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れたすたれす

選出作品 (投稿日時順 / 全5作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


万年筆

  れたすたれす



去りしなに
さらりと落ちた
拾って胸ポケットの
万年筆の
指先を
汚れた矛先を
抜き取ると
鮮血した
ペンネを
先に着けると
舐めた
あなたの
字は
辛かった


しんなりと

  れたすたれす


しんなりと しにした しめる かのように
かように したしんだ しんわは いぬものを かたる
いつでも しょに しょに いたる しょに
しょを ひらかれる あまたの しょしょに
しょを ひらき みられる たびに いにしえの
ときに いざない いまはなき はかなし しんれいに
したしめる いや ねずとも ねことも ともひき ゆく
ときは しんなりと ときには ねころび
ときとして ころげ こげつき きねしす さいこき
として つきは まわる しんとして そこに ある
しかと ある しかりと ある あたま いしとして
みがく あたまを しかと いしをとぎ あたまを
とくと とぐ いしが いな それ それが はねる
あたまを はねる いしとして はめる あたまは
はめられる あたまは いしで ふるい いしで
あらたな あたま として はめられた 
むちの かわが はげた あたまは あらたに
ふるい それを はりつける いにしえの きじんの
ことば として さだかではない それは しんとして
こんすいし こんめいし こんらんし らんしとし
せいしを として いくども みたまを ひろい
めたまを ひろげ えええ それでも はくしで
ひろい よみして しんなりと 
いくひも あまりを として しんなりと


タオル

  れたすたれす


時の重さを計ろうなんて、見なれたタオルに顔を埋めていた頃。
現象は、見せつける、それに変わる言葉も、検索出来ないほどの
既在。初夏はもうすでに眠りを、昼間から気だるい倦怠を、再放
送をなん度も見せられるにつけ、台所に経つ彼女の臀部が、時の
重さを、土偶の偶然の出土・尾てい骨を割られ、出血し出現する
、限定された信仰を、既にもたされて、開示されてしまっている
《自分》。世界は何も語れず、歴史病的社会は、何かと時の権力
者を照らすに好都合な光を見ない限り、身体を賭したりはしない
。尾がある犬の時間性…眠っている間、アンリ・ルソーの「黒い
ライオン」善悪の彼岸を《今》渡ろうとした瞬間。それは尾てい
骨を割られ人類として、時間性を回復させられる「眠った女」か
?それは、尾を踏んづけられ、身体中踏み潰され「犬肉」にされ
てしまった犬が、この世に残した「ひと吼え」か?

這い根は、老犬に踏んづけられた記憶を思いだし、語り始める。
それは時間性では吊るされず、空間性として物体と見なされる。
渇きは、吊るされる。獲物を吊るして、見せつける《あいだ》。
それは鳥か?ハンガーには、顔用のタオル、手用のタオル。廊下
には陰洗用バケツが、ポツリ。判別のつかない、これはタオルか
?ぞうきんか?作品としての「擦り切れた雑巾」には、いかなる
非秘蔵性が、秘められて在るというのだろうか?国家の、政府の
空間性の本質の内には、非科学的な歴史学はあるとしても、考古
学はすでになく、地質学は無視され、古生物学的知見によって、
人体解剖されても彼らには気づかれない。通常「日の丸」は、非
本来的に、「吊るされて」在る。その本来的時間性は、止まって
在る。美は知られては、ならない。無規定的な美でなければ…と
もかくどんな「風に」でも、吹かされなければ、それも、矢張り
、秘蔵されたままである。


  れたすたれす


屋根のある球場も珍しく無くなった殻がない現実だけで殺戮され続ける軟体は
別にナトリウムをパラジウムと交換したところで 強いられた罪が軽量される
とは考えられもしない 腐った根茎野菜を貪った2時間後 人参色の糞を吻か
らソーセイジのように搾り出す頃 夢の球宴も終わってしまった それにして
もボリビア旅行から帰国したはずの 友人から貰った空の殻の化石の値段はな
ん垓だったのだろうか 自然の階梯は途方も無い地層を積み重ね登りつめなく
てはならない 地球上で生産されたウエハスの総数は植物細胞に内包されてい
る葉緑体の層状構造に起源を持っている 休日には緩んだ銀歯を惑星に落っこ
とす ロマンスグレーが若さと整合しない政治評論家はネットラジオで熱弁を
奮っていたががん細胞の無秩序な増殖にはなすすべも無く身体と言う己の魂が
唯一宇宙にて宿っていられる領地を 早朝明け渡さざるをえなくなった 父の
最期を看取った二人の娘は 広大なキャベツ畑から一房のキャベツを掘り出し
二人の両手で持ち一気に引きちぎった ちぎられたもぎたてのキャベツの半分
は二人のペットのカタツムリの朝食になり 半分は完全な棺の中の父に供えた


透過するレース

  れたすたれす


彼女は窓に架けてある、白いレースの影にいるのです。
それが私を、朦朧とさせる理由なのです。
彼女は黒ふちのめがねを、手にしています。
それを愛おしむように、いつも見つめています。
セラミック製の鳩だの、烏だの、
陰毛の抜けた老婆らがしゃがんでいろ端会議をしている、
路地などを見ています。
それが私の胸を、少し不安にさせている理由なのです。
彼女は夕食に、肉抜きロールキャベツを食べました。
窓際には透過なラップが張ってあって、
昔にも、将来の彼女にも、すりっとすりかわってしまって、
彼女が無表情なのは、いつでも身体を無化できるからです。
彼女は身体を知りません。
そのことが私を苛立たせる理由なのです。
日常的な暮らしぶりからすると、私は健全です。
なのに、なんで彼女はレースの影で喘いでいるのですか?
時折私を見つめて、赤い目になるのでしょうか?
うん、可能なことです。この階から落ちることぐらい、
彼女はおばさんに、『ばっさん』と言ったとき、
ここから落ちて喘ぎました、
自身が死んだ跡だというのに。
それが不明だと、なはずは無いと思われるならば、
ありきたりの方法ですけれども、
あなたの持っている万能器械の窓を開けて、
彼女、の内部に侵蝕し覗き見して診てください。

文学極道

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