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寒月 - 2009年分

選出作品 (投稿日時順 / 全2作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


なまえ

  寒月

地下街へ下る階段の途中で
さみしい という言葉が泣いていた
なまえは と聞くと寂しいという
では だれのさみしいですかと聞くと
名前と電話番号を教えてくれた
さみしいは地下鉄に乗り
しずかに家へ帰った

掃除のおばさんが困っていた
愛がひとりぼっちで眠っている
はいて捨てるわけにもいかなくてね と
だれの愛ですか
分からないという
では 最初に見つけた人のもの
おばさんはにっこり笑って
いいわよと答えた

さみしいはいつか
かならず電話するといってひとりで帰り
愛はおばさんと一緒に仕事をしている

その日会う 女の人に 花を買う
名前と誕生をそえて
赤い薔薇を渡し
見つけてください
あなたを見つけたように ぼくを

初めて 声に出し なまえを
言う


ぱんつ

  寒月

あなたは花畑であり 花畑を渡るぱんつ
こなたは荒野
そなたは明日であり 明日にひるがえるぱんつ
きくは昨日
さて
ここは私
ここは私でなく
いま/また私
いまをつかの間/泣く
なくふりをして やはりなく
蜩 ぬけがら は/なく/ようになく/ように風になく
風がなく/風が吹く
いまここでは
といままた言う
確かに言う
ぱんつはぱんつを脱がない
脱げないとももちろん 言う

文学極道

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