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にゃおす - 2019年分

選出作品 (投稿日時順 / 全2作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


  にゃおす

家路はすれ違う人々の、
何気ない仕草へ意味をあたえる。

気持ちがいいね

ぼくは瞳のなかへ溶け込んで
鏡面に出欠確認の合図
窓を叩く翼を欠いた鳥の群れ
蟋蟀は鼓膜の表面で眠る
くらい階段を登って
花壇に乳歯を埋めたら
さびた釘は拳のなかへ
ぼくを見下ろすあかい末路

声はとても高いところから降る

紙の擦れるおと
破かれた答案用紙をまなざして
吹き抜ける風に車が運ばれてゆく
鮮やかな黒鉛筆のやわらかい芯は
花ひらく永久歯に砕かれ
なんとも無関心な洗濯日和がやってきた

太陽を讃えるために歯を磨きます

正面に浮かぶ発光体は
ぼくの動きを真似して
あかるい顔が浮かぶ
密室に泡立つ生命の起源
ぼくを形成する細胞は沸騰し
もういちど影絵にあらわす
壁に凭れるぼくの身体

雨乞いをしたら雨が降ること、
ツツジを咥えてしんだ子供、
砂を噛む苦い舌、
ぼくのすべて。

なくなる


フィクション

  にゃおす

住宅街をゆく
ひとの声がない
かわりにきこえてくる
調律狂いのピアノ
割れたリコーダー

あかぎれのゆび奏でる
鍵盤たたく少女は少女のなかで
画面に見切れた自分の姿を見つめる
あれたくちびる奏でる
神経質なほそいゆび動かし
吐息もれる少年は少年のなかで
画面いっぱいの自分の鼻を見つめる

撮影した街の日常

住宅からきえたひとを追って
ぼくはあたえられた役を演じる
台本から台本へ投げかける言葉ひとつ
一字一句誤りはなかった
乱れた呼吸をさいごに
おつかれさま

だれもさよならを知らない

ところできみ、
抜け落ちた音声を
拾ってきてくれないか
映像は問題ない
ただ、音が不自然だから
もっといきものが嘘をついて、
生活をしていると錯覚するくらいに、
あと、光の調整を怠るな
影が実体に憧れると面倒だ

ここが終着
そして、はじまり
整列した墓石を俯瞰する
壁に囲まれたひとつの街
鳥類は退化する
翼を腕に還元(諸説あり)
では、人類はどうする?
とりあえずまあるく、
まあるく、
ころがる、
回転して、

踏みつぶされた

おまえの日常
どうかしてるよ

文学極道

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