あの頃、お母さんの毒々しい真っ赤な口紅を勝手使って怒られたあの頃
ちょうど、今日みたいな夕暮れ時 カレーの匂い、赤ん坊の泣き声がどこか遠くで鳴っては 止んで
初めて真っ赤なマニキュアを爪に塗った日、あなたの黒ずんだ血が爪の間に挟まって不快だった
淡水のなかで赤いサカナは空気を求めて
あの頃悪戯に塗りたくったルージュはきっともう捨てられたんだろうけど
泣きながら謝るあたしをお母さんは床に叩き付けて
遠くでは、赤ん坊の泣き声がして
止んでしまった
そう、縁日で飼った赤いサカナも呼吸ができずに次の日水槽の上に浮かんでた
鼻に付くカレーの匂いと錆の臭い
泣き声はもう聞こえない
選出作品
作品 - 20060211_727_963p
- [佳] 赤刹 - うれい (2006-02)
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赤刹
うれい