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しんたに - 2014年分

選出作品 (投稿日時順 / 全1作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


猿の夢

  しんたに

水平線に乗ってあなたが踊っている。耳元で囁いて、聴いたことのない歌だ。波が歩調を
狂わせて、夕日のように沈み込みながら、その目に映るものは、遠く遠く離れていく。あ
なたの名前は***。からだを描くように指先で触れる。琴の音に耳を傾けるのは、長い
黒髪は風に揺れて濡れて、もしくは***でも、への侵入を許さずに、桜が咲くのは別れ
際。植物と道端に転がる石で、別になんだっていい。砂浜では子供達が遊んでいる。あな
たの着けているパールのネックレスは、思考と喫煙は分かち難く、床の上に積み上げられ
た事物が時刻を告げている。鐘が鳴ったら家に帰ると、あなたのおしゃべりに相槌を打つ。
恋人達は新しい音調を信じ、は融解を始め、ポップミュージックのように軽やかに、差異
の分だけ遅れた話を、花は使わなくなったグラスに入れて飾り、球体をつくることにした。
部屋は世界の果てまで地続きで、幾つもの点が光を出し合い、恋人の横顔や車内の空気を
あなたは、後方に陣取っているおば様方を思い出させる。海に出かけた。男と女のように
結びついている。枯れ木だと思ったら腕だった。肺を病んだ暴力を飛び越えて、あなたは空
を泳いでいる。居場所を告げて、雪が降ってくるのを待つ。元気にしているだろうか。鍬
で畑を耕すように、せめて想像の中だけはと、根を無くした煙が風に吹かれて揺れて、ま
だ続くのかと嘆き、目尻の下の小さな皺の一つになる。臆病なので家には帰らない。これ
じゃ出来の悪い模倣だな。なくなる前に歌っていたと、雪だるまに煙草を二本刺して腕をつ
くる。太陽は役目を終えて袖へと消えた。陽炎のように美しく、最後の季節だ。さよなら
か、甘い。

文学極道

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