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久石ソナ - 2011年分

選出作品 (投稿日時順 / 全2作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


色彩の沈むところ

  久石ソナ

散りばめられた冷たい木漏れ日は
私の首筋にするりと落ちて
指先の感触で静けさと
そのさきの乾いた音を
手探りする。
ぷつりぷつりと潰れていった遊びを
裏返してゆくことが
ぬくもりを生む条件でしたが
私は笑っているので
もし、からだと葛藤の盾すらあどけないなら
熱を孕んだ白昼夢を見続ける作業を
しなくてもいいよ。

また一つ
街灯の明かりに照らされた葉脈は
私の指先から滑り降りた。
道すがら、水面に映える芥子を
握りつぶすことを
さしてわだかまりの匙だとは
思いませんよ。
けれども、私を構築する術の
煮詰まった孔穴を
印すことはありませんから
末永く落ちていてください。
陽に溶けた古びた紙の端の鮮やかな沈殿の

ほのかな目眩が漂い
私にひび割れた感触を与える。
夕映えの錯覚がコップの底で眠り
飲み干そうとするけれど
ままならない指先の冷たさ
木の葉の揺れる音
さつばつとした香りを晒し
風に不確かな温もりを孕ませる。
その輪郭を捻じ曲げて灰となった
寝息に私の耳の裏は
さびしさを浪費する。


砂丘

  久石ソナ

腕枕した腕が痺れ、
窓から零れる
白昼夢は
静かに蒸発する。
私の目を傷付ける、
雨の咲かない匂い。
石畳を白くさせながら、
引き裂きながら。

アジサイは
時間を知る半透明な羽を
なびかせて、
何色の叫びを
梅雨の暮れがあげていたか、
思いださせない。
熟れた結晶の
アスファルト、
片方の夜が
煮崩れる。

にがい眠気を
唆すとき、
粘膜に焦げ目をつけた
息吹さえ凍える。
手のひらで灰となり
街灯の下で消えゆく、
末枯れたアジサイを眺め。

やがて、
かたほうの夜は
未熟となる。
老いた雲間から、
腐敗を咀嚼した
花びらが
降り続けても。

文学極道

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