深海の季節
わたしはまだ今日に生まれていない
あなたはわたしに殺される夢を見
あなたはわたしの幻聴と化す
かかとをみても
時間が湧出するだけで
その湧き上がりが
あしのうらを感覚させる
どこだろうか
これは指なのだろうか
この問いに返答をするのは
吐き気だけであった
目には雨がふり
対向車線の光も2重に不敵な笑みをうかべる
今日までの生であるべきだというわたしの命令を
わたしは唯聞き入れている
うなづく勇気しかこの頚にはないのだ
あごもぬれてしな垂れかかり
肩まで覆う傘は骨ばかりとなり
自然の営為に魚のように半身が削がれてしまった
あの吐き気さえ
もどってはこなかった
嘔吐の発作さえわたしを貫くことはなくなった
目にはいる景色を
睫毛のむこうに追いやる
わたしも追いやられる
ゆく先を告げる口も花びらで隠されているから
わたしはわたしの居場所を知らない
それはそれで上手くいく
居なくなった手首は
2週間前くらいに帰ってきた
おなかをすかしていたので軽くさすってあげることにした
すると喜んだようにわたしを見上げて
煙をもくもくたてるのだ
なんて奴だろう
暗闇に半身どっかやったまま
煙をもくもくたてるのだ
ああ
今日の月にはカラザがついている