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そら

選出作品 (投稿日時順 / 全2作)

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供花

  そら


     「嘘つきな紳士に捧ぐ」

   装わなければならない 理性の衣 道徳の靴
   感情のヴェールさえも まことしやかに
   ひとりの淑女を でっちあげる

   今宵 葡萄の熟れる夜
   わたくしという 装飾に
   羊皮の手袋で 触れてくる あなたの手




     「飾る花」

   清潔すぎるバラしか
   あなたは 愛せない

   ニセものでない証拠に
   甘やかな午後
   花びらは 匂い立ち
   あなたの 指先を 不意に 裂く




     「届かない声」

   わかっているのに なぜ想う
   求めても 得られない 哀しみは
   朝露を 浮かべる 野の花
   どこにも届かない 声を出して
   静かに 泣いていたい 朝




   


カラス なぜ なくの

  そら

 
   ちいさな わたしに
   鍵のかかる部屋が 与えられた

   東にある窓は 曇りガラスだった
   外灯に 仄かに 照らされて
   時には 影絵が動く 窓だった

   たまに 外あかりのない 夜
   闇夜の カラスが 鳴いた
   「カァ カァ カァ」

   父から さらったのは
   青い鳥では なかったか
   外側から 鍵のかかる部屋は
   大きな鳥籠では なかったか

   「カァ カァ カァ」

   遠い 昔 の カラスの 鳴きまね
   伯母の家は 壊されて
   スカイラークに なった

文学極道

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