プロペラ機がそらを
わたり、開腹してゆく
わたしは、葉に満ちたさくらの木の下
ぽっかりできた空白に、そっと
あなたを置いた
わずかに、あなた
泣くようなしぐさをしてやがて
おし黙る
ちかくの日なたに
熊蝉がうらがえっていた
ほら、鉛いろの雲の淵に
ひかりが滲んで
とおい日の写真みたいだ、と
(おもう)
(焔に端から焼かれた、)
(くちもと)
ざあっと風がふき
さいごの表情の
記憶だけが、あざやか
ゆびさきをあなたに預ければ、
繋がってゆくらせん、を辿れば、
いつかうしなった
あかるい窓辺の床の上
もどることができるのだろう
けれど
たましいはそれを選ばず
ふぞろいの身で、つめたく
落ちる雨の
しずくばかりを祈っていた
生きるため、の
準備をしていても、いなくても
あなたやわたしの誕生、は
そこらじゅうにあった
羊水のあふれて
びしょ濡れの格好をしたわたしたち
たくさんの
できるだけ
たくさんの、
花びらをそらに
ばら撒く
さようなら、だけは
じょうずになったからきっと
心配をかけずにゆける
腫れぼったい雲をへだてて
うすい夕べの沖へと
鳥がひくく飛び、川面に
着水する
飛沫は魚のひめい、のように
一瞬ぴちゃ、ら、と
おとをたて、すぐにぼやけた
雨の紋ようと
かわらない輪郭になって
(のぞんでいた雨が町を覆って
(今夜の花火大会は中止になります、と
(おんなのひとは眼を伏せ
(しずかに、云った