#目次

最新情報


たこ吉 - 2019年分

選出作品 (投稿日時順 / 全5作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


浜辺

  たこ吉


夏の浜辺でね
死んだような臭いがしていたよ

海の匂いだよ
白い家の
カーテンの揺らぎから
漂って
チリチリ
やけに痛くって

油彩の絵の具を
乾くまで
いつまでも、いつまで重ねてさ
全然乾かないんだよ
白い粉が湿っててさ
眩しくって仕方がない。

あぁ

白い、世界が
白い、白い、


運命の輪が回っていたんだ。
巻貝の螺管が陥没してるのに
狂っているんだ。
おかまいなしに回転している
 


熱情

  たこ吉(たこ)


しんくうかんの内がわで
愛やら恋やら語っている君は
つかのまの世の電気信号
結び目なんて、ほんの僅かで
これっぽっちも忘れてしまった。
君と僕はE.T.みたいに
指の先で恋をする
さびしさと やるせなさの
虚無は、そうやって
そうごにはんのうし、
ほら、ピリリと
発熱してる。地球儀のなす
タテ・ヨコ線の交差点で、
手を取り合って踊ろう。
こっちも世界の中心で
あっちも世界の真ん中だから
僕は君の瞳だけ見て
君しか世界にいないのだと
信じることができるのだ。
笑えばいいんじゃないだろうか。
ガラガラと輝き崩れ落ちる
世界は、きっとこれからも 永遠。
ちっぽけな電気信号が
不意に現れるのは、つかのま
一兆光年遠くに届くのは
一兆光年先の未来だ。
在るとは一体なんなのか
その実、消滅は果てしない
ただ、1つ、確かなことは、
指先と指先の触れた時
ピリリと電流が走ったということ。


てんとうむし

  たこ吉(たこ)

夜のものでも
昼のものでもなく

天道をめぐる
小さな虫よ

はてしなく、はてなく
のぼり、のぼり

君が銀河をめぐるとき
そのおくり翅が描く軌道は
いつか、もときた
地点に至る

永遠に巡り
繰り返し、たどりつき
君の場所はどこなのか

僕は
空に散らばった
幸せを、拾って集めようと
おもう。

あぁ、
きみのさやばねの
水玉模様が

いたるところ
いたるところに。


木洩日

  たこ吉

あの空洞は何だろう
がらんとした投影が
豹斑のように
揺れている

あの光の向こうは
きっと極楽浄土だろう

もう、
死んでしまっているからね
肉の器を明け渡し
光のかけらを踏み渡り
陰なす森を越えてゆく

孤独な暗夜行路の先に
巨体が壮麗な列をなし
極楽浄土より差す
まばゆい後光に輝いて

遠くへ向かう清らな水が
あまねく、世を照らすのか


てんとうむしよ

  たこ吉

てんとうむしよ
君はてんとうむしだから
月のない空を渡るのか

それとも
燃えてしまったのか

水玉模様にかくした
おくり羽
彗星の尾っぽを
なびかせて

いつかは居なくなって
しまうからね
僕もいなくなって
しまったら

散らばった黒檀を
拾い集め
銀のススキの上を
歩こうか

僕は夜の列車に乗って
君の軌跡を辿ろうと思う

赤く燃える石炭が
ぶつかりあって
小さくはぜる

冬の気層の
ひかりの底に

文学極道

Copyright © BUNGAKU GOKUDOU. All rights reserved.