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アルフ・O - 2017年分

選出作品 (投稿日時順 / 全9作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


シノニム

  アルフ・O


  どうして思春期なんかあって
  恋なんか知って
  性なんか知っていくんだろう
    ーーー小野塚カホリ『NICO SAYS』

逢魔が時を過ぎてなお
すぐ下の階の部屋で
顔のない占術師は
香を焚き続けている
数日前に拾った黒猫は
それにつられてまた
目を覚まさないでいる
自分は、といえば
あまり意味を望めないまま
ノートをヘアピンで纏め
そのままくずかごに放り込む
見慣れた爪の噛み跡
「作業中は音楽聴かないんですか、
(……歌詞があると、気が散るから。)
(でもそれすら口に出せないんだ、
(帰ってきてしまうから、
(幾重にも縫い合わせた
 つぎはぎのシェルターの裾が
 そこから破けるように
でも他に何をするわけでもなくて
何かできるわけでもなくて
「あたしらどうせ捨てられるんなら
 「死んで生まれたほうが
  「よかったかもしれないね
と、結局フラッシュバックする別れ際の言葉
(歌い続けてるんでしょうね、
 貴女は今も
煙と一緒に無理やりのみこむ、
長らく錆びたままの
ムスタング
の弦、の向こう
、で
潜り込む
背中
触れる
忘れる
掴む
壊す
もう音なんて要らない
混ざる香りと
呆れるほど似た顔と声の所為にして
「呪いに加担させるんですね、そうやって、
皮肉ごと海に沈めるように
柔く口を閉ざす
触れる/触れないは漸近線の如く
分布の如く
似ても似つかぬ身体は縫い上げられることもない
意思のないシーリングファンに
魔法は少しずつ解けてゆく
いっそ泳げと
抗うのも無視して


Dicotyledon

  アルフ・O


醒めた顔を隠す、でも抽出する花。
(肩をそっと掴まれ
 見えない弦が鳴る、)
 不協和音)
甘えてなどいない、よ、と
助手席に爪を立て(割れる(人じゃない、音
(聴こえる?
 今流れてる作りかけのこの曲も、いずれ袋小路だってさ。
 知らないけど。気休めの契約だし、
絶対なんて求めてない。求められない、って、
(みたいな、
 、みえない、箒星)
(血の透ける腕を、
 摘まれる)擦れる。(消される、
(切る、
 (切る、
  (切る、
無数の五線譜。
突き当たりで駐まる。
(アイビー、アイビー、
このまま、何処へでも手を引かれ続けても。
いずれ羽根が生えてくるまで
たがいにしばりつづけること、全部知ってる。
(いつかのゴミ置場のマネキンみたいね。
 体温あるけど。
 せめて、唾を吐く、抵抗、
 指を強く咬む、かむ(プラネタリウム、
(アンプリファー、花粉を震わせる、4時、
(裁きの如く物語の侵食を告げる警報を
 掻き消すように喋りつづける、
「汚されたい。
「汚されたいよ、ねぇ、
「半分の月が翳る、
「LEDが交錯して、
「バンビが空を駆ける。
「壁の星を剥がしながら。
「テンションコードなんて思い出せない、
「タトゥーシール失敗しちゃった。
「うまく溶かしてよね、この腕を、さ、
「持て余した鉄パイプが目印になるよ。
「黒いパーカーも、
「ビスクドールみたい、その仕草。
「破かれた絵本、鉄格子の中の。
「あふれる、あふれる、
「あたしたちいつまでニセモノなんだろう、
「少し大きなデタラメを言った罰。
「あと10秒あれば。
「期待させちゃったかしら。
「ねがいごとに嘘はない?
「雨も風も雷も去ってしまった、
「こんなに傷む術を持ってるのにね。
「血管が渇いていくの、
「天網恢々疎にして漏らさず、って。
「報いかしら。
「破るためだけに交わす約束、なのに、
「まるでサクリファイス。
「あるいは針をなくしたレコード、
「花火が上がる。
「穴だらけの夜ね。
「これ以上曖昧な関係でいられないの、
「その胸騒ぎが、本当になれば良い。
「そしたら蛍を放そうよ。
「閉じ込めてるありったけをさ。
「弾は二発、
「信号が点滅に変わる、
「口を噤むナトリウム灯。
「あなたは怖くないの、
「キスさせて、
「なら、顔を隠して。
「みなそこ、
「せめて笑って、よ、
「一緒に、死ぬんじゃなかったの、
「こんなので繋がりたくない。
「そう、
「それじゃ、お先に。
「うん、またあとで、ね、
「燃えるよ、サイレンの中、
 エンジンもシートもクラクションも、何もかも。
「その頬を撫ぜる掌、は、
「もう二度と開こうとしないの、
「ブラックサンダー買ってきて。
「痩せたいから。
「どうせ胸の鍵は開かないままだから、
乱暴に閉じられたドア。
1ミリの真空。
グライドする視界。
知覚する、
傷口に張り付いていた
棘の群れが
幾つも重なり
中に押し入ってくるのを。
とうに錆びきった
柔い壁はたやすく溶かされ。
これ以上身体が千切れないように
長く息を吐く。
黒い。
黒い。
黒い。
黒い。
黒い、
肺の中。
グライドする視界。
(アイビー、アイビー、離れないで、
意識はピン留めされたまま、
土に還ることもなく
羊水に踏み潰された蝙蝠が溶けてく、


Dry/Slow/Anchor

  アルフ・O


静止する、

辿り着く気もしない
煉獄の岐路にて。
氷は融けず渇いていく
緋色の爪を削る羽根
何か云いかけては
口を噤みを繰り返すマーブル模様
の、背中。
やっと帰ればシャンデリアは人の身体で
まばらにろうそくを灯していた

静止する、

貴方は昔ミュージックビデオで
幻影となり
屋上からフェンスを越え
仰向けにゆっくり墜ちていった
それは時に使い捨てられる
ストラトキャスター型のギターにも似て
数年後貴方は
本当に赤いストラトを携えながら
冬眠したり
突然起きては深呼吸したり
水鉄砲にはまだ手を出せないままです

正視する。

羅針盤の鎖を解いて錨を下ろす夜。

目を背ける、

パーキングエリアで倒れ込んだ、少年
その遥かに上空で
観覧車からマフィンがバラ撒かれては
ベルボーイが鍵のないオルガンの蓋を
律儀に閉めてゆく
そこに否応無く佇んでいる筈の
光について、

再生する、

みずうみ、みどろ。
ねむりにつくまえに。
あなたのなをきかせて。

再生―――。


Grimm the Grocer (back to back)

  アルフ・O


「足りないわね。
「ええ、勿論、
「全く舐められたものよね、
 あたしたちも。

紙袋を抱えて
いつものごとく並ぶ、
マンドリン、クローバー、その他諸々が
きゃあきゃあと折り重なりながら
足元を縦横無尽に駆け抜ける
、14時

「舌に合わないとまでは云わないけどさぁ。
「コームいつの間に変えたの、
「え、それくらい許してよ、
「暑いわね。
「みんな持ってるよね、そのラメ入りの雫、
「貴女も似合うんじゃない、
 白くて消えそうな身体だから、ぴったり。
「―――ばか、

口癖は、当然
彼らの意識には、残りもしない
いよいよ母胎の中で
ゆるやかに発酵してゆくだけ、
(でも
 人待ちに見えたらしいわよ、って、
 うそぶかれる。
まだ新しい内腿の噛み痕に
つと身体を震わせ、記憶が明滅する、


「どうしても好みのミュールが見つからなくて。
「おかえりなさい、
「背の高い花は、今日までだったよね。
「水のような開放弦のファズ。
「この石鹸ロシア生まれだって。
「とんだ時間泥棒ね、
「メイクまで面倒見てあげるわ、
「今、虹を吊るしたところ。

それはあまねく、

「深海を漂流する、
「露の匂い。
「イメージは緑。
「シャンプーくらい置いてればいいのに、
「あとレンズ豆ね。
「土に還る植木鉢も欲しいな、
「見抜ける?あたしの思想、
「はぁい、ご給仕いたしまぁす。
「甘いのと、冷たいの、みっつずつ。
「人魚の鱗入りで。
「エスコートお願いね。
「膚の下へ、と、潜る光を見つけて。
「そうね、
 貴女だから心配はしてないけど、
 待ってるって伝わるよう、祈ってるから。
「またのお越しお待ちしてまぁす、

それはあまねく、
夢も現も、枷と糧。

「せっかく材料全部用意したのにね。
「頼む相手盛大に間違えたのよ、
 見破れなかったあたしたちも悪い、
「ねぇ、そんなに感傷っぽかったかしら、
「あの厨房じゃそうなるでしょ。どうしたって、
「あーあ。結局ぜーんぶ、バクテリアの世界。
「それにさ、空調ゆるくなかった?
「せめて今度の雨は砂糖少なめがいいなぁ。
「予報外れてばかりだものね、

少しだけ、脱落したことを
気にも留めずに
荷は詰め替えられてゆく

故に、
故にそれはまた、
何処かで人知れず翻っている、
貴女の唄に帰結してゆくのでしょう。
こうしている間にも
ラクレットのごとく削られて
絶えず意図せぬ地平へ堕ちまいと、
抗っているのは、
もうどうしようもなくて、
ただ、

「さよなら、ね。
「あたしたちこんなだから、
「飛沫のせいで脚見えないね、
「別に消える気はないけど。
「でも、本当に、あと少しでいいの。
「魔法と疑わずに済むのなら。
「だから、薬屋さんによろしくね、
「きっとお互い、いなくて困ると思うわ、
 これからずっと、


リッサウイルス

  アルフ・O



「やっちまえと空砲が轟く
 ボイラー室の吹き抜けで
 反響音に首を締め上げられる
 懺悔に足るってことらしい
 中空からスコールに襲われながら
「それであたしはいつしか
 腕をクロスしてTシャツを脱ぐ、
 「彼等にそんな方法を
   覚えさせられたんだ、
不名誉なんかなくて
ただ、戯言が
宙で潰れるのを眺める
(洒落たロンサムスピーカー、
「相対化なんて言葉では生温くて、
「マラカスの音が止まない。
「だから、
 あの星ごと叩き落としてやるの、
「何を買い被ってるのか知らないけど、
「ねぇ、逃がしてよ、
「悩むのが上手いのね。
「片眼でこっち見ないで。
鐘と共鳴して、
デブリを撒き散らして、
けたたましく笑う
サイレン、

crack, crack,

心底めんどくさいなぁ、と呟く
がれきのでたらめ
叫び声を掬い上げるに値するかと自問して
旧校舎をふと、仰ぐ、が、
「何を期待していた
「何を渇望していた
口にするには耐えがたくて
圧縮されればいい、と思考を止める
少し油断すれば才能なんて
中身のない単語に置き換えられるから
「貴方達にその自由など与えない
枷の繋がった両手を見下ろす
淀む水底
胸の識別票が鳴り
明日はまた、二枚舌で着飾る手筈を
(吐き捨てたってどうせ菓子屑
 都合よく下がった体温を言い訳にして)
(幾重にかけたフィルターを
 すり抜けた砂粒を手にして
 何が視えたと宣うのかしら)
「仕掛けが間に合わなくてごめん、
「それは手首の導火線とか、そういう類?
「さっき、眠り姫と擦れ違ったの。
「多面体で昨日を占いましょう、
「瑠璃色は敢えて選ばないで。
「種の群れが薄く淡くタペストリーと化してく。
「ネグリジェを引きずりながら、
「壊れたハンドカフス、
「木星まで連れてってよ、
「蛍が2本の指に灯る。
「馴染まないパルファン、
「バルコニーからピアノ線で繋いで、
「アヴェ・マリアを口遊む、
「lamb.
逆流する、
調理前の心臓と、
(そう、たとえばこの地下街跡に、
 今こそヒールを叩きつけてやりたい、
(分解した光に磔にされて、睡れ、
 二度と醒めないように。
所詮そんな生き物なの、
だから、噛み砕いてあげる、
「此岸の淵こそ我らが舞台、って、

crack! crack!!
click? crack!!!

傷痕に呼ばれて、
赤い靴に急かされて、
お願いだから、始めさせて、



睨んでいた。隕石が降ってきたらいいのにって願ってた。本当に呼ぼうとして丘に駆けあがってなけなしの灯を振り回したりもした。羽虫のもがく様。つられて存在しない翼をばたつかせる。数十年ぶりのスコールが来るなんて予報は当然のように外れて。相変わらず湖に沈んだナイフをぐるぐる二人で探し続けている。でも、平気なの。それがお互いの身体から奪ってできたものだなんて、彼等は絶対知るはずもないから。

**

睨んでいた。浴室から綾を成し五線譜と棘の群れを往なして飛散する羽根を。両翼は朽木に挿げ替わり泥を飲み込んで散大した瞳は自ら爆破した羅針盤の切先を縫い合わせてゆく。円を描く時。歯車は淀みなくピアノの白鍵をばら撒かせながら扉は頑なに閉じようとしなかった。刺青に埋もれた彼の指が非常通話のプラスチックを破る。Darryl、触らないで。傷と誇示するには浅いって云うなら。塒を巻く花。筆の海を泳ぎ切るのに酸素が足りないって云うのなら。なんてこと。なんてことなの。もう既に疑いようもなく血は凍りきっているのに。どんなに探しても墓守は見つからないまま、LED灯の下に繋がれてあたしたちは二度と動けなくなるのだろう。だからさよなら。
……でも、本当にさよならするのは、ずっと先の話だけど。そのときはもっと、困らせてあげる。ふふ。



「―――報いかしら。
「キズの舐め合いよりもっとひどいのかも、
「まだ、傘はさしてくれないのね。
「Happy birthday. まだ、弾除けになってくれる?
「......今日のコトは忘れて、


The Dead was Born

  アルフ・O


降ってこない、降ってくる
流転の繰り返された心臓
抵抗を強めては
身体の中で錆びた螺子が
舐められたと騒ぐ
堰き止めることに慣れたんだって
生贄と電線が笑う
とりもなおさず
「今のお前は使い物にならない
危惧される謂れは無い
不眠?不朽?不屈?
棄てちまえよ 棄てさせてよ

―――定点、

「唐突にオメガ扱いしないでよね、
「じゃあ、噛みつかせてよ。
「蜂蜜の溢れる、斑らと、
「感応しなくなっただけのアンテナを
 薙ぎ倒す仕事をあげる、
「やっべーよ、進入禁止?
「カラコン似合ってんじゃん。
「どうしても“匂い”に落ち着くんだね、
「平行線、エモい。
「調子狂うな、
「産卵と大して変わらないだろ。
「苗字は覚えなくていいよ、
 普通読めないから。
「2ml。もう少し頑張りなよ、
「体質だから。
「白衣着ると印象全然違うね。

―――不定点。

代替品の蒸気
それはおそらくは、
もがく度にみずから
ヤニを塗り固めていくかの如く
そしてとうとう無関係の
時間軸で
無関係の音沙汰が
還るのだ、と
宿主に諭すかの如く
(だから、返すの、
(だから、返すの、
(返すの

―――定点、

「Speed of flow.
「鍵よこしな、突っ切るからこの群れ、
「泥濘に舵を取られて、
「女王蟻の階層まで、あと、
「そしたら当然俺らはお払い箱ね。
「伏せてなさい、
「切れたらそれで構わない。
「尻尾巻いて逃げたっていいんだ、
「押さえてりゃ治るよ、
「どうせ単細胞だって侮ってんだろ。
「Drive my fate.
「それはこっちの合言葉でもあるのさ。

―――不定点。

(僕達が要らなくなるまで
 あと何万年かかりそうなのか、
 訊いてみたかっただけなのにな
風の止んだこの要塞で
浅葱色に覆い尽くされるのを
待ち焦がれている、猫、

―――不定点、

「甘いところ、視せてよ、
「うるさい、舌噛むよ。
「臆病な魔法使い、
「でも起きているよりはマシだよね、
 ずぅっと、
「すぐ帰るのになんで縛るの。
「どうせまた、今日も吐瀉が始まる、
「トラウマ二人がかりで消せないのかな。
「賽の河原行き最終。
「拾われたのが運の尽きだったね、
「あ、飛ぶっ。
「身体だって手放すもんか、
「耳が良いね、うんざりするくらい。

―――定点。

「How silly?
「何かがまた流れ落ちてる、背中に、
「折れたんじゃない。
「まごつくなよ、大将、
「使い勝手悪いったらないね。
「君たちが満足しないからでしょ、
「それじゃ忠誠誓って寝てればいいわけ?
「How silly? (reprise,
「りぴーとあふたーみー。
「プリズムに封じ込む深緋。
「ごめんね、また同じ話してるよ。
 だから構わないで、
「provoked,
「全部リセット。
「このまま色彩を失っても、

堕ちていく
堕ちていく中で、
気休めに
最後の契約を交わして
眼を 閉じる、
いずれ
死にはしなくとも
折れて、崩れて
無感動に拾い集められ
似たような形に
磨き上げられるから


A couple of

  アルフ・O


“応え(こたえ)から一秒遅れて吹く風に、カーディガンすら甘く弾けて”

 「そうね、みなしごだって思うのあたしたち。貴女のイニシャルが施された胸の印を鏡で見る度に、屋上の柵の上に立って歩いてみたくなるわ。今なら俄か雨だって操ってやるの。広すぎるこの天蓋をすぐさま地上に引き摺り下ろすだけの力も、呪文も、貴女は知っているのにいつまでも使ってくれないから。鼓動が共鳴しているのが判ったってどうしようもないじゃない。ねぇ、だから抱き締めていて、もっと強く!」

“むつごとは羽根を散らして果てるのみ君の名の海はなほ遠のきて”

 残骸が散らばっている。ガラスの空の残骸が。竜骨を蝕まれながらこの船は何処にも到達しないことを、ふと想う。傍には自分よりはるかに、さらさらと光を含んだ、長さはお揃いの栗色の髪。血の代償を省いて徒らに虚無を孕んでゆくこの身体に、できることなら君を触れさせたくなかった。けれど、もう遅い。もはや私は私に、呼吸すら赦していない。バイオリンの声を永遠に穢したのだから。抱き留めるならそのまま心臓を潰してよ、
 
“底に降る雪を掬いて灌ぎける融けきるまでの熱の交換”

 「息を殺さないで、ただでさえ凍え死にそうなのに。泣けなくなった分だけ感情が貴女の身体から逃げ場をなくしているのなら、あたしの胸に直に触れて。そうしてお互いに脈をコントロールしてしまえばいいわ。知ってるでしょう、愛は無限に有限なんだって。折りたたまれたページにそう書いてあったわ。あたしもその言葉をたよりに生きるから、ねぇ早く、彷徨っているあたしの半身をここまで叩き落として」

“傷負いて疾る君の背を見送れり口つぐむべしナトリウム灯”

 そしてこの廃屋でどれほど立ち尽くしていたのか。みずから揺らし続ける視界はもはや数年経って咲くはずの花も迷いなく腐らせている。(砕ケ散ルホドノ嘘ヲ私ニ施シテクダサイ)。耐えられなかった君。幸か不幸か空を飛べるように契約したから、これから手渡せなかった魔法を振り撒きに行くよ。Maybe it’s raining as saying farewell.


  アルフ・O




「眠る仕度を始めてる、
「細動する複眼。
「贋作だって知ってるくせに。

「両手でその血を受けてあげる。
「棘だらけの心臓に、
「音も無く氷柱が立つ、
「架る吊り橋は解体されてゆく。
「見たくないんでしょう。
「受け入れるの、
「あたしたちかしこいから、

「使い終えた魂を削ぎ落とす、
 役割だから。
「必要悪だから。
「施さないで。
「待ち人のもとへ帰って。どうか、どうか、

「春は奪われた。
「それも、嘘?貴方の、
 
 
 


Honey conscious honey

  アルフ・O

 
 
青褪める唇、
密度の濃い蜜蝋でふさぐ、
互いにしか通じない
そんな関係。
意識するもされるも、気づいていて、
今は半目で揺られている、
汚す月。
掌に収まる鏡は、互いの顔の為じゃなくて、
増幅する依り代でもなくて、今は、
絶えず重ね合わせて
脈を行き来させる最終手段、
不完全で打ち棄てられた、駒だから。
独り言、そのすべて
回収されて
思念の森に分け与える、
これは挑発。
知らないと思い込んでいる奴への。
意識をぶれさせ、
介入を干渉を遮断する。
「悪趣味正当化してるんだから
 それくらいで困らないでよね?
分け合ってひととき完成させて、
あたしらはまた
噂をかいくぐり
種を求めていのちを振り回す、
 
 
 
*Inspired by MAGIA RECORD
 

文学極道

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