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おかのひとみ - 2011年分

選出作品 (投稿日時順 / 全1作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


The girls running the corridor are in sum M and her pleasant friends, aren't they?

  おかのひとみ

書けない夜はひとり
真っ暗なハイウェイを飛ばす
修辞的に、
灯りを落とし
スピードを上げ
身を躍らせる語彙を刎ねる
それはバンパーを歪ませ
ボンネットを圧し潰し
フロントガラスを突き破って
助手席に血まみれで転がりこみ
息も絶え絶えに何かを呟く
私は迷子のもう片方を
拾い上げてきれいに揃え
それから
自動車修理工場と保険会社に電話をする
言うまでもなく
比喩として

まるで煮詰まったコーヒーのようだ
私はそこまで書いて筆を置き
コーヒーのおかわりを注文する
あの野郎
今日もまた熊用の罠に掛かってたよ
そう聞こえたからきっと熊ではないのだろう
唇を尖らせて眉尻を下げ
鉤型に曲げた指先を組んで見せながら
警官は笑った
見てみろよ
本当に馬鹿なやつ
片足を忘れて行きやがった!
これは私の記した言葉
あるいは
聖書のなかの一節
あるいは

耳鳴りだったのかもしれない
暗闇にさざなみは聞こえなかったので
ここが海ではないとわかった
だからあれも灯台ではない
サーチライト、
あるいはシグナル
鳥のように手をひろげて
まっすぐな白線のうえを歩く
とぎれとぎれの黄色い白線
さて
より効率的なのは右か左か?
すこし悩んでから真ん中を選んだ
汽笛、ではなくて
警笛
水平の高さで平衡をとれば
二分の一が
一になる

だから
良く覚えておきなさい
人は落ちていくとき
きまって手をひろげるのよ
何事も堅実がいちばん
それが口癖だった祖母は
ある朝
陽の差す窓辺へと身を躍らせた
十字のかたちに透けながら
翼をなくした天使みたいに
何もかもみんな毟り取られたわ
そう呟いて落ちていった
ボンネットめがけて真っ逆さまに
比喩なんかではなく
文字どおりに

文学極道

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