生垣のそばにはあおむらさきの花が
すっぱい赤い実をつけていた、
ふるえるものがひらこうとして、
そのまんなかにあまぐもがあった、
かぜが忘れられた影になげかけられ
流れていくものがあった、
やさしいはなしかたの祖父と
庭のこと、あめは、
わたしたちのうえで、点字にかわる、
降り止まないことばだった、
赤い実を食べてはいけない
食べたら阿保になる、どしゃ降りのなかで
祖父の着流しがすけて、
ブリーフだけがくちぐせのように
そう、お祈りをする、
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よんじゅう
でたらめ
よんじゅう
うそ
よんじゅう
部屋があたたかいと何も書けなくなった、つま先も踵も地表にはつかず、ふっとうしたひかりになった、七月生まれの人がかに座になって、星座は煮えたぎったあぶくのようだ、部屋があたたかいと何も書けなくなった、いい訳のようにぼくは七月に生まれた、
目を閉じている場所にひかりは世界をつくった、ぼくは、見えているものに指を絡めようとして、ゆびさきはずっとひかりから遠のいていた、ぼくたちは、ひかりは、ぼくは、ひかりたちは、そうやって世界をつくろうとして、毎晩のように目を閉じた、
部屋があたたかいと何も書けなくなった、星座は煮えたぎっている、ゆびさきをひかりに伸ばすと、
七月生まれのぼくたちが足元から焼かれていく、その匂いが、最初の一行になろうとしていた、
でたらめニ
よんじゅう
家は川沿いにあった
ぬかるみが渇こうとして
夕暮れは
大腸をひきずりだしたように
ながくなった
そのなかを這うように
ぼくは船出をして
帰りかたがわからなくなった
日の落ちかけた
川面を
言葉をつづるように
ただ下った