第2回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦


みさき (13/57)
  


扉を勝手に開けて玄関先まで入り、直接戸を叩くというのもおかし
な話ではあるのだが、ともかくこの時祖母の絹江さんが応対に出て
いる。
絹江さんは戸が叩かれたあと間も無く戸を開けているが、そこには
誰もおらず、1メートル先の門扉もきっちり閉まっており、人が急
いで隠れたような気配もなかったと、このとき美幸さんに話してい
る。
なお、本件との因果関係は定かではないが、絹江さんはこの日の夜
半に突然倒れ、そのまま近畿中央病院に搬送、脳溢血による下肢機
能全廃と失語症と診断された。そして一週間後の7月16日に、治
療の甲斐なく死亡している。
奇妙なの電話は二年後、三年後の誕生日にもかかってきているが、
義弘さんも美幸さんもかたくなにその内容を伏せ続けている。
四年後以降のことは分からないが、もしかすると今でも誕生日の奇
妙な電話は続いているのかもしれない。




第2回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦
月刊 未詳24 × 文学極道