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つぐみや

選出作品 (投稿日時順 / 全5作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


掠れ声

  つぐみや

私を置いていく松葉杖
ゴールリングは未確認生物に終わった

残されたクレーンゲームは鳩の人形を掴み荒らした

渋滞を起こす献花の川に独り言をぼやいた

欠けた月と並走する貝殻
己の自信はガムシロップに飲まれていく

酒の煙に溺れていく私たちは
変わらない脳みそに五味子をまぶし続ける

砂漠にガードレールを設置する視線は止まった月の沈みに殴られた

蛙に大海を飲ませるネクタイ
耳鳴りの原点はマカロンのみじん切りに帰っていった

無知は殴られる感触を金剛石の屁理屈にし飲み干した

声はもう枯れたよ


降参

  つぐみや

手に少し余るくらいの水槽
そこで泳ぐチーズバーガーにナンパされた少女
めんどくさいとピクルスを引き抜いて警察に突き出した

リップくりーむを買うために出かけたが運が悪かった
今日も帰ろうと歩く
が止まらない口角が道路に転がるベイト・ボールを釣り上げてしまった
逃げる

ラッコが木魚を鳴らせば夜に変わる

一斉に飛び立つペットボトルロケットにしがみつく
会場を盛り上げるアイドル達の嗚咽が見えた
大金で作られたロボットが顔を剥がされるのが見えた
発表された美しい数式が3歳の少女に転ばされるのが見えた

46分後 屋台のラーメン屋の最後尾に不時着した

自宅目の前
キリンの鳴きまねをする二本指

着いた

普段扉には三つも鍵がかかっているのに今日はかかっていない
思い返せばいつも冷たいあいつも今日は絡まってこなかった

ベットの枕元 大好きな蛙のぬいぐるみが
ケチャップたっぷりのオムライスを作って帰りを待っていた

今日はおいしい


現金出納帳

  つぐみや

狛犬に麦チョコをあげれば黙ると聞いた
人中を中心に耳骨に点を取り円を書く
卓袱台をひっくり返すように回り続ける
さすれば裸体のコノハチョウ達が一斉に飛び立った
残された歯形の付いたガラスに火を付ける

タイピング音を垂れ流すラジオに爪垢を擦り付ける
拮抗する睡魔と洗濯機の戦いに烏が落ちてくる
精米された延長コードの泣き笑いをカーテンで包みこむ私は
人中に縫い付けられた昆布を
目玉がアメジストのザリガニを焼いた水蒸気にさらしてだしを取る

8ページ先の直下型地震にマネキンたちが喜びのポーズを取り始める
完結するに値しない劣悪なイルカショーに卓袱台をひっくり返す
私の広辞苑はあの春の薬剤師と駆け落ちした時からめくられていない

狛犬さんに麦チョコをあげると歩くのを止めるらしい


(無題)

  つぐみや

音楽室いっぱいの炭酸水の波を全身で受け入れて
散弾するピーマンの豆たちが発芽する時をずっと待っている
括弧に収めこまれた幽霊船は船首像のソーセージが愛らしい
穴のないドーナッツをサイの角に投げつける
目がアメジストでできたウナギたちが声を揃えて言う
ごみ箱を被ったまま夜を迎えろと


(無題)

  つぐみや

卵の殻にピストルで少年の吐息を注入すれば
溢れだす古代のココナッツオイルが蒸発する
淡い練炭に腰掛ける老体にかしこまるあぜ道
テレビの画面越しに爪を切られる陽光の東側
腐ったコッペパンはとある教室の机の奥深く
仏像の頭にキャラクターシールを張り付ける
犯人は未だ捕まっておらず現在も捜索中です
焼きたての牛蒡の香りに釣られる猫と烏と鈴
花粉症が経済革命を起こす時代がいつか来る
きっとね。草原。

文学極道

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