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たこ吉

選出作品 (投稿日時順 / 全9作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


浜辺

  たこ吉


夏の浜辺でね
死んだような臭いがしていたよ

海の匂いだよ
白い家の
カーテンの揺らぎから
漂って
チリチリ
やけに痛くって

油彩の絵の具を
乾くまで
いつまでも、いつまで重ねてさ
全然乾かないんだよ
白い粉が湿っててさ
眩しくって仕方がない。

あぁ

白い、世界が
白い、白い、


運命の輪が回っていたんだ。
巻貝の螺管が陥没してるのに
狂っているんだ。
おかまいなしに回転している
 


熱情

  たこ吉(たこ)


しんくうかんの内がわで
愛やら恋やら語っている君は
つかのまの世の電気信号
結び目なんて、ほんの僅かで
これっぽっちも忘れてしまった。
君と僕はE.T.みたいに
指の先で恋をする
さびしさと やるせなさの
虚無は、そうやって
そうごにはんのうし、
ほら、ピリリと
発熱してる。地球儀のなす
タテ・ヨコ線の交差点で、
手を取り合って踊ろう。
こっちも世界の中心で
あっちも世界の真ん中だから
僕は君の瞳だけ見て
君しか世界にいないのだと
信じることができるのだ。
笑えばいいんじゃないだろうか。
ガラガラと輝き崩れ落ちる
世界は、きっとこれからも 永遠。
ちっぽけな電気信号が
不意に現れるのは、つかのま
一兆光年遠くに届くのは
一兆光年先の未来だ。
在るとは一体なんなのか
その実、消滅は果てしない
ただ、1つ、確かなことは、
指先と指先の触れた時
ピリリと電流が走ったということ。


てんとうむし

  たこ吉(たこ)

夜のものでも
昼のものでもなく

天道をめぐる
小さな虫よ

はてしなく、はてなく
のぼり、のぼり

君が銀河をめぐるとき
そのおくり翅が描く軌道は
いつか、もときた
地点に至る

永遠に巡り
繰り返し、たどりつき
君の場所はどこなのか

僕は
空に散らばった
幸せを、拾って集めようと
おもう。

あぁ、
きみのさやばねの
水玉模様が

いたるところ
いたるところに。


木洩日

  たこ吉

あの空洞は何だろう
がらんとした投影が
豹斑のように
揺れている

あの光の向こうは
きっと極楽浄土だろう

もう、
死んでしまっているからね
肉の器を明け渡し
光のかけらを踏み渡り
陰なす森を越えてゆく

孤独な暗夜行路の先に
巨体が壮麗な列をなし
極楽浄土より差す
まばゆい後光に輝いて

遠くへ向かう清らな水が
あまねく、世を照らすのか


てんとうむしよ

  たこ吉

てんとうむしよ
君はてんとうむしだから
月のない空を渡るのか

それとも
燃えてしまったのか

水玉模様にかくした
おくり羽
彗星の尾っぽを
なびかせて

いつかは居なくなって
しまうからね
僕もいなくなって
しまったら

散らばった黒檀を
拾い集め
銀のススキの上を
歩こうか

僕は夜の列車に乗って
君の軌跡を辿ろうと思う

赤く燃える石炭が
ぶつかりあって
小さくはぜる

冬の気層の
ひかりの底に


葬列

  たこ吉


クロニクルが逆走をはじめて
あたりまえであったことが
眩しいものにかわり
遠く離れた喧騒になる

冷たいスローモーションの中を
音もなく歩く
葬列に参じ

喪服に身をつつむ日、
私たちは、
寄り集まり、
世を捨て去って

片道だけの旅路へ向かう
懐かしい亡き人を
舟にのせる

落日に
照らされて
首を
突き立てて
洗った
三途の川原が
やさしい黄金色をして
小石を積むことも
束の間に忘れて

きやきやとした
思い出が、編み継がれ
舟を飾りますように

ここが、
はじまりとなりますように
新しい世界が
広がりますように。


大地の子

  たこ吉


生きている時間を
どんなふうに使おうか

大地に放射能が降り注ぎ
カフェは爺婆が溢れてる
街には死が満ちていて
僕は、早死するだろう

雲散霧消する精神の
示す、わたくしという空洞
背を向けても、目をつぶっても
だますことのできぬ
滅び

なにももたず、何者でもなく
漂っているようで、囚われている

大地の子は
この世に生を受けたことを呪う
巨大な何かに
吸い取られ
腐ったまんま
干からびる

蒼璧の群青とたなびく浮雲
薔薇の陽光に薄く染まり

さて、
どんなふうに
生きようか


小さな告白

  たこ吉

私の脳みそは、実はぱっかり割れるんです☆彡
小さな宇宙人さんがハンドル握って操作してるの。

そんな真実を直感したとき、私は
コーラの缶を思いっきり蹴飛し、
アスファルトの道を駆け抜け
勢いあまってすっ転んだ。

小学校低学年だった、あの日。
血のにじむ傷がジンジン沁みた、あの日。

心をジクジクさせて、今
ほろ苦い思い出をかみしめる。

宇宙人は何もなかったように振舞っていた。
あなたは痛くないもんね。
私は……私は.....誰だろう?

宇宙人の脳みそがぱかんと開き、小さな宇宙人が現れる。
その宇宙人の脳みそが開き、もっと小さい宇宙人がこんにちは。
もっと小さい宇宙人がぱかんと、もっともっともっと小さな頭が現れて、
もっともっと小さな宇宙人からこんにちは。もっともっともっと小さな頭が…〜^ ▽ ^#%@〜*♪

天地がぐにゃりと歪んだような気がして、
覚えた痛みのありかを探る。(それは、合わせ鏡を覗き込み、
不思議のウサコを追いかけるのに似ている。)

金魚頭を鉢からかぶって、生活できたらどんなにいいか。
きちんとらえれない世界だから、
元から歪んで見えた方が
少しは正解に近づくんじゃあないかな?


不条理と憤怒

  たこ吉

人が死んだんだって
いうと、
おまえは
薄ら笑いを
浮かべる

アザラシが撃たれた 
アザラシが死んだ

世界が
冷凍保存される日に
おまえは
見て見ぬふりを
決め込むつもりか?

山のように
積み重なった
屍を

燃えさかる
サイロに放り込んで、
恨みごと
焼き尽くす

アザラシが死んだ
痛みだけを
拾いあつめた


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この詩は、以下のツイートよりインスピレーションを得て書かれたものです。
「アザラシが撃たれた/痛みだけを/集めていると/されていた」
https://twitter.com/tech_elephants/status/1241611172329091073?s=21

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