/紫陽花が咲き乱れている
そのなかでわたしは
喜田次という男とかさなって
白痴の赤ん坊を妊娠した
/月光にひたされ
みずみずしい夜だった
/十三分おくれている喜田次の時計
あいさつも情報も子守唄も
喜田次の耳にとどくのは十三分後、
十三分後のあたりでわたしは
あなたを待ち伏せしてる
/湾曲した喜田次の背中を
突き破ればあふれだす
淀みながらかがやく喜田次の内界
そこにはり巡らされた
とうめいな器官と器官に
ナイフをつき刺し
ばらばらにして
てきとうな大きさになった
あなたを毎夜、消費します
/分娩室で
裏か表か、助産師にとわれ
どちらでもない、と答えた
わたしと赤ん坊の関係はえいえんに
どちらでもないまま終焉をむかえる
誰のせいでもなく
赤ん坊が咲き乱れるみたいに
/揺れないゆりかご
赤ん坊が泣く
わたしのたましいは
喜田次の内界、を
彷徨していて、ね
すべて遠くのできごとのよう
だから、
/わたしの腕に絡みつく
ちいさな白い十本の指ゆび
それらが乳や唄を求めても
わたしのたましいは拒絶する
眠ってください
/いつかむかえるその日まで
たなびく霞の
やわらかな秩序に
包まれていたくて
/赤ん坊の鼻と口をふさいで
呼吸を止めた、
赤くなったり
青くなったり
酸性、アルカリ性
そして酸性度によって
いろとりどりになった
皮膚と皮膚と瞳が
わたしを告発する
/真夜中に浮かぶ六角形
そいつが欲しくて
はだしのまま
紫陽花畑のなかを駆けぬける
つややかな大地だ
母親たちの産声が
紺青のかぜとなって
子守唄をうたう
/さようなら/はじめまして
/わたしを受容した宇宙よ
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130406_955_6800p
>/湾曲した喜田次の背中を
>突き破ればあふれだす
>淀みながらかがやく喜田次の内界
>そこにはり巡らされた
>とうめいな器官と器官に
>ナイフをつき刺し
>ばらばらにして
>てきとうな大きさになった
>あなたを毎夜、消費します
>わたしのたましいは
>喜田次の内界、を
>彷徨していて、ね
>すべて遠くのできごとのよう
>だから、
>/わたしの腕に絡みつく
>ちいさな白い十本の指ゆび
>それらが乳や唄を求めても
>わたしのたましいは拒絶する
>精神性の摂取とは自己同一性への疑問・矛盾の萌芽でもあり、弁証法的にそこから新たな自己 意識を獲得するためのきっかけでもあり得る。簡単に言えば思春期的な感情。
>でもこれはハッピーエンドを意味してはおらず、彼女の存在は危ういままの気がします。そこ がまた深みがあっていいのですけど。
>すべて遠くのできごとのよう
>使いまわされたテーマ文体
気付いたこと、俺は芸術について語ってる時より、どの馬が一番速いか語るときの方がいきいきしてらぁ、ってこと。上がり3ハロンで人生決まると思ってますよ、といつまで俺はくすぶってりゃ気が済むんだ?
婚約者に買ってもらった婚約指輪の裏側には「禁煙しろ」ってアルファベットで刻まれてるんだけど、そもそも煙草吸わないあなた、禁煙してますか? してませんよね、そうなんですよ禁煙って煙草吸ってるから出来るわけで常に細胞レベルでニコチンにうずうずしてないと禁煙って言えないわけでさ、煙草吸わないと出来ないんだよ、っつったら、殴られた、グーで、いてぇよ。
セックスするときコンドームを使用しない様に神様から作られたタイプの人間、つまり俺みたいなやつが一番こころにぐさっと来る言葉ってのが、「生理が来ない」、こいつはもう核兵器、そもそも生活不能者ってほどでもないけど定職につけない奴にそんなこと持ちだしてどうする? こちとらアコムとアイフルに挟み撃ち喰らって目の前には奨学金というヌリカベが迫っててよ、生理がこねぇんじゃそりゃ末脚も糞もねぇ、追い込みどころか追い込まれじゃねぇか、って毎回思うんだけど、なんとなく毎度スルーして生きてきたんだよね。
つーのもこれまでは恋愛も糞もねぇから、やりたいやつとやられたいやつがやりあってただけであって、んなもん俺が親父だなんて誰にも証明できねーのばっかだったから、華麗にスルー、女の敵だね、いやいや、女ってそんなもんだろ? 「糞ビッチ」とか馬鹿じゃねぇかなぁと思う、女は糞ビッチだろうが、そっから始まるんじゃねーの?
そんでだ、なんだか婚約しちゃったんだよね、もちろん婚約者に彼氏も愛人も売春も認めてるから俺の種じゃねぇだろっつーベースは変わんねぇんだけどさ、「生理がこねぇ」、ぞくぞく来たね、だって逃げ場ねぇもん、永遠の愛を誓い合っちゃったもん、ニーチェ風に言えば、「愛情の見せかけを永遠に約束」しちゃったもん。一応いまんところ学生という仮面被って色々やってたんだけど、全部おじゃん、これ最高じゃね? 一生懸命になって人生のチキンレースに参加しながら、歯ぁガタガタ言わせて誰の子ともしれねぇ野郎の面倒をみるなんて、なんて素敵。脳裏をよぎった言葉、てめぇの敵を弱り切ったカスだと思うなよ、てめぇの敵はいつでもてめぇにとって最も恐ろしい敵であれ。速攻でやぶりすてた就職相談会の案内を吸い殻やらでぐしゃぐしゃになった屑かごから拾い集めてきてパズルしてさ、次は公務員試験の日程の調査よ、ここまできたらもうマジだろ、俺は俺がもっとも恐れていたものになるんだ、これほど胸が躍る瞬間なんてないだろ?
そんで思い出したのがこの前読んだ、河出の『ペット殺処分』って本、動物愛護センターの実務をノンフィクションっぽく書いたフィクションなんだけど、正直言っちゃうとさ、なんで罪のない犬や猫が心ない飼い主のせいでこんな目に合わんといかんの? とかおとめチックな感傷をもろだしして、ぼろ泣きしました、飼ってる猫抱きしめちゃいました。はい、俺の進路決定、生涯糞みたいなペット飼い主を呪い続けながら、感情ひた隠して犬や猫を安楽死させることにしました、公務員試験受かるくらいの脳みそは持ってんだよ、意外に。ってことをとある医学部の女性に相談してたら産むにしろ産まないにしろ母胎の安全のために妊娠検査はした方がいいよ、ってナイスアドバイスをされたので婚約者にしてもらった。自暴自棄になってんの? いや、わくわくしてる。
はい白、はい生理不順、残念でした、シュウカツ関連グッズもう一度屑かごにぶち込んで、公務員試験関連のブックマーク一瞬で消し去った。あんな、「禁煙」って普通アルファベットにしたら「KINNEN」だろ? 「KINEN」になってんだけど、これじゃ「記念」じゃね? 知っててやってたんならあんたすげぇよ、とか思いながら、今日もスパスパ禁煙。コーヒー&シガレッツでそういうのあったね。実はもう一カ月煙草買ってねーのよ、金ためて、あんたと暮らす家買いたいからさ、シケモク吸ってんのよ、わかる?
知ってる? 今でも世界中でわらわらと子供とか死んでんだよ? わらわらわらわら。
知ってる。
その無数の誕生と死のなかのひとつにてめぇの子かもわかんねぇ誕生と死を数えられないのが、わりかし人間なんじゃない? 犬とか猫とか毎日何十匹も殺しながら、ひとつの誕生を祝福する、この矛盾の中に隠されたなにかを、だれかわかったら俺に教えてくれ。
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130328_848_6784p
>まず、作者はこの作品を共感し
>てほしがっているんだろうか?>そんなことを考える必要はありません。このテキストに共感するもしないも読み手次第です。
>共感を求めるなら作中で擬似体
>験をさせられるくらい緻密に描かないと無理じゃない?>
>それから誰だって自分の経験以
>外は描けないんじゃないかしら?>
>「KINNEN」だろ? 「KINEN」になってんだけど、これじゃ「記念」じゃね? 知っててやってたんならあんたすげぇよ
やがてそれはやって来る
と、子どもたちが見上げる
デジタル表示の危険を
犬のように感知して
動こうとしなかった連中は
やはり今も動こうとしない
自分では動いているつもりで
背景だけが流れていく
放棄された古里では
枯れ枝のような手が
それでも誇らしげに
日々を紡いでいる
眠れない鳥
の夢を見る魚
水槽の中で
世界が完結している
うつむいた老母の
背中が割れて
翼のような双葉が
暗い空を目指す
触発されて君が跳ぶ
無様なフォームで宙を泳ぎ
泥の中に真新しい靴で
躊躇いのない着地を
飛び散る飛沫
汚された聖衣
罵声を上げる
東の学者たち
すべては画面の中だと
他人事で見つめる奴らを
長い夢から覚ますために
道端の犬の知恵を借りる
カットオフ、と呟いて
鉱物のように生きる
逃避とか後退とか
それすらも考えずに
たくさんの人々が
それぞれの瞬間を
ヒトコマずつ繋ぎ
とりあえず今日を
歩いている
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130401_893_6792p
>抽象的で少し分かりにくく、それぞれの連のつながりも曖昧な状態にしました。>
>たくさんの人々が
>それぞれの瞬間を
>ヒトコマずつ繋ぎ
>とりあえず今日を
>歩いている>
>歩いている>
>やがてそれはやって来る
>神谷マジック(初対面だっつーの)。
>お返しのレス(批評返し)をしていなかったことに気づき、
>「作品の解釈は作者の意識解釈である」
>そうであれば、ちゃんとお返しの言葉をいただいていますよ。
風がふきこんでくる
空がすっと石となり
季節のせいにして。
本をつめてしのぐ
手当たり次第に
むずがゆくなるまで。
電気をくって
絡ませあう者らは皆
うつくしい肢体だ。
取り出したギターを爪弾こう
夜明けのほとりで。
波の中で笛を奏で
舌打ちを合いの手に
あちこちつつかれ
流氷から流氷へ
生まれつきの天使
iPodへ耳をつっこむ。
雪がほしいと
どこか知らない駅で
焦がされたいと。
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130418_112_6812p
>昔に買ったギターを爪弾こう
>不眠の夜はいい
>夜明け近くまでいい
>iPodで耳をやる
>天使は生まれつきの天使と思う
>時々、雪が欲しくなる
>どこか知らない駅で
>限りない静の圧倒さで
>焦げ尽くされたいと
うわっ臭え
まるで、お前んちの風呂の匂い
ちげえよ、お前んちの味噌汁の匂い
これは、校長のハゲの匂いだな、まちがいない、それだな
あのカツラ、石神井川の藻屑で作ったらしいぜ
かき集めてさ、
尊敬する
黙々と、
尊敬する
必死でさ、
尊敬する
退職金無いらしいよ、まじで
尊敬する
藻屑でカツラ作ったから、かわいそうに
尊敬する
並大抵の努力では、あの規模の虚無を埋め合わすことはできないのである
尊敬する
それ被ってさ、朝礼で俺たち並ばせてさ、
シンガポールではゴミを道に捨てると罰金刑となります、
わが校わが町でもそのようにすればゴミを道に捨てる人はいなくなるでしょうか、しかし、
つってさ、
藻屑で作ったカツラかぶってさ、
うわっ臭え、うわっ臭え
おえー おえー げぼー げぼぼぼぼー
喧しくてあいつらの声が聞こえない
あいつん家とあいつん家
どこだっけ もうねえな じゃもう来ねえな
ここどこだよ
蜥蜴を見つけた
美術館の娘にプレゼント
誕生会に俺だけ呼ばれて
水こぼしてさ
悪くないのよ 悪くないのよ、ってみんなしてさ
うるせえよ
担任がアコーディオンうまくてさ
やさしくて
黒板殴りつけて一度だけ怒ったんだよ
その日まで俺たちは騒がしくて
次の日から俺たちはまた騒がしくて先生はまたやさしかった
この話、誰も憶えてねえんだよなあ
よっちゃん憶えてる?
バスが出るとき野ぐそしてさ
みんなで探して
女の子なのにさ
きらめく水面
臭いなんて無いんだね今さら
きれいだね
嫌いだよ
なんて
もう
鯉が泳いでいった
ゆらり
きらり
これから
自転車で
ほらほら
よっよっよっと
おーいおーい
こっちむけよ
ばーか
フェンスの向こう
なんてもう
あったっけ
いったっけ
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130403_912_6795p
>並大抵の努力では、あの規模の虚無を埋め合わすことはできないのである
>意味が不明なものにも、ぼくは好みのものがありますが、これはそうではなかった。改行の仕方があまりに乱暴。語の選択と配置に無配慮な気がしました。
>>並大抵の努力では、あの規模の虚無を埋め合わすことはできないのである
>
>この部分だけが、ちょっと浮いて見えました。
>その日まで俺たちは騒がしくて
>次の日から俺たちはまた騒がしくて先生はまたやさしかった
>悪くないですよ、
>一概に悪いとは言い切れないのかもしれない。
>いや、僕ね、この作品悪くないと思います。
>30行目、までは僕は非常に楽しめた。
>私にとっては29行で、充分素晴らしかった。
>ぼくの作品は
>
>どこから読んでも
>
>どこだけを読んでも
>
>楽しんでいただけるかなって思っています。
>くどいと言うか、作者が、このように書きたかったであろう意図はわかりますが、もったいないなー、って思った。
この
水たまりを越えて
私は違う国に行くわ
そう言う君の瞳は
青く鈍く光っている
もう
迷わないで君の強さは
隠れていない
何処にもいっていない
震える体はとてもとてもしなやかで
逆さまに建ってるその国は
誰も拒む事を許しはし無い
しないから
欲しがるのは終わりだと
二度と言わないで
言わないで
灰を被ったお姫様
愛を捨てた王子様
二人が出会ったその先は
逆さまに建ってるその国は
誰も拒む事を許しはし無い
しないから
欲しがるのは終わりだと
二度と言わないで
言わないで
この物語は始まってしまった
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130326_835_6783p
>逆さまに建ってるその国は
>もう迷わないで
>震える体はとてもとてもしなやかで
>逆さまに建ってるその国
>灰を被ったお姫様>
>6783 : 逆光 A '13/03/26 12:53:08
煙草は止めた、海が汚れないとも限らない。
内奥を見据えたい。渇いた原初が数列を成し、ひび割れて決壊する、
この度死んでいこうとしているあなたも。一番奥まで。海に向かう。
私は曇らない。曇るのはいつだって私じゃなく空の方だった、触れるか触れないかの繋ぎ方で、あなたと手を重ねようとした。届きそうになると遠ざかる。首の後ろ側と頭が酷く痛む。伸ばされたあなたの指先は、私の眉間に向く。私は晴れない。
海が見たいと言い出したあなたのために、私は日焼け止めの塗料を贈る。繋がろうとしていた手が振り払われた、私は「私」からしか語れず、あなたも「ワタシ」とのみ言う、私たち、海を目の前にして、どうにも気分は浮かばないね、日焼け止めの瓶には水溶性の文書を。蓋が開けられることはない。雲を作り出して見せようか、と思う、あなたはあさっての方を見る――
砂浜にあなたは十字を描いた、色のない、ぼくは
そこに色がついてしまったら行かなくちゃ。あなたを、
色がついたら、うしなうかもしれない
あなたは天使じゃない。そして私はただの人間でなければならない。煙草のタールとニコチンに緩やかに殺されていくべきで、あなたはそれを止めなければならない、口頭で、私たちは海を、大気汚染を、その内の硫化水素や一酸化炭素を、ついに口ずさんで、再生の比喩は、小児の真っ直ぐさで、いつだって私たちは、美しい緑色の言の葉に乗せて、声を発して。
黒ずんだ朝が押し寄せて来る、あなたは知らないまま眠っている、
煙草の箱を取り出した、一旦宙に吸い込まれた、それ、を。
あなたは飛び跳ねた、色彩は生気に満ちて、粒子が
さらに細かく。小さな、あなた。私はそれ以上に小さくなり、
海に抱かれる、砂浜に埋もれかけた宿主のいない二枚貝があなただけに浮力を与える、
沈んでいく前に、拉げた指先を、私は隠し、水溶性の言葉は青い水に拒まれて、その殆どが弾けて。それでも、いくつかがあなたに届く、そうしたらあなたは私を追って沈むだろう――私は一人で沈殿を始める。
煙草を吸わなくなってから、私は時間というものを見とめるようになった。何処にも、何にも届かない呼びかけを、蹴りながら、退屈を過ごして夢を見ようとして、瞼を上げる、下げる、映像の代わりに時間というものを、私は見る、痛みが増していく。あなたは掌を揺らす、私はそこで目を覚ます、この間、隣人が高い処から死んでいった。
私が為せることはこんなにも多く、そして少ない。私はあなたに寄り添う全てのものについて手を出せずにいる、小さな桜色の貝殻を、凍結してそれからほどける、私は硬くなる、硬く硬く、あなたの指先に砕かれた小さな桜貝を、私は忘れられない。あなたは確かに死んでいく。
あなたは天使じゃなく、私は最初から私として、指先が触れ合う、息が止まりそうになる、それを感じる、私が。私は、私の息が止まろうとしているのを、感じる、私。子どものための数列には目盛りが、あって、幾つもの数え切れないほど刻まれた目盛りの間に、数列のさざ波に、私は沈む、あなたは彫刻された目盛りを剥がす、組まれ絡まったあなたの両手に色のない十字を、私は、見る。それは透明だったかもしれない。これから死んでいくあなたに、私は無酸素の、温かみの一切が抜けた、渇きを手渡、
される。
あれ、――、
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130308_474_6756p
>私はそこで目を覚ます、この間、隣人が高い処から死んでいった。 この部分は、何故、目を覚ましてから隣人が死んでいった事実を思い出したのか。人間関係の希薄さを表すためにおかれた一文だったのでしょうか。
>あれ、――、 は結語として自分はピンと来なかったです。全体的には優れた詩文のように思いました。('13/03/09 19:58:16 *2)
>ゆえにこの文章は、詩が、消費されるときと同じように消費されなければならないだろう。
花の蜜はとても濃厚だ。痺れさせるほどの甘味は苦味とまがうばかりで、苦い生活ゆえに乾きまた喉を潤す蜜を探すのだと、そういった。いつか薔薇の中に潜る小さな虫のようにその甘みに耽溺して。苦き世のうつつを過ぎる尊さに。あなたが、甘い。
を、
食んでいました
咀嚼するその音に拘束された、瞳が
嚥下されるその前に
私は屠殺されてしまうのでしょう
柔らかな枕とハミングに挟まれて
の、
栄養成分を栄養士に聞かなければ
無視できない痛みを負う事はままあることだからと。蜂蜜を傷口にぬる古い風習のままいった。抗うべきことが多すぎるのだ、しかしその繰り返しで。あなたの愛くるしさは生きていけるのだと、その素振り、あくまで自然に。
は、
確かに消化は良さそうです。
嘘つきな
腕にすがる
私を遠ざけないでくださいと
不在が小指を噛みちぎる前に
どうか、と
冷たい枕と沈んだ寝室での晩餐
わたしとあなたの
不健康はきっと
偏ってしまったからなのだ
残酷に奪うのが奪い合うのが
甘い 甘い
夕暮れ時になるとどこからか聞こえてくる笛の音が私をハナムグリの憂愁にさそい。
の、
毒性については、
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130416_088_6808p
>すいません、僕にはわかりませんでした。よろしければ少し解説していただけると、ありがたいです
>残酷に奪うのが奪い合うのが
>甘い 甘い
>あなたが、甘い。
>その素振り、あくまで自然に。
>を、
>食んでいました
>言いたげなことそれ自体はぜんぜん悪くないことなんだけど、その手の作品で距離感をコントロールしようと思うと、自分が0距離から発したまだ感覚に近いようなものを"文字"として確定させるときに、自分の視点から"うまいこと"離してやる必要がある。この客観視の想定距離が適切な方は、作品と読み手との距離感の作り方も上手だと思います。つまりこれが作品を作品たるものにするのに重要な『読まれるという意識』ってやつですよね。
>の、
>栄養成分を栄養士に聞かなければ
>は、
>確かに消化は良さそうです。
>を、
>食んでいました
>わたしとあなたの不健康はきっと偏ってしまった
大空に浮かぶ雲の流れに、時の速さを思い知る。
この大地に根ざして生きている人々の姿に、たくましさを思い知る。
太陽の偉大さを知っているから、オレンジ色の黄昏が、
ほらもうすぐ哀しい闇夜の到来に、軟な私は怯えてしまう。
「今日もやっと一日が終わった。」という安堵感と共に、
「今日も又過ぎ去ってしまった。」という失望感が入り混じる。
夜空に星が瞬き、願う事と言えば、
この時と空の果てしなさに呑み込まれないように。
時を止めて・・・
息を潜め・・・
いつも、待ち続ける事ばかりだった。
いったい何が正しく、どこまでいったら悪人になるのか、
何も、自分からは決断出来なかった。
そんな自分にさよなら・・・
今すぐ、闇から光の方へ歩き出そう。
今夜だけは、一人でもたじろぐことなく、
肝を据えて得体の知れない恐竜に向かって、挑戦状を突きつけよう。
時よ、どうぞ止まっておくれ。
私を追い越さないで。
時よ、待っておくれ。
私を置き去りにしないでくれ。
もうすぐ透明なガラスをすり抜けて、
私もきっと時空を飛んで行くから。
みんな、私を置き去りにして、
横切っていく。
なにくわない顔をして。
突き放して逃げていく。
愚痴は言わず口を閉ざして・・・
晩熟な私は、性なる秘密を、
知らなさ過ぎて、
それ故、不安な気持ちだけが先行して、
はやる心も焦るばかりだった。
息切れをしながら、必死で
みんなの後ろを駆け足で、ついて行こうと、
みんなと歩調をあわせようと
確かに心に誓っていた。
されど、不埒な心はいつの間にか、
怠惰な日々の繰り返し。
涙が溢れて前が見えない。
その隙を突いて、
時は無常に過ぎていく。
今日もそ知らぬ顔をして・・・・
時空の風は天、空高く吹き抜けて、心が寒い。
春まっ盛りだというのに・・・
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130330_865_6786p
>大空に浮かぶ雲の流れに、時の速さを思い知る。
>この大地に根ざして生きている人々の姿に、たくましさを思い知る。
>太陽の偉大さを知っているから、オレンジ色の黄昏が、
>ほらもうすぐ哀しい闇夜の到来に、軟な私は怯えてしまう。
>「今日もやっと一日が終わった。」という安堵感と共に、
>「今日も又過ぎ去ってしまった。」という失望感が入り混じる。
>夜空に星が瞬き、願う事と言えば、
>この時と空の果てしなさに呑み込まれないように。
>時を止めて・・・
>息を潜め・・・
>いつも、待ち続ける事ばかりだった。
>何も、自分からは決断出来なかった。
>そんな自分にさよなら・・・
>今すぐ、闇から光の方へ歩き出そう。
>今夜だけは、一人でもたじろぐことなく、
>肝を据えて得体の知れない恐竜に向かって、挑戦状を突きつけよう。
>時よ、どうぞ止まっておくれ。
>私を追い越さないで。
>時よ、待っておくれ。
>私を置き去りにしないでくれ。
>もうすぐ透明なガラスをすり抜けて、
>私もきっと時空を飛んで行くから。
>みんな、私を置き去りにして、
>横切っていく。
>なにくわない顔をして。
>突き放して逃げていく。
>愚痴は言わず口を閉ざして・・・
>晩熟な私は、性なる秘密を、
>知らなさ過ぎて、
>それ故、不安な気持ちだけが先行して、
>はやる心も焦るばかりだった。
>息切れをしながら、必死で
>みんなの後ろを駆け足で、ついて行こうと、
>みんなと歩調をあわせようと
>確かに心に誓っていた。
>されど、不埒な心はいつの間にか、
>怠惰な日々の繰り返し。
>涙が溢れて前が見えない。
>その隙を突いて、
>時は無常に過ぎていく。
>今日もそ知らぬ顔をして・・・・
>時空の風は天、空高く吹き抜けて、心が寒い。
>春まっ盛りだというのに・・・
>オレンジ色の黄昏>
>この大地に根ざして‥
>大空に浮かぶ雲の流れに、時の速さを思い知る。
>夜空に星が瞬き、願う事と言えば、
>この時と空の果てしなさに呑み込まれないように。この大地に根ざして生きている人々の姿に、たくましさを思い知る。
>太陽の偉大さを知っているから、オレンジ色の黄昏が、
>ほらもうすぐ哀しい闇夜の到来に、軟な私は怯えてしまう。
>夜空に星が瞬き、願う事と言えば、
>この時と空の果てしなさに呑み込まれないように。
>いつも、待ち続ける事ばかりだった。
>何も、自分からは決断出来なかった。
>そんな自分にさよなら・・・
>今すぐ、闇から光の方へ歩き出そう。
>今夜だけは、一人でもたじろぐことなく、
>肝を据えて得体の知れない恐竜に向かって、挑戦状を突きつけよう。
>もうすぐ透明なガラスをすり抜けて、
>私もきっと時空を飛んで行くから。
あなたは、あいしたものへいつだって
しにたがりな言葉をあててしまうから
私はそんな頭を「わらわずや」って、
わらいながら撫でつける
ゆびさきは、
自律神経からいちばん遠い場所だから
いつだってしなない程度に冷えていて
こうやってあなたの髪をすくときに、
わざと、頭皮にあててやるんです
わらいがおして、私、
たぶん自律神経が上手に働いていないのね
だからあなたの震える注射針に刺されても、
ささやかな反応すらしめせずに
思っていたより"いたいこと"なんて、案外少ないよねって、
またわらいがおして、
それは紛うことなく花束で
枯れるまでなら何となくで飾られるから
でも、私はきっとすぐ、
喉を渇かせて
あなたを考え、浸かる浴槽に、
しんでしまった髪の毛や皮膚が無限に浮かんでくるものだから
めにはいればすぐ掬い流している
いつか、私はそれを
探しはじめたりするのだろうか
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130415_064_6806p
>あててしまう
>あててやる
>でも、私はきっとすぐ、
>喉を渇かせて
>いつか、私はそれを
>探しはじめたりするのだろうか
>飾られる
>飯沼ふるいさんへ
>飾られる
>ニャンボーさんへ
>前半の読んですぐにドキリとするような直感性に欠けているように感じました。
>深街ゆかさん
>熊尾英治さん
>中田ひまつぶしさん
>にゃむさん
>近江駈さん
>作者のあたまのなかで完結しているだけの気分のわるい文書。
>《しにたがりな言葉》とは?
>しかし妙な消化不良が残り、また読み返す余地を与えてくれるように思う。初めに<つっかえ>の効果を指摘した。前半にそれが顕著で、後半、特に三連はスムーズで落ち着いていく。<私>の心理の流れと表現の流れが一致しているのだと思った。「わらわずや」と冷たい指を押し当てる些細ないじわるをする<私>から、浴槽で独り考える<私>へ。私が落ち着いてゆく流れと、表現が落ち着いてゆく流れが重なっていると思う。
>1回目は読み飛ばしたけど、2回目はなんかいいかも、と踏みとどまった作品でした。
顕彰の旗が波音にはためき
瓦礫に突き刺さっている
故郷を捨てられない者の群れが
火照った耳を泥土にうずくめている
不毛は語草にこびりつき
冤罪原子は浮遊し
地獄や天国も色褪せ
生は罪が人目に晒された夢
命は爪を研ぎ指先は火のように熱く
鋭い閃光が恐怖と希望の
あいだを乱反射している
かもめの翼 陽の光を切り裂く
時折 とても眩しい
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130308_473_6755p
>地獄や天国も色褪せ
>生は罪が人目に晒された夢
>鋭い閃光が恐怖と希望の
>なんとなく、部分的に、在日朝鮮人を保守的な視点から揶揄してるように読めなくもない。
博士は盛りの納豆をインカムしながらバラ茶に浸けた萎びたへその緒を指で摘んだ、大学教授の息子はラッパ飲みの有為スキーを縫着させた歩兵隊として家族の庭を湯豆腐と踏み荒らす、冬の日暮れは早漏気味のトランクスの脇風にてイヌフグリの可憐な花も暮らしの手帳の押し花、、、寝たきりだ、、、。通帳と印鑑はバックの中で腐乱(フランス)人形、、、夢見る、、、。池にマリモが浮いている。壇一雄が中華鍋で殴打している料理人も池で鬱屈した(一流のシェフが今では老犬のように舌をだし調味している、、、たしかに合理的なのだが、、、)まま、マリモを捕獲しようとガバっと跳躍して、無機質の電子音で踊る池の対岸の若者たちに熱烈に歓迎された。しかし、レイブが終わって取り残され(その若者たちは、さくら水産に飲みに行った、、、しかし、料理人としてはまだジョナサンの方が納得できたのだ、、、下戸だから)干し竿に吊り下げられた雨天の洗濯物のように自己を不憫に感じながら、不惑、という惑星に不時着しても星の王子様はたぶん来訪しないだろうとイメクラに出かけた。故郷か、、、カウンターでつぶやいた声を赤トンボがリツィートした時には、機動隊とデモ隊の垣根は消滅したかのようだった。しかし、その数瞬後には、、、暴徒とボートレース(平和島)。
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>カウンターでつぶやいた声を赤トンボがリツィートした時には
、花嫁衣装で有料パーキングを疾走する。
シャンパンは、あまい劇薬の味がする。
シャッターは、押さない。
煽動家は、シニカルな微笑を浮かべない。
ストッキングは、ときに利便な凶器である。
シャッターは、押さない。
弾痕は、ルームサービスのスパイの仕業。
非常階段は、液状火薬で溺死する。
シャッターは、押さない。
グランドピアノは、三人がかりで移動する。
回転扉は、午前中には回転しない。
シャッターは、押さない。
マイクスタンドは、ときに利便な凶器である。
花嫁は、三人がかりで移動する。
シャッターは、押さない。
道具係は、そろって搬入口にはまりこむ。
回転扉は、午後になっても回転しない。
シャッターは、押さない。
花束は、ときに利便な凶器である。
アンリ・ミショーは、有料パーキングを疾走しない。
シャッターは、押さない。
道具係は、そろって液状火薬で溺死する。
回転扉は、ルームサービスのスパイの仕業。
シャッターは、押さない。
ネクタイは、ときに利便な凶器である。
調理済みフォアグラは、調理済みフォアグラの味がする。
シャッターは、押さない。
参加者は、予定の場所に招集される。
「それでは撮ります、みなさん笑って」
シャッターは、押さない。
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「お客様、お客様、本日は当館にご来場ありがとうございました。映画の上映が終わりましたので、速やかにご退場ください」とアルバイト係員の近藤明美が三度丁寧にアナウンスするが、それでも座席でぐったりしたまま動じず、いっかな退席する気配の見せないケンタに対し、加えて三度「お客様、お客様、本日は当館にご来場ありがとうございました。映画の上映が終わりましたので、速やかにご退場ください」とこれもばか丁寧にアナウンスを繰り返すが、ここにいたってもやはりケンタは鑑賞シートに深く座したまま動じないといった体たらくゆえ、同僚の間でもっぱら生き仏であるという定評をもらい常日頃愉悦することしきりの近藤明美もとうとうこれには業を煮やし、しかし業務中であるのでむやみやたらに声を荒げることもままならず、それでも内面に押さえつけられた憤怒のために声はいきおい大声となり、「おきゃくさまあ……おきゃくさまあ……あ! ……ほんじつわあ……はやくう…あ! はやくたい、たいじょうしてえ……はいい!」と仏顔を化粧崩れの如くに崩しながらにじりにじりと場内の隅に座するケンタのほうへに詰め寄るが、暗がりでケンタが泡を吹いて悶絶しているのを見てとるや否や「ぎやーっ」と反転し、そのまま素っ頓狂な声をあげて思わず後方伸身宙返り二回ひねり後方屈身宙返りしてしまうなどの狂態を演じたのち退場口をくにらくにらして駆け抜けていく、と数秒後、すぐに事情を聞いた訳知り顔の年輩の係員岸田一信がAEDを抱えながら場内にそそくさと駆け込んできたかと思うと、「患者は……患者はどこだ!」とバリトン気味の声音でとりあえず絶叫し、席でぐったりしているケンタを発見すると駆け寄ってまた、「ぉおれが、おれがきみを救う!」ととりあえず絶叫した。岸田はケンタの着ていたネルシャツのボタンを一つ一つ慇懃に取り外すと、さらにわけのわからないふにゃふにゃしたマカロニ文字の書かれたTシャツを、持参した布切りバサミで慎重に切り開いたのち、装置の電極をはだけた胸部の適当な場所に貼り付けてみるが、この岸田という奴、要領を得ぬといった顔でなかなか装置を起動できず、おもむろに両の手に拳固を握りしめたかと思えばぐわんと天井を見上げ悔恨に塗れた体で、「……くそこれまでか、おれには、ぐ、おれにはこの男を……救うことが、でき、なかった……まこ、もこ、まことに無添加、いや無念、極まり、ない……ゆ許せ、許せ、青年よお、青年ようおおおおお……」などと大仰に非劇を演出している手前、AEDは勝手に起動しケンタの体内に電流を注ぐと、ケンタはむくりと覚醒、嗚咽号泣しながら「救急車、救急車」と叫ぶ、が、喉が裂けたような感覚があってけっきょく叫べず、代わりになぜか「スープパスタスープパスタ」「色即是空パスタ」あるいは「君の瞳にパスタ」などという意味のないようなことばをわめき散らし、そのまま数人の係員の制止する声を戦場へ向かう兵士らを鼓舞する類の声援のごとくに気持ち良く受け止め意気揚々と映画館を後にし、それでもいまだ半分意識を失ったままであったゆえ、やはりわけもわからずむやみに映画館近くのハンバーガーショップへ勇み顔で立ち入り、なぜかチーズバーガーのピクルス抜きと頼むところをバンズ抜きと言い間違え、店員は「チーズバーガー、バンズ抜きですね、二百五十円になります」と快活な笑顔で朗らかに答え「あ、すいません、追加でミートも抜いてもらって、コカ・コーラの、ええとコーラ抜きもお願いします!」とケンタが白目をむいて威勢よくのたまえば「かしこまりました。そうすると合計で三百五十円になります!」とやはり快活な笑顔で朗らかに返ずるのであった、であった、であった、などと悠長に三度云っているような暇もやはりなくそのままはやる足で近くの公園まで無心に彷徨、人妻婦人たちが日ごろのうっぷんを晴らすべく愚にもつかぬ世間話などを激烈な勢いでべちゃくりあうのをしかしよく耳をすましてみると、もはや彼女らの会話は内実を失った何やら会話っぽい発話のやり合いに過ぎないものへと変じており「あらそうなの田城さんの旦那さんもええほんとお? そうなのよまあまあそういう加藤さんのとこの旦那さんもほんとそんな感じじゃありませんの? そうよねえ分かる分かる。ほんと勘弁してほしいわよねえ。わたしたちだって羽伸ばしたいわあ。そうよねえ分かる分かる。でもあれじゃあない? あれ? え? あれ? ……あ! え? あれ。あれそうよねえ分かる分かる、え? うんうん、ほんと勘弁してほしいわよねえあれ。分かるわたしもほんとそう思うすごく思うわあって、おほほ。やっぱりあれよねえ、わたしたちって、分かるわよねやっぱり気が合うのよねえ分かるほんと、わたしも分かるほんと、ほんとそう思う分かるわあなんでこんな分かるのかしらほんとそう思う分かるわあ」などと表層的上っ面のレベルにおける意味のない相互理解を認証し合って愉悦することしきりであるのをベンチに腰掛け耳に受け流しながら、砂場におびただしく溢れかえる体長三四尺ほどの童女らの蟻のごとく賑やかで無邪気な戯れをぼんやりと平均的に眺めるなどしていると、うわこれはもしや食物神オオゲツヒメノカミのお告げかなあなどと感得せずにはいられぬほどあまりにも唐突に無性に腹が減った感覚に襲われたかと思えばそのまま空腹的欲望は階乗的スピードで絶頂にまで到達、あわてて先ほど購ってきた紙袋を開き、何やら楽しげなピエロのマークのついたべらべらの包装を取り除いた途端、そこに本来あるはずのバンズが存在しなかったのゆえ、むろんミートも存在しなかったのゆえ、チーズとタレとレタスなどのくにょくにょどもが押さえを失って無残に膝元にぶち撒かれるという状況に至って、ようやくケンタははっきりと意識を取り戻しおもむろに天空を仰いだ。
快晴、快晴、まさしく快晴!
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>お客様、お客様、本日は当館にご来場ありがとうございました。映画の上映が終わりましたので、速やかにご退場ください
>店員は「チーズバーガー、バンズ抜きですね、二百五十円になります」と快活な笑顔で朗らかに答え
Green tea.
友人の父親が死んだ。脳腫瘍だった。はじめは、ドカタの、現場仕事をしていて足場から落下したのだと。そこで彼は鎖骨を折り、CTだか、MRIだかの診断画像からその腫瘍は発見されたのだと。ぼくはその友人と長く、親子ぐるみでの付き合いもあった。悪性か良性かと、誰にともなく問うと、三日後に悪性だと知らされた。ぼくは怨嗟を口にしたと思う。それは何に対して? わからない。
彼は、ぼくが見舞いに訪れる度、人間でなくなっていくようだった。人間としての機能の内、まずは挨拶を失う。ぼくが誰だか思い出せなくなった。稀に思い出すのに成功した時だけ、彼はぼくらの知る人間性を再現した。一度快復の兆候を見せて退院したらしい。ぼくの母親が「家族だけでゆっくりさせてあげなきゃ」と言って、ぼくらは友人の父親が帰還している間、声も聞かなかった。次に再び入院暮らしを始めて、ぼくが顔を見せに行った時、つい数か月前まで同じ人間として接してきた彼が、最早別種の生物となっていた。何人かの患者が同居するその空間には、脳疾患特有の大きな、おおきな、鼾だけがあった。
友人の父親が死んだ。父親を失った友人は、父親に倣ってラークを好んで吸うようになった。ぼくは彼の通夜で「ミチオ」と呟いた。誰もかれもが啜り泣く空間で準備されていた緑茶の味を、ぼくは忘れない。それは甘くて、しっかり人間の中で認識され消費されていったのだから。ぼくや、友人は煙草を吸える年齢になった。それを告げるために棺の中にマルボロの吸殻を放り込んでおくのを忘れたのが、心残りだ。脳腫瘍の人間に、意思や言葉は通じるだろうか、ぼくはそれでも伝えてやるべきだったと、後悔する。出された緑茶を飲み干せなかったのは、多分、ぼくが人間だったからだ。
Umbrella,umbrella.
新宿でぼくは知らない人に声を掛けられた。煙草の煙が不自然なほど少ない街で、あらゆる人種がいる多民族国家で、人工と清潔と雑踏とが、鬱蒼と生い茂るジャングルで。「Excuse me」はじめの一言はこうだったと思う。二人組の日本人ではない誰かで、それでも男性だとわかる人たちが。彼らは目の前にある賃貸情報の張り出された掲示板のことについて質問してきた。ぼくは英語で会話をしたことなどなかったが、中学英語や高校英語は得意だったので、拙いながらも会話が成立した。「Excuse me」だなんて、本当に使われる言葉だったのだ、ということがぼくの関心事だった。二人組の内の一人の、鼻から毛が飛び出していたとかそういうことは意識しなかったと思う。
時々、予め脳に障害を持って生まれてきた人や、後発的に能力を欠いた人、そういう人たちの中の、ぼくらが通常使う言語が全く通じない人に出会うことがある。ぼくがスーパーマーケットでアルバイトをしていた頃、染髪料の空き箱を持ってぼくに接触してきた老婆がいた。声を発するのは聞こえたが、凡そ、ぼくの知り得る言語には聞き取れなかった。手に持つ空き箱から、同じ商品を買い求めに来たのだとわかったが、それを手渡しても何かが満足しなかったらしく、必死に言葉を紡いだ。でもそれはおそらくどの国へ行っても、どの言語体系に則っても伝わらない幻の発語だ。無力だった。ぼくは人間としてその老婆に恐怖し、また自らの弱さ、至らなさに泣いてしまいそうだった。アルバイト中だったので心を殺していたのが幸いした。
外出先で予想しない降雨に見舞われて、ぼくは安物のビニル傘を購入する。普通の人ならこうして、家に傘が一切ないという状況とは無縁となるのだろうが。降りしきる雨を避けるため、購入した傘を差して屋外に出る。そろそろ電車に乗らなければ。夜に友人宅で麻雀をする予定があった。友人の家に辿りつく。雨は上がっている。ぼくはいつも、その友人の家に、購入してから一日も経たない真新しい傘を置いて帰る。そろそろ、新しい傘の供給がないぼくの家から、一本の傘もなくなるかもしれない。しかしそれについて危機感らしきものはない、と感じる。昨日。今日は残り二本の、一本を持って外に出たら、スーツを着た日本のサラリーマンみたいな風体の外国人が、「ワォ!」とか言いながら駆けていって、彼の足が散らした水飛沫を、腰の曲がった老婆がものともせず、濡れ鼠になって歩いていたから、持っていた傘を思わずあげてしまった。「傘はどうされたんですか」と尋ねると「突然の雨で……あなたはいいの?」なんて言うものだから「ぼくんち、それなんですよ(真後ろを、親指で)。もう一本持って来ないとな、それじゃ、行ってらっしゃい」と言い捨てて踵を返した。多分老婆は笑っていたと思う。ぼくはこうやって傘を失っていく。最後の一本を如何にして失うのか、願わくば言葉の通じない渡し方を。あんぶれら、あんぶれら。発声さえない。
Dead flower.
ぼくが仕事に疲れると、誘うようにして十歩先に現れる女の子がいるという話。女の子は花畑を探している。ぼくは先導するふりをして、実は彼女の行く先に追従する。花畑でなくても、路傍に咲くタンポポやイヌノフグリに笑みを零す素敵な女の子。フラウ、とぼくだけに呼ばれる女の子。自身が花のようなフラウ。幼い女の子。
風を一つだけ捕まえてあげる、といって、たった一つの風を三分間もぼくと彼女自身にぶつける。彼女といる時だけぼくは人間として、表皮のさっぱり乾いた、健康で十全な心持ちを得る。十分おきに鳴るぼくの携帯電話をフラウは不思議そうに見る。ぼくはそれを無視する。彼女の声さえ聞いていればいいのだった。
ぼくは、同僚の女性とセックスする。買い置きしたスキンが乾く暇はない。恋人を作る気もまた、ない。翌日の仕事が憂鬱になる。それでもぼくは女性を抱く。今日は上司に少しだけ厳しく叱られた。そしてぼくは軟らかい乳房を揉む。ぼくは根性があって、見込みがあるらしい。直属の上司からの評価。その後ぼくは縋りつくようにして女性の毛を口に含む。ぼくがしたいことだけを女性の身体に行う。多分ぼくはセックスが下手だ。くたくたに窶れながらぼくはその後仕事をする。そんな日に限ってフラウは現れない。そうして必ず次の日には細い肩を怒らせて、のしのしと、前方からやってくる。ぼくは仕事をほっぽり出す。フラウがぼくをしゃがませて、ぼくの口の端を抓る。ぼくは苦笑いで謝辞を連ねる。
経血の薄汚さを知らない少女。女性として不完全な、異質の存在。ぼくはきっとフラウとセックスしたいとは思っていない。彼女もそれをまだ望まない。道端に咲く花へ直向きな喜びを向けている間、彼女に初潮はやってこない。それは死んでいる花。幼い少女はまだ生きていない。花のような可憐な少女、いつかぼくが性徴の少しだけ遅れた彼女に性愛を向ける時が来たら、死んでしまおうと思っている。しみや乾燥知らずの滑らかな頬も、軟らかくないだろう乳房も、細すぎて危うい腰も、一切の飾り気のないだろう性器も全てが愛おしい。まだ人間の女性として不十分であり、だからこそ人間ではない、フラウ、まだ神様になれない少女、誰にも見つからず咲こうとしている、これから生きる死んだ花。
Beautiful world.
世界はとても美しい。ぼくの乗る電車が人身事故で、もう一時間、運行を停止している。ニコチンの欠乏した頭で、人が死んだということについて想う。一個の肉体とその内に詰め込まれた血液や生理液とが、バラバラに四散する。アナウンスされる救助活動、実際に行われる回収作業。世界はとても美しい。そんな日に雨を降らせてくれるのだから。そんな時に、人々が心を止める朝と、あらゆるものを隠す夜とを、用意してくれるのだから。
一人の健全な男性が無知な童女に性愛を向ける。屋外のある場所に棲みついた猫のために餌を出してやる。自らの鬱憤を晴らすためだけに仕事上の部下に罵声を浴びせる。杖を片手にだだっ広い道路と対峙する老人の手を取り連れ立って横断する。歩き煙草を楽しみ道端に投げ捨てる。自らが出したゴミを完璧に分別する。世界はとても美しい。たった一人の人間にこれだけのことをさせるのだから。
人が人を殺す時、その方法如何はあるにしろ、きちんと後悔する。世界はとても美しい。その後悔を失ってしまった、あるいは最初から持って生まれなかった人間には、相対した人が申し訳なくなるほど、社会生活、社交の場で礼儀正しく、また心配りと挨拶の能力を持たせるのだから。ぼくは職場での些細なミスを後悔したりしない。シリアルキラーやサイコパスが殺人を後悔しないからといって、人間として異常なことなどないのかもしれないと思う。人間が人間でなくなるときとは? 世界はとても美しい。
最近頭痛が酷い。胃の調子が悪い。動悸もする。快晴の空の下を歩く。世界はこんなにも美しい。仕事を休んで良かったと思う。初夏の午前、世界は遍く照らし出され、清々しく、穏やかに、自らの身体を意識することを忘れさせて、空の向こうでは住宅の屋根が連なる、その向こうに柔らかく膨らんだ雲があって、さらに遥か彼方にまた青空があり、目の前をキアゲハが横切り、どこまでも飛んで行こうと身を投げ出し、ぼくは煙草に火をつける、表出しない死を、穏やかな気持ちで、あるいは知らないまま手繰り寄せている。世界はとても美しい。
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>ぼくは、忘れない。
>それは甘くて、しっかり人間の中で
>しっかり人間の中で認識され消費されていったのだから。
>出された緑茶を飲み干せなかったのは、多分、ぼくが人間だったからだ。
>人工と清潔と雑踏とが、鬱蒼と生い茂るジャングル
>言葉の通じない渡し方を。あんぶれら、あんぶれら。
>経血の薄汚さを知らない少女
>女性として不完全な、異質の存在
>道端に咲く花へ直向きな喜びを向けている間、彼女に初潮はやってこない
>それは死んでいる花。
>幼い少女はまだ生きていない、
>花のような可憐な少女、
>世界はとても美しい。
>俺に奇跡みたいな所業を望むのね。
>俺ならそれができると。
>普段書くようなのとは違うもの書きたいって思うんです。
>「断定的過ぎ」
>「何が言いたいのか、何を目指すのかわからな過ぎ」