#目次

最新情報


阿怪

選出作品 (投稿日時順 / 全3作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


(株)鈴木メタル

  阿怪

前は
玉出スーパーへ行くのに
七つほど抜け道があった路地も
都市計画のせいで鈴木メタルの
まえの舗装された道を
まっすぐ北へゆくだけになった。

赤いよだれかけの菩薩の祠に
猫が寝ていて
すこしいくとマキ美容室の
破れた日除けテントがみえる。
BOSSの自販機があって斜め向かいが
アミー珈琲館。
ここも婆さんがやっているが客は一人もいない。
特定非営利活動法人
ほのぼのの家の先に
西成産業会館
公益社団法人西成納税協会
西成税務署とつづく。
隣が、つけ麺ら〜めん一二三。
播州室津直送牡蠣小屋とか。

この辺りにはスーパーが三つあって
イオンにはふつうの主婦
食品館アプロには裕福そうなご婦人
スーパー玉出には、だれがみてもビンボー人が
集まってくる。
無名のスーパー玉出が全国に知られたのは
SMAPの事務所脱退騒動のお陰だった。

 みけろん@ゾンビーバー@mikeron2525
 スーパー玉出が突然の超全国区に・・・!
 2016.01.13 06:20

 らなさん厄年が気になる@rana_kkbn
 もはやSMAP解散よりスーパー玉出の方が気になる件
 2016.01.13 08:01

 ∠やすゆま@yassmpgap
 どさくさに紛れてスーパー玉出トレンド入りてお前
 2016.01.13 08:01

 ちきんぬ@chikirooooo
 SMAP解散マジなん…?てかなんでトレンドに
 スーパー玉出ww
 2016.01.13 08:22

 ロンリーウルフ@まほちむ@mimoda3
 SMAP解散の報せを聞いていても立ってもいられず
 スーパー玉出に来てしまった…
2016.01.13 08:49

 ROBOTDUXi @ROBOTDUXi
 スーパー玉出
 SUPER TAMADE
 を並び替えると
 SMAP DE URETA
 「スマップで売れた」
 になる訳です。
 2016.01.13 09:40

「たい焼きが1円!?三ツ矢サイダーが1円!?」
スーパー玉出(tablexxnxさん撮影,flickrより)
https://www.flickr.com/photos/tablexxnx/5605398269/in/photolist-9xk8BK-9xo7HU-h9MV2b-dYLZo5-ogcGgT-ovEhR5-ovEj71-ovEK7m-ozrQez-h9KdSh-hxbL9S-dYFi38-oxtxDQ-ogd9Nj-dg8uC5-oxqcSD-ogcQfY-oxqDER-oxGcd4-79W2MG-oxEjSU-oxGCeM-ogcT8w-5xBvd6-oxFBci-dYVock-ogcAxg-dF5EWL-dEYQCz-pAATqz-oxEmXf-deLR1L-oxqFyF-oxDW2r-oxEuHW-ogcXx4-t4Jzao-oxG9AF-tMpF9P-ogcDJi-oxtwHS-ogcx1u-dW5MpD-oxGe86-ogbVPr-dxH2Fj-dxYKGu-dNpRJq-di3QEp-dMwCRy

このスーパーのレジ係のオネエチャンたちは物凄く美人
とは全然いえなくて、
体型も相撲取りみたくでとてもスマートとはいい難いのだけど
(頭も動きも一見、重鈍そうなのだけど)
わたしは彼女たちが物凄く好きで
このスーパーに入ってオネエチャンたちをみてると深く安心して
しまう。
大げさかもしれないけど世界の未来について。
なんか
オネエチャンたちをみていると。


あとがき

  阿怪

  ぼくは犬のかわりに扇風機を飼っている
ハチと名づけた
  家のなかで動くのはハチだけである
  いま
  ハチは雷が鳴り始めたベランダで首を振っている
  頼もしい
  ハチに怖いものはない

ある日
ぼくは死んだ
  ハチはそんなことを知らない
  ベランダで首を振り続けている
  嗚呼 忠犬ハチ
扇風機だって犬だ
  愛があってなんの不思議があろう

ましてその扇風機が
   
  わたしであったとしても
なんの不思議もない


ニレの木でハトが鳴いているんだね

  阿怪

本を閉じた
それから身の回りのものや
家具類を
すべて売り払った
その金で細かい借金まですべて精算し
当面の食費と交通費を残した
田舎のあばら屋は風通しのよい
道場の
ようになった


雨戸と玄関を開け放し
庭を掃いた
井戸から水を盛大に汲み上げて
座敷と縁側を雑巾がけした
パンツとシャツを手で洗い
昼に乾くのを待って
裏山へでかけた

滝の水は冷めたく頭も心臓も胃袋も
凍るようだった
信仰心もないのに、なみあむだぶつを
唱名し、瀑布にうたれた
滝壺からあがり
三十年間使ってきた菜斬り包丁を研いた
水面から反射する光がまぶしく
目眩いがした

夕方、イノシシでも一撃で倒せるほどに
磨き上げた菜斬り包丁を縄で巻き
腰にさげて
下山した
途中、村のコンビニで
オニギリと即席麺と缶詰を
買った

それから三日間、十帖の居間に座して
過ごした
腹が減ると缶詰や即席麺を食べ
夜になるとそのまま横になって目を閉じた
星や月の光も虫の音も
慰めにはならなかったが
熟睡した
最後の日も爽やかに目覚めた

注文した新調の夏服上下が
新しい帽子
新しい靴と一緒に
届いた
菜斬り包丁を丁寧に新聞紙で包み
懐に忍ばせると
わたしは出かけた

我が家から
600キロほど離れた地に遠いむかし別れた
恋人が住んでいるという
そのことを
最近彼女が出した詩集で知った
たいそう評判になり新聞でも取り上げられた
本はずいぶん売れたそうだ
そのひとの住む町のバス停に降りると
鄙びた宿をとって早めに眠った

明け方
案内を乞うて玄関戸をあけると
彼女は暗い上がり框の床板に正座していた
まるでわたしが来るのをずっと待っていたかの
ようだった
「やっと、ですね」と
彼女はいった
わたしは懐から包丁を取り出すと
目にも止まらない速さで
彼女の心臓を刺し串いた

一瞬で絶命したようだった
唇を強く結んで悲鳴もあげなかった
わたしの両肩を掴んでいる手をはずし
刃を引き抜くと
噴き出した血がわたしの顔に散った
手ぬぐいで彼女の顔の汚れを
きれいに拭きとってやり
髪の毛を整えてやった

それから、「まるでコリーみたいに」走って
地元の小さな警察署に出頭した
署内は大騒ぎになり
現場へ急行した刑事がすぐに戻ってきた
わたしは
その場で現行犯逮捕された
留置場へ続く厚い扉が背後で閉められると
それまで戸外でぐーぐーぽーぽー
と苦しそうに鳴いていた鳩の声が
とつぜんやんだ

文学極道

Copyright © BUNGAKU GOKUDOU. All rights reserved.