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黒羽 黎斗 - 2019年分

選出作品 (投稿日時順 / 全11作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


幻を信じよう

  黒羽 黎斗

たった一寸の闇の中
腕を切り裂いたのは風のせいで
たった一寸の闇の中
涙が雨として降ることはなく
たった一寸の闇の中
一人で会話する客観的主観
たった一寸の闇の中
逃げ場を失うのを自業自得と言われた

たった一筋の光の中
不死鳥は初めての死を経験する
たった一筋の光の中
背中を合わせた鏡写しの先を掴む
たった一筋の光の中
ひたすらまっすぐな尊敬を刺す
たった一筋の光の中
重なった自分を疑いはしない

苛立ちを初めて覚えた憎しみを
快楽を初めて覚えた焦燥を
もう一度流し込んだこの硝子細工には
太陽光の赤の光が
知覚できない存在でした

たった二文字の言葉から
五文字が浮かぶ悲哀の最中
たった二文字の言葉から
数えきれない叫びが産まれた
たった二文字の言葉を語る
少女の涙は川岸で腐る

 星降る夜の瞳に映る明滅こそが
 一つの種を孵すのでしょう

あぁいかにも悲しい話だったが
あぁつまらない喜劇でした

 語らう言葉を失ってはいけない
 地に足つかない言葉の中から


ナイフ一振

  黒羽 黎斗

馬でどこかを駆ける時
彼らはただただ幸せでした

目元を見てはいませんでしが
口元を見ていたのは事実でした
尖兵になってしまいたかった
そう言い出した彼らも同じく
知らないままでいたいから
知らないままでいましょうか
溢れ流れ伝うのは
人目を遠ざける業の記し
千度の嘘をついてしまっても
地獄に堕ちたと思えないだろう

映像がそこにはなかったのですが
音も声も無かったのですが
散財されていく感覚を集めていた昨日は
今日を飛ばそうとして失敗しました

ここにある今日に刺されたナイフを抜けず
包丁を買ってくるハメになった

次の朝まで待てないままで
深手を負った今日を背負いもせずに
投げてしまえば軽いまま

明日は彼も馬に乗る
今日は昨日が調子に乗る

ナイフの替えは用意しない
畦道を伝ったいつかの私の鳴き声が
耳に刺さって必要が無いから


前から二番目、窓から二番目

  黒羽 黎斗

緩い空洞が増幅させる
伝達の補助など高尚な事象は
黒板一つで十分だ

立ち上がる煙が空を纏う
立ち上がる倒木の枝葉を刈る

目は無くなり、ただ音がする
手は忘れていく、ただ道となる

決壊する己の稚拙
見飽くことなく垂れ流れる鉄
数学者は問いを放つ
iを愛する意味は何かと
空を嫌う舟人達に解は無く
一陣の雷雨が停滞する
沈むべきは雨滴の義務のみ
無限を有限に変えるべき
平面に存在しないことは赦してくれ

勘違いをしているので訂正
全ては肯定であり、権利の話
気に病むことはない

千切れた才能を一人で食べている
頭のない獣
銃弾は撃鉄を起こす


同じ窓の下で

  黒羽 黎斗

追憶を許せない放物線
二次は一次と非連続であると
幼い物体は抑制し長考する
交わらない四点を作り出すのに
曲線と人と同じに見る愚かさは
決して必要な情報ではなかった

軽蔑を自信と呼ぶべきであり
生者としての自信を持つべきだった
体積のない大きさを与えるべきだった
語り手は流れ行く者、一人

不自然は未来と同じ哀しみを感じ取る
死屍累々を好む人、人々、人
昨日に在らず
緑の中で一人を覚醒する
「青に生まれたかった」と

巧みではあると認めた天井
触れぬ脆さが魅了する
突き放された二人と一人と一人と一人
三角形の外接を描くのに丁度良い
書き出す条件は
三つ巴の矛盾を認め放たれる

拡張と縮小を同時に行う手先
二度とこんな憎しみを生まないでくれ

冬の大きさは存在した
大きな洞穴に、人は住む


  黒羽 黎斗

並び立つ山は山なんかではない
(雷光の刹那の逆転)
吹き下ろされた風は山のせいではない
(省略されるべき引力の定型文)
半径の整わない火山は己の業
(小走りになった少年、私は青年)
極地に吹き荒れる風は偶然に寒い
海溝に潜んでいたものを取り上げる時
魚の内蔵は食べてしまい、
魚の骨は空に振り撒かれ、
クジラの肉ばかりが細切れの弾力になっていく
サンゴ礁の気まぐれな声が歯を擦る
鼻に抜けるのは鹿の血の臭いだったりする

胸骨の内側で太陽が裏返しになって
二の腕の内側で朧な天体が嘆息の中で爆裂する
口を通過するのは太陽と、第二の太陽の体温

電線が絡まり絡まって生まれた金属の圧縮と伸縮の均衡
中心を持たない軌道に持たされた平均の糸
いずれ絡まってしまう水面からほど遠い圧力の中で
分断を恐れるから生まれた不可視の毬
水はその中を通って水流を留めることを忘れていく
毬を解き、毬を固め、毬になる水流が生まれてしまう
(太陽を知らない、山を模したりなんかしない)
(太陽は潜む、山はモチーフにならないまま補う一助となる)

金が必要である。金が棺を作る。金が反射されている。

細い細い糸を経由してしまうのは面倒だから産道を通ろう
なぜか右に行った後、なぜか少しだけ左に行って、急に空間を持つのだ。
みんな怠惰なのだから、それだから一本道を通るのだ。

目の前に肉がある。鳥が墜ちた。
目の前に肉がある。跳ね上げられた飛沫の一粒だった。
目の前に肉がある。整列された誰かの行動、一端の中
目の前に肉がある。右腕がそこにある。

僕たちは千切れようとしている。
私たちは繋ぎとめようとする。
僕たちは詩を書きたくなんかない。
私たちは詩を書かなければならない。
僕たちは嫌われたことが美徳であるのさ。
私たちは彼らに好まれていなければならない。
僕たちは座り込んで考えねばならない。
私たちは走りながら自分の胸を刺さねばならない。

緊張なんて、毬の中で、跳ねるから生まれる、金魚の糞の、それのよう
景観が生まれている。事実は嫌われていると、ほろり、と、放り投げられていた。

張力は強い。強いけど、弱く弱くあり得るから、強く強く、緊張していれた。
目の前に、肉が、ある。
口の中に肉がある。
先端の緊張、推進力、衰退されない、肉、
歯は引っかかって、肺に、螺旋.

空が回るには、絡繰りの軋轢の中で、近似値の受容、への、嫌悪で
左腕の皮膚を喩えないといけない。

絡繰りの、空回りは、起きない。


乱反射していた。

  黒羽 黎斗

棍棒が横殴りに吹っ飛ばした吐き気の残る振動の中で
海の泡がチラリとこめかみを通り過ぎて、空の残滓が眼底に穴を開けていました。
それでいて
シャープペンシルを持っていた右手が
数IIの教科書を抑えていた左手が
ブラブラと辿り着けるはずもない旅と共に文字となった。

たった、5秒前

ひっきりなしに繰り返される単語と
ひっきりなしに繰り返される話題と
てんでバラバラな天井を収束したはずの網目模様にも見えた時間の経過
と、
新たに生まれた二点間の直線的な虚無
は、
貫くべき心臓を間違えていたって確認して、
また森羅万象とかいう言葉を使ったままにホールケーキを食い荒らしていた。

たった、5秒前

円に巻き込まれているはずの振り子がまた、二次元とやらに催促している。
メモ帳にはこう書き残していたはずだが忘れた。
犬が犬を間違えて人となるような意味を見いだせない低俗な彗星に身を任せていた。
煙草と排気ガスの匂いの区別もつかないんだから救えないのであって、
それでいて裏庭の雑草の始末を忘れているのが普通だって言うのだから笑ってしまった。
蛇にだって足が生えることがあるし、頭に毛が生えたっていい。
対面していたはずの未知がうっすらと光を帯びていた。はずだった。

たった、5秒前

汚いと言える身ではないのだが
遠い日の出と同じ色をしていることを柔らかな曲線の一部と数えていたのだから、
混じっていた、直角に曲がって鈍角に曲がってようやく辿り着いていた。
左手は日の入り前の紫色であったが右手は眩んでいた。

蝶を飼っていた。
似合わない若さを纏っていた。
食べたいと思わせておきながら臭い薬味ばかりだ。


訪れた
瞬き、と、停止。

圧縮と、吸引の、
繰り返し、を
受け入れていた
あの、瞬きが
垂れ流しになってしまった。


目の前に、僕と私

  黒羽 黎斗

崩れる昼下がりの中で、目に見えていた我々だけが確かで、
特別だから、重力が増していく。
彼が認めても変わらないのが自明ならば、
新しい日付に眠りはなくなる。
変わり者だって普通に歩くし、夜は陽の光を歓迎する。
それでも過去の言葉を借りて足りない音の中に血を注ぎ込む。
知らされた宿命なんて知ったことではないし、応える必要もないなんて、
ただの言い訳、怨嗟の声、
深淵に限った話ではなく、明るくて寒くて浮き上がるような
今日のこの部屋を、侵略戦争の先駆けにしよう。

新聞を取っていない人間には分からない話だろうが、
昨日のチラシの中に宅配ピザの広告があった。
歴史の教科書に則って書かれていたその赤色の広告は、どうせトマトの色なのだろう。

窓枠に溜まった埃は、結局のところ天井も床板も関係ない。
表に出ていた奴らは雨を羨んで、
そんなことも分からなくなった老いぼれは晴れの日に耳を塞ぐ。
二度三度と繰り返すうちに生まれてしまった、僕らのような深紅の夢は、
家の話をしたがらない。
自らの手で壊そうとして、壊れなかったあの家の話を、
誇りに思ったりなんかできない。
願望が届かないその先へ
知らされてしまった光の行方を、
ごみ箱に捨てた。

知識も本能も崩れてしまい、残りもしなかった薄氷に
ボールペンで刻み込まれた、ただ透明な、異国の文字

僕の子供がいつしか積み木を使って、僕を、破壊する。
それでいい。


眩まない

  黒羽 黎斗

落葉樹がセンチメンタルな養分を吸い上げ、晒し首になると分かっていながら花は咲く。煌めいて仕方がない粉塵は粘土の重力がその左半身を殺され、眼底に滲んだ青黒い吐き気が昨日引き裂いた資源ゴミを食べてしまう。閉じられた光たちが見せるのは圧迫の血脈の蜃気楼。その跳弾が加速する歪みの中で一人は存在できないから手掴みを覚え、脳を捨てた脚が血管のすべてを破裂させ、染まり切った空へと全てを持ち上げる。

繋がりを持とうとした。道の途中、夜空を見せる鏡の中、雨の気配が満ちていた。
三面鏡を作ろうとして、引き伸ばされる直線となろうとして、関節だけの糸となって気付けるのは、満たされることのない空っぽの道理が弾けているだけの、この泡が不思議であるということ。

足先から這い登る蟻は、冗談の小人
武装された青信号へ向かう、清廉な淀み


(無題)

  黒羽 黎斗

 目を覚ますとそこは液体の中だった。温度は熱くもなく冷たくもなく、水の中にいるときのような温さも感じない。呼吸もできるし目を開けていても視界には全く違和感がない。なぜ俺が液体の中にいると気付いたのかというと、身をよじった時の体にかかる負荷が空気のそれとは違い、俺の特徴である少し長めのまつげが俺の動きに対応することはなく何かに引っ張られるような感覚があったからだ。
 目に見える光景はなんとも言えない。おそらく上だと思われる方向には一般的な家庭によくある丸い蛍光灯らしきもの。最近はあれもLEDになっていっているらしい。おそらく下だと思われる方向には目を向けることができなかった。自分の体の上下を反転させようとしたら何か壁に阻まれた。俺は思っているよりも狭いところに閉じ込められているようだ。ちなみに、腕を広げようとしても胴体と腕の間の角が脇側から見て30°ほどしか開かなかった。
 さて、いわゆる一般的な人間はここでパニックを起こすのだろうが、俺はそうはならなかった。いや、俺は今まで一般的ではない生き方をしてきたというつもりはない。というより、一般的に生きることを努力によって続けてきた人間であると胸を張って言いたい。しかし、今はなぜか俺はひどく落ち着いていて、自分でもうすら寒さを覚えるほど心は水面のように穏やかにしか動かなかった。
 まぁわざわざ「穏やかにしか動かなかった」といった時点で、心が動いていることに気付いた人は多いと思うが、正直微々たる差でしか動かされることなくいたというのが現状である。意識が覚醒のうちに入ってからの俺の感情を述べるなら「起きたらなぜか液体の中に入れられていた。それに気づいた俺は眠たくなった。」というのが妥当だろう。
そう、俺は今猛烈に眠たい。これを心の動きと言っていいのかどうかははなはだ疑問ではあるが、今俺の思考のほとんどを埋めているのは一度覚醒した意識を再度深く堕とそうとする生理現象である。そして、ほとんどと言ったからには少し別の動きがあるのも事実であって真であるわけである。俺は眠りにつきたくないと思っている。こちらのほうは心の動きと称してもおそらく問題がないだろう。この段落の冒頭で述べた「心が動いた」というのは俺の眠い思考が生み出した語弊の多い言葉だったのかもしれない。
 こんな状況にそぐわないような自分を客観視した思考をしていくうちに、俺は自分の意思というものに分類される「眠りにつきたくない」といういかにも矛盾した存在の占める割合をガリガリと削り取っていった。睡眠という結果がその先にあったことは、これまでのような長々とした説明を入れずとも皆さんはお分かりのことだろうと思う。
 さて、俺はいったい誰にしゃべっているのだろう。
 そんなことを最後に考えたような気がする。

 次の覚醒は空気の中だった。そう思ったのは直感であって、決して一つ前の覚醒の時にお話ししたような論理的にお話しできるような考察ではない。しかし空気の中であると断言できるほど情報が、俺の中に覚醒の瞬間流れ込んできた。余談ではあるが理学において、あることを「正しい」つまり「真」であると証明することは「誤り」つまり「偽」であると証明することより難しい場合が多い。難しい「真」であることの証明をするにあたって、多くの簡単な「偽」を使って証明することも多い。それだけ高度なことを俺に「偽」を使わず確信させるほど、流れ込んできた情報は正確で多彩であったとだけ分かっていただければ幸いだ。
 目は開いていないが目が覚めている。そんな状態になったことはないだろうか。
俺はよくある。「よくある」というと「ない場合も多い」の裏返しに聞こえてしまうかもしれないので訂正しておこう。俺が覚醒するときは大抵この状態だ。これは朝起きるのが面倒な心境とか、その日の学校や仕事を休みたいが故の意識的な反応ではなく、ただただ目が開いていないというだけの状態のことである。そしてこの状態の時の俺はどのようなことをしているかというと、覚醒したばかりで動きの鈍い頭を使って眠る前の覚醒した期間に何をしていたかを反芻して、目を開いた後にしなければならないことを大雑把に考える。
さて、俺は今「目は開いていないが目が覚めている」状態にある。そして、普段の癖で前述した日常の歯を磨くかのような行為を何のためらいもなく行う。
『寝る前は体が自由に動かなくて、液体で満たされた不自由なところに入れられていた』
『これからしないといけないことは…』
そこまで考えて頭の中で唐突に何かが燃え上がった。何が燃え上がったか、何のせいで燃え上がったのか、そんなことを知覚する前に、俺は目を開いてものすごい勢いで起き上がった。
まず知覚した情報は、視覚から送られてきた「真っ白」という情報だった。起き上がり、目を開いた先にあったのは真っ白な壁。その色がいくらか俺を混乱させたことを今俺は知覚することができていないが、そうだったのだろう。次に知覚した情報は、おそらく触覚に分類されるものから送られてきたもので、肺の中に空気の流れがあることだった。これによって俺は今、空気中にあることを証明できたのだが、そんなことを考えている余裕はなかった。そしてここからは連鎖的に多くの情報を認識して、順番など分からなくなっていくのだが、一つだけ強烈な情報があった。これもまたおそらく触覚に分類されるものが送ってきた情報だったのだが、俺の向いている向きから見ておおよそ9時ぐらいの方向、少し離れたところに人の気配があった。
 鏡写しの人が一人だけ居た。


  黒羽 黎斗

山頂がある。万緑の頂。
(左腕の古傷はもう見えない)
山頂がある。鋼鉄の頂。
(右腕の古傷はもう消えない)
跳ねまわるウサギの目が赤く、水晶が足音で砕けていく。
食べ残されたガラス細工を覚えてなんかいられない。
切り貼りされた握り拳が、迷路の中で花開いた。

鏡筒の中は下校の余韻、螺旋が一周する。
八等分されたコピー用紙が、解け、剣を包む。

全身にトパーズを埋め込んだ少年は、
抱き抱えられることで眠れる雲に手を伸ばす。
飴玉は切り分けられて薄氷の上に並べられる。
木こりの仕事は燃やされることであって、
切り倒す木に謝ることではない。

枯れない薔薇の押し花と、枯れない小麦の取りこぼし。
羽を休めた翡翠のオウムは、姉の胸の中で切り絵になって
散り際の桜と、その川を分け合うのでした。

ハサミの裏で舌を裂く。
ハサミの表は抱擁を求め、兄弟を侵食する。
血は、血は、気孔を塞ぎ、闇を求める。

捻出された唾液は、銃弾を真っ向から貫いた。
抱腹絶倒、抱擁が笑い出せば、覗き込んだ円を、渡り歩く橋の上。
嫌いな野菜を残して、母が食ふ。額はもう、繋がらない。

幼年が、砂に描くのは、小さい小さい、小鳥の、羽ばたく二秒前。
鹿の背中は温かいが、鹿の腹は、腸をぶら下げている。
これも、温かいのかもしれない。

反しのついた刃が、脇腹にある。
気づいたのは、歩ける青年の、横顔を見て、だった。


改行

  黒羽 黎斗

解答用紙は、試作品 (木は、実りを得る)
解答用紙に、試作品 (滝の色が赤くなる)
際限のない流星は心臓を照らし、
脈の中で、蒸気を発する。
裂かれた腹の中は、小惑星の欠片
二枚の膜を透かし、人の世渡りに
際限のない誤りは少年を照らし、
卒業式をただ座して待つ

暴風雨は時期尚早であった。
それは見る物を待ったままだった。
覚醒する太陽の中心というものは、
肩を砕いて直感を肯定する。
目の色をまだ、赤く保っている。
(気が付くのは隣の少女ただ一人)
(埋められた骨盤の数を数える)

生者は、行進する。
死者は、飛び上がる。
生者は、右腕を持ち上げ
死者は、生殖器を抉り出す
生者は眠る
死者は眠る
生者は、(二人で)一人になろうとする。
死者は、(四人で)繋がりを求めてしまう。

嫌われるべき農道を知る老夫婦に
典型的な林檎の甘さを、
避けられるべき街道を忍ぶ探偵に
埒外な蜜柑の酸味を、

その布切れの断面図
その紙切れの立体図

声は一人のものであれ、
私は外と繋がっていよう。

緑色に、染まり、和となりなさい。

文学極道

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