第2回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦


自我
  he


死ぬときには爆発します。だってそのような
ことになると思うのです。潤ってくるという
か、買ったのです。最近はテレビを見ていま
す。
やっぱり毎日です。水は飲めません。
今だってごちゃごちゃに散らかった戸棚のわ
きからビデオテープが時速ゼロメートルで滑
り落ちようと。聞いてください。そしてスー
パーに行った。
歩いたりさ、走ったりした。つまり信号機は
邪魔だけどずっと走りっぱなしになってしま
う。けしてそうじゃない。ついでのガソリン
スタンドには寄るし、風景もミリ単位で変わ
ります。
川にはガードレールがあって、車に乗られな
い人がずっと免許証を見ていて、(免許証は
川のなかにただ浮かんでいた)水面に光が反
射してきらきらとてもきれいだった。宝石の
ようだったけれど、誰も取りに行こうとはし
なかった。
きっと寒さで手首が痛かったからだ。そんな
目をしていた。
たくさん並んでいる魚が真っ赤な血を内包し
ていたころに首に噛みついた太い恨みが虚ろ
げにひとつに固まっている場所。
声は殺せない。
目に映した。「リンデシィ」にでてくる海辺。
蛍光灯の照らしだすうっすらとした陰影を傷
つけているとそれだってあるいは矢継ぎ早に
入れ代わり、生むと生まれる側をこぼしあっ
ているのだった。ついていくと非常口にたど
り着き扉はカプセル型の錠がしてあってまわ
すと開く。まわしません。足元は寝ていると
きも起きているときもまわってはいますが、
動力はなんだろう。
月には海がありません。だから海は絶対に錆
びないし、深緑の部分を守る人もいません。
かふんしょうもないかも。
地球を引きずっている歩くという人の行為だ
ったり、群れをつくってすさまじい速度で泳
ぎ進む魚の所作であったり。洗面台の水を抜
いたらできる渦の不思議さがあった。調節さ
れた空気が顔にまとわり蒸発しあっている音
がするから。機械のなかに紛れこんだ砂をす
くった。カゴには隙間が並べられて不要なも
のはそこから落ちた。すべてのものは形を変
えただけ。つまりそのままなくならないのだ。
ずうずうしいと思った。体が音をたて今にも
崩れ落ちてしまいそうになっているので体ご
と手で抱きとめる。まどろっこしい時間が過
ぎていきました。足からはどこへも落ちれな
い。
そういったささやかな抵抗が誰のせいでもな
い回路をつくりました。
家には誰もいません。靴が脱いだままの形で
そろっている。奥で光が点滅を繰り返しいつ
ものようにテレビがついていた。匂いはすぐ
そばにきている。親ゆびと小ゆびの区別がつ
かなくなる普通の言葉をしゃべりつづける不
安定な。うすく広がる足を踏みならし踏みだ
して歩く。ことに短な気持ちが加わって誰か
でてきて迎えにくるんだ。私が迎えにきてや
る。
戸棚のなかで小さく息を吐くなみだはわれて
いる。
締めつけられる寝返りが声を揺り起こしてま
じめな顔をして写真に写ってはいけないと教
えた。
時間を沸かしていました。
たましいは虹を越えるために抜けていく。す
ぐに体から離れると辺りへと霧散しそれは誰
にも見えないから原子だった。つくりものだ
ってそう。ありとあらゆるたましいの循環で
できている。虹はいつだって半分だから。死
にうち勝てますか。
「スーパーにはもう行ったの?」
そしてそのまま人間になったかというような
ことを聞くと首元が締めつけられるような熱
さ。ゆっくりと膝をつきやみつきの惰性で畳
のうえに寝そべったままの時間。目かくしが
完了すると目の前が真っ暗になりました。







むせかえる暗闇に目が慣れるとしかし正体は
まっさおな線でした。「ドラえもん」の顔に
書いてあるあれです。時間は折りたたむため
に残されているわけではなかった。言葉を使
う人がみんないなくなったらどうなるだろう。
寄り添っていこうとする言葉の礼儀とかうる
ささとかはなくなって。しがみつくものがな
くなるとやっぱり寂しくなるんだけれど。そ
の寂しさって本当だろうか。
さみしさをとどける?
時間は時間をろ過する。溶けこんでいたもの
が別々から結びつけられてつぶやくように人
差しゆびのうえを滑っていく。なくしてしま
ったものはもう永遠にないという証を示して
いた。だって花束は踏みにじられる。
生きていると言い切りたい。
仲のいい人とはなにもしなくてもそのうちき
っと会えるよという頓服を埋めこんだ一行を
探すけれど、入口(出口)の花壇で見ている
パンジー。手にさげた袋。子どもたちの声。
そういうものに包まれながら。今度は誰に。
部品が搬入されました。書き換えられて。私
が消えていく。
告知のときを待った。


第2回 21世紀新鋭詩文学グランド・チャンピオン決定戦
月刊 未詳24 × 文学極道