐ事ができない

文学極道

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