第2回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦


飛翔
  サヨナラ


巣から落ちた雛鳥の
目が開いていないので
助かった


両手で包んで
体温が下がらないように
息を吐きかける


犬走りの雑草に
手のひらを乗せて
放つ
羽は縮まったまま
空を飛ばない


連ねるんだ
連ねれば誰かが
かがやかせてくれる
だから
僕は放つ と言う
僕は


(目が開いてないので助かった)


業務用石鹸で手を洗う
ステンレスの反射光
水滴
両手に付着する体温の
何も起きなかった
瞼の


今日も暑くなりそうですね
今年の夏は一段と
友人が明日帰省して
土曜日に地元の花火大会が


(何も起きなかった瞼の)


セロファンの川
映る鳥たちの影が
星屑になる
(どうしても謝りたかった僕を)
手のひらに意味をつけて
(どうか許してほしい)
君を見放す
急激に下がり始める夜の気温と
ともし火は明ける
何も起きなかった瞼の
なにものにも
隔てられない
君の虹色


巣から飛び去った君が飛んでいる
そして
虹色のように
飛び続ける


第2回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦
月刊 未詳24 × 文学極道