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鷹枕可 - 2018年分

選出作品 (投稿日時順 / 全13作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


種と骨灰

  鷹枕可

紋章-図像学を鈍重な磔翅翼は牽き
象徴の髄漿たる
薔薇を篭めた
西洋灯の街角を
弛緩した人物群像を
同一の検貌死『カトブレプス』が這って、言った
誓言の移譲、
或は花籠の髑髏は
暴風雨の霧鐘塔を曇壜に置く
確実な均整を附帯する
雁という雁その図形の死骸であるに過ぎない、と

喩えて球体
確たる紡錘時計
そを天球投影室に瑕疵に、
花總へ縫代のごとき瘢を
受肉誕生、ウラヌスの陰茎へ
黎明の晦瞑を
臓腑たる教会建築その含漱種へ嘱目する
奇胎

それは奴隷統樹の
私縫繃帯のごとく
遷移-隔絶を操舵、瞠目する実象記録
バルトアンデルス、その
万物を流体時間として受けつつ
鍵無く花束無く
乖離無き
人物乖離を嚥む物
外範疇紡績機械に
静物胸の総臓腑を産み
全て死の影像、
乾酪の孵るもなき裂罅を欹つ夥多、聴衆

怨嗟それは
数多の磔像柱、
その蠅たる争乱-酪乳壜-螺殻に拠って
後悔を肯う、
青菱十字に鈍旗幟を
癒着を齎しめ
透徹現実の人物達を福音に拠り
束縛-投獄し
呵責の所以を韜晦するべくあるものを、


夜燈の飾帽子

  鷹枕可

_

丁度、夜の敷設路をつづく常夜燈が灯り
汽罐車は轟々と花粉を撒き散らしながら溪谷の窪を通りすぎるころだ
__

颪、
燦燦と揺れる光暈がその煉瓦石の停車駅に
心許なく手袋を擦り合わせる婦人の飾帽子を掠めた、その間に
___

鳩の翼と紫陽花を縫付けた飾帽子を
渦巻く鏡のなかの丘陵のようにそのゆびさきから引き離してゆくものは
____

「ほろほろと水の音を牽く噴泉であるかのように苦い糧を鹹い舌に確め 
 私は/私の樹にあなたへ/名前を刻む/私の名を/」
_____

鞦韆に落ちたひとひらの枯葉の様に
飾帽子を拾い
写真のなかに鉄道員は百年の季節をうなだれている
_______

全ては
鉱物に閉じこめられた
歪像画の
視る夢


土地の血

  鷹枕可

燈の傾倒樹林、
凱旋門を統べて在る狂奔より
薔薇と臼砲
海縁を磔刑像が錆びるごとく
多翼銃剣、
縊死鬱血の鈍鉄罐を
擬似縫製-液体花壜を逸れつつ
瞭然の懐疑を
起源黎明へ懐胎し
額縁を渦巻く緘口令
その飢饉の噂、

現象を緩む鉄砲百合
その破壊の季節に死に罅割れる絶対死への廻廊は胸像を純粋に磨き続けつつ
冒涜を硬貨に腿の絶望に乾き続ける噴水庭園の八端十字に水洗礼を滴らせながら
豊饒の市街を赦す塩の草花へつぶさな眼球の法医学を振子の種を撒く分銅の騎馬の甲冑の様に確かな
奴隷と死
辺縁と蜜蜂そして
絨緞裁縫工場に降るセロファンの花網を亙り
苦く秘匿された立柩を諸手は受け遂に見えぬ花湛える天球儀の外に繋がれた幾多の白熱電球を
希望への釘そして椅子に
腐朽酸蝕に被い
機械下の創物が全て尊厳死に赴く迄、
それをも飢饉の季節は逡巡無く死と麦種に稔らせ
塩の婦像柱が掘り起こされた時、
饗宴の果て、一匹の蟋蟀が死に遅れた季候の上で鳴いている、
そして自由とは血に沈められた殖民の起源であり、終焉を亡くした空洞でもあるだろう

_

鉱脈より総てが解き放たれ
地上より
夜闇の扉を叩く
牡麋が
飢饉と疫病を振り撒き、

凝膠の溶解、椅子に受けた薔薇十字
市民革命宣誓文に投げられた喝采に沸く趨勢は鬨ぐアスパラガスの起爆装置に雄花を添え
避雷針は黒い丘陵を月蝕より芙蓉に預けて傾く
地平の醜怪な花々の滂沱は切離された壜攪拌機に普遍低劣な唾の塵と海縁を亙る砂の電気椅子を擡げ
蛇蓬髪の石化した姉妹を鏡に嵌殺しながら
牛乳罐、躑躅、そして硬い籾殻をホルマリン溶液の胸膜に秘匿していた
逆円錐の噴水が七週間目の飛語を覗く迄には、
土地の血はあらゆる繃帯に隔てられ
輸入品目への翻訳、出奔も威嚇射撃に耳を泛べる曇雲の部屋に、
もはや慣例である麻酔医と血縁のグランドピアノを映像世紀に死と影のごとく随伴するのみとなるだろう


黒薔薇水晶の代償

  鷹枕可

――ぼくは永遠が欲しい。


死の果に死が有り、
黒薔薇馨る慈愛の箱庭に
恩寵を受けた、
アウシュビッツの地下隧道に眠る
幾千、幾万の亡骸を
火葬柩の
黒薔薇の印章が
異邦人の咽喉の様に壮麗に赤黒く、拘縮していた

死の秘密、
常夜、蝙蝠の斧翼下を闊歩する婦像の陽傘、
街燈の書言葉、
瞬時、脳髄受く花籠の中
蜜蜂の樹花は爛熟し、
瞋りを尊厳死に
生誕の隷属、既成存在に
喚き立てる係争の、血縁附録

昇降室
骨壺の髄-風葬を受けて愈々優麗と為り
喪葬果を受ける死の
拡声器と乾草、
その遺骸、瘢痕
敬虔者
一縷血脈の籠に錆び続ける黒薔薇、
酪乳翰は吐露の額縁に凝り
交叉階段、
死のベルを聞く
瓦礫下の心臓、腐蝕銅鉱
葬像を
偶像と呼び慣らす
墓碑銘の丘陵

死の翼、猖獗を錚錚と讃えつ
鶴嘴と鍬の凱歌
一粒の種子
その起源、天球像周縁を隈なく
世界無く
万物のみを踏襲し
諸々の虚実
孵卵器を蘂奥を蜜蝋に拠る鋳物にて
分身、鏡の葛
双嬰児を孵るまで俟ちつつ


私のうつろ、鈍い血苦の蜘蛛、
死骸として、死に続く死を

   痴夢する痴夢
    今際の果てに
     
死の舞踏、ペストの話言葉
 葛藤、断頭記録の様に
       影像、嵐絵、蜂窩、解剖学
咽喉を潰す劇薬を下さい
/海縁の邸宅に/
網膜を剥がす
 剥がす禽舎の壁を、
   骨壺の薔薇の名前は

被告人アドルフ、迷宮、窃視、絵箱庭、
 窓硝子、越しを、家畜列車、が

 剃髪されたる実母の、愉悦し、狂奔たれ
象徴、白亜十字架が
   忌々し、頸筋にダヴィデの、痕なかれ


          君達、さえを


砂の唇

  鷹枕可

  うつくしかった庭は跡形もないわ
 あなたが足許も覚束ない、幼時のころからあった庭には

朽ちた鞦韆が炎のように揺れているだけだ
綺麗に磨かれた軍事兵器や、航空工学には飛べない青空、壜底の青い凧が、
 鈍い木々を縫う花の毒の根が
わたしの心臓を納めた塵の骨壺が
さしたる所以もなく
忘れられる、そのためにも

――死蛾の翼を鏤刻する額縁工房、その職人達へ届けられた――、
   あの手紙は本当は何所へ宛てられたものだったのか
   きっと聞いて来てくれよ、

薔薇から紙粉塵へ
死の蜜から林檎樹の棘鉤へ
旱魃に随って誂えられた水道管を繋ぎ展ばしては
幌の幽霊、その確かな時計の様に
恩寵に取り縋らせて欲しいと願う総ての血縁どもよ、
   聞こえているか
今、最後の電話線が切り離された
 都市が落ちた時、雷の花束は落ち、
  割鏡の様に
苦難に満ち満ちた糧、
      その種蒔時を蔑していた私達の醜さに愕くが善い、いつものように

   たちかえればわたしはいつもだれかのかがみで
 わたしはわたしを、まるで偶像のようにみたくない窒息に、さいなみつづけていたかもしれないし
  機械に錆びる海の脂をみとがめつづけていたかもしれない
    わかることは、わたしはわたしの分身のようには飛びつづけられないということと、
たったひとつの結像起源がわたしではなかったことを、こわばり否んだこと、
そう、
死ななければいきていけなかったから、

最後のベルが処刑時刻を劈き、時計塔を跨ぐ狂院の建築家は
書見台から見える純銅錘の磔像に隠された秘密の覗絵たる箱庭を開くことなく


抒物と叛抒情

  鷹枕可


新しいダダの為に、


磔蝶、礫の硬物果実
そは峰を跨がず
隔絶に一縷現実を現象と見紛う
偶然を錆朽硬貨に
遭遇を花に
一家族に拠る円庭噴泉が
死線を牽く
鋭角―鈍角、臓腑の喩、
穢濁たる機械欄干は総じて拇指を踏み留まるもの

雲母の髄、胃腑を犯し
非―概念たる黎明を亙り行く
不朽柩蝶蝶番装置、
そを厩にて奇跡と違えるも
由々し、血の薔薇その人間を誇りつつ

    *

何が攫っていったのか
訪問者の言葉の花を
姦しい花瓶の根が
雷霆の窪が
水滴に拠る鍾を跨ぎ
破壊された横顔と海岸線の靴跡を
天鵞絨の笑いを縫う
観光客よ、誰をも翳めない仮象よ
確実な咽喉に及ぶ
第十週間の霰、
美しく醜い徒競走の傷跡より
隠された修道院よ
今 跳躍筋のなかをひたはしる繊維紙の薔薇窓はひらかれ
総て花總は熟れる時計に遭遇し
瓦斯の球体像を瞋りが撃つ様に
そして人達は人達をより顧るだろう
私達より速く遅く、
過去を流れる葡萄酒醸造槽にぬり込められた
幾多の蠅の季節を

    *


――――暴風雨に震える熟樹時計の様に破壊された地下鉄線隧道と、その火災報知ベルに告ぐ、


花婿の許喀血をするミルテの湖畔に造影機が電気椅子が鈍く礎に打たれる侭
に錆びてゆく牡蠣の楕円は鉄の戦争への憧憬の様に浅慮なる胸像を隠す帆船
標本は理想像を忌避紆余する彫刻物達へ砂糖漬けの百合根を硝酸壜を贈るた
めに刎ね落とされた鍔の無い旋盤に磔刑の樹を平衡に聖母像の咽喉許へ垂下
し愛と逃走に嫌厭されるべく偏執的葛藤を亙る鈍角の架設電流銅線の花の銅
鑼を絶縁体に繋ぐ天球を巡る十二の晩餐室は常に神学者達の反吐の純粋に論
争の終始録音機が噴く銃剣の翅を預け海底裂罅の窓に想像妊娠の時計は熔解
する表現主義建築建築家達の眼底には総ての曲線面を構図とし抽象の愉悦は
棘の死でありながら鎧戸を打つ騎馬の腐蝕窩であり蜂巣と薔薇の背中を滴り
落ちる現象の標識へその臍帯を摸倣し偽科学の二十一世紀に及ぶ進捗或は退
廃を現実−夢魔虚実の万物球儀に娩出をする殉死への違約を粉争飢饉に廃棄
するまで

――――安寧たる死は無きものと思え。


収穫の種

  鷹枕可

今際を立つ
薔薇の露庭に敗れた
鹹海を
運命の滑車達が
墜落していた

鏤められた草花を
額縁の血機械が飲む

驟驟たる季候
花籠へ移り
青紫陽花は
白紫陽花を追随鏡の分身と看做す
終端、血塊に興饗を催す

概念、形而下的物象、
堕落、叡知、立棺遠近
施錠門へと葛藤を繋ぐ死の靴音を

世界腑散乱を縁戚係争が隔絶をされて
叛煽働下を交叉階段は
遭遇の朽花の様に
空間の葡萄畑その婦像柱より、


ルイーニの印象

  鷹枕可

 縫い留められた花粉、塵屑
   海峡と翻訳機械に総ては聳え、
  茫海の青年はその背筋を翼に擡げられた鋼球体に終端と起端を踏みしだき
工廠へ倒れている智慧のダヴィデを縦断する
     偽製その黒い華燭―薔薇色の蜘蛛は
          死後紛糾の係争に有る一粒の棘の食糧でもあり
あろうことか眼窓―地球の関与を俟たない微粉塵には
   私庭の酸い葛藤生花工場が蔓延する様に
      繭球を建築家が隔て眺めている
それは純粋な悪意を充て瑞々しく蘇る
   対偶関係に繋る聖母、血塊を蹲る螺旋燈の建築物であり、

その嬰児の母は名をマリアと言った
その嬰児の母は名をエリザベツと言った

精製花粉の厩、創造球が蝕既たる闇黎光を双嬰児の胸像が四隅に裂罅疵を闡く
 鹹水の窪―映像―影像に静謐たる複翼人は曖昧な欺瞞を施し
稜線一把に擲たれた花束の銃、
  得てして総て死線は
     繊細精緻な繭の紡錘室、
   万有引力その個静物数多の成果たる純血統種の優越に過ぎず
        気紛れを履くデウスの機械機関は有るべくも無く
貿易品目録に花崗岩を押さえ
     鉛丹と瑠璃青の分身―楕円を廻る死葬車の如く水溝橋梁の火事は跡を絶たずして、


死の糧

  鷹枕可

血髄を
純潔―濁流を
撒く人物が
囁き、
飛礫、軋轢機構
曖昧な地底騎行曲
乃ち
鑓穂の幼時私史を綯う紡績婦
歳月、死の糧、
その市街にて

確実の死を
そして死を牽く
不確実に麺麭と檸檬果を
鹹湖畔にて
樹婚の闇を増殖する
花粉艇に痕跡を映し
影像彫刻
その窪、陰を灌ぐもの
兄妹、峰の咽喉より森の血を眺めつつ

峻厳、憤懣を棄て
慈愛、唾の草花を舷窓に享く
落盤隧坑たる酪乳
交錯人物映像機械
死と秘跡
イェリコ、ソドムを鬩ぐ建築草案、
総て果て
公営納骨所が書翰に
一筋の絹が紛れるのを、

    *

きみは薔薇を眺めている
薔薇を眺めているきみを見ている

きみは骨壺を眺めている
骨壺を眺めている
骨壺を眺めている
きみたちを眺めている骨壺を眺めている
きみを見ている骨壺を眺めているきみを
骨壺をきみを、

眺めていた、死の糧は、ミモザ


腐敗した手鏡

  鷹枕可

椅子に誰が着くのかが問題ではない、椅子の存続こそが問題なのだ


饐えた
薔薇、巣箱
誓言は愈々濁流の堰を落とし
仮像緘黙症―黙秘緘口
いずれも
青い梔子を
証拠物件たる裸婦像を惑溺しつつ

公邸に秘死軸、
蘂莢を髄範疇に置き
物象現実は指向する
精神概念下の両性具有を、

天球、敬虔を遁れるがごとく
質量を擡げ
禽舎、橄欖視標を
終始抑圧に這う地棲花へ捺し、
競鳩場たる帆に紡錘を
展開し
一縷絶鳴を公聴議事室に隔てて、

水底教会、
拠地亡き塵と柩を
偽造像物書からなる公共建築が礎と看做し

乾燥植物綱目収集家
死と鏡の翰書を透かし遣れば
露見を否む
死と踏靴符、蹂躙を嫌厭する
欺瞞傲岸、そして懺悔

贖宥を縋る耳鳴病、
嵐海に随葬花を逸し
後悔の実
績紙製繊維工の切絵に形而下を
閂の洞察眼がごとく
展開図へ捌く

市民革命
爾後の軛に喪葬と唾棄を
宰種達が抜殻、権限を充ちて
総て統制国家が詭論へ屈し、
全能威厳たる避雷針鳴く二十一世紀余を、
疫病を
恢癒なき存在を赦すか、否か


スパゲッティ野郎への葬送

  鷹枕可

市民としての一日が終わるまでに、

     *

労働階級の華が捜されるだろう
或は母親のスカートのなかで育てられた少年の、122番地の街角に影を差す電球燈の馬に
検死台の時計と亜鉛壜を擱き忘れた現実としての、液晶装置の外へ潜水艇の話言葉が漏れ聞こえない為に、
部屋の無いドアノブを覗く、
冗長な私達と私に附いての自己紹介を壊れた鉱石燈の闇が垂れ下がって円錐の舞踏足に拡げられた駱駝の粗革を漕ぐと座礁商船はまっぷたつだ
新聞紙する
理由もない新聞紙をする必要もない挨拶が丁寧に釦の縫目に挿してあってそれらが明日の華に副えられる最期の屑篭になる
だから天球観測家達よさようならもう硬貨もごめんも役にたたない季節宇宙風が吹きとばしてしまうから
惑星のバジリコが棘に刺さって半減周期の所為で私たちもう遭えないねって少年は赤銅色の莟を隠して砂場で言ったんだ
淋しいミートソース演奏家の薔薇色の秘密の様に叫んでほしくはなくて鶏冠が無い薔薇が礎の許に埋められていてそれが私の死体なんだって
気がつくころには
嗜眠と寝台列車の高架を十字に跨ぐ屑篭としての
そう、
あなたに
ありがとうといいたかったんだ


死物

  鷹枕可

炎から炎へ石蕗のくきやかな稜線が鬩ぐ様に、
唯一つの銃眼に並ぶ修道尼達が垣間見た現象の緻密な骰子より遁れる様に
死を忘れた
受難者達、
縺れ縺れた
その褪紅套を夥多凱旋門に杭打たれ
翼人磔刑令の真昼、

青年撓う高跳びの背より
高く飛べぬ
想像の死、
萵苣の鈍血鋼を摘み怨讐を来す
痴人よ、
一世紀毎に血の成果を滴らす、歴史を、
隠匿を
鳩と橄欖は帰らぬ、

総ての喫水煙草、
姿勢は
且て建築を期された
第三国際記念塔の断腸であり、
鉄の嬰児
赤い鋳銅像を
疾駈する想像を視野に価しない
敬虔な華、
鬩ぎ止まぬ死後の未踏線を跨ぐ
脳髄殻への苦悶、愉悦饗鳴

私は外の私を呼ぶが、
私は堰き抑えられた擬膠トルソの様に
硬化胸骨を程無くして開く
喚製静物に遺棄を為されて終い、
普遍‐稀覯に
確たる帰結としての時間、

死が読めなくなり群衆を
俯瞰図に
壊乱し続けているのを、
野棲薔薇を已み頻る振動管、
鉛管振る少年、
遂に自らがドゥーブルの私製児たる冥鏡象より
随腑を略奪するも、


吸血蝶を呑む

  鷹枕可

集合住宅の一室
水道管を裁断機に掛けられた手配紙が流れて行った
固執する、
縦横前後の想像、視野に
私の死が蹲り
遅筆なるがゆえに悍ましい、
抵抗器に、煽動家達が
諸々の咽喉に
既に血塊の翼を緩め
死屍たる椿花樹の爛熟に
――催奇亡霊を嘱望し 
  ――絶望絶慟を倦厭し
    ――それら領海を愉しみ、

     ――洗顏室に蓬髪が散らばり
  ――摘まれた糧と藁束を
――燃焼罐に
墜ちつつ回る椿花を
血婚装束を
視線に拠り静止せしめて
褪彩乾燥花
退褐色のカレイドスコープに
騎馬が
鈍らな錫を瞬き
素焼陶樹に薬莢筒の
破壊された顏貌を、
空襲記録を今なきものと、

改竄機構‐統葬辜、瞭然たる執念を以て硬直死を告げるも忌々し、

国家
統粋主義を顧み
叛趨勢を頼みつつも
興趣、
土地を、
峰を麓を越境線として聯なり
標本箱の汽罐車に
硬像を
蜜蝋蝶を閉じ込め乍
その髄畔を巡撒し已まず

種蒔く指へ地方紙が触れ
喚喚と
飛礫花を繃帯へ
多多滲み樹は樹ならぬ樹花へ

文学極道

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