#目次

最新情報


ヨルノテガム

選出作品 (投稿日時順 / 全3作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


明日も雪景色ね

  ヨルノテガム





 暗い夜空の街のネオンの
 雪景色の
 雪の結晶のように立ちすくむ男の背中の
 迷いの
 朝まで眠れない夢の続きの音楽の
 重奏の響く街のネオンの仰ぐ
 舞台装置のような夜空の暗さとビル建物の
 輪郭と女との出会いと別れと降り来る雪の

 雪の花咲くスカイダイビングの
 迷いと遊泳とここにもあそこにも雪の着地と
 ダンス心地とまるでビル建物は巨大なスピーカーみたいねと
 酔うカワイイ女の足元を気遣う男の下心の、
 下心に飽きつつある男の眠りと女の眠りと

 街の眠りと雪の眠りの合奏は
 歩行を後押しするかすかな祈りと
 カラ元気のキスと抱擁の手さぐりで探す乳房の先と雪合戦の
 始まりと終わらないで欲しいと願う束の間の
 都会の白い息と寒いねを交し合う言葉の音色と
 また白い息と苦笑いの、股間を足蹴りされる男の
 うさぎ飛びと

 雪空に抜けゆく
 カラカラとした女の笑い声と
 慎重なタクシーの回転の別世界の歩みの
 兄妹みたいな男と女の雪の結晶のような街の明るさと
 反射する気持ちの
 迷う男の迷う女の迷う街の迷う足どりと
 方向の。


推敲日和

  ヨルノテガム




               一日目


  朝、窓をあけると小鳥が歌を
  虫も合わさり
  やおら家々も窓をあけ動き出す音。
  足跡をつけたら直ぐさま飛び立つのか
  多くの鳥がすれ違い
  とおくの嘆きや近くのニュースを
  全部ひっくるめて話し重ねていく
  賑やかなその信号が窓から吹き込んでくるようだ
  姿を見せず、生き物たちは
  朝の薄い影にどこかでひそんでいる



               二日目


  朝、少しだけ窓をあけると
  小鳥の歌が聞こえ 虫も合わさって鳴いて、
  やおら家々も雨戸をあけ動き出す物音がする。
  鳥たちは足跡をつけるまもなく
  直ぐさま飛び立ってしまうのか、忙しそうに戯れ
  通り過ぎたり別のが鳴いたりしてすれ違っていく
  姿は見えないが生き物たちは
  朝の薄い影のどこかにひそんで
  信号を交わしているようだ



               三日目


  朝、少し窓をあけると
  にぎやかな小鳥の歌が聞こえ、合わさるように虫も鳴き
  やおら近くの家々も雨戸をあける物音がする。
  鳥たちは足跡をつけるまもなく飛び立ってしまうのだろうか
  忙しそうに戯れ、通り過ぎては次々とすれ違っていくようだ
  わたしは目を閉じたまま
  姿の見えない生き物たちの交わす信号に耳を傾け
  どこかの薄い影にひそんでいる



 *


               0日目


  朝に窓をあけると
  小鳥が歌を
  虫も歌を
  どこか家々も動き始める音
  足跡をつけ すぐさま飛び立つ
  多くの鳥が違った声を重ねて交ざる
  とおい嘆きや近くのニュースを
  ひっくるめて話す
  窓から部屋へ吹き込んでくる声、音
  姿を見せない生き物は
  静かな朝に確かに咲いている




_


臓器に咲く

  ヨルノテガム




 太陽が寝ている ジュースを零している
 仮面を被った人たちが畑を耕している
 汗が落ち 汗をぬぐう
 音なく鳥の群れは水平に空を滑ってゆく
 風の囁きが過ぎる
 白い砂と黒い土の情報と匂いを
 運び知らせてゆく


 爆弾が燃え広がる 街が平たく消える
 何か収穫したわけではない穴ぼこが漂う
 溶けた命やちぎれた物を置き去る
 くちばしのない鳥が空洞をかかえながら
 空を水平に滑ってゆく
 風はあまりに早く無くなってしまうものを
 囁きつづけているのだろうか
 揺れる花一輪のまわりで多くの足跡は途切れている


 あなた、腎臓におっぱいができてますね
 えっ?
 そしてそのおっぱいの先に・・・・
 先に?
 何か花のようなものが咲いてますよ
 え? ぼくの臓器に自称Gカップのおっぱいが
 ムチムチに膨らんでその乳首の先から花が
 花が咲いているんですって?
 どうやらそのようですねぇ どうされます?
 ・・・・さ、触ってみたいです・・ねぇ・・・エヘ
 ま、気をつけてください 雪の降るような寒い季節に
 邪心の無いひとによく起こることなのですから


 太陽が寝ているのか
 爆弾が燃え広がる
 ジュースを零したのか
 街が平たく消える
 仮面を被った人たちが畑を耕している
 何か収穫したわけではない穴ぼこが漂う
 汗が落ち 汗をぬぐう
 溶けた命やちぎれた物を置き去る
 音なく鳥の群れは水平に空を滑ってゆく
 嘴のない鳥が自身の真ん中に空洞を抱えながら
 空を水平に滑ってゆく
 風の囁きが過ぎる
 風の正体は無残を知り、知らせつづける生きものか

 人ひとり生きる間に
 幾つもの花は枯れ折られ
 捧げられていく
 しかしまた
 一輪の花の周りで
 多くの足跡は途切れている




_

文学極道

Copyright © BUNGAKU GOKUDOU. All rights reserved.