アクセルとブレーキを
交互に踏みながら
山道を回ってゆく
日差しの傾きが
せわしなくかわるごとに
足裏の強弱が
靴底をもどかしく感じさせる
エンジンの音は
寝息の邪魔をせず
君と一緒に
カーナビも休ませて
緑のトンネルを
いくつもくぐる
柔らかくしなる枝先
下生えの黄色い花
苔むした岩肌
きつくなるカーブは
眩暈と痺れをにおわせ
瞬く間に過去に酔う
山の端にかかる雲を
大空を翔る鷹を
渓谷へ落ちる滝を
岩陰に隠れる山女を
水源から
滾々と湧き出る水の旅を
母の住まう家を目指して
玄関の敷居を跨ぎ
抱き上げられた
あの頃を