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まひる

選出作品 (投稿日時順 / 全6作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


道すがら

  まひる

すれ違いそうになった老人との距離に
あとどれぐらい生きれるかを図る。
歩幅は、狭く前のめりなのに、
後ろ歩きをしているのだろうか、
南風が吹いて現在地にいたる。
海を探していた。
見上げるとそこは真っ赤な海だったんだけど。
どれだけの人が死んだのか。
すれ違ったはずの老人が呟く
どれくらいの生命が生まれたのか
生意気に言い返す。
春の風が体を突き抜けた。
5月病の社会人と、僕がすれ違う頃にはわかるかな。
海が青いという事実。


拝啓砂澤ビッキ様

  まひる

漆黒に浮かんでいると自分の輪郭を探すので精一杯
山の稜線をなぞる拙い想像力。
輪郭を浮き彫りしたいと思った10代の自分は
いつのまにかを通り過ぎて行って。
ただ、ふいに拾い集めてしまう、ゴミにしか見えない
いや、石なのかもしれない、それ。
それは先ほど述べたとおりのモノで、
それを夜な夜なノミで削る。
でも一人じゃ完成しない、だから、
誰かの優しさや、厳しさが削り落としてくれる
自分らしさと言う幻想を。
最近はっきりしはじめた私の体はまた、誰かの輪郭に
ノミをいれる。それは終わらない。
そうありたいね、ビッキさん。


星と傘

  まひる

彼女は
宇宙を広げた。
星々が傘を鳴らす
始まりはささいな正義だった。
彼女がピアスをあけたのも正義だ。
ブラックホール、そう彼女は名付けた。
あまたの男を吸い込んで
ある日、彼女が僕に耳打ちをした。
知ってる?私、抱かれている時
いつも心の中でこう思っているの。
偽善者のくそやろう
偽悪者のくそやろう
お前の事なんか知りたくもないし
知るかバーカってね。
彼女の生い立ちについて聞いたことが無い。
ただ彼女は、よく、ブルーシートの屋根を
見つけては懐かしって言っていた。
最近はビッグイシューをよく買っている。
買われる、売る、吸い込む。ビッグイシューを買う。
ルーティン。
静かな戦争。秘密の抵抗。
星が落ちてきた。
今日も彼女は、傘をさしブラックホールに、全てを飲み込み
ビッグイシューを買う


寿限無

  まひる

水面に浮かぶ。座標軸はない。
虚無が波のように打ちよせる。
四拍子の相槌を一人撃つ。
拡張するメモリー、
忘却しない世界との
調和を模索。


偽善者至上主義

  まひる

残飯を食べ、一日中歩き
喉が渇いたただそれだけだ。
涙は水道水よりうまい。
命の光は刹那だって
殺したのは誰だ
犯人探しが始まる
横目で見ている
偽悪者が、笑ってる。
殺したのは俺の言葉だ。 
死んだら無かった事と同じ。
言葉の乱痴気騒ぎ
踊れ踊る驚く、俺?

朝方どこからともなく雨
ゴミ収集車走る
注射器に気をつけて
金に帰れるか。金に変えれるか。
横目で見ている。
偽悪者が笑っている。
命の光回線速度制限
殺されたのは誰だ
犯人探しが始まる。
殺したのは俺の言葉だ。
死んだら無かった事と同じ。
多言語乱痴気騒ぎ
踊れ踊る驚く、俺?


大人システム

  まひる

いつか、あなた、彼方、ゆくえ、しれず。
朝靄が子供を隠している。
いつも、わたし、ことば、えらび、かたる。
満員電車、ソーセージに似てる。
あのひ、見てた、あかね、そらが、もえる。
偽るたびに、むさぼる骨。
あのね、きみの、せかい、おとが、なるの。
周波数0107、正座して聴く。
けれど、ぼくは、きっと、いきる、はずだ。
少年、バットで、空を切る
風が吹いて、世界が揺れる
だから、わたし、いのる、いつか、またね。

文学極道

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