己で己に敗けるのは、
男子として最も恥ずべき事である。
一度敗け、二度敗け、
やっぱり三度目も敗けたのである。
自分を信じる事も許す事も出来なくなったら、
もはや廃業するしかあるまい。
男は思った。
男はポエムを書いていた。
嫁と子供にも秘密であった。
ポエムなど、
いい年をした分別のある大人の男の書くものではない。
恥ずかしいものだ。
そうは思っても、書かずにはいられなかった。
沸き立つ血が、捌け口を求めていた。
時折ふと我に返り、
男は、無性に腹立たしくなるのだった。
ポエムなどを書いている自分自身に対してである。
そうして突然、
いてもたってもいられなくなり、
すべてを削除するのである。
これで三度目。
男はもう、自身の意思を信じない。
所詮おれの覚悟など、
この程度のものなのだ。
詩を失い、
ポッカリ胸に穴が開いたよう、
だとは思わなかった。
人間なんてものは皆、
初めから埋められない闇を抱えて、
生まれてきたんじゃなかったのか。
おれの闇には詩が似合う。
ただそれだけの事だ。
けれどもすべてを忘れよう。
昨日は家族で公園に行った。
GWの公園は多くの家族連れで賑わっている。
さあ、メシやメシや。
芝生の一角にミッフィーのレジャーシートを広げ、
男は大きなお握りを頬張る。
娘は早く遊びたくてウズウズしている。
パパ、ナワトビシヨー。
娘に引っ張られるままに、
男はごはん粒のついた指を舐め舐め、
人混みのグラウンドにメシアのごとく悠然と降り立つ。
缶ビールで赤らんだ顔の男は、
二重飛びが二十五回も飛べた自分にうっとりする。
どうだ、と思って振り向くと、
娘はもう遠くまで行っている。
わっちゃー。
男は慌てて追いかける。
危ないから、一人でどっか行ったらあかん!
子供思いの、良いパパなのである。
つまらないポエムさえ書かなければ。
おれがくだらないネットポエマーだからと言って、
娘が苛められたら嫌だな。
有象無象の烏合の衆の一人のくせに、
男は、いつか自分が詩で身を立てた時の、
無用で無意味な心配をしていたのだった。
(男にとって詩で身を立てるとは、
中也賞をもらうことでも文学史に名を刻むことでもない。
ロト6で一攫千金、
仕事を辞めポエムサイトで詩三昧、
無頼派気取りでPCM、
それが男の考える至福のポエムライフだった)
だがしかしそんな杞憂ともこれでおさらば、
父として、いつまでもネットに個人情報をさらけ出しておくわけにはいかん。
調子にのって子供の『携帯写真+詩』まで投稿しちゃった。
あぶないあぶない。
いざ、削除。いざ、退会。
本当に削除してもよろしいですか?
これで、いいのだ。
芸術よりも、子供のしあわせ。
許せ太宰、やはりポエムより桃缶だ。
ザ・小市民。
詩を捨てよ、街へ出よう。
藍沢、ポエムやめるってよ。
さらば、薔薇色のラヴァーソウル。
沈黙の日々は流れ、
雨は降り、風は雲を押し流し、色を変え、
見上げた空をまたひとつ、
虚ろな季節が通り過ぎた。
なんにもない、
なんにもない、
なんにもないからしあわせだ。
男はいつしかそんな歌のようなものを口ずさむのが癖になっていた。
ある夜、
団地の四畳半で電気も付けずに男は一人、
CDラジカセを前にぼんやりしていた。
嫁の自慢の嫁入り道具、電動コブラトップ。
oasisのDon't look back in angerを聴こうと思い、
ボタンを押したがカバーが開かない。
イラッとして力まかせに、
無理矢理こじ開けたらギミック部分がポッキリ折れてはずれてしまった。
カバーを握りしめて佇む男。
台所からは嫁が皿を洗う音が聞こえる。
どうする、おれ。
ポエムどころじゃねえ、
おれにはリアルがどうにもならんのだ。
なんにもない、
なんにもない、
なんにもないからしわよせだ。
ふと足下を見ると、
『燃えよドラゴン』のDVDが落ちている。
男はかつて、
ブルース・リーのポエムを書いた事があった。
反響はまったくと言っていいほどなかったが、
それでも男は満足していた。
世の中には、拳でしか語れない美があるのだ。
(ちなみに男はブルースの熱心なファンではない)
“ I said emotional content , not anger ! ”
ブルースは言った。
“ Don't think ! Feeeel !!!! ”
ブルースは言った。
かつて朔太郎が吠えた前橋の青い月に、
香港島でブルースがそっと人差し指を伸ばす。
それは怒りじゃ、ダメなんだ、と。
そうだ、おれはもうおれにすら敗けたのだ。
今さら恥ずかしがる事は何もない。
感じるままに、書けばいい。
ドス黒く澱み腐っていた血が、
獲物を見つけたウワバミのように静かに、
張り詰めた力を制御しながらゆっくりと流れ始めた。
ドクン。
心臓が、耳元で鳴る。
焼酎ロックをちびりと舐めて、
男は再び、立ち上がる決心をした。
と、その前に腕立て十回。
“ What's your style ? ”
“ My style ?
You can call it the art of fighting without fighting . ”
いそいそとスマホを取りだし、
胸を震わせ、アカウントを再取得する。
自虐とナルシスを鎖で繋ぐ、
我が名は、ヌンチャク。
何度でも削除して、
何度でも晒してやろう。
勢いまかせに振り回し、
自らの股間に当てて悶える姿を。
立ち上がれ、おれ、
ネットだろうとリアルだろうと、
人生なんて、何度でも、
いつからでも、やり直せる。
力強い足取りで、
台所へと続く襖を静かに開ける。
眩しい光がゆっくりとおれを包む。
(背後からのカメラアングル、スローモーション
BGMにDon't look back in anger のピアノイントロが流れ始める)
「‥‥あのー、すみません、ラジカセ壊れました‥‥」
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20140911_975_7653p
>明日花ちゃん
>はかいしさん
>山人さん
>R�Oさん
>イロキセイゴさん
>島中さん
>Lisacoさん
>Lisacoさん
頭の中で
ひっそりと眠っていた蝉が
摘出された冬
あなたは生まれ変わった
意識は確かにあるし
五感もしっかりしている
でも ただ
転がっているだけの生を得た
新しい臍から注入される栄養剤と薬
ゴロゴロ ゴロゴロ
定期的に交換される下半身
日になんども鼻腔をつらぬくカテーテル
吸引される命の残渣
あなたの前でだけは
ただ笑うだけの鬼になろう
そう決めた
どこにも行きようのない二人が
白々と物語を紡ぐ日常に
少しばかり倦んできたのは
時の必然かもしれない
煮詰まった空
真夏の占いで
ぼくらの名前は
絶句するほど神に見放されていることを
知った
そうか
ぼくらは
そんな螺旋の縛りのなかを吹いてきたのか
呟いたとき
鉛色の空に
ぽっかり
檸檬が浮かんだ
楕円形の笑いを浮かべたそれは
ひとしずくの涙さえ拒否するような
氷の衣をまとっていた
ぼくらは
どこに転がり
どこを吹けばいいのだろう
羽化してきたばかりの抜け殻に
戻ればいいのだろうか
蝉が寝ぼけ鳴く深夜
戸惑いが 迷子になった
蝉は行方を知っている
知っていて知らないでいる
雨が横殴りに降ってきて
夜をかき回すけれど
あのころ この部屋で泳いでいた鮫は
いったい どこへ行ってしまったのだろう
碧落に太陽は潜み
降り積もる夏が
ぼくらの眠るべき場所を
覆いつくす
エーテルが
青や緑にゆらめく極夜
白い馬が
太陽をもとめて
いまも飛びつづけている
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四日後
銀の風船を
腰に繋ぎ止め
兵隊はやってくる
ずっと街で
警報器が鳴って
現場の一角で
野次馬が騒ぐも
いそいそと
消防隊は
ホースを巻き上げ
ぼやだったと
笑いあう
しばらくして
見覚えはないかと
うろつく巡査が
手配写真を手に
火を放つ者が
とそう呟いては
しきりに
通報を促す
山々を
夕焼けが落ちて
電線に鳥が
数えきれない
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わたしは狐の子だ
母が臨月の月のまるい日に
夢で狐を見たのだ
それは父と母が車で旅に出たときに
轢いてしまった雌の狐だ
狐は暫くして息をひきとった
そして満月の夜に母の夢に現れた
(貴女のお腹の子と引き換えに私の子を助けて下さい)
母は目を覚ましてすぐ新たな命が自分のまあるい腹の中に宿ったのだと
そして昨日まで腹の中に居た子は
あの雌狐に連れて行かれてしまったんだと悟った
母は秋の終わりの寒い日にわたしをこの世に産んだ
わたしは母にも父にも似ていなかった
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>お化けさん
>ヌンチャクさん
>Lisacoさん
>てんがねこさん
キャッチーな生命を歌った
目の奥では、嘘をついてるんだ。
ふやけた愛に何を思った?
間違いだらけで漫画のチーズみたいだ。
窓の外を想ったんだ、
おとなしい色だなって。
初めましてって言ってないのに、
遠慮なく心に入ってくる君のようだ。
言葉遊びがすぎて、
オモチャも壊しちゃって、
手に触れるのはとうとう君だけかな。
抱き締めても、返事はないけど。
「いつまで歌えばいいんだろな、××」
遠い昔に聞いたはずの自分の名前、
雑音でうまいこと聞こえてないな、
たいして嬉しくはないけど。
でも、多分君の声だと思うんだよ。
だから思い出したいんだけど。
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20140913_010_7656p
やあ君、どうも私には理解できないんだ
なぜ空が落ちてこないのか
なぜいつか死ななければならないのか
なぜ太陽はあんなに明るいのか
どうして借金はなくならないのか
やあ君、おい、そこの君、おまえ
私はね、私は本当は愛したいんだよ憎しみなんか醜いだけだ
けれど笑い合う人々というものは平和な金曜日の朝みたいで、
平和な金曜日の朝が映る自動ドアは、なんだか恐ろしくて私は嫌いだ絶対に私はその自動ドアを通ってひんやりとしたビルの中に入らない
それでね、何が言いたいかと言うと
やはり、金が必要だということだ
孤独になるのにもね、この時代の、この国では、簡単なことではないんだよ
やあ君、君はどう思う?
書かれた言葉で説明するのかい、嘘みたいだな
私を下品な馬鹿だと思うかい?
まあ私は下品な馬鹿さ
それではお元気で
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>やあ君、おい、そこの君、おまえ、
>それではお元気で
もう遅い。君は叫ぶだろう、倒れていく数々の唇を、燃えていく語尾の散らす火花を前にして。辺りに飛び火していく頃、君の眸の向こう側には、死人が出ているのさ。言葉を奪っていった魂が、私の中の無限の回廊を駆け巡って、輪廻をくぐって顔を出す。朝、君の顔は日焼けして、太陽に染み着いた黒点のような黒子が映え渡っている。冴え冴えしい、君の栄光を称えて! 誰もが口々に告げ、夢の中でぶちまけた、罵詈雑言の雨を飲み干す。ああ、喉が渇いた。君のせいだ。最初から、分かっていたんだろう。それなら何故、もっと速く水をよこさない。
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公衆便所はいつものとおり
主観を置いても臭わない
自慰感土地勘島の草
とうきょはいつでも叩かれる
小さくなっては今の国
国には島から影になり
影の伝にはあなたのみ
砕けてサヨナラ島流し
私せつなく僅かなしぐさ
水打ちかけずにしりぬぐい
眠り続けるきょとうのと
「せかいで一番乗りになれ」
糊付けされたあなたのしぐさ
しどろもどろで動かないわ
さんねんにくみの教室は
28度の設定で
何かいい痛そうな金魚たち
壊されたいと思ってる
セーラー服が着たくても
束ねるための頭がなくて
漫画ばかりの本棚で
スカート捲りを
待ってます少女はしだいに就職し
大人の少女になったのかしら
少女はいつからしまぐにを
自分のものにしなくなる
またまのとうきょが
大事な掃き溜めになって
叩かれ自慰感アンドの血
広げ続けたスカートに
皇居の空気は降りしきる
さようならとうきょげんだいに
ガンダムの様なロボットを
作って壊して粉々の
とうきょを捨てろ
とうきょを捨てろ
ステロイドを塗りたくり
私を捨てろ
さよならとうきょげんだい
のろえ
さんねんにくみの教室で
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.
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たちどまっている
視点をつきあげると ひかり
真上に
人がいる
さらに
その上にも
人がいる
ビルの
曇りのない窓ガラスに
おはようと
指で
書いてみる
おはよう。
窓の奥に
永い
青空が
横たわっている
降ってくる
おはようを
たぶん 読みあげるまで
千光年
千光年
ひかり
真下には
人がいる
ひかり
自転車を
地上に這わせて
「おはよう」と
「おはよう」
ひといきに
吐き
あるいは 飲みこみ
ぷかり、
あの雲が
語りかけてくるまで
ひかり
千光年
わたしは
この窓に
この
窓に
ひかり
もたれていよう
千 光 年
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箱のなか
1
ここは
硬いケヤキで 柱などの構造が 組み立てられていて
天井と横壁と床は 部厚い漆喰で覆われている
そして床の上には
柔らかい布団が一面ひかれている
丁度
二立方メートル位の
立方体の入れ物のようなのだ
入口も出口もない
この入れ物は
正面にわずかに隙間がある
そのせいなのか
正面の壁の方から
決まった時間に
錐のような船の汽笛が鳴る
わたしは 毎日
目覚まし時計のように聞いて
眼を覚ます
でも 何もすることがなく
ぼんやりしていると
ときどき
右の壁からや 左の壁からは
海猫の声ととともに
鋭い岬に 寄せてはかえす
波の砕ける音が聞こえてくる
この物体を外観的に想像するに
四角い箱のようなのだ
2
わたしは
体育座りをして
この四角い箱にはいっていると
ひとの囁く声が 聞える気がした
幼い頃に聞いた
懐かしい声なので 思わず
父サン 母サンと言ってみた
わたしのとなりが わずかに空間ができていて
穏やかなぬくもりを感じながら 毎日をすごした
箱は狭かったが 夜のセラピックな匂いが
いつも充満していた
ときおり ひかりが箱の透き間から 刺してくる
そのひかりがとても羨ましくて
外の物音がなくなるころを見計らい
ひかりの方に訪ねて行ったりしたが
いつも その場所には
青い半袖のワイシャツが 掛かっている
そして 小学生でも
解ける
やさしい計算式が書いてあった
わたしはふくみ笑いをすると
青い半袖のワイシャツは 不満そうに燃えだして
使い古しのカッターで 手首を切った
朝が噴きだしてきて
全く同じ計算式を
青い空のカンバスに書いた
気が付くと 子供がわたしの横に座っている
しばらく
二人で計算式を眺めてみた
やがて 子供は 悲しそうにして
この部屋は暗いね といって 少し怯えている
だから 優しく子供を抱いて 寝かしつけた
子供の心臓の鼓動が わたしの心臓と共鳴している
もう 数えられないくらい長い間
柔らかい脈を聞きながら
わたしは 子供と溶け合っていった
子供のいたところは いつの間にか 冷たい壁になった
3
ある時のことだ
箱の透き間から きらきらとするひかりが入ってくる
楽しそうな笑い声 静寂 罵声
そっと覗くと
テレビで
バラエティー番組をやっている
とても驚いたが
わたしと全くおなじ
わたしが楽しく 幸せそうに
家族と
食事をしながら
団欒を囲んでいるのだ
柱時計が午後九時を打っている
それを打ち消すように
くりかえし くりかえし
鋭い波の砕ける音が聞こえてくる
訳もなくかなしい
強い衝動が沸きあがり
そういえば
わたしは まだ ここから出たことがない
震える手が
「出てみたい
「生まれて始めてなんだ 箱を開けようと思うのは」
そとは
雨が降りだしている音がする
突然 船の汽笛が 叫び声のように
正面の壁から響いてくる
出口はどこなのだろう
青い空はまだあるのか
計算式はどうなったのだろう
わたしは 忘れていた少年のような計算式が心配になり
ひかりの方向にむかった
水槽
いつも虐められていたので
水槽の魚になりたいと思った
水槽の魚は 自由に泳ぎ 気持良さそうだった
そして いつも楽しそうだった
ある夜のことだ
最先端の思想の本を読んでいると
身体が勝手に動き出して 鰭が生えてきた
気が付くと 手がなくなり 足もなくなっていた
そして 全身が 鱗で覆われていた
夢のような出来事に とても驚いたが
僕が いつも願っていたことだった
とうとう 魚になれた
そう思うと 身体を縛っていた壁のようなものが
壊れて
水に凭れかかるように楽になり
しばらくの間 何もかもが幸せに感じた
でも 泳ぐことは出来ても 歩くことは出来なかった
手を使って 物を持つことも出来なかった
だから 冷蔵庫から 食事を取ることも出来なかった
しかし 僕は魚になれたために
一躍有名になれたので
食べ物は 好奇心いっぱいのファンが
持ってきてくれた
だから 十分に生きていけたのだけれど
透明な箱には 僕しか居なかった
僕は 自由を獲得したのに とても寂しくなった
水槽のそとから
毎日のように
僕の知っている顔
知らない顏たちが見ている
最初は優越感に近い感情が湧いてきて
嬉しかったが
次第に 冷静になると
まるで 監視されているようで この水槽から出たくなった
でも この箱からでると 自由は失われて
死んでしまうと みんなが言っているようにみえる
不満そうにみえたのか
みんなは 僕を励ますために
歌をうたってくれたが
そのうち 飽きてきたのか 段々とみんなは
ひとり去り
またひとり去り
ついに誰もいなくなった
言い知れぬ寂しさが 僕を襲い始めた
だから あらたな自由を求めて
体当たりをして 水槽を破ろうとした
何度も何度も
でも 水槽は破れなかった
僕は悶々とした日々を過ごしたが こんな日々がつづくのならば
魚であることをやめようと思った
そして 僕には もともと
足があり 手もあることを思い出した
水槽はなくなり 僕は 水槽からもひとりになった
部屋はうす暗く 単調な日々がつづいた
僕の部屋には ひとつの水槽がある
僕は魚を見ながら
やはり魚は自由であると思いつづけている
僕の脈が止まるまで 僕には水槽があるのだ
どこにいっても
いつも
なみなみとみずを充たした
水槽がある
箱ひと
1
わたしは 箱である
段ボール箱を被っているわけではない
ある日 雑踏を歩いていると
突然 全身が痙攣して
失神したのが始まりである
それ以来
自分を箱だと思わないと
身体に異変が起きるのだ
発病してからずいぶんとなるが
この十二月の空のもと
わたしは 自分をのっぺりした箱だと信じて
生きている
病状がすすんだためか
他人から 箱ではないと否定されると
全身に痙攣をおこして 気絶するのだ
そのためか
他人とは関わらずに
ほとんど置かれた箱のように
生きている
だから街中で
四角い箱の形をして
ひっそりと ひとに知られずに いることが多い
今日は 一段と寒いような気がするが
ときには一日中 風雨に打たれて
路地端で じっと耐えていることもあった
そして 誰もが
わたしを見て 気づかないでいる
箱だから 息も体臭も気配も
多分ないのだろう
でも
箱でいると 人格が限りなく 否定され
その みすぼらしい外観とは 反比例して
世界の外にいるようで
全能の神のように
他者を見ることが出来ることに気付いた
それは わたしに言い知れぬ快感を与えている
2
そうだ
新しい時代の文明論的な何者かが芽吹く
境界に出会ったことを話そう
都会の
夜もくれたある日のことである
けばけばしいネオンが一面に点灯している
むせかえる欲望を
吐きつづける
この賑わう眠らない街で
路行く男と女たちは
汗ばんだ肌を 際立たせている
客引きが忙しなく動いている
抑揚のない時間の針は
華美で着飾った
剥きだしの歓楽の風景を たんたんと 刻みつづけている
熱気を帯びた男女の
熟し切った声は 夜の窪みに
唾液のような
みずたまりをつくっている
この街の薄汚れた裏角に
今まで誰も見たことがない
おそらく だれも育てたことがないだろう
奇形の胎児が捨ててある
その胎児を跨ぎながら ふたりの男女が罵り合っている
左手にスマートホンをもった
茶髪の十代の女が
「あたしがひきとり たいせつに育てる」
右手に法律書をもった老練な男が
「いや わたくしが人知れずに葬ろう」
罵り合いは ふたりが疲れきるまで終わらなかった
見知らぬ場末の路地の溜まり場は
煌々と冷たい月が揺らめいていた
3
わたしは 箱だから
よそ者のように
世界の外にいるのだから
利害に関係なく
どちらかに判定を下すことができる
そして 自我を擽る満足感を得られるだろう
事実 みずからが文化を作っているかのように
判定を下して
悦に入った
でも どちらかに決めたとしても
あの当事者のふたりにはいうことができない
わたしがしゃべれば
箱でないことがわかり
全身に痙攣を起こして
死んでしまうかもしれない
わたしは こうして長い間 箱でいる
寂しいことはない
どうしても言いたいときは
鏡に向かって
自分自身に話すように
ほんとうの箱にむかって話すのだ
信じられないだろうが
そうすると
わたしと同じ箱でいるひとは
わたしにひそかに話しかけてくる
そして
箱としての秘密を共有するのだが
そのとき 世の中には
わたしと同じ箱ばかりであるように思えてくる
街のなかには
意外と思うかもしれないが
同じ病状の
たくさんの箱がいるものだ
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20140904_905_7640p
>箱から箱を見ている
>箱に入る自分が話をしている気がするので、
>ネット詩に適していると思う
>ネット詩に適していると思う
かこのいちまいがぬけおちることは
これからはえるじゅうまいにつながるの
いまのいちまいがあびるひは
いままでのあびれなかったいちまいの
のうしゅくされたいってきのエネルギー
それはほしとつきとたいよう
それはしきとてんこう
それはわたしたちにははかりしれない
しぜんをとどけるのだ
このはいちまい
ひらひらり
「もりはいつだってそばにいるよ」
きぎのささやきは
ひびのささやきは
いちまいのこのはでわかること
苦悩、そして、快楽。
どれも一つにつめこまれ
はらりとおちて
ひらひらり
やがてジュ(ユ)ウという言葉を
かこのいちまいがぬけおちることは
これからはえるじゅうまいにつながるの
じゅうまいのこのは
べつべつのときをえらびおちていく
あるこのは
むしにくわれ
あるこのは
どうぶつにくわれ
のこりのは
べっどになったり
ひよけになったり
むしがたべたこのはも
どうぶつがたべたこのはも
はっぱであることにはかわりがなく
のうしゅくされたいってきのエネルギーは
かたちをかえて
ほんしつがかわることもなく
どろといっしょに
そのゆうきぶつや
そのびせいぶつを
みみずがたべてはいしゅつする
りょうしつのつちにも
(のうしゅくされたいってきのエネルギー)いちまいのはがある
みみずがたべているあいだにも
あめはふり
つちをとおって
やがてかわとうみにたどりつく
ひとひらのこのは
そのほんしつはかわることなく
すいせいせいぶつにもえいきょうをあたえる
はのエネルギーをうけたどうぶつも
やがてひとにたべられてしまう
このはいちまい
ひらひらり
「もりはいつだってそばにいるよ」
きぎのささやきは
ひびのささやきは
いちまいのこのはでわかること
いまのいちまいがあびるひは
いままでのあびれなかったいちまいの
のうしゅくされたいってきのエネルギー
それはほしとつきとたいよう
それはしきとてんこう
それはわたしたちにははかりしれない
しぜんをとどけるのだ
かこのいちまいがぬけおちることは
これからはえるじゅうまいにつながるの
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20140924_068_7668p
スタートの合図も早々にライバルと逆方向に走り出した
あの黒い競走馬は今も人知れずどこかを走ってるらしい
騎手を乗せることもなく
誰かに期待されるでもなく
競馬場にに行くチャンスがあったなら奴の馬券を探すことを勧めるよ
通行人共の足跡が付いてるだろうが
換金所の連中はそんなことは気にしないさ
それより大事なのは
あのレースは実はまだ終わってないってこと
だって奴は走ってる
王者のように 黒いたて髪をなびかせて前人未到の未開の地に
蹄を叩き込んで 足跡を残している
ほら聞こえるだろう?
白い紙の上にペンを走らせ 言葉を残す奴の蹄の音
奴はレースが始まった時から独創体制
聞こえたなら さっさと奴の馬券を拾いに行けよ
今なら万馬券なんだから
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20140922_052_7664p
今目覚めて
目に映る空は白い
産声は出ないが
生まれた時のように皆が泣く
僕一人だけ悲しく水がこぼれ
ぼくはまた歩き出す
足は進み、進んでは立ち止まる
遠く そして
とおく
この足が僕の夢を知っているから
僕は行く
鳥は鳴き、
花は咲く。
そんなことにすら気付かなかった
僕は行く
僕の頬は濡れ
わらう
せかいは輝く
僕は行く
せかいはなき
そしてせかいはわらう
ほほえむせかいに
微笑ましいみらいを
(Angel サラ・マクラクランを聴いて)
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20140924_080_7669p
まだ湿気を多く含む夜に、薄い膜のような羽は闇夜に溶けこみ身をひそめていた。さきほどまで凪いでいた空。甘い香りを背に乗せたやわらかな風が遥か上空に吹いていた。眉のように伸びた長い二本の触角が今夜の食事のありかを伝えようとわずかに揺れて鼻をくすぐる。ちょっと遠いけど、と囁くような瞳で視線を送れば、長く成長しきる前の触角はうなずく仕草でみじかく二回、上下に揺れて、向かい合った瞳が視線をあわせる。休めた羽をふるわせて、長旅にそなえる深い呼吸。力を込めた柔らかな腹部に赤みが差した直後、最も厚みの薄い雲間から、月明かりを差し込まれた世界は次第に輪郭を思い出していく。夜空に、月が満ちて。
世界の輪郭は甘く立ちあらわれる月夜の静寂。羽を休めて間近に並んだ二羽の蝶が、どこへ遊びにいこうかと羽を揺らして遠くを見ていた。淡い月明かりを受けて羽の模様は本来の色を取り戻す。並んで向かい合う蝶たちは反転しながら夜空に飛び立つ。身を守るための鱗粉を、必要な数だけまとい羽ばたけば、きのうまでは知らなかった月の距離さえ確かめられる。背中の羽には秘密があって、根もとを支えるつけ根から、列をなし枝分かれしていく襞がびっしりと、昼の光を抱えて激しく震える。蓄えた熱を体温に、見上げた角度で飛翔する。背を反らしおおきく弧を描けば、一方の片割れは補うように足りない夜空に弧を描く。もつれながら戯れて、互いに互いを見守るように。夜空に浮かぶふたつの真円。月は重力に惹かれて満ちていく。真夜中を過ぎ、向かい合わせに隣合い、反転していく夜に飛翔する。ゆっくりと欠けはじめるその時刻、二つの月は最も強く惹かれ合う。夜明けは、いまだ遠く。
ほうぼうに散っていく、鱗粉は湿気を含んだひとすじの夜空、列をなし枝分かれして消えていく、やわらかな羽には秘密があって、目線の高さで息をとめ、瞬く間に消えていく、すこしだけ留まる仕草をみせながら、遠ざかる、甘い香りにいざなわれ、帰り道も忘れてしまった、羽をむしれば生きてはいけない、蓄えた熱を体温に、地を這いながら、闇夜を照らし、ただわかるのは月の方角、生まれ変わる間近の魂は、長旅にそなえてちいさくなる、似ている夜空はどこにだって存在するから、いつかは、月の距離も確かめられる、触覚に火をともし、振り払われた鱗分、最も薄い外縁から燃え落ちる、夜、夜が舞いあがり、重力はちいさくなっていく、やがて、青く、落下していく、その途中、背中合わせの前後と左右、双子の蝶が求めたその記号、結ばれた角度を振り払い、淡く、飛翔する、表と裏側、その羽の全身で、重力をかんじている、
その、途中に、
蛾と蝶の違いが何かわかるかい?醜いほうが蛾だというならばそれは区別ではなくて差別だよ。僕ら人間でいったら人種のようなもので、羽の模様は瞳の虹彩。右と左の羽から羽へ、結ぶ谷間のつながった二つのアーチは眉間のかたちで、空をつかんで羽ばたく姿は、ほら、子供たちがかけっこをしているよ。本質的にみな蝶なんだ。完璧な青を湛えるこの子はきっと、遠い遠い海の彼方の国籍で。自力じゃ飛んで帰ることもできやしない。ちょうど故郷を懐かしむ僕の後ろすがたそっくりらしくて、肩甲骨から腰までの青白くてゆるやかな曲線が特に似ているそうなんだ。だから、生まれるはずだった弟がすがたを変えて初めて生まれ落ちてきてくれたんじゃないかって思ってしまうんだ。え、鱗粉が嫌いなのかい?あれは頭から腰にかけてボロボロと落ちる僕らのフケなんだよ。だからどうか、許してくれないか。今日は僕も風呂に入るからさ。青い羽の蝶のため、分厚く積もった鱗粉をしっかりと洗い流すんだ、頭から腰にかけて、しっかりシャンプーするから。どうか無闇に殺さないでほしいんだ。好きになってとは言わないから、さ。
世界は瞬きの数だけその姿を変えていく、
まるで魔法にかかったような星空は、
台詞を忘れた役者のように、
脇役たちとおどけてみせる、
夜明けを嫌い、
照明は踊りつづける、
幕間に、
シャンデリアさながらの、
舞台のすべてに、
帳をおろし、
目蓋をとじる、
幕間を、
今夜という名の演目で、
誰もが羨む、
蝶として、
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20140923_064_7667p
人が美学を捨てた時
其れは小さな嘘が消えた時
あれほど嫌った偽善も消えた
さぞかし満足だろう
企業は正直に利益だけを追求し
政治家は自己保身に走り
親は自分の子さえ良ければ良いのだ
一点の曇りも無いガラス張りの世界
人は賢い正義漢
もう騙される事は無い
戦争は愚か原発だって許さない
外国の基地なんて冗談じゃない
国民全てが国王で
首相だって扱き下ろす
世界のとうたわれた大手企業が大赤字
千人を削減すると言う
路頭に迷うのは何人だろう
人も道具に過ぎない
少子化を危惧するのが判る気がする
そんな事は気にしない
世界で一番賢い民族だ
今や民主主義の王国だ
多分此れが理想郷
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20140922_049_7663p
川べりをパンク修理(なお)したママチャリで
くるりのハイウェイ歌いながら走る
なんだか10代に戻った気分
♪何かデッカイことしてやろう、きっと
20年たっても
なんにもできなかったなぁ
ロードバイクが流線型のヘルメットして
颯爽と抜き去って行く
ママチャリの錆びたギコギコ感が僕には似合う
帰って油でもさしてみようか
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20140922_054_7665p
>つばめさん
>♪何かデッカイことしてやろう、きっと
>イロキセイゴさん
>ロードバイクが流線型のヘルメットを…
>NFSHさん
>錆びたギコギコ感が僕には似合う
>帰って油でもさしてみようか
>たからじまさん
一
山が唸っている
黄花コスモスは真っ直ぐ伸びた先で開き
その蝶のような花弁を風に揺らす
その羽音が大気を破ってゆく
カーテンの隙間から手を伸ばしていた陽光は遮られ
掻き乱す雨が来る
急速に羽ばたきは閉じられ
落ちてゆく燕の夢を見ていた
翅。
水底にひかる銀細工みたいな翅
あれは夏の死骸だ
大気の割れ目からまた秋が分け入るから
空は震え身をよじる
落ちる熱が水面に赤く滲んだ
滴る指先が熱い
二
夜の波間をたくさんの魚の群れ
何処かへ泳いでゆくから
わたしは目を開けて暗いドアの隙間を見つめている
お墓の横の茂みにたったひとつだけ咲いていた薄紫の、
あれは薊だったろうか
わたしの熱がこぼれ落ちて魚になってドアの向こう側に泳いでゆくから
わたしは瞼を閉じる
身体なんて置き去りにして
わたしは魚になりたかった
花弁みたいにはらはら熱が落ちてゆくのに
ひとつまたひとつ指先から熱をわたしに預けるあなた
魚の群れを見送って
わたしはあなたの手を取った
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20140926_108_7672p
>わたしは魚になりたかった
>魚の群れを見送って
>わたしはあなたの手を取った
>atsuchan69さん
>イロキセイゴさん
稲の規則正しいひしめきの中で
全ての尊いものを押しつぶしていきなさい
そうして全ての卑しいものに隠された
厳しく高貴な天秤でもって
稲は実り稲穂は垂れ
かつて無垢であったという人間の大罪を
赦してくれるから
稲は遠い日の人間たちの共同体を記憶し
明日の社会や明日の国家へと既に根を張り
動かずただ刈り取られるのを
物質として生まれ変わるのを
待っているから
稲はひしめく前に他の稲と名を呼びあい
大きな稲の集団を形成する小さな意志を持ち寄った
稲が等しく低い位置に並ぶのは
稲がとっくに孤独も連帯も捨てているから
ただあずかり知らぬ目的のため
尊厳も平等も捨てて意志を全体で還流させているから
雨と風と戯れ
自らの角度も高度も揺らがせながら
終わっていく日にはきっと
ひとつのひしめく国家を作り
実りは人間たちに
人間たちよりも熟した物質的完成を
気づかれることなく示すだろう
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20140917_021_7659p
>自らの角度も高度も揺らがせながら
>でも「稲」と言う物に改めて向かい合う機会と言う点でこの詩はいいでしょう。
>すずらんさん
>山人さん
>稲が等しく低い位置に並ぶのは
>稲がとっくに孤独も連帯も捨てているから
>ただあずかり知らぬ目的のため
>尊厳も平等も捨てて意志を全体で還流させているから
頭からもれてくる感覚はありますね。
なんか、ボトボト落ちてくる。
これなんだろう。どこに持っていくんだろうって思うけど、両手ですくい上げるだけが目一杯。
どうしようこぼれ落ちてしまうんですけどっていう感じ。
だから、ホラって渡すよ。
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20140926_109_7673p
>イロキセイゴさん
ナニカは知らない、
燃える秋の山々はもくもくと煙立ち
はるか上空から
ふりそそぐ焼夷弾によって
木や草も畑も焼けた
森は焔につつまれ
必死に逃げる動物たちを
獰猛な火の手が執拗に追ったけど
翠玉の瞳に大粒の涙をためて
ナニカは何も知らない
歓びのないナニカ、
長い髪を風になびかせ
この古い世界が朽ちてゆくのを
ただ見ることもなしに眺めて
ナニカは知らない、
哀れな人間たちの苦しみ足掻くさま
彼処で聴こえる泣き叫ぶ声を
何も何も そして感じない
ナニカは知らない、
それら悲しみのすべて
棘と棘にその身を傷つけてさえ
笑みし、歌う そよ風の
涙のまじったそよ風の、
散らす花びらの色やかたち
錆びた線路がいつしか途切れ
きゃらきゃらと紅い葉の降りしきる
やがて朽ちてゆく
夕日の丘の家々を後に
ナニカは知らない
ナニカは知らない
何も何も そして感じない
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20140927_114_7674p
>よい「導入部」という感じがしました。
>ナニカと言う何かが面白いですね。
>一通り読みましたが、感想が書きづらいと思いました。と思ってもう一回読むと、いきなりすごかったですね、焼夷弾、山の草や木が、駄目になって居る、そしてタイトルの「ナニカ」、これも分かりづらいですが、詩でも「知らない」と連呼されて居る。でも何か滅びのような感覚を詩にして居るのだと思いました。
>アイデアがいいと思いました。ふと、ビートルズの曲を思い出しました。
パパはお魚釣りに行ったよ!
君はカエルのような平べったい声で言うと
真っ直ぐ僕を見て、おしっこおしっこと喚いた
汲み取り式の便器が怖くて一人で行けないから
君のママが居るのに僕を便所に連れて行った
なにかぐちゃぐちゃおしゃべりしながらジャーっておしっこすると僕があそこを拭いてあげていた
君は本当にカエルのようで、山の中の一軒家でぴょんぴょん遊んでいたんだ
君はやっぱりカエル顔でメガネをかけていて
顎鬚を蓄えた若い男とパパとママ
今はなんだか書類上はそうでないらしいけど
一応将来の家族でってことでやって来てくれた
カエルはお腹が張ってるけど
君もやっぱりお腹がぷっくり膨らんでて
やっぱりカエルだったんだなぁって思った
なんだか、よその娘さんのようで、僕はあまり話しかけられなかったけれど
帰るときに、カエルちゃんだったっけ?って言うと
君はやっぱりカエル顔になってあの頃の笑顔を向けてくれた
不思議なのかな、自販機にくっ付いたオオミズアオを綺麗だなんて言ってデジカメに撮りこんでいた
パクリっとかしないでよ!
するするっと縦に伸びたカエルちゃん
まだまだあの頃のまんまの心なのかも知れないね
君の家族のことは解らないけど、カエル顔をいつまでもね
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20140929_130_7676p
1.
夢は白く滲んで薄まり
窓辺には 一つの赤い花
月は大きく(夜は一面ガラス張り)透明の明かりで
この寂しさは 慰めの粉末
それを秋の水と呑み込めば
全身に倦怠が蔓延する
秋風は 銀色の鈴の音と子供の声と
遠くを走る黒塗りバス
それらを総べる静寂とが
連鎖を紡いで この薄暗い
無機質の そして粘体の空気を
吸い込んで 飽和している
暗いインクの苦い香り
2.
乞食には耳がある
目がある口がある
皮膚が覆い尽くしている
蝙蝠傘が破れて横たわる
乞食を照らしているのは
たったひとつの街燈である
眠りに落ちてはいけないよ
眠りに落ちてしまえば
(弱く銀皿が鳴る鳴る……)
眠りは影になって落ちる
だから乞食は眠らない
目は閉じているが
耳は閉じられない
すっかり人気のない街がよく聞こえる
眠りが影になって落ちれば
身体気だるく 夜の空はほのかに青光る
(まるで眠りのようだとしても)
乞食はまるで眠らない
3.
(白い朝の目覚め)
木々が喜びであるように
人々が喜びであるような
(疲れた眼は)
白い朝の目覚め
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20140929_132_7677p
ある夜のことそれは邂逅と言ってよいかもしれない
きっと君はそんな難しい日本語はワカンナイと言うだろうけれど
ぼくは君にはじめての快楽というものを与えた
ぼく自身の手でもって
ぼく自身の口でもって
ぼく自身のこころでもって
それから縫い針でもって君の瞳を突き刺してやることを
欲し 想像し 望み
けれども決してこれを実行に移すことなどなかった
このことをもってして
人はぼくを変態とよぶだろうか
夢に夢中であった 幻想に夢中であった
行動にならないし 言葉にもならない それらを指して
なんと呼ぶことができようか
それらに名前を付けることなど不可能だ
説明はできないけれども
それらは存在している ただ 存在だけがある
カラオケのフリータイムで朝まで歌うことにした
もっとも君はただぼくの横で朝まで寝ていただけだ
君の纏う布の向こう側の毛穴の奥にまで声を届けても
ぐっすりと眠ったままで たまに拍手にならないほどの拍手をする
手と手とゆっくりと合わせるその仕草に対して
ぼくは唾液を何度も飲み込む
無性に喉が渇いてウーロン茶を何杯も飲んでいた
それから隣の部屋からはユーミンだとか尾崎豊だとか
AKBだとかいろいろな歌が聞こえてくるが
今のぼくにとってあらゆる歌詞は単なる記号以下の価値しか持たず
喉を潤し平静を保つことに精いっぱいであった
となりでは「はるよ、こい」という声が響いていた
さて、とある日のこと
ぼくはメモ帳の端きれに連絡先を書きしるして
あの人に渡したのだけれども
いっこうに連絡は来なくて
あれからどのくらいの月日が流れたのかさえも分からない
たまに思い出したふりをしてスマートフォンをいじってみせたりする
画面の上を指がうまく滑ることなど
今までに一度もなかった
閑話休題。
スマートフォンという言葉を使ってしまうことで
このぼくの言葉たちがたとえば数十年後には
古臭いものになってしまうかもしれない
それはそれで構わないと思うのだと
思い出にせよなんにせよ古臭くなって
色褪せていくものだから
そうやって色褪せたり古臭くなってしまうことを
気にかけている時点で
とてもおこがましいのだけれども。
(慇懃無礼って知ってる?
そんな難しい四字熟語、始めて拝見いたしましたですます。
なんとお読みいたしますのでしょうか?)
君には親指の爪を噛む癖があった
だからいつも深爪のような状態である
親指の敏感な部分がいつも湿っている
そこにぼく自身の唇を触れさせるのが
ぼく自身にとっての喜びであった時期もあった
それからどれくらいの月日が流れたのかは忘れてしまったけれども
一緒に見に行くことになっていた映画は
とっくに公開を終えてしまっていることは確かだ
ぼくの手元にはそれとは別の映画のパンフレットが置いてある
「グレート・ビューティー」とある
そういえば君の好きな映画は「甘い生活」ではなかったか
ねぇ、好きな映画は?
「甘い生活」
なぜ?
モノクロだから
説明はできないけれども分かっているということはある
と誰かが言った
君は
説明できなくても分かるってことがあるんだとすれば
分かるってことの意味なんてないも同然だ
と言った
それから分かることと分からない
説明できることと説明できないこと
それらは全部違うんだ
とも君は言った
机が微妙に揺れた
厳密にはスマートフォンのバイブとやらが
机に伝わったようだった
ぼくは硬直した
どうしても画面の上に指を
上手く滑らせることができなくなった
こうしてまた色褪せていく古臭くなっていく
何も覚めない
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20140911_984_7654p
>思い出にせよなんいせよ古臭くなって
>とてもおこがしいのだけれども。
>そんな難しい四字熟語、始めて拝見いたしましたですます。
リスペクトする詩人は誰や言うたら
有無を言わさずテツをすすめる
パッと見はどちらか言うと
『ウチは日本一不幸な少女やねん』が口癖の
チエちゃんのほうがポエマーぽく見えるかしらんけど
なんやかや言うてもチエちゃんは
家族思いのやさしい子やから
一分間の深イイ話は書けても
詩は書けん
良くてポエムや
『明日は明日の太陽がピカピカやねん!』
こんな感じ
僕は喧嘩と博打に明け暮れる
テツの詩が読みたい
こないだ帰りの電車の中で
JAの帽子かぶった酔っ払いのジジイと
ガイジのニイチャンが喧嘩しとった
ブタブタブタブタブタッ!!
ニイチャンはなんやわからん奇声を発して
激怒したJAが怒鳴り付けた
おまえ日本人ちゃうやろ!
日本語喋れ!!
ここは日本やぞ!
日本の法律で裁いたるど!
刑務所ぶち込んだるど!!
どっちの意見が正しくてどっちから喧嘩売ったんか
事情は知らん
せやけどテツならそこで迷わず
やかましいんじゃボケェ言うとったはずや
言えるかおまえそんなん
誰かて面倒なことには巻き込まれたない
家族持ちならなおさらや
子供に恥じない生き方しよう思て
結局それをうまいこと言い訳にして
いろんなことを見て見ぬふりしながらすまし顔で
波風立てず日々を送っとる
その程度のちんまい男が
ほっこりしたポエム書いて誉められて
何が詩じゃ
何が文学じゃケッタクソ悪い
ちんまい男のちんまいポエム
略してちんポじゃこんなものは
『オゴれる者久しからず
行く川の流れはたえずして
ええカッコしてる奴は皆地獄行き』
ちんちんぶらぶらソーセージ
その背中誰に見せんねん
『今夜、きみ、
快速急行に乗って
流星を正面から
顔に刺青できるか、きみは!』
て吉増に言われても
そんなん出来るのタイソンだけや
ネットポエマーにそんな覚悟も度胸もあるわけないやろ
威勢がいいのは文字の上だけ
生活に首根っこひっつかまれて
キャンタマ縮みあがっとるわ
せやけどテツなら
テツなら血走った目で歯ァ剥き出して
真っ先に拳骨でカタつけとる
おバァにシバかれても
ヨシ江に逃げられても
今日もチエちゃんにホルモン焼かせて
カルメラどついてミツルを脅す
言いたいことを言い
やりたいようにやる
シッピンクッピン『ポリコが来たらはいビスコ!』
なにがじぇーえーや
おどれが日本語喋らんかい
『人生は一日一日が完結編なんじゃ』
詩と拳はよう似とる
僕はテツの詩になりたい
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20141001_141_7682p
>はかいしさん
>前田ふむふむさん
>R�Oさん
夏陽がじっくりと焦がす
白い坂道の曲がり角
大樹の木陰、繁り合う枝葉
セミの声
見上げる少年と虫捕り網
身体を揺らしながら
爪先立って手を伸ばす少年
ぼくは坂を下り
空の虫籠に
短い命を入れてやった
片手で押さえた麦藁帽子
ぼくを見上げる夏の顔
昆虫と引き換えに
ぼくが受け取った笑顔は
最上の贈り物だった
足早に坂をかけ上る少年
脇に挟んだ虫捕り網
揺れる虫籠
白い坂道
夏の日
いまはまだ大きく揺れる虫籠も
いつの日か、きっと
その紐が切れるぐらいに
重くなるだろう
そのとき少年は振り返って
坂道を下りてくる
腕は太くなり
胸は厚くなって
少年は、少年を越えた日に
坂道を下りてくる
そのとき彼は
大樹の陰に見るだろう
幼かった日の自分を
輝きに満ちた日を
懐かしいときを
世界がまだ自分より
ずっとずっと大きかった
あの頃を
あの日々を
あの夏の日を
夏と
少年と
白い坂道
ぼくのなかでは
何もかもが輝いていた
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20141001_140_7681p
広大な宇宙に漂う塵のように
誰とも出会わない者のように
自分を感じる
存在が、
言葉が、
景色が、
僕の表皮を
つるつると滑って
流れていくようだ
僕は
僕自身とも出会わない
意識も無意識も
プラスティックのようで、
剥いでも剥いでも、
中心にあるのは
つるつるとした、
プラスティック製の種子で
途方に暮れる
夕暮れ
緋色に染まった空が
血のようで
忘却していた熱情が
つかの間、
沸き立つ
うじゃうじゃした、
虫のように
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初秋でも
秋を求めて高原へ
生きるを急ぐ訳等無いが
先を取る
嫌な癖付く俗世を
其れに気づかぬ振りして遊ぶ
小市民
其れは遊びの代名詞
山中を
紅葉探して歩けども
傍から見れば怪しく見える
世を捨てて
逝く場探している様で
其れは私の美学が嫌う
赤い葉が
驚き散らぬ数で良い
寂しい山は一人行けない
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雨が降る日は
静かに境界を感じてみる
光差すまでに
芽吹き育つ植物がいる
隙間で雨宿るものもいれば
雨が宿る事も有る
濃厚な囁きは震える鼓動の隅々に
終わりの無い事を教えるために
すこしずつこぼれていく
ミルキーウェイ
ああ、水も星も何時かは
尽きてしまうのでしょうか?
一粒の種が実を結ぶまでに
死んでしまうものの汚れを落とす
それは確かに冷たくもあるけれど
誰もが出来ることではない
結ばれたみずみずしい実は誰の為に。
単一ではなく実は増える事
種は吐き出す事
何時か宿るためにも
瞳が何時も濡れているから
私は何時も泣いている
一粒の雨が頬を伝う
傘を投げ捨てて
静かに燃え上がってって
燃え移してけば良い
私は天(あめ)という物をほんの少々知っているだけ
抉られた畦道は傷跡
土石流がやがて静まれば
砂金の芥子粒はきらきらとしずんでいく
記憶と重なっていく
このみがどこかにとどくころ
なにかがみたされるのでしょうか?
濃厚な雲の隙間から天が降る
何処までも濃厚だからか?
人は昔から今まで
そしてこれからも
本当の潤いを知らない
ああ、零れる前に
燃え上がってしまった
このみはシラヌイ。
蝋が出来る頃
蜂は天の間を縫いつけて
幾ばくともいえない沈黙を作る
わたしはいつも(微笑む)はにかむ
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