詩人をうめよう、姉とふたり、森の奥の湖のそばの、やわらかな土を掘ると、草の汁が、はねた泥が、私たちの手を染め、汗でまとわりついたシャツが、姉のふくらんだ乳房を強調し、前髪を小指でそっと耳にかけ、しゃがんで姉は、静かに泣きはじめた、
こんなに蝉がざわめいていたかしら、ね、私たちが、詩人を初めて見つけた日、まるで何も食べず、眠りもせずに、3日は経ったというような顔で、小屋から這い出してきた詩人を見て、姉はうれしそうに笑い、湖で顔を洗う詩人にハンカチを差し出した、
にじんでくる水を、土と一緒にすくって、こんなに湿っぽいと、詩人のからだは腐敗してしまう、私は、たくさんの紙片を、詩人に見せるために書いた、けれどたった一度も見せることがなかった、できそこないの私の詩を、まんべんなく穴に敷きつめた、
姉だけが、詩人の書いた詩を読んだ、毎晩のように、私が眠っているのを確かめてから、姉はひとり、小屋へ行き、次の朝食のあいだ、両親の耳にはとどかない声で、どれほど素敵な詩だったか、でも夜だから、あなたは連れていけないわ、とささやいた、
森はたちまち暗くなり、湖面がかえす明かりを頼りに、姉とふたり、詩人を穴に降ろし、とりかえしのつかない速さでかわいてしまう汗が、急いで土を被せなくてはいけない、そう思わせても、汚れた私の手は硬直し、わたし、詩人をうめる、姉は言った、
あらゆるどこかで、詩人がうまれるなら、やっぱり私が詩人になることはなく、永遠にできそこないの詩を書き続ける、あれほどさわがしかった蝉の声が、ぴたりと止む、姉のいない夜、冷たいベッドに触れながら、私はまだ、終わりの言葉を探していた、