◇ No.437 , '15/09/22 21:08:35 作成

8230 : 渇望  鮎 '15/08/04 16:40:57 *5

産声とともに吐き出した肺の中の空気
淀んだ分娩室の空気と思わず交換して
へその緒ちょん切られたあの日から
足りない 足りない 
って、泣き続けている

ミルクをもらい、あやされて
一時満たされてはまた泣いて
泣き疲れて眠って一日終わる

生きるために授けられた欲求を
満たしながら日々重ね育ってゆく
無垢で可愛い赤ん坊

その「なれの果て」がここにいる


仕事が終われば集中できるものなんかなくて
今日のことより明日のことばかりが気になっている
社会だの職場だの家庭だの細切れに時間や気持ちは割かれてゆく
「忙しいのは、まあ、よいことだよ」
欲望を、飢えを、孤独を周りにうまく隠すことを覚えた

ただ身を焦がす恋だけが僕を満たしてくれる
「きみは、僕たちは、特別だ」
行き着けば何か見えるはずだと自分を騙せる間は
けれどもどんな恋も必ず覚めるから
「始終恋しているわけにもいかないさ」


仕事が夕方のペースに落ちてゆき
頭に空白が生じだすと
僕は渇きを覚え始める
繰り返す明日の予感
今日が閉じてゆく気配
まだ 幕は引かないで
だって 何も手にしていない

結局僕は酒を飲む
ときにいい気分になり
ときに泣き疲れて
眠くなって寝て、そして一日が終わる

酒をミルクにおきかえたなら
僕はあの時のまま
自分の買ったミルクであやされる
無力で満たされない赤ん坊
可愛くないからといって
誰も僕を見捨てないでよ

ああ、こんな人生
こんな僕

でも

いつになったら満たされるのだろう
たぶん、吐き出した空気 身にしまうまで

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8259 : 心と愛  黒髪 '15/08/19 20:50:53

闇の塊を投げつけていじめるのだ
能天気な梵天がいじいじしてる
愛を伝える方法が分からないけど
とりあえずあきらめないでいよう

光の玉を掲げると
思い出せない喜びが心をなしていることに気付く
誰もが健やかになりたいと思う
心を開くことができないから
今はただ闇と光のコントラストをまばゆく思っている

嫌いな人ややりたくないこと
それを自覚できないでいがちじゃん
焦ってスリップしそうだ
張ったロープにつかまる

愛を作ったことがあるかといえば
答えられない俺だが
ここに住んできた重要性を受けとる
いつか旅立って白線を引くだろう
ボール遊びをする場所を作るような
邪魔な奴なんていないよ
それくらいは俺だってわかっている
だまって数を数えた
心が再び生まれたとき最初に見たものが
愛だった
とてもいい
日の目を見てザラザラ日差しが照り付ける
それがとても気持ちいい
口説き文句に嘘を混ぜるようなこと
うぶな俺にはできないよ
手と手が触れて
君の手は美しい
その瞬間を切り取ったのは
永遠に縛られた頭の
くすぶってきた口惜しさの外側
大事にしてた
生の魂の柔らかいところだ

投げつけられた卵でぬるぬるしている
地面に伏せて這いずり回ろう
遊びって楽しいな
ずっと遊びを忘れないでいたいな
善良な心や喜びを
捨てない強さが生まれただろう
俺や彼には美しいところもあったのだ
もし俺が嫌いだった人に会ったら
ごめんよって言って分かり合いたい
まともに動き始めた時計は
時を刻んで残りを縮めていくのだよ
君は気にしているのか
善や悪について
その分かり合えない立場の奪い合いに
旗のメッセージを読むと
独立自立の雄々しき戦士たちが己で信じた誇りを持っているだけだ
希望の旗は
あらゆる人の人格の数だけある
すべての顔があるだけ
知らない顔どうしが目を合わす
間違いが起こらないようによく考えて
自在に生きていこうよ
一度なくしかけた命を
どう使えばいいか分からない
こうして美しい時間を感じられるようになった

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8262 : オナニの話し  ユウスケ、 '15/08/20 23:19:22  [Mail]

本文
鎖につながれた君は今日もオレに背を向ける
もうすぐだって言うのにさ、おいしそうに満月見上げる君の影
無垢な瞳を包むのは、淡い月明かりと、ダンボール製のベットだけ
ごめんとしか言えないオレはただの偽善者かなんかだべ

鎖につながれていないはずなのに行ったり来たりしてるオレ
隣で黙るカタツムリの旦那には、全てまるっとするっとお見通しで、君を抱きしめようとするのはただのオナニーだったって事に気付かされた
あぁ、情けねぇ、電柱とにらめっこ…………

6月の風が遊ぶ相手は、薄く伸ばしたイチゴジャムか、ハチミツ付きの綿雨か
すすり泣くブランコに、へたれこむメンソール、鼻の穴から流れる煙りもオレの頭上じゃ無愛想
それにしても、あの積乱雲に挑んでいった黄金虫の後ろ姿と言ったら刹那の一言で…………
濡れたアスファルト、踏み鳴らすのは、まともぶってる四輪か、やたら元気なクソガキか
止まれの標識ヤジるのは、オレか、カラスか、ビートルズファンかなんかぐらい

おい、鏡でよ〜く見てみれよ
夜明けと共に忘れ去られた無垢な瞳を見なかった事にしたこの面を
ヒーローの目にも写らない灰色の涙は逆光にはね返され
ナチスよりたちの悪い虐殺は昨日の新聞にも載ってないし、今日のニュースでもやってない

グチグチ言ったって始まんねぇだろって、電柱相手に言ったって
鎖が邪魔で何も出来ない

おい、見てみれよ、お前のどこに鎖があんだっ?
冗談じゃねぇ、お前のどこに鎖があんだよっ?

平和を歌う、いつもの皮肉たっぷりしかめっ面に戻ったって
繰り返し叫ぶテレビ画面見せられたって
オナニーもパチンコも我慢する気無いんだから
ケツの穴にオナホールでも突っ込んで、お婆ちゃんに見せてやれ
淡い月明かり見るよりマシさ、鏡でテメー見るよりマシさ、ばあちゃんに愛想尽かされたほうが100%マシなはずさ
見てみないフリ、してる間はこんな感じで生きていく

あぁ、飛行機雲、この首筋に、吹く風は炭酸ガス。

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8261 : 木漏れ日が夜明けを伝えて  竜野息吹 '15/08/20 20:23:07

絶望やら希望を
柔らく包みながら
日射しがからっと音を
立てて佇んでいる
地球のどこかで
颯爽として
朝食の準備をしながら

誰かに恋をする時を数える
永遠の眩暈みたいに
木漏れ日は再び
地球に真夏の影を映しながら
森を創りだしている

あらゆる樹々を彩る緑の
あいだにあって
誰しもの深呼吸とともに
恋しい人に届ける未来だってさえ
きっと愛しさとしても
胸の奥深くに伝わる
微かな音として
木漏れ日は
弾んでいる

あらゆることへと募る
想いのすぐ隣には
ささやかな幸せが
一瞬にも萌黄色に染まって
鮮やかに響く音があるだろう

静かに木漏れ日から
降りそそぐ音楽は
僕らの言葉として
絶望のふちにいてもなお
憂鬱として隠された世界に
小さな希望を
明るく包みながら
涼やかな風とともに
ささやかな夜明けを祝福する

ちょうど
叙事詩のような音が聴こえる
あらゆる出来事とともに
新緑の扉が開いている
木漏れ日の音がからりとして
僕らの澄み渡る夜明けは
きっとすでに始まっている

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8260 : (無題)  町田町太 '15/08/20 15:37:30

一九九七年、夏、沈黙は破られ

電気ドリルでも浴びたような奥歯だったけれど
というのは弁護人である青年は当時まだ十代半ばであり
にしては老け込んだ表情を固めて
それをそのまま湿気た中空にはりつけたまま
蒼褪めた唇で次のように述べたと記録にはある

ええ、仰る通りでございますその者は立方体の隅で饐えておりました!それはもう永久に萎んで仕舞った夕顔のような状態でおそらく誰も、少しも知らない間合いでしょう。こっそり其処へ忍び込んだに相違ないのです。その際に自らを取り巻く物体が瞬く間に酵母のように膨らむという当時の現在についつい気づかずに!いえ或いはそんな事などは承知のうえというBパターンも中途から芽生えたある種の諦念という状態�に瑤録涓鬘辰發海両豺腓麓�ずと、云わずもがな容易に推察および仮定が可能ではありますが、ぎゅっとぎゅっと詰まってゆくあの空間自体を‥(青年は僅かに間をもって)、あの者が刻々どのような心で捉えていたものかどうかということととと(吃音ぎみに)そそれにそれに嗚呼いったいどどどうして何故このような‥失礼(ふるえる指の爪を噛みちぎる)要するにですねこの動機のきっかけこれに関して僕はどうにも解りかねます!とくにか…と、兎に角であります 果たしてそれが死因となって‥ぃんとなったからして‥‥!あの‥御免なさいやっぱり僕にはこれ以上…これいじょうはどうしても‥‥
ついに青年は声を詰まらせ、それきり黙りこみ、しゃくりあげるばかりなので、その後ろの男の番がきて

仕方ないといった調子でざわつく周囲に右手を翳し
ミルクのついたままの口髭を、ぬぐい
マイクを、握って、しきりにスイッチを確かめ確かめながら
上下の唇をしっとりと舐めて‥(という一連のあいだ傍聴者たちは、それはもうウズウズという様子で)

うむ、この村は四方を山に囲まれているわけです
つまりこの時節、なかなか陰気なものでして、はい
予報によれば今夜には、うん、強く長い雨が降るという
降らないなら?ふむ、さてはこれこの場も途端に
夢のひとコマということですなあ!
(とここで、じれったそうにしてざわつく一同を、再び制してから)

雨降れば、わたしたちはまた膨らんでしまうでしょう
哀しいかなわたしたちの孤独とは、云わば子嚢菌に類するものなのです
周囲に黙ってただ無性に増大する!(強い眼差しと拳骨をふりおろして)
いいですかな皆々様方、ここは一刻もはやくに帰るべきでありますぞ!
そして家族のいる者は、何を置いてもまず食卓を囲み
バタとパンとあたたかいミルクでも飲むのがよろしい
またそれが叶わぬ独身者は我が家にどうぞお越しください 
ええ、わたしもまた、孤独なのです
ふむ、正解を教えてくれないという結末、実にこれが結の論、そしてこの罪人‥でいいですね‥の唯一の尊厳なのであったと、我々は落着いたしましょう

(天井裏で様子を伺っていた少年が、
待ちかねたように鐘をうち鳴らす)

何かの虫が哀しげに鳴いて
暮れる陽は雲に隠れて見えなかったけれど
ぼんやりとした糸杉や、疲れた煉瓦だけ立体にしている

皆が、熱っぽい感想を口々にしながら広場へと溢れて背伸びしたり

頭をふりつつ散開しはじめる
誰かと誰かが肩を寄せ合い
誰かが誰かを安価な呑み屋へ誘って
道の両わきにはずらりと並ぶグラニット
その眼は虚空を見ていたとか、いないとか
そんなことは出鱈目であるとしても証拠がない

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8212 : 夜と星  ペスト '15/07/27 15:17:49

水の上を渡る星々の
 一生の間に産んだ後悔の数
 口から吐き出された白い指紋
やがて空は明けゆき一人の影が姿を現す

土の中で音が舞う
AとGから映画館の割れる音がする
ガラスの尾をもつクジャクを見た
草の鋭い葉の先で幼い蝶はその一生を振り返る

工業地帯の涙、つまりは赤銅色の雨の正体は
 哺乳瓶の底に沈澱した溶け出した母親の微かな残り
 口から零した白く流れる甘い息
やがて雲は流れゆき一人の心臓が差し出される

森の中では月の見せる幻だけが僕の手の中で震えていた
純粋で汚れを知らない悪魔の子
地中に流れる熱い血潮は
 次第に黒く錆びていった

氷と話した
 今から15分で水の中へ戻ることにしよう
人の話す言葉は僕にはわからないから
 この温度だけを伝えておくれ

闇を掘り返した
 そこでは白骨化した遺伝子が幼い乳房の上を這いずりまわっていた
夜だというのになんと明るいことか
 白い花の中には蝶の羽が浮かんでいる

遠くの星から声が聞こえる
 ひとつの季節の中に発火した電流の叫び声を注ぐのだ
犬の前足から国際司法裁判所を経由して
 私の耳に長い舌が差し込まれた

排水溝に唇をあてがって大きく息を吸うこと
 次にその細い歯の裏に棲みついた蛙を大きな息で膨らませること
 決して空の色は確認しないこと
生まれて間もない鳥の眼に生えた鱗のように柔らかな朝を迎え入れよう

それでもまだ足りないのだ
手のひらにできた湿疹の数が警察官の仕事の数を増やしていく
拳銃よりも重い視線に貫かれて
 道ゆく風船の群れは地上に倒れた

赤い窓ガラスの上を白い鳥は平行に渡っていく
 その途中で卵を産むが
  そちらの方は重力に従って宇宙の組織の中へと分解されていく
冷たい空気が凍らない理由は舌を抜かれた星々だけが知っていた

僕の手が公転軌道上をかき回しているころ
 すっかり血の抜けた脳が弾みよく僕の横を転がっていった
追いかける足をもたない鳥もいたが
 追いかける足をもつ鳥もいた

ガラス片は星をさまよう
 永久に忘れられることのない静寂の中で
一人の人間は豊かな祈りに対して
 その節くれだった手を捧げるのだった

グラスには黒い心臓が注がれた
 それには誰も手を付けない
 それは飲むためにはないのだから
 ではいったい何のために

鳥の羽ばたく理由は
 蝋燭の火の中に記されていた
しかし教会の鐘の音は
 海の底で眠る鳥たちを呼び覚ましはしなかった

石と水が互いに呼び合い、葉の上で交尾をすると
 それを見届けた蟻が慌てて春の訪れを告げた
黄色い血液の中で未だに太陽を思う人間はいまい
 とはいえ森は燃え上がるのだ

吐き出された夜を飲み込め
 真実が風の吹く方へと流れたならば
  透明な眼をした星々のことを思い出すのだ
砂が息づく水たちのように沈黙は虫たちの羽の裏で眠っている

夜明けは未だに噴水の中を循環して回っていた
湾曲した風の上を蛇の吐き出した鱗粉が渡っていく
海との絶交を果たした魚たちはようやく空のもとへと帰るのだ
めいめいが嵐を呼んだ
鋭く尖った星々が最後の歌をうたっている

木の中は安全か?
コウモリの笑い声が聞こえるか?
地を這う女たちの悲鳴は今日と明日の間に一瞬の温もりを見出せるのか?
羽のない空は彼らの声を伝ってどこまで逃げていこうというのか?

若い葉の上で仰向けに寝転がる蝶を見て
 この空は涙を流すのか?

鋭く尖った星々が
 教会の鐘の音のように獰猛な眼をして走っていく
逃げ遅れた水たちは氷のように葉を広げ
 その口元に赤い果実を実らせた

闇だけが僕のちいさな手のひらで震えている
 深い森の奥で誰のためともなく存在する赤い噴水の正体を
  透明な眼をした星々はその風にのせて
   溶け出した蝋燭の根元へと慎重に運ぶのだ

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8264 : 問いかけ  LEK '15/08/24 23:25:36

わたしは毎日摂取するのです。摂取しなければ生きてはゆけないのです。
と一種の強迫観念のかたまりを、ごくり、と生唾とともに飲み込んで、要素と毒素と無機物とに分解して、してゆく過程を感じているのです。
愛でるように手を添えて胎動と同義の熱をこの両の手に受け取ることが日課なのです。
体内で作り出せない栄養を経口摂取することで死を免れる行為とは不完全な問いかけですから虫食いがあって難解です。
空欄に、ひとつ、ふたつ、みっつ、と具体的な数字を当てはめる作業はわたしにとって無上の歓び、詩なのです。
数限りない味覚が無限の組み合わせで舌体部に歓びを刻み、わたしがわたしの体内で作り出せなかった詩を、経口摂取するための反芻は咥内で文脈を磨り潰すための通過儀礼なのです。
噛み砕かれることで唾液混じりになった単語がてらてらと、液状の概念に溶け嚥下されてゆくのです。

(お水を一杯、いただけませんか?)

詩は随意と反射の木立の狭間で揺りほどかれて、象徴としての無垢性に再構築されてゆくのです。
生い茂る木々の隙間から差し込む光、あらゆる角度のなかにみた輝き、その熱量を下腹部に感じるたびに胎動に似た歓びを感じるのです。
装飾が必要な現代では裸は無垢性の象徴でなければならないのですから、わたしは今日も摂取します。
甘いものや苦いもの、好嫌の基準で選別される食材たち。
端から端までテーブルに、自分がいちばん、とそれぞれが主張し合う料理たちを並べて。
重ねられた白いお皿は分類されて体系化された朝食の献立表。
よごれたお皿はもうわたしの身長を越えているというのに、はじめてみる料理に手を伸ばせば、今まで気づけなかった豊かな味わい、あたらしい種類の味覚があることを今日もまた知るのです。

(あなたも一口、どうですか?)

そして、
この両の手には歓びと同義の裸の詩を。
それをあの回答のひとつとするのです。

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8257 : Dicotyledon  アルフ・O '15/08/17 00:55:56

醒めた顔を隠す。
(肩を掴まれ
 見えない弦が鳴る)
甘えてなどいない、よ、と
助手席に爪を立てる。
(どのみち袋小路だ、
気休めの約束。
絶対なんて求めてない。
(血の透ける腕
 摘まれる。)
 擦れる。
(消される、
突き当たりで
駐まる、
そのまま手を引かれる。
羽根が生えてくるまで
放されないこと、
止まれないこと、
全部聞かされてる。
 せめて指を咬む)
(アンプリファー、

真空で
壁は溶かされ、
ぜろぜろと
息を吐く。
黒い。
踏み潰されたコウモリ

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8189 : amefrashi  はかいし '15/07/11 15:47:18

1.月食
ソナタが告げる、網タイの
太股に突き立てた、刃の
青いことよ。恐怖症
だってさ、先っちょが
いつも震えてる!

2.褐色
暗澹たるトンネルで、
明るさを語ろう、誘って、
誘って、青の光たちが、
裂け目から無数に濡れ出て
くる幻想の中。つながりのない
物語を重ねて、いくつも
いくつも、これで二つめ。

3.結晶
ほむらがほむらんだ、と
紫の稲穂の群が斑、斑、
蒸らした穂の上に落ち、
弔んだ。
そうまでして死語は続く。
ほむらんだ、という動詞のもと
に包みをそっとおこう。
ほむら、群がって、
しゅん、お香典のにおい。

4.
貝殻は海岸に咲く花だ。海の知らない言葉
も知っている。どこからも流れてはこない
のだけど。むらさきの貝殻を、河にさらす。
風に梳けば凪、指は紫に染まる、ほむらが
群がる爪先には風薫る、吹き消せば爪のい
ろはあかるい。

5.最後に
爪に火を燈すような日々……
爪を火に投げ込め、
葬り去れ!
死体は燈る、
火を払って、登る、
木を払って、払っては波、
拭っては涙、拾ってはしかばね、
浮かばね、浮かばね。
もう二度と来るもんか。
この海のもとには。

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8267 : 私は場所として存在するしかない  あ '15/08/27 16:57:30

空間は存在の形式である
存在の形式は空間である
形式は存在の空間では無い
事物は存在の内容である
存在の内容は事物である
内容は存在の事物では無い
空間は形式として存在する
事物は内容として存在する
空間とは形態である
事物とは場所である

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20150827_342_8267p


8273 : 「マヨネーズ」  イロキセイゴ '15/08/31 02:39:37

ポストが閉鎖するとイッサは殺意を覚えた
白いマヨネーズの用器が着地すると
新聞の購読が止まって居る
白い白すぎるのだ

新聞に載る度にポストが閉鎖する事に
イッサは殺意を覚えて居た
例えば長良川で鵜飼を見学して居ても
白い白いポストが浮かび上がって来る

白いマヨネーズの用器が着地したのだ(そして声が発生したのだ)
問答無用でお琴を弾き始めるダミーに恐怖を感じながら
又しても白い白いポストが海水に濡れそぼちながら現れる

ラオーが白いポストを保持しながら
尾瀬沼への観光ツアーで
何故突きを喰らわせねば成らぬのだ
もう少し詳しく言うと前歯が折れたのでは無くて
少し欠けただけなのだと
何故シルクロードを通じて
正確に伝えようとしないのだ

誤解した白いポストに埋まり行く
マヨネーズの夥しさ
黒い椋鳥を観察したお好み焼き喫茶店で
又しても白い白いポストが
マヨネーズを充満させて居るでは無いか

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8266 : 一人で過ごす  Migikata '15/08/27 03:18:47 *1

生い茂る雑木の梢を眺めては
あなたから託されたノートの何処だったか
「ばらばら」
と書かれたのを読んだ。
「気づけば結局、総てがばらばらだ」

数週間前のことだった。

確か、雨が降り始めるところで
ベランダに張り出す廂が
雨粒に叩かれ小さく
次第に大きく、頭上に響くほどに
鳴る。
そんな朝に読んだ。

雨の匂い。
考えの重心が
多少その朝の有様に偏っていた。
だからかどうか、
鳥や獣や虫の
排泄物と死骸がとろけて
記憶に染みこみ
土の匂いを濃くし厚くし、
とめどない妄想の襞の奥まで
純白の蛆虫が食い込んでいる。
噛まれた痛みが、
ある。

そのノート、
三日ほどあと林道で取り落としたノートは
雨水に浸ったまま乾いてしまい、
ページがくっついてもう剥がせない。

そうして、書かれたことの一切は
脳を浮かべる粘液にまみれ
奥のところですっかり腐り始めている、
今、家から離れた渓谷に来ている。
この谷底は気持ちよく晴れ
生き物はみな上機嫌で生きているのに。
ここも地上の円盤の
端の端であって
ノートに書かれていたとおり
ここにあるものもみんな
ばらばら
脈絡がない。

高空を風が渡っていくらしい。
雲は綿を裂くように流れる。これも白い。
特に音というべき音はない。聞いていない。
無声のカンツォーネ、
それが地上を圧している。

蛆虫から孵化した小さな蠅が
頭蓋骨の内側の狭い場所を飛び回り
それが夥しい数である。
僕は蠅の王となり
蠅の群れように考え
蠅の群れのように
自ら問い掛けを続ける。
だがそれは、蠅たちの羽音に過ぎない。

僕はどこにいて
あなたは誰で
かつて僕やあなたや他の人たちは
何をしたのか。
したことに何の意味があったのか。

揺らぐ。

問いが揺らぐ、答えも揺らぐ。
ばらばらなものが、
統一を装いながら揺らぐ。
揺らぐことがわからず揺らぐ。

僕もコクヨのノートにパイロットの万年筆で書こう。
頭上のスカイブルー
ブルーブラックのインク
「ばらばらなことは確かだが、自覚できない。
蠅の王はどこまでも惨めである」

しかし、書くべきノートは何処にもない

ない。

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- ealis -