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あやめの花 - 2015年分

選出作品 (投稿日時順 / 全2作)

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夢の所有者

  あやめの花

まどろみをつたう繊細な低音
気の遠くなるような響きがふくすうの水辺のイメージをつくりだして
下降するように浮游する夢は裸足のまま水辺をめざす


自転車を漕いで商店街をわたる、そんな空耳をくりかえし聞いていた、聴覚がひろがり、あたまが空間と調和するゆうぐれ、調和しないあしもとのもっとも鈍い部分に指をさしいれて、めくりあげてみる、果実肉のかわをはぐように、原形などかえりみずめくる、(めくるめくかんらく、あらわになった裏面はめの高さよりも低いところで波うっている、規則的に、からだは規則的に破損するけれど、きれいな、水辺の草花がおりなす綿密な夢にあざむかれて、住宅地のまんまんなか、木造アパートメントの一室でひとり、瞳孔からあふれんばかりの光彩をこぼす


(ひたされている、半分に割れたからだが、みなもから垂直に伸びる茎を掴んでいた)
オブラートをかぶせかろうじて温もりを維持してる、衣服をまとうための体積は肌色の、なつかしい受話器を掴んで、読点をうつようにまるで脈絡のないことばをくちにする(楕円、手鏡、折り紙細工)水脈をまさぐるために、なんどもとなえて乾いた舌は、人影のない水辺のようだった、なみまに墜ちる鳥の影、風でさざめく草花が肌をすべり抵抗する、もう、それしか聞こえない《わたし》わたしはぬかるむ部屋に足跡をつけながら、囁くような、カーテンの衣擦れの、繰言を聞いていた


(水辺に、降りそぼる(風の、透きとおる(まどろみは、はだか


minus

  あやめの花

そうげんに建てた、しろい建造物の、風にはためく繊毛に、眩しさのあまり暗い、まなざしはからめとられ、規則ただしく、満ちる、けれど、喋らないでいる、全体図が、らせんをえがくように、いつしか、とうめいの層になって、うちがわから、消える、わたしは、模写していた、日記帳のさざめきから、よるの、台所のさざめきまで、網羅しておきたい、羽ばたくそぶりで、題名をあたえ、風をすく、草花には、柩がないから、ふしぎなことに、あいすることができない
あるいは、ポケットのなかの、貝がらとか、お家、のようなしろい化石から、猫をつれて、そうげんへ出かける、打ち捨てられた、日傘のしたの、蟻の葬列、それは、たちのぼる、あまい、梨の匂いにも似た、あまい、逃げ水の、その向こうにあるそうげんへ、つづいている

文学極道

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