#目次

最新情報


よんじゅう

選出作品 (投稿日時順 / 全3作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


でたらめ

  よんじゅう



生垣のそばにはあおむらさきの花が
すっぱい赤い実をつけていた、
ふるえるものがひらこうとして、
そのまんなかにあまぐもがあった、
かぜが忘れられた影になげかけられ
流れていくものがあった、
やさしいはなしかたの祖父と
庭のこと、あめは、
わたしたちのうえで、点字にかわる、
降り止まないことばだった、
赤い実を食べてはいけない
食べたら阿保になる、どしゃ降りのなかで
祖父の着流しがすけて、
ブリーフだけがくちぐせのように
そう、お祈りをする、


うそ

  よんじゅう



部屋があたたかいと何も書けなくなった、つま先も踵も地表にはつかず、ふっとうしたひかりになった、七月生まれの人がかに座になって、星座は煮えたぎったあぶくのようだ、部屋があたたかいと何も書けなくなった、いい訳のようにぼくは七月に生まれた、

目を閉じている場所にひかりは世界をつくった、ぼくは、見えているものに指を絡めようとして、ゆびさきはずっとひかりから遠のいていた、ぼくたちは、ひかりは、ぼくは、ひかりたちは、そうやって世界をつくろうとして、毎晩のように目を閉じた、

部屋があたたかいと何も書けなくなった、星座は煮えたぎっている、ゆびさきをひかりに伸ばすと、
七月生まれのぼくたちが足元から焼かれていく、その匂いが、最初の一行になろうとしていた、


でたらめニ

  よんじゅう



家は川沿いにあった
ぬかるみが渇こうとして
夕暮れは
大腸をひきずりだしたように
ながくなった
そのなかを這うように
ぼくは船出をして
帰りかたがわからなくなった
日の落ちかけた
川面を
言葉をつづるように
ただ下った

文学極道

Copyright © BUNGAKU GOKUDOU. All rights reserved.