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ゆま

選出作品 (投稿日時順 / 全3作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


草むら

  ゆま


わたしはいつでも好きなように
やわらかな道を選んでる

草ぐさ埋もれるその道は
やんわりと足が沈みます

もたげる葉先のその先の
針が一本刺さります
もたげる枝のその腹の
刺が一本擦りつけます

傷だらけになる足元は
わたしの作った道になる

やんわりと沈む足元に
朝露がゆら 冷たくって
夜露がわら 染みていって
私をためす もういいかい
もういいよ

もういいよ

わたしの選ぶその道は
ひとり淋しく通る道

わたしはいつでも好きなように
やわらかな道を選んでは

足をとられて転けるでしょう
足をすくわれ滑るでしょう

やわらかく見えるその道は
決してやさしくないくせに
わたしが死ぬまで続きます
わたしは死ぬまで選びます

H17.8.26


春の手紙

  ゆま


どなたか手紙を下さいませんか
見知らぬ私へ、届けて下さい

花びら一枚息もて吹けば
それが私の手紙です

あなたの眉間に、ほら今ついた
それは私の恋文です

お返事は、

大山桜の木の下に
私が見上げるその時に

間に合うようなら届けて下さい
私のゆるんだ口元に


明かりを消したのは誰?

  ゆま


小さな部屋の小さな窓には
ひかりが渦巻いている
揺らめく葉形が波打つガラスに屈折している
姿のないひかりを弾き
擦り切れたやわらかさで内包している
この部屋には
翳りとは無縁の無知があって
たゆたうひかりを見つめるともなく
すべては黄金に明るかった

明かりを消したのは誰?
一瞬の暗闇に惑う
誰かが部屋の明かりを消した
 真暗闇はすぐさま明けた
停電なのか照明のせいか 思う間もなく
またふいに暗闇に襲われる
視界の先はすべて真暗で物の形さえ見分けられない
 明るくなる
安堵のなかで蛍光灯のことを思う
チカチカと点滅を繰り返したのち灯らなくなった蛍光灯の
その長く白い蛍光管の黒ずんだ端々を思う
だが白熱灯のしたでこのようなことが起こるだろうか
 、また暗闇だ

そもそも今は真昼間ではないか
明かりを消す以前に点けてもいない
眩い陽射しの差し込むこの室内で
一瞬にして光を奪うものはなんだ
何も見えない 気配もない
のっぺりとした暗黒が
突然襲っては立ち消える
黄金色の真昼間のなか
まんじりと暗闇に置かれ
見開いた眼は自我の声を聞く
闇の時間が長まっている

私はそら恐ろしくなる
突然襲うこの暗闇が
私自身の闇なのではと

音もなく切り替わる
幾度目かの闇に焦る私が
その規則性に気付くとき
繊毛の幕が上がった

文学極道

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