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泥棒 - 2015年分

選出作品 (投稿日時順 / 全21作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


ギギギギギギギギギギギギギギギギギ

  泥棒

射で精した夜は
街のいたる所でギギギが
ゆれている。
そんなことを
名前も知らないギが
言っていた気がするよ。
あ、
正確には
ゆれている気がするって
言っていた気がするよ。
ギギ、
思いだした
フェラのチオを途中でやめた夜は
私のクリのトリスの下が
叙情的ギギギ、ギ、ギギ、
100回以上はギが繰り返されて
1000回くらい死んだ。
ギ、
この街のギギギギギギギギギは
風の吹かない夜も
どうやら
ゆれているらしい。
ギギギはギギがギーって
ギギギギギギギギギギギギだね、
ギギギだね、
笑い合うギギギギギとギ
でもね、
本当はね、
ギギギギギギギギギなんて
死ねばいい。
ギギィーってなって
何も残さず死ねばいい。
ギ、
優しくなりたい。
優しさってまるでギギギギギだね、
死ねばいいなんて
言いたくないよ
本当はね、
ギギギギギギ、今夜はギギギギギギをギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ、ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ
ギギギギギギギギギギギギ。ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギキキキ
ギギギギギギはキキキだと
ギギギギギだから法律違反です。
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ。ギギギギギギ「ギギギ」ギギギギギギギギギギギギだ、必ずギギギする。ギギ
夕方から夜にかけてたくさん死ぬ
ギギギギギとギギ。
ギギギ、ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギキキキギギギギギギギギギギギギギギギギギギキキキギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギの中にキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキギギギキギギギ。
水没した電卓で坪単価を計算しながらギギギギギギ。家を建てる。
ギギギ、キキキギギギギ。
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ、キギ。
(ギギギ+ギギ)×ギキ÷ギギ=ギギギギギギギ。
ギギギギギギ×ギギ=キキキギギ。
キキキに激突するキギギギギギギ。
ギとギギギギがキキキするから
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ。ギギギギギギギギギキキキギギギギギギキキキギギギキキキギギギ
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギッ、
キキキキキキキキキキキがいる。
ほら、
ギギギ心理学でいうところのギギギギギギキキキギタイプだね、
意味のあるギギギと
意味のないギギギがギギギギギギギギギしているからね、
わかりにくいギギギギギギギギギギギギギギギギギギだ、確かに。
ギギキキキギギギキキキキキキギギ
ギギギギギギギギギ、
ギギギ療法で
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギキキキ、
ギギギギキキキギギギキキキキキキキキキ。ほら、つまらないだろ、ギギギギギギギギギキキキキキキギギギキキキの羅列はつまらないだろ。
超つまらないだろ。
そして、読みにくいだろ。
しかも気持ち悪いし、でもね、
何かが崩壊する前には
必ずギギギギギギギギギギギギって
音がするんだよ。
普通だよ、普通、ギギ。
特別なんかじゃないよ、ギギギ。
気持ち悪いのが普通ギギギギギギ。
ギギギなんかよりギギギギギギギギギギギギギギギギギギなんかより
ギギギギギギギギギギギギギギギ
ギなんかより衝動がほしいでしょ?
あげないよ、ギギギ。
ギの半分は何かわかるかい?
ググってもギギってもわからない。
ギギの上に家が建ってギギギギギ。
どんぶり勘定で家が建ってギギギギギギギギギギギギッ。
徳川ギギギ、
知ってはいけないギギギギギギ、
カテーテルの先にキキキッ、
貫通する季節。
終わらない全身のキキキッ、
比と喩の間にギギギギギギギギ。
赤いギギギギやねん。
深読み禁止やねん。
関西のギギギギギギギギがほざく、
この世には
つまらないギギギも
読みにくいギギギギギギも
必要なギギギギギギギギギギなんだよ。ギギギが言っていたから
確かなこと。
ナンのセンスに亀裂、ギギギギっ、
同じギの中にも
やたら個性的なギがいるだろ?
わからない?
ギギ、
わからないよね、
ごめん。本当にギギギギギごめん。
今日はいないからね、
やたら個性的なギもギギギもギギギギギギもキキもいない。
あっちで頭から血を流しているのが二番目に個性的なギギギだけどさ、
わからないよね、
ギ、
ギギギ、
ギギギギギギ。
今日は面白いギギギもいない日だ。
昨日はいたんだけどね。
面白いギギギ。
ちなみにキレイなギギギギギは
存在しない。
これもギギギギギギギギが
言っていたこと。
ギギ、
ところでさ、
何人わかっているのかな、
正確には
フェラのチオの途中で
10000万個の
ギギギが
意味もなく
ぬれて
ゆれていたってこと。


空白の多い詩集

  泥棒

重い扉を開けると
錆びついた鉄筋や鎖が
死にそびれて転がっている
窓は割れ
小さな虫たちが
西日に反射しながら
音もなく消えてゆくから
完全犯罪を終えた猫が
静かに詩を書いています。
鉄に囲まれ
猫が空白の多い詩を書いています。

屋根の上で
確かに死んだ鳥たちに
猫が口笛を吹いています。
殺風景な午後
陽が暮れると
鉛のような雲の下
猫が冬の歌を日常にのせ
口笛を吹いています。

午前中の出来事は
比喩の少ない散文となり
空白の多い
午後の街を破壊します。
何もない、意味もない、
この街には
本当はもう午前も午後もないのに
懐中電灯を買い
焼けた未来を照らし
今日も夕暮れをきれいだと言う
言ってしまう
あなたがいます。
わずかに感じることができる
季節の中で
春の歌が
鉄と同じ冷たさで
夜風に乗る。
いつかみんな
それぞれに死ぬんだね。

あなたは夏に死ねばいい、
空白を上手く使って死ねばいい、
私は秋に死ぬでしょう、
機械より正確に必ず死ぬでしょう、

猫の詩集には空白が多い。
工場は半年前から
テナント募集中


姉のネーミングセンスについて、

  泥棒

朝、
ベランダで
台所で
居間で
階段で
玄関で
庭で
近所で
コンビニで
駅前で


昼、
職場で
ファミレスで
取引先で
トイレで
タクシーで
本屋で
スーパーで
包丁振り回してんのが
俺の姉
めっさ、かっこいい、
今日も
町のあらゆる場所で
ずっと包丁振り回してる

夜、
姉は部屋で静かに本を読んでいる
海のある町で
でも他には何もない町で
ひとりの少女が様々な困難の中で
人々との出会いを通じ
少しづつ成長し大人になるも
最後は鉄塔から飛び降りる話
少女と海と鉄塔
たしかそんなタイトルの
ありふれた
小説か詩集かノンフィクション
姉はいつもその作品だけを
何回も読んでいる

ところで、
俺の家には姉がわっしょいと名付けた犬がいる。とても賢いゴールデンレトリバーである。ちなみに散歩係は俺だ。わっしょいの毛なみはきれい。姉が毎日ブラッシングしているからとてもきれい。姉はわっしょいといる時だけ包丁を振り回さない。優しくわっしょいに話しかけてる。


日曜、
俺は早起きした。今日は天気もいいし、わっしょいを連れて車で2時間。海へとたどり着いた。砂浜でわっしょいと散歩しながら姉のことをすこし想う。今頃、部屋でノートに意味不明な詩を書いている。きっと書いている。そして、たぶん、ノーブラで書いている。何年か前にとある詩のサイトへ姉は作品を投稿していた。
俺はそれを知っていてこっそり覗いていたのだが姉の作品はボロカスに叩かれていた。

そして、
(意味わかんねぇよ
というレスに対して
私もわかんねぇよ、と切り返し
(ただのオナニー作品でつまらん
というレスに対しては
オナニーは毎日してます、
主に妄想でしているので
エロ動画とかは見ませんね、と
論点のずれた無駄に丁寧な返信をし
挙げ句の果てには
(とても面白かったです
という貴重なレスに対して
だから何ですか?と
謎の逆ギレして
最終的に
出入り禁止になっていた。
そんな姉だが
包丁振り回してる姿は
めっさ、かっこいい、
そして
俺の姉はネーミングセンスがある
褒めても逆ギレされるから
俺は何も言わないが
絶対にネーミングセンスだけはある
この前も
姉が留守の間に部屋に入り
最近書いている詩を読んだが
内容はやはり意味不明だったけど
タイトルだけは良かった。
森森の森というタイトルだった。
すこし引用してみる

冬の森で
置き去りにした耳を
かいじゅうたちにあげた
春の屋根裏で
言葉をこんがり焼いたのに
森はまだ寒い、
(俺の姉「森森の森」)

どうだろう、
まず何より意味がわからない
現代詩みたいなものに犯されている
つーか、
意味がない気がする
もちろん意味がなくてもいい派の人
そんな人もいるだろう
とにかくつまんないのだ
雰囲気だけなのだ
そりゃ、叩かれるだろうよ、
でも、やはり、
森森の森という
このネーミングセンスだけはいい
無駄にいい
意味あり気で意味ないところが
とにかくいい
いや、姉の中では意味あるんだろうけど。

日曜の海、
まだ人はあまりいない
わっしょいは太い枝をくわえて
嬉しそうに走り回る
俺も一緒にひたすら走り回る
しばらくして
近くのカフェで休憩していると
冬の砂浜にも人が増えて来た
ゆっくり時間をかけて
ランチを食べている俺の膝に
わっしょいが鼻をくっつけてくる
どうやらまだ遊び足りないらしい
もうちょっと待ってくれよ
そう声をかけると
わっしょいは足もとで
昼寝をはじめた
コーヒーを飲み終え
わっしょいの寝顔を撮り
姉に写メで送ってから
わっしょいと
もう一度砂浜へ行き遊んだ
疲れを知らないわっしょいである
途中でおばちゃんに
(かわいいわんちゃんですね
と言われ
わっしょいは照れながらも
嬉しそうに笑った
陽も暮れはじめた頃
猛スピードで
海岸線を救急車が走っていく
その爆音を
映画みたいに切り取ったら
1時間くらい耳鳴りが続いた



わっしょい、おいで!



大好物のササミジャーキーを
おやつに3本あげて
わっしょいの背中を撫でる
姉に負けないくらい丁寧に撫でる
夕暮れ
それよりきれいな
わっしょいの毛なみ
落ちていたペットボトルを
上手にくわえ
今度はこれで遊ぼうよって顔で
わっしょいが俺を見る
冷たい風が吹く
わっしょい、そろそろ帰ろうか

渋滞の海岸線、
車の窓をすこし開ける
波の音は聞こえない
となりのでかい
俺の車の10倍はでかい
ダンプカーのエンジン音だけが響く
わっしょいが助手席にいるから
俺は煙草を吸えないので
ポケットにあった
いつのかわからないガムを噛んで
なかなか進まない
渋滞の列をぼんやり見ていた
わっしょいは
何か言いたそうに
遠くの鉄塔をずっと眺めていた、


森が森に森は森と森の森を森で森

  泥棒

森森森森森森森森森森森森森森森森

崎崎崎崎崎崎崎崎崎崎崎崎崎崎崎崎

どーだろうか
森崎くんが主人公だから
こんな感じで
森と崎を並べてみたよ
もちろん意味はないんだけれど
つかみ。
これが大事だって
あの森口くんが言っていたから
できるだけ多くの森と崎をね、
もーね、
いろんな街から徹夜で探して
並べてみたよ
うん。
しかしあれだね、
森と崎って
もうほとんどないんだね、
知らなかったよ
これで全部だからね、
森と崎。
つーか
きれいに並べるってのは
それだけで気持ちいいもんだね、
せっかく読んでもらうんだからさ
きれいな方がいいよね、
あ。
ところで
僕の友達の森岡ちゃんは
ちゃん森岡って呼ばれてる
みんなに
そー呼ばれてる
僕が最初に
じょーだんでそー呼んだの
本人も
みんなも気に入ってるみたいよ
うん。
そんでね、
森野くんと森山さんは
詩とか興味ないんだってさ
森重くんは
すこし興味あるみたいだけど
森崎くんがね、
詩を読んだこともないし
何も知らないのに
どーゆーわけか
横顔が妙に文学的なんだよって
だから森崎くんを
主人公にした方がいいよって
森口くんに言われた。
やっぱ森口くん、すげーなっ
何でも知ってるもん
現代詩とかさ
バッキバキに読んじゃうもんね、
比喩なんてね、
森口くんの前では死ぬよ
いや、ほんと、まじで死ぬって
あ。
そー言えば
ここだけのはなし
僕はみんなにあだ名をつけてる
もちろん意味はないんだけれど
森崎くんは森
森口くんは森
森岡ちゃんは、ちゃん森岡
森野くんは森
森山さんは森
森重くんは森
たまにさ
ややこしくなるけど
ちゃん森岡が
いー感じにアクセントになって
何の問題もない
あ。
誰にも言わないって約束できる?
できるなら教えてあげる
実はさ
この前ね、
森が森と森で森を森に森してさ
まじかよって思ったら
ちゃん森岡が
森と森を呼んで
森の森に森で森を森が森だったのよ
あれはシャレになんないよ
でもさ
一番ビビったのは
もう次の日にはさ
森が知ってたからね、
いや、だからさ
森で森が森したじゃん?
あの森は森のことだよ、
わかるよね?
この詩がどんだけ意味ないかって
わかるよね?
いやいや、違う違う、
そうじゃ、そうじゃないっての
あれ?
何かこんな感じの歌あったよね?
だぁかぁらぁー
森は途中で帰ったから
違うんだよっ
いやっ
森なんて最初からいねーし
え?
森でもねーし
あくまで主人公は森ね、
そー、森崎くんのことね、
あ。
もひとつ意味のない話していい?
森崎くんが
俺が俺がってノリで
森が森がって騒いでさ
公園でさ
ゾウのすべり台のある公園でさ
碇シンジのモノマネしたじゃん?
逃げちゃダメだ逃げちゃダメだって
あれ、まったく似てなくて
みんな笑ってたのに
あの時さ
森だけが森を見ていた。
森と森と森と森と森と森の間から
小さな ぁ が飛び出してきて
そのすぐ後に
大きな あ も飛び出してきて

ぁ 、あ 、ぁ 、あ 、ぁ 、あ 、ぁ 、

ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

ああああああああああああああああ

ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

ああああああああああああああああ

どっちもきれいだなって
森が呟いて
ちゃん森岡の肩に鳥が止まって
もちろん意味はないんだけれど
意図はある森が燃えた
発狂する季節
森が発狂する季節の到来
森に森を伝える前に燃えてしまった
あ。
逃げた
主人公が逃げた
森が言う
この森は他の森とは違うって
そー言って
表現から逃げた
表現って
死んでも使いたくない言葉だね、
でも使う
二酸化炭素や表現が
まるで
伝わらない
森の終わりに
森が森に吠える
意味がなくてもいい派の森に吠える
意図がないとダメ派の森に怯える
そして
枝は折れる
森が森を駆け抜ける
ゾウの鼻が伸びて
森の意図が縮む
森に意味は最初からなかった
だから
ヒントもなかった
本当に、まるでなかった
あ。
森口くんの口が口と口に口を挟んで
口口口口口口口口
口口口口口口口、口口口
口口口してる
あ。
こんな感じの詩を
最近読んだ気がする
森と森で
読んだ気がする
あ。
森が森でうなだれている
口の中は空っぽだね、
森が森へ帰った
森も帰った
森も森も森も森も森も森へ帰った
ぁ、
みんな帰ったのかな
それとも
みんな死んだのかな
あれ以来
森を見ていないし
枝の折れる音もしないし
誰も最後まで読んでいないし
ぁ、

あ。


引用ロードSHOW

  泥棒

私は
(泥棒/引用ロードSHOW)

私から
(泥棒/引用ロードSHOW)

引用する
(泥棒/引用ロードSHOW)

あなたからも
(泥棒/引用ロードSHOW)

引用する
(泥棒/引用ロードSHOW)

雑誌からも
(泥棒/引用ロードSHOW)

テレビからも
(泥棒/引用ロードSHOW)

映画からも
(泥棒/引用ロードSHOW)

引用する
(泥棒/引用ロードSHOW)

そして
(泥棒/引用ロードSHOW)

傘はないけれど
(泥棒/引用ロードSHOW)

ドアを開け
(泥棒/引用ロードSHOW)

町へ出る
(泥棒/引用ロードSHOW)

この部屋は
(泥棒/引用ロードSHOW)

グレーゾーンだから
(泥棒/引用ロードSHOW)

町へ出る
(泥棒/引用ロードSHOW)

この部屋は
(泥棒/引用ロードSHOW)

引用の雨が降ると
(泥棒/引用ロードSHOW)

濡れるしかないから
(泥棒/引用ロードSHOW)

町へ出る
(泥棒/引用ロードSHOW)

風景とか
(泥棒/引用ロードSHOW)

感覚とか
(泥棒/引用ロードSHOW)

引用できないものを
(泥棒/引用ロードSHOW)

丁寧に描写しろと
(泥棒/引用ロードSHOW)

あなたは言う
(泥棒/引用ロードSHOW)

今日もあなたは正しい
(泥棒/引用ロードSHOW)

でも
(泥棒/引用ロードSHOW)

逆に
(泥棒/引用ロードSHOW)

傘が売っていない町で
(泥棒/引用ロードSHOW)

逆に
(泥棒/引用ロードSHOW)

グレーゾーンを
(泥棒/引用ロードSHOW)

逆に
(泥棒/引用ロードSHOW)

丁寧に描写するから
(泥棒/引用ロードSHOW)

逆に
(泥棒/引用ロードSHOW)

あなたに
(泥棒/引用ロードSHOW)

逆に
(泥棒/引用ロードSHOW)

読んでもらおうと
(泥棒/引用ロードSHOW)

逆に
(泥棒/引用ロードSHOW)

引用する
(泥棒/引用ロードSHOW)

んで、
(中村一義/犬と猫)

突然なんですけどね
(おぎやはぎ/結婚詐欺師)

本当にこのやり方でいいのか
(浦沢直樹/20世紀少年)

胸の中でつぶやいた
(川上弘美/どこから行っても遠い町)

ごめんなさい
(新井素子/おしまいの日)

たぶん
(スチャダラパー/ヒマの過ごし方)

私はもうだめです
(手塚治虫/ファウスト)

いただく物はいただいて
(内田百〓/八十八夜は曇り)

そろそろ寝るか
(伊藤潤二/よん&むー)

なんとなく
( / )

二秒間宙を見つめていたが
(町田康/パンク侍、斬られて候)

あっという間に
(吉行理恵/湯ぶねに落ちた猫)

私は激突して壊れるだろう
(舞城王太郎/みんな元気)

そして
(絲山秋子/逃亡くそたわけ)

すぐにバターのように溶ける
(中上健次/賛歌)

いや、そういうんじゃありません。
(モリエール/人間ぎらい)

その逆の場合もありますので
(猫田道子/うわさのベーコン)

少し怖かったけど
(前田司郎/夏の水の半魚人)

私は本当に何もしなかった。
(阿部和重/グランド・フィナーレ)

そんな馬鹿な話があるか
(高橋源一郎/恋する原発)

ある
(鳥山明/ドラゴンボール)

やりたきゃやればいいよ
(浅野いにお/うみべの女の子)

だったら
(立川談志/M-1グランプリ2002)

はっきり際だたせて
(ジャン・ジュネ/泥棒日記)

言葉なんか
(奥田民生/何と言う)

殺してやる
(庵野秀明/エヴァンゲリオン劇場版)

すぐに
(七尾旅人/天使が降りたつ前に)

殺してやる
(庵野秀明/エヴァンゲリオン劇場版)

神経を集中させて丁寧に
(shing02/焦燥)

殺してやる
(庵野秀明/エヴァンゲリオン劇場版)

とても長い伝統を
(中沢新一/三万年の死の教え)

許可が下りたら
(白輪剛史/動物の値段)

殺してやる
(庵野秀明/エヴァンゲリオン劇場版)

必ず
(諌山創/進撃の巨人)

殺してやる
(庵野秀明/エヴァンゲリオン劇場版)

上から頭ごなしに
(大竹伸朗/テレピン月日)

殺してやる
(庵野秀明/エヴァンゲリオン劇場版)

合法的に
(BOSE/明日に向かって捨てろ!!)

殺してやる
(庵野秀明/エヴァンゲリオン劇場版)

中学二年の本棚を
(泥棒/引用ロードショー)

昇華することなく
(泥棒/引用ロードショー)

殺してやる
(庵野秀明/エヴァンゲリオン劇場版)

サブカルが
(岡村靖幸/あの娘と、遅刻と、勉強と)

シンクロしまくった
(大根仁/中春スケッチブック)

昼過ぎから
(野坂昭如/ぼくの死の準備)

強弱をつけて
(二ノ宮知子/のだめカンタービレ#5)

殺してやる
(庵野秀明/エヴァンゲリオン劇場版)

ドーナツショップでフレンチクルーラーを食べながら
(宮崎誉子/セーフサイダー)

殺してやる
(庵野秀明/エヴァンゲリオン劇場版)

くしゃくしゃの紙くずのように
(宮沢賢治/注文の多い料理店)

殺してやる
(庵野秀明/エヴァンゲリオン劇場版)

すべての人間の頭上を
(立川昭二/死の風景)

水と光を
(唯野未歩子/走る家)

あの空白を
(アンドレ・デュ・ブーシェ/氷河)

数冊の本を
(本間洋平/家族ゲーム)

数々の思い出を
(ルネ・シャール/眠りの神の書)

仕事しながら片手間に
(山本直樹/テレビを消しなさい)

普通の感覚で
(森達也/スプーン)

殺してやる
(庵野秀明/エヴァンゲリオン劇場版)

時には
(ユニコーン/時には服のない子のように)

スローモーションで
(水森サトリ/でかい月だな)

殺してやる
(庵野秀明/エヴァンゲリオン劇場版)

比喩的な言い回しであるという前提を
(斎藤環/ひきこもり文化論)

殺してやる
(庵野秀明/エヴァンゲリオン劇場版)

終った前衛と呼ぶしかない無惨さを
(金井美恵子/スクラップギャラリー)

編集が終ったところで
(桑野茂/ドキュメンタリーの世界)

皆殺しにしてやる
(高橋ヨシキ/悪魔が憐れむ歌)

こんなひどいものがあっていいのか
(中原昌也/死んでも何も残さない)

詩的でない言葉ではとても表現できない
(ジョルジュ・バタイユ/文学と悪)

言葉をなくした
(後藤まりこ/sound of me)

ほんでね
(チュートリアル/鳥将軍)

あなたを殺して私も死ぬ
(東京03/あるがままの君でいないで)

逆に
(泥棒/引用ロードSHOW)

皆、優しく、きれいに
(太宰治/女生徒)

逆に
(泥棒/引用ロードSHOW)

笑って答えた
(谷崎潤一郎/刺青)


来週の女子会メンバーリスト

  泥棒

昭和

平成5年生まれの最年少メンバー。しかしかなり年上の兄がいるせいか昭和ネタの話しが多い。なので、ついたあだ名が昭和。お喋りでムードメーカーであるが披露するギャグは昭和のギャグ。故にオヤジっぽい。好きな芸人は兄の影響により加藤茶である。最近のお笑いにはまるで興味がなく、むしろ嫌っている。漫画やイラストが趣味であるため休日はほとんど家にいる。黙っていれば可愛いのでメンバー中、1番モテる。

爆死

私のあだ名です。昭和ちゃんの2コ上です。映画やドラマや漫画の爆破シーンが好きであり、口癖が(もう死んでやる!であるため二つを合わせて爆死になりました。結構気に入ってます。会社のみんなには内緒で詩を書いたりしています。ちなみに詩を書いている人たちからは(あんたの書いてるのは詩じゃないよ、とたまに言われます。と言うか最近はもうほとんど毎回言われてます。プライベートでも仲の良い昭和ちゃんからはバクちゃんと呼ばれてます。ちなみにBカップです。昭和ちゃんは、たぶんDはあります。

捻挫

やたらスピリチュアルな世界の話しをするため最初のあだ名は宇宙だったのですが、酔うと必ず学生時代にキャプテンまで務めていたバレーボール部の試合でウォーミングアップをしている時に捻挫をして大事な試合に出れなかった話しばかりを何回もするので捻挫というあだ名に変わりました。177cmある高身長がコンプレックスのようです。ちなみに声もでかい。私の勤めている会社の上司。みんな捻挫姉さんと呼んでます。普段は優しくて頼れる捻挫姉さんですが年齢の話をすると急に不機嫌になりますので、そこは要注意です。

魔法

私と同期入社した、ほんわか系です。メンバーの中で唯一、いわゆる女の子っぽいです。しかし見た目とは裏腹に実はかなりの酒豪なので酒女って呼んでましたが本人が絶対に嫌だと言うので、天然なところもあるし世界と書いてワールドはどうかとすすめましたが、それも本人が気に入らないため、すったもんだの結果あだ名は魔法になりました。すこし、ぽっちゃりしています。なかなかのアニメ声です。

以上、
この四名で来週女子会やります。
そして来月は
このメンバーで合コンをしたいです。
男子四名募集中です。
メンバーリストを送って下さい。

ちなみに補欠メンバーで元ヤンキーの新築という子もいます。お父さんが大工をやっている子なので新築と呼んでます。美人です。呼んだら来ると思いますが新築と魔法があまり仲良くないので新築を呼ぶなら魔法は呼びません。こんな感じですがよろしくお願いします。メンバー全員、彼氏募集中ですので。^_^


詩集を燃やしに

  泥棒

ガードレールに
夜露死苦ってスプレーしてから
詩集を燃やしに行く
夜の公園へ
夜のザリガニ公園へ
不良が
詩集を燃やしに行く

ザリガニ公園は
中央にある大きな池のまわりに
ザリガニがいるから
ザリガニ公園なのではない
誰も
この公園で
ザリガニを見た者はいない
いないのだが
夕暮れ時になると
ブランコや鉄棒やシーソー
池のまわりのジョギングコース
入口にある梅の花やベンチ
学校と同じ作りの水飲み場
隣りのテニスコートなど
公園のどこにいても
死んだザリガニのような匂いが
すこしするから
みんな
ザリガニ公園とよんでいる

夜のザリガニ公園は
とても静か
人はもちろん
梅の花に鳥もいない
夜風が
死んだザリガニのような匂いを
ゆっくりと消して
春を連れてくる
不良はいつも
この季節になると
詩集を燃やす
大人になる前に
必ず
すべて燃やす

右肩に根性
左肩に青春って刺青をして
ザリガニ公園の脇道を抜けて
向かいにある
ケーキ屋のシャッターに
喧嘩上等ってスプレーして
自分の詩集をすべて燃やしきって
大人になる

詩人は右腕に比喩って刺青をして
左手首には
誰も読めやしない
雰囲気だけの
桜の花のような刺青をして
大人にはまだならない
なれない
詩は常に詩の対極にあるのに
夕暮れ時に捕まえた
巨大な比喩を
丁寧に描写してしまう
それは
とても危険なこと
そして
泳ぎ方を知らない不良は
比喩の海に溺れる
さらりと
泳ぎきった詩人は
ザリガニ公園の茂みに捨てられた
鉄パイプで
ずぶ濡れの不良にぶん殴られる
流れる血が
まるで詩のように
西日に反射してしまうから
今度は
血の海に溺れる
それは
絶対に誰も泳げない
ザリガニ公園は
陽が沈み
深夜になると
濃い霧と
小さな竜巻が
映画のように演出され
当たり前のように
血の匂いがする

題名が燃える

名前が燃える

十代が燃える

空白が燃える

改行が燃える

数字が燃える

比喩が燃える

技術が燃える

素朴が燃える

感性が燃える

深夜のザリガニ公園
死んだザリガニのような匂いは
しない
ベンチに座り
燃えきった詩集を眺める不良
帰り道
ガードレールに
青春を世威瞬ってスプレーして
歌うように
急いで帰る
詩人はそれを
白いペンキで消して
巨大な空白をつくり
遅れて
やっと大人になる

ザリガニ公園の出口には
散りきった桜の木が
はやくも
六月の雨に打たれ
誰よりも
主役のように
突っ立っている


中原中也になりたくて

  泥棒

私の彼は
中原中也になりたくて
でも
なれなくて
夕暮れに
カップ焼きそば食べている
内定をもらえた
中の上の中の会社から
電話があって
内定取り消しになって
泣きながら
カップ焼きそば大盛り食べている
私が
コンビニへ行って
期間限定の
プレミアム瓶ビールを買ってきて
(これのんで元気だしなよ
って、
そう言ったら
ひと口だけのんで
ビールを丸いテーブルに
コンっと置いて
ズボンとパンツを
さっと脱いで
彼は
すこしだけ笑った

狭いお風呂に
一緒に入りながら
小さな鏡に映る
彼の
大きくなっている
おちんちん
そっと触りながら
(こんな日も勃起するんだね
って、
私は
良かれと思って
そう言ってみたのに
彼は
暗い顔をして
お風呂を出て行き
無言で服を
さっと着て
そのまま二度と帰って来なかった
言葉は
私の言葉は
こうやって
人を傷つけてしまう
あれから
もうすぐ一年が経ちます

私の彼は
中原中也になりたくて
でも
なれなくて
今は
串原串也って芸名で
全国をまわっています
小さなライブハウスで
朗読コントをしたり
詩人あるあるネタとかをやっています
そして
詩を書いている人達からは
失笑されています

私の彼は言っていました
もっと
詩をよんでもらいたいって
漫画や小説のように
普通によんでもらいたいって
つき会っていた頃
本当に
よく言っていました
その頃の私には
詩は
すごく
ものすごく
超ものすごく
特別なものだったから
普通によんでもらいたいって意味が
その感覚が
あまりわからなかったけれど
今は
すこしわかるのです
あれは
いつの日だったか
風が
急に強い風が
音を立て
何よりも先に
街を
丁寧に描写しながら
吹き抜けて
もう
誰も何も書くことが
できないねって
二人で
ただ
焼きつけるしかないねって
思いながら
近所の小川まで歩いた
春の日

トタンがセンベイ食べて
春の日の夕暮は穏かです
アンダースローされた灰が蒼ざめて
春の日の夕暮は静かです

(中原中也/春の日の夕暮)


今でも
月に一回くらいメールがきますが
ごくたまに
そのメールが
偶然かもしれないけれど
抒情的な
やけに抒情的な
一行詩になっている時があります
そんな時
私は
あの日に
彼が食べていたのと同じ
カップ焼きそば大盛りを
スーパーで買ってきて
ひとりで食べます
あの日
勃起していた彼に
何も言わず
お風呂で
セックスしていたら
いつものように
セックスしていたら
今年の春も
二人でお花見したり
電車に乗って
ツツジを見に行ったり
していたのかな

夕暮れ
ブックオフで
100円で売っている
知らない人の詩集を
パラパラめくり
なんとなく
よんでしまう
春の日の
夕暮れ

(串原串也/詩人あるある)


今だって
私にとって
彼は
串原串也などではなく
中原中也なのです
顔は
西郷隆盛みたいだったけれど
まったく
中性的ではなかったけれど
それでも
中原中也なのです
デートの時だって
いつも
ユニクロの服だったけれど
それでも
絶対
中原中也だったのです

春の日の夕暮れは
いつだって
急に強い風が吹いたり
人の気配がして
切ない
(こんな日もシャンプーするんだね
って、
私は私につぶやく
こんな日は
お風呂場の小さな鏡が
まるで深い意味があるかのように
抒情的に
やけに抒情的に
くもってゆきます
私は何になりたいのかな


二島由紀夫のポテンシャル

  泥棒

四島由紀夫と五島由紀夫が殴り合う午後。
陽射しだけが美しい影をつくる午後。
草原で殴り合う2人の、
その影を見る限りはバレエのよう。
七島由紀夫は自宅の庭で筋トレをするのが日課。
丁寧に刈られた芝生の上に寝転んで陽を浴びる猫。
ホースで水をまき
その猫に虹を見せてやるのも日課。
三島だけが
どこにもいない。
六島由紀夫は
ネットで取り寄せた数種類の茶葉を独自にブレンド。
夕暮れ。その香り。
こだわりの紅茶で
仮面をつけた九島由紀夫と
ティータイムを楽しみながら
三島の話しに花を咲かせる。
少年少女が
マクドナルドを爆破する物語を書いてみようと思うんだ
いつかね。
そう言い残して
九島由紀夫は、思わせぶりに、
ゆっくり、消えた。
痛みを感じなさい、
肉体を傷つけ合うことでしか分かち合えない。
亡霊たち。
肉体のない三島の亡霊たち。
腹を、かっさばく、痛み。
早朝の新宿駅。
八島由紀夫が白線の内側で
文庫本を読みながら一島由紀夫を待っている頃
二島由紀夫が憂国で
鮮やかなロングシュートを決める。
そのポテンシャルの高さ。
二島が三島になる日も近い。
初夏の風。
枝の先端に着地する鳥。
その鳥のまばたき。
待ち合わせの予定を忘れて金閣寺。
存在しない左手首を、
ピッて、切る、空気の読めない、
一島由紀夫。
それらを
十島由紀夫がリリカルに切り取ってゆく現代。
肉体はないのに見える影。
靖国通り。
その印象だけをコミカルに描写する
技巧派の七島由紀夫。
誰の声にも耳をかさない。
そのメンタルの強さ。
描写の弱さ。
春の雪が全身を貫通する。
その見えない肉体美。


弟の闇について、

  泥棒

地獄/

弟は美術の専門学校へ行きながら地獄でアルバイトをしている。
週2日、
地獄でハチマキを巻いて生ビールや梅サワーを
何百杯も何千杯もつくり
夕方から夜中まで働いている。
弟は地獄でドリンカーと呼ばれている。
ひたすらドリンクをつくる係の事だ。
そして、ほぼ毎回のようにドリンカーズハイになっているらしい。
駅前のカラオケ屋の隣りにある地獄は365日いつも混んでいる。
夕方の開店と同時に
たくさんの人々が地獄へ押し寄せて来る。
地獄の見た目はどこにでもある普通の居酒屋だが
店員もお客さんもみんなこの店を地獄と呼ぶ。
店名が地獄だから。

店長/

地獄の店員はみんな
店長のことをブラピ店長と呼んでいる。
それは店長がブラッドピットに似ているからではない。
店長の好きな俳優がブラッドピットなわけでもない。
店長が
(俺をブラピと呼べ
そう言っているから、それだけの理由で
みんなとりあえずブラピ店長と呼んでいる。
店長は角刈りでルックスは地味なのだが
自らハードルを上げる、そのズレたストイックな姿勢は
店員やお客さんから時に失笑されつつも
レモンサワー10円の日や
唐揚げ100円で食べ放題の日
ポロシャツの襟を立てて御来店の方、全品半額の日
ピアノが弾ける方、アルコール類すべて15円の日
さらには
詩を書いている方、焼き鳥2本サービスの日
きれいな比喩を使いこなせる方、グラスワイン一杯無料の日
描写が丁寧な方、次回500円引きクーポン券プレゼントの日
作品のタイトルにセンスがない方、お通し千円の日
改行が下手な方、罰金五万円の日
顔がオダギリジョーに似ている方、お断りの日
死にたいと考えている方、全額無料の日
すべてにおいて自意識過剰な方、コーンスープおかわり自由の日
テキーラサンライズって言いたいだけの方、出入り禁止の日
北原白秋が男か女か知らない方、全品459(地獄)円の日
日本史とエヴァンゲリオンが好きな方、店長おすすめサラダ半額の日
今だにビートルズが最高のバンドだと思われている方、半殺しの日
ピカソを天才だと信じている方、国外追放の日
酔うと服を脱いで笑いを取ろうとする方、春巻一本サービスの日
落語や歌舞伎に詳しい方、私語禁止の日
童貞と処女の方、地獄オリジナルストラップをプレゼントの日
詩とは絶対にこうであると定義している方、論破の日
詩を書いたことがない方、日本酒無料の日など
その意表を突くアイデアで実際に店を繁盛店にしているため
細かい事に関して弟はもちろん、誰も何も言えない。

油絵/

弟は油絵を描いている。
様々なアイデアや方法で
どうやら自分の心の奥にある
闇らしきものを表現しているらしいが
基本的なデッサン力がないせいなのか
そもそもセンスの問題なのかわからないが
ただわけのわからない抽象画としか思えず
正直、退屈しか感じない。
そして何より、とにかく雑で純粋に下手すぎて
とても芸術とは思えない。
弟が、もしも、あえて、
いわゆる芸術とは真逆の方向を目指しているとしても
同じ印象にしか感じられない。
しかし、そんな弟が夕飯時に
頼んでもいないのに三ヶ月に一度くらいのペースで
不意に披露する古畑任三郎のモノマネはむちゃくちゃ上手い。
そして誰の古畑任三郎より面白い。
それを見た日は確実に、ご飯がいつもより美味しい。
その無駄にクオリティーの高い古畑任三郎を見る度に
弟が、どのような闇を抱えているのかわからないが
たとえ同じ家に生まれ同じ環境で育ち
同じような物事を経験してきても
それは本当にわからないが
こいつ、これを油絵で表現したらいいのにって
いつか弟の抱えている闇が
ユーモアや、日常にある普通のリズムや素朴さ
そのあるのかないのかわからない
ブラピ店長のようなセンスで
油絵の中で昇華できたらいいなって
その時は地獄へ冷やかしに行ってやろうかなって
来月に合コンがあるから
それを地獄でやるのもいいかなって
みんなに弟の古畑任三郎を見せてあげたいなって
そんなことを思いながら
私はいつもより美味しいご飯を
キャベツの多い野菜炒めと肉じゃがをおかずに食べているのです。


落選なう

  泥棒

暗い夕暮れ
選ばれなかった鳥たちが
羽根をたたみ
闇に落ちて
ひっそりと死んでゆく
なう。
真夜中
やわらかい雨にうたれ
七月の街は
細部まで光り輝かき
朝には
選ばれなかった鳥たちの羽根も
きれい
なう。

次の月の
次に吠える
明るい夕暮れ
公園で
子供たちが水鉄砲で殺し合う
誰も死なない物語
なう。
若葉の香らない夏に
もうすぐ
闇が降り注ぐ
(お化けなんかいないよ
それは
死んでいる鳥たちの羽根
夏の終わりの
花火大会
なう。
夜空を飛ぶ
選ばれた鳥たち
みんな
八月に生まれた花

白い白い花が咲いたよ
(からたちの花/北原白秋)

白い秋は
まだイメージできない
赤い秋なら
もう目の前にある
比喩が
比喩とかいう
気取った表現がまだあるならば
それはもう
後はもう
(街の夜空で爆破されるだけだよ
比喩なう。
芸術なう。
引用なう。
批評なう。
爆破して、
落選なう。

2010年に生まれ流行り
2015年に死んで終わる
なう現代詩なう

ひとり
もう春を待ちながら
疑う夜
自分の羽根を疑え
選ばれた鳥も疑え
散らばって
もっと砕け散ってしまえ
鳥よ鳥たちよ
個性なんてくだらない
自分らしさなんて消えればいい
新しくて
美しく咲く九月の花のために
みんな
死んでしまえばいい、


文学的やあらへんで、

  泥棒


嫁の騎乗位。


嫁の騎乗位より美しい夕焼けなど
俺は見たことがない。
だから俺の詩には丁寧な描写など
一切必要ない。
そう、
俺の詩は深い闇で
太陽は敵でしかないから
俺の詩は
誰も励まさないし
何にも寄り添わない。
そう、
俺の詩は泣き言ではない。
陽が昇り沈むまで
そう、
夕焼けまでの九時間
そこで
俺は眠る
やっと眠る
笑いながら眠る。
そして
夢の中で
嫁の背中をなぞる
どんな比喩より繊細に
なぞりながら眠る。


旦那の現代詩。


旦那の現代詩より
意味のわからないものはない。
だから私は、
詩について考えたり定義したことなど
一度もないし
詩に励まされるつもりも
一切ない。
旦那は今夜も眠らずに
私の裸でオナニーをしている。
だから私は、
言葉の闇に包まれて
ひとりでセックスをしている。
私は美しい夕焼けを
二人で見たいだけなのに
今夜もひとりでセックスをしている。
だから私は、
現代と名の付くものを言い当てる。
当てたくないのに
すべて言い当ててしまえる。
近い将来
旦那の指が
終わりを告げる。


ポリフェノール。


せやろ
なんも文学的やあらへんで、
こりぁよ
芸術ちゃいまんねん。
離婚でんねん。
いわゆるひとつの離婚でんねんて
ワインちゅうより
レンガみたいな色しとるやろ
町のすべてがよ
ポリフェノールがありそうな夕陽を浴びて
2人はよ
線路沿いを歩いとったわけや
2週間くらい前かな
なんも喋らんと
ただ歩とんねん。
後ろから快速電車きよったら
2人はよ
赤と白に別れるで、
間違いないで、
離婚や
そんな感じしたんや
風に引き裂かれとるんちゃうかな、今頃。
ほんでな
でもな
あれやで、
もしかしたらな
最後にセックスしたかもわからんで、
ありゃあやしいな
あの2人は
やけに文学的なセックスしたかもわからんで、
なんせ最後やからな
しっかし仲良い夫婦やったわ
よう散歩しとったわ
この辺、なんもないけどな
手ぇつないで散歩しとったわ
さびしなるなぁ
ん。
前に一度な
奥さん、ドーナツつくりはってな
わしの家に持って来てくれたんや
ほんでな
旦那さんが詩集を出した言うてな
わし、それ、もろたんや
ちゃんと買うで言うたんやけどな
ほんでな
感想聞かせてくれ言うて
でもわしな、詩なんて読んだことないし
困ってもうたんやけど
読んでみたんよ。
ほな、めっさおもろいやんけって
わしの思てたんとちゃうのよ
やれ、孤独やとか
さびしいだの苦しいだの
死ぬとか
暗いもんやと思てたんや
もしくは、あれや、
がんばれ、みたいな
平等がなんたらかんたら
人間だもん、やればできるよ、みたいな、
詩って、そういんもんやと勝手に思ってたんやなぁ。
ちょっとな
わしには
なんやようわからんかったとこもあるけどな
めっさええやんて思たんや。
比喩とかな
バシッと決まってると、めっさかっこええやん。
現代詩って言うんか
ん。
それな、たまにな、
すらすら読める時があんねんて
ほんまやで、
でな
わしもな
最近な、詩を書いとんねん。
ん。
あんた東京から来たんか?
へー、弟さんかい
確かにちょっと似とるわな、いや、顔やなくて
喋り方とか。
連絡つかんのかいな?
お姉さん見つかるといいな
はよぉ見つかるといいな
ん。
ところでわしの喋り方、ちっと変やろ?
わしな、生まれは埼玉やねん。
そうや、だ埼玉やねん。
でもな、池袋とか、めっさ近いねん。
ま、どうでもええか
でな、お姉さんにもし会ったらな
わしの書いた詩な、読んでくれって伝えてな
ん。
ほれ、これやねん。
てかよ、今、ちょっと読んでくれや
感想聞かせてくれへんか?
ポリフェノールって題名やねん。
どや、かっこええやろ?
えらいシャレとるやろ?
ん。
ダサいか?
逆にダサいか?
だ埼玉ってか?
ん。
誰が川島なお美やねんっ。
ワイン好きちゃうし
比喩やねん。
悲しい比喩やねん。
でもな
内容は悲しないねん。
ん。
てか、のまれへんしな
わしな、ビール党やねん。
知っとるか?
ビールはな、グラスで味が変わるねん。
発泡酒もな
めっさええグラスでのむとな
エビスビールやねん。
いや、ほんまやでっ、
でもな
めっさええ詩ってのはな
グラスでは変わらへん。
どや、ええこと言うたやろ
なんか、それっぽいこと言うたやろ
ん。
たまには、ええこと言うねん、わし。
どや、池上彰みたいやろ
ん。
はよ読めや、感想言えや
ほんで何か質問とかしてくれへんか?
(いい質問ですね、
とか言わせろや
わし、池上彰ちゃうけどな


まるで詩人のような雰囲気で

  泥棒

今年の春から
高校生になった僕は
まるで詩人のような雰囲気で
電車通学をしています
窓の向こう
花々は
きれいです
新しい友達は
まだできていないけれど
新しい花々は
もう咲いています
とても
きれいです
僕は
みんなの名前
おぼえられるのでしょうか

最近
駅でよく見かける
きれいな目をした
ショートカットの女の子と
やたら目が合います
でも
よく考えてみれば
僕が
その女の子を
見ているだけなのかもしれない
夏の風が吹いて
僕は映画の主人公になりきって
女の子に
話しかけてみた
女の子は
詩集を読んでいた
チャンスなりっ
僕は
詩なんて読んだこともないし
まして書いたこともないけれど
まるで詩人のような雰囲気で
詩人が主人公の
映画のワンシーンのように
(詩が好きなんですか?
と聞いてみた
女の子は黙ったまま
僕を見つめて
一瞬
笑ってから
僕の顔を殴りつけてきました
そして
僕は前歯が折れました
自分に
いったい何が起こったのか
その時は
何もわかりませんでした

女の子は
空手黒帯で
関東大会二連覇をしているらしい
駅員と警察官が
僕に
苦笑いしながら教えてくれました
悲惨なりっ
誤解がとけて
女の子は
僕に
ひたすら謝ってくれたけれど
僕の前歯は
ぐらぐらして
心は静かに
もう止まっている
冷静なりっ
僕は学校へも病院へも行かず
近くの河原へ歩いて行った
リア充って言葉
誰が言いはじめたんだろう
やりきれない想い
いつもこうじゃん
いっつもこうじゃん
告白する前に
こうなるじゃん
告白さえ
僕はさせてもらえないのか
ツイッターなんて
童貞にとって
本当につぶやきたいことは
おっぱいもみたい。
とかばかり
毎日
同じことばっかり
だから僕は
この想いを込めて
生まれてはじめて詩を書いた
そして
ブログに載せた
中学の友達から
イイネ!と言われた
何がいいのかわからない
なにが、イイネ!だ、ばかっ。
詩なんて
もっとわからない
たぶん
僕が書いたのは詩ではない
そう思った
イイネ!なんて言われたら
終わりだ

川の向こう
花々が咲いている
名前なんて知らない
あの子
誰の詩集を読んでいたのだろう
夕暮れ
もう秋の気配がする夕暮れ
遠くで学校のチャイムがきこえる、


あなたの詩にはセンスがない。

  泥棒

夕陽が
巨大な刃物に見えると
あなたは言う
浴衣の袖に
夏の終わりをぶら下げて
つま先で感じる
感じているらしい
闇とか、それ、本当か。

八月の深い所で
あなたが書いた詩は
センスのない刃物だった
夕陽に反射して
そこらじゅう光輝いていたけれど
あなたの詩が
輝いたわけではない
勘違いして
つま先で蹴り捨てる
蹴り捨てたらしい
石とか、それ、比喩か。

とても大切なことだから2回書きます

あなたの詩にはセンスがない。
あなたの詩にはセンスがない。

比喩の雨など降らないのに
ほとんどない技術の傘を広げ
ユーモアの風に吹き飛ばされ
まるでセンスのないあなたが
今日も詩を書いている
夜の海を泳ぐ
さかなみたいな詩を書いている
そう、
あなたはまるで
削られた山のよう
急斜面に造られた墓地のよう
つま先が濡れている
あなたの
その思わせぶりに青いつま先が濡れている
そう、
あなたはまるで
まだ詩を書いていない詩人のよう
九月に咲くムクゲのよう

詩はセンスで書くものではないと
センスのないあなたは言うだろう
夜空の下で
私に言うだろう
(あなたにもセンスはありません
と言うのだろう

あなたから
詩だけを切り取れば
見えてくる景色
はじめて夕陽に反射する
ムクゲに詩を感じる
今日も揺れながら
しぼんでゆく
夜空の下で
説明できない距離を歩き
技術の石につまづくならば
その石で
距離をはかればいい


警察

  泥棒

雨が降るかもしれない日に
雲を見ていた
駅前で
噴水のない駅前で
雲にしか見えない雲を見ていた
バスは
ロータリーをまわる
ちいさな出来事を
ひとつひとつ
丁寧に確かめながら
ゆっくりロータリーをまわる





携帯電話



が鳴る。




駅から15分
静かに歩く
透明人間みたいに静かに歩く
太陽が挫折して夕暮れになる
耳をすまし
低く流れる不協和音
遮断機
響く
線路沿い
314号室

私は裸になっても裸になった気がしない
1分が90回すぎて
私はまた
駅へ向かう
警察とすれ違う
方向を変えて
図書館へ向かう
小雨が降る
別館AとBの上空
鉛色の雲が止まっている
これは雨ではない
街全体が噴水になる
湿気で
うねる髪を束ね
高層ビルをイメージで絞り上げる
乱用された雑な比喩が
雑に並べられた風景
公園のベンチ
海よりも圧倒的に広い公園のベンチ
カビの生えた詩集
カビの生えた題名のない詩集
一行も読まないまま
夕暮れを読破
それを閉じて
先入観を捨てながら
また雲を見る
雨が降るかもしれない日も
雨が降らないかもしれない日も
同じ日のように
夜空には
画鋲みたいな星
決して画鋲ではない
画鋲みたいな星

夜の駅前では
ちいさかった出来事たちが
おおきな物語となって
さらに巨大化して
街をのみ込む
最終電車が
発狂しながら駅に到着すれば
すべての物語は
最終回に突入して
バスは混雑する
運転手のいないバスは混雑する
警察が
鉄のドーナツをぶら下げて
あらゆる闇を
右から順に捕まえる
私は
左から順に潰していく

自首します
私は透明ではないのです
伏線だらけの街
ほとんど回収できないまま
私は動けなくなった
朝までほとんど動けなくなった


芸術なんてメッタ刺しでんがな

  泥棒

んあ?
そりゃそうでんがな
草木が風にそよいでまんがな
秋ですやん
秋の小道でんがな
んあ?
枯れ葉が
ざらざらって
音たててますやん
やたらめったら感傷的になりまんがな
ありふれた情景が
ぼんやり浮かびまんがな
そりゃそうでんがな
んあ?
自転車で秋の小道
ぐんぐん
駅から離れて
もう
何もないですやん
人なんて
おりまへん
畑でトマト育ててますやん
おじちゃん
んあ?
おばちゃんですやん
どないやねん
フェイントかいな

ぬぬ、
雨上がりですやん
この町
さっきまで雨降ってたんやな
雲が濁ってまんがな
湿気をおびた土の香りしてはりますやん
めっさええやん
地味でもええやん
めちゃんこ抒情的ですやん
ローファイな町
ほどよく死の香り出てまんがな
暗い感じになってますやん
何もない町
二丁目の角にできたんは
新しい喫茶店でんがな
カフェちゃいまんがな
喫茶店ですやん
地元の方しか
お客さんおれへんやん
入りにくいがな
ぬぬ、
髭の店主が
こだわりの珈琲豆を仕入れてますやん
あれ、どっかの国の限定豆でんがな
さっきから焙煎してまんがな
せやのに
この店
めちゃんこ不味い珈琲ですやん
どないなっとんねん
美味しい珈琲のんで
窓から見える景色をやで
めちゃんこ丁寧に描写してやで
芸術なんて
つまりメッタ刺しでんがな
ぬ、
メッタ刺し日和でんがな
めちゃんこ刺したるで
せやのに
あかんて
なんやねん
この店の珈琲
これで一杯600円かいな
しゃあないな
ほな
お会計
どこ行こかな
ぬっ、
また雨降りそやな
どないしよ
ぬぬ、
もう一回、店入ろ
よし
コーラのも
今度はコーラのも
よし
コーラなら不味いとかないやろ
ぬぬぬ、
コーラないんかい
他に何があるっちゅうねん
ぬあ?
メロンソーダやと
誰がのむねん
おじちゃんとおばちゃんしか
この町
おらんやん
原宿ちゃうねんから
メロンソーダって
考えられへん
ぬぬぬぬ、
あのおじちゃんみたいなおばちゃん
入って来たで
何を頼むねん
ぬぬぬぬぬ、
トマトジュースやと?
メニューにないやん
なんや
裏メニューかいな
てか、あれ、レッドアイでんがな
畑仕事の後に
レッドアイのんでるがな
採れたてのトマト絞って
レッドアイのんでるがな
めちゃんこかっこええやん
てか
おばちゃん
よう見たら
逆に、めんこいやん
何気にストライクゾーンでんがな
良く言えば
大人ボーイッシュですやん
ぬあ?
そんなん
どうでもええねん
水でええわ
とりあえず水くれ
ぬぬぬぬぬぬぬ、
麦茶あんの?
アットホームやな
ええやん
家庭的な喫茶店、ほっこりするやん
(麦茶ひとつお願いしまぁす
これのんで
どえりぁ詩を書いたるで
遠慮せえへん
メッタ刺しやで
ちょうど陽も暮れてまんがな
窓から
ええ感じの西陽が入ってますやん
めちゃんこええ抒情詩
これで書けますやん
ぬぬぬぬぬぬぬぬ、
雨かいな
やっぱ雨降ってきたんかいな

んあ?
この店の雨音めちゃんこええやん
抒情詩でんがな
この感じは抒情詩でんがな
もう何も小細工いらんがな
この感じをやで
このまま書いたらええやん
のんびり書いたらええやん
めちゃんこええやん
窓の向こう
雨の町
広がる畑
あんれ?
自転車
盗まれとるやん
のんびりしてる場合ちゃうで
この町
この店
んあ?
よう見たら
髭の店主
刺青してるがな
ぬあ?
そんなんどうでもええがな
お会計や
ぬぎゃ!
麦茶一杯、500円するんかいっ
ぼったくりですやん
二度と来るかいな
店の名前、何やねん
ぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ、
喫茶飯店。
んあ?
飯店?
喫茶店ちゃうんかい
ほな
ラーメンとかチャーハンとか
あったんかいな
てか
こんなんが
この抒情詩のオチで、ええんかいな
オチには、ちょいと弱いな
てか
オチって何やねん
落語ちゃうで
これ、抒情詩やで
めちゃんこ抒情詩やで
あのな
この際やから言うとくわ
ギャグなんか書いてへんねん
笑わせる気なんてないねん
こちとら抒情詩書いとんねん
詩に興味ない人にもな
今やで、今、
ちゃんと読んでもらえるようにやな
ユーモアをやな
抒情詩にユーモアをやな
ねじ込んでんねん
ぬあ?
いつ読んでもらえんねん
今やろ
わかっとんのか
詩をこねくりまわしてるわけちゃうで
メッタ刺しやで
芸術なんてメッタ刺しでんがな
ほんでな
ホームラン打つねん
覚せい剤は打たんで
どやさ
すべったやろ
あえてすべる技やねん
最近な
あえてすべる技を身につけたんや
ブラックジョークや
どやさどやさ
ぬあ?
あかん
脱線しすぎや
あかん
こんなん絶対あかん
こんなんじゃ
読者が納得してくれへんがな


世界は冬の夕方

  泥棒

どのような世界に住めば
窓の向こう
詩を書くこともなく
比喩など使う必要もなく
あなたに
花や
歩道の水たまり
そのままに
伝えられるのでしょう。
いつか見た
夕方に降りはじめた雪
おぼえていますか、
あなたの花は
あなたの世界で
まだ咲いていますか、
私は
私の世界でならば
誰よりも速く走れます
お許しください
言葉では
もう何も
伝えられはしないでしょう。
世界の残響は遠すぎて
冬の夕方は冷たすぎて
いちだんと美しいのに
それなのに
私の足は速すぎて
風景が歪んで
もうどこにも
あなたが見えない
雪が
すべてとけて
春が
ゆっくり来たとしても
世界は冬の夕方のままで
きっと私には
もう二度と
あなたが見えないのでしょう。


それにしてもリリカルやな、

  泥棒

ほう、
お前さん
そうゆう感じに切り取ったんやな
なるほどな
それにしてもリリカルやな、
お前さん
はじめてちゃうやろ?
とぼけんなや
何を狙っとんねん
答えろや
刺したろか?
これ、オモチャちゃうで
聞いとんのか?
ほう、
お前さん
何も答えへんつもりやな
もうええ
黙っとったらええ
ほな、さいなら

/
昨日の夜から
熱が下がらなくて
ほとんど眠れてないし
でも
変な夢は見るし
体も顔も
ボロボロだけど

病院へ行って
薬をもらって
それから
会社へ行ったけれど
熱が下がらなくて
使っていない
会議室みたいな倉庫で
いや、
倉庫みたいな会議室で
寝ていた。
(何しに会社来たの、お前
同期入社の三島くんが
笑いながら怒って
いや、
怒りながら笑って
ポカリ買って来てくれた。
(今日は帰れよ
三島くんがゆっくりしゃべる
俺が課長に言っとくから
つーか
今日さ
課長見てないんだけど
来てんのかな?
とにかくさ
今日は帰れよ

三島くんは優しい
私は三島くんが好きだ
超好き
彼女いるみたいだけど
私の予想だと
巨乳のかわいい彼女いるみたいだけど
関係なくね?
いや、逆に、関係なくね?
てか、ないって事にしないと
話し
進まないし。
やばいやばい
予想っつーか
こんな妄想してる場合じゃない

どうせ
告白なんかできないし
そんな勇気ないし
やばいよやばいよ
出川哲朗みたいな感じで
心の中で叫ぶ
やばいよやばいよリアルにやばいよ!
もうやだ
熱も下がらないし
化粧してないし
三島くんのこと
好きすぎて
苦しいな。

/
結局
倉庫みたいな会議室で
夕方まで寝てしまったのだ。

課長がいないから
三島くんに挨拶して
会社を出て
近くのコンビニへ入ろうとしたら
課長がいた。
(あ。課長、今日はすいませんでした
あれ?
聞こえなかったのか
課長は
そのまま隣りのビルとビルのすきまに
入って行く
夕陽のあたらない
暗い
ビルとビルのすきまの
裏階段に腰掛けて
課長が
ひとりで
闇に向かって
何かしゃべっている

/
ほう、
お前さん
そうゆう感じに切り取ったんやな
なるほどな
それにしてもリリカルやな、
お前さん
はじめてちゃうやろ?
とぼけんなや
何を狙っとんねん
答えろや
刺したろか?
これ、オモチャちゃうで
聞いとんのか?
ほう、
お前さん
何も答えへんつもりやな
もうええ
黙っとったらええ
ほな、さいなら

/
目が覚めると
まだ倉庫みたいな会議室に
私はいた


(夢か、


もしかしたら
課長は
私が仕事中に
会社のPCで
いつも
詩をかいているのを
知っているのかもな。
だとしたら
もうクビだな。
課長
仕事人間だし
それでいて
意外と芸術とかに
うるさいし
やばいよやばいよ
これはリアルの方だって!
私の中の出川哲朗が
大声で叫ぶ
夢じゃないって!
リアルにやばいって!

背後から課長の声が聞こえる

ほう、
それにしてもリリカルやな、


既読スルー

  泥棒

目に精子が入れば
充血して
水色に見える街
キタノブルー
映画を観て
徹夜自慢した朝に
人間失格
それでいて
国家試験合格したような
澄みわたる
冬の空
しかしながら
私は何の資格も持っていません。




(えりちゃん、
君が私を呼ぶ
ふぅ、
君はかわいい
去年まで童貞だった君はかわいい
私に会いに来ていたのか
私のまんこに会いに来ていたのか
今はもうどっちでもいい
ふう、
かわいい君は
春も夏も
何回も会いに来てくれたのに
秋には一回も来てくれなかった
休憩室で
目薬をさして
詩を書いていたら
店長が
(暖冬らしいよ
って
つまらない世間話しをはじめる
ふぅ、
つまらないな
私の書く詩も
つまらないものだろうか
夕方は悩んだ方の負け
絶対に負けだね
ふっ、
週二日
今まで私は
何人のちんこ
くわえたんだろ
かわいい君
本当の名前なんて知らない
かわいい君
それでも
君の趣味や性格は知っているよ
また
会いに来てほしいな
今年の冬で
このバイト
もうやめるし
ふう、
かわいい君
今年は暖冬らしいよ
って
そんな
つまらない世間話しなんてしない
君の好きな詩の話しや
私の好きな漫才を
ふたりで
ユーチューブで見たいな
裸で
お互い裸で
君のちんこ
さわりながら見たいな
いつも
コンビニのケーキふたつ
買ってきて
ふたつとも君が食べる
私は
イチゴだけ食べる
ふっ、
ペットボトルの水をのんで
(水の味がしない
って
かわいい君は
いつも言っていたね
ふー、
かわいい君
私のことなんて
もう忘れたのかな
忘れたんだな
ふぅ、
かわいい君
あの試験どうなったの
約束したよね
合格したらしてあげる
って
君のなら
精子ごっくんしてあげるよ
(君の味がする
って
ふざけながら言いたい
ふー、
もう夜だよ
負けたまま夜だよ
悩んだら
それが文学になるのか
(ばかっ
なるわけない
窓の向こう
それにしても
めっさでっかい月
夜の街に激突するかもよ
ほら
みんな死ぬんだ
かわいい君も死ぬんだ
暗い詩ばかり書いている人の感性を
今夜も私は
クズのようだと思っています
星座を見つけて
お前らの詩なんか
誰にも読まれなければいいと
いつも願っています
ふぅ、
いつか必ず死ぬ
みなさん
私の詩を読んでください
そして
軽蔑してください
ふー、
月に吠えたい
見てるかな
どっかで
何の資格も持っていない私から
かわいい君へ


最近、どんな詩をよんだ?


送信
っと。


志賀直哉のパクリのような

  泥棒

つまりそれは
暗い夜道に浮かぶ言葉のような
つまりそれは
死ぬほど美化された現代詩のような
つまりそれは
骨折した後の夕暮れ、山の途中、
つまりそれは
志賀直哉のパクリのような
つまりそれは
詩が直哉に取り憑いたような


ドンッ!


犯罪みたいな漫才をして
半沢さんは半笑いされている
常に
すこし遅れて
流行を追うから
壁ドン失敗して
突き指して
変なハシの持ち方して
うどん食べている。
そんで
お腹いっぱいにならなくて
帰り
牛丼食べて
あ、
なるほど
東京は砂漠ではなく
プラスティックなんだね
と、
悟りをひらく
中略、
君を殺すこと
文学が
指より
細くて白い骨のように
パキッて
折れ
中略、
あれは夏の日
夜のプール
中略、
太宰治が生きていたら
ツイッターで
何をつぶやいていたのだろう
中略、
三島由紀夫が生きていたら
インスタで
ドヤ顔していただろう
中略、
志賀直哉が生きていたら
世にあるパクリ作品を
見抜いていただろう
中略、
カラス、ハト、ツバメ
電線に
並んでるとこ
見たことないよね
それです
中略、
毒とユーモアとナンセンス
この
みっつが
バランスよく含まれていると
カラス、ハト、ツバメ
太宰、志賀、三島
のように
ホップ、ステップ、自殺
と、
なるわけだね
うん。
てめえが
いかに
無難なことしか書いていないか
考えれば
すぐに
わかるだろう
中略、
技術なんて
いつでも捨ててやるから
みんな
生きてください
読んでください
中略、
てめえは
もう死んでいる
中略、
ゴッホのひまわり
永遠に枯れないなんて
残酷ですこと
中略、
誰にもわからない比喩を
どんだけ使えば気が済むのか
どんだけぇーって
先細りして
ポキって
折れ
中略、
リズムを刻む
各駅停車は
未来をパクりながら
進みます
中略、
わたし
中学二年までは詩人だったのに
今は
ちいさな魚です。
中略、
ゴッホが耳を
切り落としたように
中略、
メランコリック
中略、
サディスティック
中略、
戦闘機のように飛ぶ鳥
中略、
指パッチンで
目の前に海をつくりだす
中略、
何もできないエンターティナー
中略、
サンタクロースの引用詩
中略、
世代交代の季節
中略、
冬の夕方に面接しました
中略、
ともだちがAVに出ました
中略、
ぶっこわれました
中略、
詩が
まったく書けません
詩が
直哉のパクリのように
詩が
まったく書けません
詩が
直哉の影響により
詩が
まったく書けません
夜の海で
いつかみんな死ぬ物語
和解できないまま
必ずいつかみんな死ぬ物語
わたし
誰よりも
最低の詩を書きたいの

そう、
毎日生まれ変わる
ラスボスがいない文学の世界へ
ようこそ
読者諸君!


かっくかくしかじかっ!

  泥棒

お母さんっ!
あなたの命日に
ネットで
そう
インターネットで
わたしっ!
詩を書いています
うい、
たそがれては
いません
わたし
酔っています
うい、
相も変わらず
頭のかたい
めっさ
かったいかったい人たちからは
詩ではない
とか
言われています
う、うい、
あれは
いつの日か
お母さん
あなたが
チャーハンを
チンして食べてね
と、
メモをテーブルに
置いて出かけた日に
わたし
お母さんが
いつか
死ぬってこと
わかりませんでした
うい、
お母さんっ!
あなたが
いつも書いていた
日記のように
わたしや
弟のことを書いていた
あの日記のように
わたしはっ!
詩を書いてみたいです
うい、
お母さんっ!
あなたの残した日記は
日記ではなく
詩でした
うい、
改行もなく比喩もなく
そのまま書いてある
あなたの
ただの日記は
私にとって
紛れもなく詩でした
ごめんね
こんな日に
ほろ酔いで ごめんね
うい、
もうすぐ
クリスマスですね
街が
ざわついてます
お母さん
あなたの好きだった
チョコとレーズンのケーキ
わたしも好きになりました
う、うい、
いつのまにか好きになりました
うい、
夕暮れを
そのまま描写したい
お母さん
あなたの命日に
見えるもの
思うこと
そのままに
詩にしてみたい
うい、
さっき
公園の
すべり台の上から
冬を眺めました
ふと
比喩の風が吹きましたが
おもいっきり
ガン無視してやりました
うい、
お母さん
あなたはいつも
何を眺めていたのでしょうか
家の台所の窓から
この公園が
すこし見えますね
う、うい、
そうそう
サンタクロースの
コスプレをした犬が
さっき
散歩をしていました
かわいい
とてもかわいい犬でした
うい、
お母さん
私と弟が子供の頃
(犬を飼いたい
って、
よく言っていたこと
おぼえていますか
今ねっ!
私と弟で
犬を飼っています
うい、
知ってるよね
名前は
わっしょい
って、
変わった名前です
うい、
弟は
リボルバーとか
アンディとか
かっこ良さげな名前を
つけたかったらしいけど
ださいよね?
なんだよ、リボルバーって
そうでしょ?お母さん
男って、子供だよね
うい、
わっしょい
いい名前でしょ
うい、
お母さんっ!
弟は今日も
バイトで帰りが遅いと思います
でもねっ!
心配しなくていいよ
あいつ
まだ子供っぽいけど
意外としっかりしてるからね

(うぃ、

かっくかくしかじかっ!
お母さんっ
あなたの日記のように
わたしっ!
まだ詩が書けませんっ
酔ってるから
大声で、
ごめんね。

文学極道

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