選出作品

作品 - 20081211_191_3206p

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(無題)

  DNA



〈ギリギリと舞落ちている真昼のハマユウを右目と左の目のあいだで受け止めて/よ「愛しています すべてが黒い海の表面で反目しあっていた 岸辺の 先端では引き裂かれた無数の花弁たちがもはや浮上することもなく、陽光を薄めつづけて 応答せよ。こちらは一昨日より底冷えする夏、がしなり続けいまだ森という森をグラウンドに描写することにしか興味のないきみの真昼をぼくはハマユウの馨りとともに強奪し、まとめてガソリンを放ってその渦潮の中心部で、凍りついています〉


※ 応答せよ。と命じられたので応答するしかし彼方への手紙への返信とは本来的にすれ違いを演じ続けることを「義務」づけられているのだ


三年前の舗道で朽ちていたハマユウがいま
わたしの鼻先で香っている、燃しつくした
はずの灰のほうから

ざらついた白黒で構成されたあの真昼は恐怖や
酸っぱいクリームを呑込む暇をあたえず
「夏、わたしは殺させない なぜならわたしは 夏、
見つけ出せはしないから 夏、底冷えのする
夏、のひきちぎりそこねた末端。たとえば
きみの耳たぶをわたしはひきちぎりそこねたのに夏、
はいつになればしなり続けるのを止めるのでしょうか、

三年以上も真昼の白黒の繁茂する

グラウンドにはミドリやアオの角の伸びた宝石が息づきはじめ 
真昼の鐘の音が底でしつこく反響し続け(ている 
狂わないのは時の刻みではなくあなたの 頬に刻まれた皺のほうであった/から 
赤子がひとりで、いま真昼の
短い物体を噛み砕いている