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ブラッキー

選出作品 (投稿日時順 / 全1作)

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ぬくもり

  ブラッキー

霧の深い夜に、

鍵盤をたたく指先の
影が分散し
ずれていく
水面に
よわい輪郭をくぐらせた
平衡が、
ほどかれていく

冷ややかな炎が
鎌首をもたげ
水がいっせいに引く
夜半
その舌がちろちろと
流れ出し
堆積する化石たち、

窓辺に
垂直に降りる
羽ばたきの影を追う
尋ねかえされた首筋
落陽したそばから
剥がれおちていく
わたしたちの
いくつかの顔
が、
問いかけでした
分岐する
寒色の腕に沈めて

となりあったまま
抜け落ちた髪だけを
指先に絡め
夕暮れに、
馴染ませていくふたり
玩具の城を壊す
指先から消えて、

炎が
燃えている

冷たい、
あなたの横顔に
影を、
塗りつけていく
手のひらを頬骨に這わせ
融解
する、
爪先がひび割れて
表情が
剥がされていく

かつて、
ひかりある朝が、冷たい夜が、わたしたちを
呼んで、両腕を結んだ、少しずつ地軸がずれ
た、約束された季節が、座標が、遠ざかっ、
て、いく、のを、わたしたちは、唇を噛んだ
まま、追い、追えない、霧、が、戻して、は
、くれない、わたしたちの、朝が、夜が、少
しずつ見えなくなる、失われた方位、白く、
長い、指、あなたの、ひかりがついえ、そこ
から乖離していく意識、温度、霧の、

霧の深い夜に

崩壊した和音、
あなたとの
影が
次第にかすんでいく
霧に隠された仮面、
せかいを
舐めつくした舌が
ぱっくりと、
裂けて
流れ出す
対岸で
篝火が燃えている

文学極道

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