*お弁当のこと
今日もお弁当を 自分で
作ったってことを
フタをあけて初めて気づく
しょっぱいってこと、は
しあわせなんだと
自分に言い聞かせて
きんぴらごぼうを咀嚼、する
いつかの 女の味
に 似てるんだね これ
*屋上のこと
あたしのこと すーき?
それはもう聞き飽きた、と
思いつつも
舌を絡めてやる
お昼の歯磨きをしていないことを
思い出して 一瞬引き戻されるけど
すぐに忘れてしまう
そういうのもいいじゃんって
思う なんか自然体で
*昨晩のこと
台所で母さんが泣いてい、た
理由 は 分からないけれど
あの涙もしょっぱい だろうから、
きっと、しあわせなんだろうと
思うことにして
きっと明日は お弁当がないだろうから
自分で作るべき日なんだなって
自分に言い聞かせ て
あー ねむーい って一言
*先生のこと
せんせい ぼくは まだ
子どもなんです どうしよもなく
どーしよーもなく 子ども
だから、せんせいに色々
聞かなくちゃいけない
しゃっぱいのこととか
一瞬についてのこととか
気づくってどういう意味なのかとか
せんせいが生きていてくれたら
ぼくはしあわせなのに
*砂のこと
ゆめ、で なんども
なんども 砂漠が やってくる
そんなものは望んじゃいないんだけど
もしかしたら、砂が恋しいのかもしれない
ちいさいころ たくさん
砂遊びをして、しまったから
安部公房の「砂の女」が、
頭をよぎって
女はかなしいのかなって
*告白のこと
ラブレターがたまらなく、好きなんだ
おくるのも もらうのも
書きながら、読みながら
どきどきするんだ
伝えたいんだ しあわせだよ
しあわせ
きっと 愛しているんだと思う
だから、バレンタインを前にして、
すべて おわりにしたいんだ
って思う
選出作品
作品 - 20060208_690_957p
- [佳] バレンタインのこと - 葛西 佑也 (2006-02)
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バレンタインのこと
葛西 佑也