膨大なまま死んでいる白い棟の群れで
ひとつだけ消える窓の明かり
また 誰にも看取られぬ朝が来て
ぼくはひどく浅く目をつぶる
幼いころから親しんできた
瞼の裏のあざやかな残像
そして夜明けはそのまま 闇の方へと走っていった
(みずうみの いちばんふかいところへ
あおむけでしずんでいった おとこの子と、
紫のうなじがかわいい、白い肌の女子高生と、
屋上で静かに/静かに話をした)
(はじめて見る雲の形が
やけに気にかかった/
空には電線が張られていたから
ぼくらは飛び降りることができなかった/)
なんだか息を止めすぎていたみたい、
ゆっくり明滅する光がやがて
ぼくの視界を粉々に砕く予感
それに立ち向かうため すべての細胞はいきり立って
他でもないここに ぼくを連れ戻していた
選出作品
作品 - 20190930_256_11475p
- [優] 白い棟の群れで - 鈴木歯車 (2019-09)
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白い棟の群れで
鈴木歯車