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草野大悟 (草野) - 2008年分

選出作品 (投稿日時順 / 全5作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


アネモネ

  草野大悟

よっつのかぜが
なかよく
てをつないでいる
あおぞら

たいようが
にこにこと
かがやいて
ひかりのなか

ぼくたちが
どこからきて
どこにゆくのか、など
うみにほうりこんで

ただ
ただ
くもとあそんでいる
いま

よっつのかぜは
きゃんばすのなかで
あのころとおなじように
よにん、てをつないで
うみをわたってゆく


哀しみの首

  草野大悟

哀しみが
哀しみの首を
絞めている


絞められた哀しみは
椅子に座ったまま
うなだれ


絞めた哀しみは
ぽっかりあいた空洞を
もてあまし


ただ
じっと
人である哀しみに
耐えている


嬰児がほくそ笑む五月


ダ・い・・ジョう・・・・・・・ぶ

  草野大悟

夜空に
子宮が
赤い泪の
月となって
浮かんでいる


夜空は
インディゴ
ブルシャンブルー
ビリジアン
幾重にも
幾重にも
ペインティングナイフで
塗り重ねられ
尖っている



窓辺の
テーブルでは
ラフランスが
ひとり
赤い月を
見ている



家族がみんな
寝静まった
深夜

ひとり

みち、
きみは
こんな
赤い月を
見ていたんだ

  ☆

ステロ
ちんけな権力」」」」」」
すてろステロ」」」」」」」」」」」

ちっぽけな自分ステロ
金を、車を、服を、食い物を、家を
すてろすてろステロ


すてろステロすてろ
年寄りを
親を、先祖を、墓を
SUTERO

しがらみ
血縁
娘ふたり
すてっちまえ
すてろすてろ
すっきりステロ


学歴職歴地位名誉
知識金力女の力
みんなみんな」」・・
すってちまえ

すてろ
ステロ
sutero
SUTERO
すてて
捨てて
すてつくして
あとに




きみだけが
いれば
いい


☆☆☆☆♂♀



あのとき
きみがすわっていた石に
おんなじように
すわって
釣っている



この川には
海がのぼってくる

夢が竜となって
うねりながら
のぼってくる


あのとき
きみは
夢のこどもを
三匹
釣り上げて
はしゃいでいた


そうだ
おもいだしたぞ
きみの
うれしそうな
得意満面の笑顔



これを食うと
百年長生きできるから
ふたりで食おう
と、言い張るおれに

「逃がしてあげよ、ね」
「帰してあげようよ、ネ」
 」」」」」」」」」」」」


帰された三匹は
おそらくは母夢のもとに
戻っただろうに
そうだろうに
きみがのぞんだように

だのに
きみの
すべてを
ねこそぎ、
おれらの
すべてを
NEKOSOGI
食いとっていった


ありがと
オヤスミ
さよなら


竜の眸して
きみは
三匹のこどもに
乳をやる

ダ・い・・ジョう・・・・・・・ぶ

ダ・い・・ジョう・・・・・・・ぶ

ダ・い・・ジョう・・・・・・・ぶ


ダ・い・・ジョう・・・・・・・ぶ




散歩をした
一ヶ月ぶりに
車椅子にきみを乗せて

きみは
新築中のおれたちの家を
見に行く約束を
楽しみに待っていたけれど

リハビリで
疲れ切ったきみを
おれは
新しい家まで
連れては行けなかった



散歩をした

車椅子のきみと
病院の近くの道を

子どものころ
きみが住んでいた町を



左腕を
左手首を
ねじ曲げられ

膝の曲がらない左足を
きみは
車椅子に乗せて
骨盤の歪みに耐えるように
顔を左四五度に向け
右手にタオルを握りしめ
嚥下障害の唾液を
懸命に拭こうとしていた



疲れた?
う〜んん、疲れてないよ

大丈夫?
ダ・い・・ジョう・・・・・・・ぶ

部屋に帰る?
ううん、外がいい

じゃ、外にいようね
熱くない?

ダイジョウブ
ATUKUなイ
ダ・い・・ジョう・・・・・・・ぶ

勝ち気だった
端正な唇から
粘りけのある唾液が
きみの泪のように
喉元まで流れてゆく


それでも
きみは
言うんだ
ダ・・・i...]//ジ//ョ・・U・・・ブ、、、、


ちっと
大丈夫じゃないのに
そんなにもつらいのに、苦しいのに
きみは。


かえらない

  草野大悟

両手で azayakani
Vサイン wo siteいた
太陽のカガヤキは、二度と
かEらナい

海の上を
走り抜けていった翼が
sukkari
oritatamarete
いびつに
ネジマゲラレテイルいま

カエらnai
太陽の笑顔

★、月、蛍、麦酒
汗、走る、田圃、蛙
向日葵、青空、海
風、雲、木々、光
輝き、純

かえらない
カエラナイ
戻れない
nidoto

あの
なんでもない
普通の暮らしに


風の音

  草野大悟

輝きは
ダンナが浮気したとかで
離婚じゃ、離婚じゃ
と、涙して
眸を引き連れ
海から跳びだしてくるし

光は
負けず嫌いが高じて
頭に
記憶の塊をため込むし

夢は
生徒の獲得と
焼酎のコレクションと
光の見舞いに
跳び回って
入れ墨背負ってるし

今年の暮れは
みんな
なかなかに忙しく

おれは
おちおち
病気にもなれない

から


潮の匂いのする河口で
きみが釣り上げた秋は
キラキラと
ヴァーミリオンの鱗を煌めかせ

すっぽりと
きみの心に還っていった


ぼくはといえば
あいかわらず
仕掛けを
空にたらし
風を釣ろうとするのだけれど
いつものように
あたりひとつない現実に
妙に満足している

日焼けした
ふたりの竿の先に
赤トンボが一匹ずつ
とまっている
夕まずめ
遠くで
風の音がする


だから
ぼくがひざをいためたら
すかさず
ひだりひざをいためてみせる

ぼくが
あたまに
未破裂動脈瘤をつくったら
すぐに
6センチの髄膜腫を
つくってみせる

きみの負けん気の強さは
中学2年のころと
すこしも変わらない

雲たちが
あきれはてている

温泉で
ぽかぽかにあたたまって
負けず嫌いが
すやすや
ねむっている

あした
入院する
負けず嫌いが
ほんのり
ねむっている


<<青い鳥の羽を>>

あしたは
きみが入院する日だから
ぼくは
青い鳥の羽を洗おう

すこしばかり疲れた
青い鳥の羽を
洗おう

ざぶざぶ
ざぶざぶ
なんども
なんども
洗おう

そしてそれが
小春日和の
きょうの空のように
鮮やかなブルーを
とりもどしたなら

明日
きみを
送っていこう

明るい顔して
青い鳥の
きみを乗せて

  @@@@∂∂∂


行って来るね
にっこり笑って
きみは
手術室に消えていってけれど

ぼくは
きみの笑顔が
太陽のように
また輝くものだと
信じていたけど

宇宙の闇に
飲み込まれたように
きみは
眠って
そして
眠って


眠る光


ぼくのひかりは
うでや
はなや
せいきを
いっぱいのチューブでつながれ
これでもかと
つながれ
えがおも
なみだも
ことばも
みんな
みんな
うばわれ
あたまの骨を
奪われたまま
やみのなかを
さまよっている

きこえているなら
まぶたを
うごかして

きこえているなら
ぼくのなまえ
よんで

ひかりをなくしたかげが
こごえるこころかかえながら
あしたへの炎を
もやしている

瞳を
きみが閉じたあとも
きみの携帯に
お知らせメールが届く

手術前のぞの日
ベッドのうえで
毛布から半分顔を出して
泣き出しそうに頼りなげに
きみは自分を写していた

心細かったんだ
怖かったんだ
側にいて欲しかったんだ
ほんとは
ほんとは
こんな手術なんか
受けたくなかったんだ

平成17年12月8日
きみが
闇の中に迷い込んだその日
きみの
光を取り戻す
ふたりの闘いが始まったのだ。。。。。。


☆☆☆☆☆△☆


ほんのりと
さくらいろに
咲くのです

闇をさまよい
脳をうばわれ
それでも
トクトク
トクトク
ちいさな鼓動をつづけてきた
ひまわりが

ほんのり
さくらいろに
咲くのです

 ささやき天使

爽やかな春風の中で
生まれたばかりの瞳して
きみは聞くのです

今日は何日?
今何月?
何曜日?

くっきりと
二重瞼を見開いて
きみは
ぼくを
見つめるのです

ねえ、今何時
お水飲みたい

きみの食事は
三食
チューブから
直接胃に流し込まれ
喉を通ることはないのです


ねえ
ささやくように
きみは
喋るのです

ねえ
頭かゆい

きみは
うまれたばかりの赤子のように
懸命に
言葉を紡ごうとするのです
懸命に
見舞いに来た人たちを
接待しようとするのです


ねえ
きょう
てんきいいね
うれしいな
てんきいいと
うれしいね
あめ
いやだね

ようちゃん



よいしょ
よいしょ

よいしょ
よいしょ

ちいさく
ちいさく
そよかぜが
ふく

よいしょ
よいしょ

よいしょ
よいしょ

かぜが
ささやいている

手を握り
うたた寝していた
ぼくが
目を開けると
きみは
かろうじて
動くようになった右足で
足元のシーツを
引き寄せようとしている

よいしょ
よいしょ

よいしょ
よいしょ

真剣な顔して
引き寄せようとしている

よいしょ
よいしょ
よいしょ
よいしょ

あの日から突然
どこかに行ってしまった自分を
呼び戻す」かのように

よいしょ
よいしょ

よいしょ
よいしょ

ちいさな
ちいさな
かぜが
ふく

泪のなかに
かぜがふく



!!!!!!!んがが





風の音がする
夜明けが近い

文学極道

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