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アンダンテ - 2019年分

選出作品 (投稿日時順 / 全5作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


mother of all scale

  アンダンテ

・・・・・(3) 
たましいが揺らぐから
止めてくれない
スカラップレースを羽織った
白茶けたぱふぃにっぷるの片方が
湿りをおびながらつぶやく

いくら寝ても寝足りないわ
実証できるほかのアイデアーが
胸の谷間に見え隠れしているのに
グリア細胞が溶け出し
ガリレオ温度計の浮きが暴れだすの 

・・・・・美・・・・・・・・・・・・・如  
鳥梅乃花・・夜万等之美尓・・里登母也・・此乃未君波 見礼登安可尓勢牟    
・・・・・・・・・・・・・安 
・・・・・・・・・・・・・伊・・・・・・・・・・・乎
宇梅能花・・都波乎良自等・・登波弥登 佐吉乃盛波・・思吉物奈利   
・・・・・伊
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(Man〓yo Luster XVII)

あらゆる方向は円周の中にあり
円心ですべての方向が消滅する 
存在と存在しないものは方向の差だ
空も有も方向の差だ
・・・・・・・(「失われた時 IV」西脇順三郎 1960.1)

西脇はなぜ…?
天の北極を鉛直に下ろさず垂直面と交わる方位を北とする
東西南北が接する方位を何と呼ぼう天と地というわけには
言葉が役立たぬ世界と言葉が役立つ世界は方向の差なのか

そうそう、きのうこうり魔に数学教師が襲われたのよ
なにかの間違いだったらしいわよ
こわッ
まちがいならいいのよでもまちがいかどうかわからないのは困りものね
ほら数学教師は信仰心が篤いから
帰って井戸替えでもしなっくちゃね

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*註解
萬葉集巻第十七;三九〇二、
・うめのはな みやまとしみに ありともや かくのみきみは みれどあかにせむ
萬葉集巻第十七;三九〇四 
・うめのはな いつはをらじと いとはねど さきのさかりは をしきものなり
こうり魔;公理魔


mother of all scale

  アンダンテ

(4) 
炬燵いっぱいの雨が吹き込むしぶきがまるくあった。
暮らしに関係した残念な思いを賛成できなかったのは、馬鹿だったり賢くなかったりこぼすことなくお腹を痛めた味瓜の種をひろうなんだかさっぱり判らない者たちの武者ぶるいのせいなのか。

落し蓋をしたら何処までも落ちていく。サイクロイドの軌跡をばらまいて遊ぶ星たちをゆすぶって幾何学模様でたぶらかそう。

0+0ι行方不明になった実数と虚数のさかいめの座標、点でない点たち。割らなければならない1の割れない1の正体。


mother of all scale

  アンダンテ

...........(6)
ふさがった平面にあった平面だ
波外れたホップステップ草臥れて逆ジャンプ

濁流に置きどころもなく沈むとはかぎらない
から何時になくはにかむ
更衣室の逝かれ狂女
都会のサンタクロースと片田舎のサンタが言い争うまに
メチロンを肩に打たれ脳停止

протроυпрσs ημαs (Аqιб)
(то)
прσтεроυ тηΦυσει(тεληs)

意識は保たれるほどに深水に沈むから
枯れ木が置かれているように
存在が存在すると規定するのは大きなかげり

.................〜ワンラ〜

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*註解
・われわれにとって先なるもの
・本性上先なるもの
・Аqιбтотεληs:アリスとテレス


冬そらの下で

  アンダンテ

(I)
美は捌かれた。涙が剥がれるほどに視界は断ち切られ、冬の色は雪の欠片がこぼれたままに滲んでゆく。いもりが花の陰にかくれて、倒れた木瓜の木の裂けぎわから一筋に降りた蜘蛛の絲を見つめている。やがて居なくなった雀たちを包んで、おそくなって大抵の夜がふけてゆく。

(II)
冬の日射しはすっかり痩せ衰えた地表をねぎらい、高圧線に触れた糸切れ凧をつまみ損ねて出てゆく。差し詰めな間柄でもないのに、除夜の汽笛を合図に生き物たちが騒ぎだし、曲がった煉瓦を風の温度になじませた幾つもの小さな祠がいちどきに冬ぞらの下に現われた。

(III)
 Go to the moon at once! 途切れた太古の吐息がしめ出されて来る。アーキアの確かな足取りを追って迫り来るCO2とN2。燃ゆる海に沈むふたつの月。1兆4600億日のあやまちが搾りたての星空から漏れ始めた。冬枯れのこわれた情念の果実がおどろの道にころがる。

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*註解
・祠:ほこら
・Go to the moon at once! :すぐ月のところに行ってよ!
・アーキア:古細菌
・1兆4600億日:約40億年
・おどろの道:棘の道


冬空の窓の下

  アンダンテ

(IV)
and yes I said yes I will yes (Ulysses 18)
そうよしてっていったわしてって (〜James Joyce〜)

Please do not shoot the Gunman.He is doing his best. (Impressions of America)
あのひとを撃たないで。頑張って私を攻めてるんですもの。(〜Oscar Fingal O'Flahertie Wills Wilde〜)

Come in ,come in! (FAIRY TAIMM [THE FISHERMAN AND HIS WIFE])
来て、入ってきて!(JACOB & WILHELM GRIMM)

(V)
結露が付着した指先の跡がはめ殺しに残っている。9度のカノンが止まったまま、発香するマリアの叫びが持続する。小ぶりね。今日はやけに攻撃的だ。

(VI)
血の湿した落とし紙を無造作に畳にほをった。駄目よ!絞めつけながらそう言い放つ。
ちのしめしたおとしかみをむぞうさにたたみにほをっただめよしめつけながらそういいはなつ

隣に坐ったナースのポケットに手をいれたっぷり撫でたのが馴れ初めでした。あいつはそう語ったという。
となりにすわったなーすのぽけっとにてをいれたっぷりなでたのがなれそめでしたあいつはそうかたったという

土砂降りの中で抱き合った。乳首がない。小さな歯がすき間を挟んで並んでいた。ズボンをばくった。
どしゃぶりのなかでだきあったちくびがないちさなはがすきまをはさんでならんでいたずぼんをばくった 

五円不足して酒場食堂を出た。女は作業勤帰りの銭湯へ男はそのまま東7下開放病棟へ戻って行った。
ごえんふそくしてさかばしょくどう…をんなはさぎょうきんつとめかえりのせんとうへをとこは…ひがしななした…びょうとうへ…

女は男の■■■■■■■■■そして■■■■■■■■■■男に■■■■■■■やがて女は男を■■■■■■
をんなはをとこの□□□□□□□そして□□□□□□□□□□をとこに□□□□□□□やがてをんなはをとこを□□□□□□

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*註解
・Ulysses 18:ユリシーズ第18挿話
・James Joyce:ジェイムス・ジョイス 
・Please do not shoot the Gunman.He is doing his best.: Please do not shoot the Pianist.He is doing his best.
・Impressions of America:アメリカの印象
・Oscar Fingal O'Flahertie Wills Wilde:オスカー・フィンガル・オフラハティ・ウィルス・ワイルド
・FAIRY TAIMM [THE FISHERMAN AND HIS WIFE]:童話集『漁夫とその妻』
・JACOB & WILHELM GRIMM;グリム兄弟
・訳:アンダンテ
・はめ殺し:開かずの窓
・9度のカノン:2段鍵盤付きクラヴィチェンバロのためのアリアと種々の変奏<ゴルトベルク変奏曲> 第27変奏 大バッハ作曲
・ばくる:交換する
・■:□

文学極道

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