選出作品

作品 - 20060224_885_995p

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滅びた小鳥の唄

  ミドリ




ダンボール箱に
セーターが届きました
それと靴下とTシャツと
滅びた小鳥の唄とです

いま欲しいものは
マフラーとトランプ
そして君の穿き古し下着が欲しい

いま僕は病院のベットで寝ている
でも君はこの時間もどこかで起きている
寝返りを打ちながら僕は
いつもそのことを考えてる

昨日200リットルの血が抜かれました
その血がいまどこかで保管されているのか
あるいはどこかへ流されてしまったのか

僕はなんだか
ぶよぶよの犬みたいになってくみたいで
困っています

看護婦さんに
天ぷらが食べたいと言ったら
首をすくめて
注射をもう一本打ちますよと 言われました

8月には君とブラジルへ行きたい
サンパウロの町をふたりで歩きたいんだ
僕はあきらめて
いつか偉くなるという野心も
いまではすっかりと切り捨てています

時間が欲しくて
泣きたいくらいですが
ただ寝っころがっているだけなのに

思うに
病室のベットに寝っころがりながら
社会のことを考えていたりする
そしたら体中がサボテンみたいになり
目に映るすべての事柄について
トゲトゲしい感情しか生まれません

でもいま君がここに居てくれたら
そっと手を差し伸べることができたなら
それらのことについて
和解することができると思うのに

この小さな手と足で
こんな味気ないものを掴み触るような
この病室のベットの湿ったシーツのことを
滅びた小鳥の唄と僕はそう呼んでいるのです