鳥と獣と妖女の物語
時の合図より、言葉の変遷を奏で梵鐘の音響と共に、時という言葉を
普遍という
まほろばに
所在し、移し深(み)の。 妖艶なる女の溺死を水面に浮かべる 平らな孔雀
玉虫 黄金 ランタン
湖岸の波紋、白い女の溺死を呼び迎えらせた、降りしきるみぞれ雨の、上空の雑居する星星は 世界を目線からさえぎる 雫が落ちる銀の泡 ほの白く透明なビニール
暗雲垂れ込む夜を静めて 息づく女
このなだらかな丘からながむる夢 その地形図を指に描き、その指先に彼女は無言のまに
ここに一つの物語をつくった
風の笛よ 序曲になびき、
時のリズムに雨音 刻まれし 静寂へと変わる
湖岸の妖艶 まほろば 天地 時の永却 楽隊さながら 自然が
彼女の音ねに 呼吸を合わせる。
私たちが静寂とよんだ 楽隊達が 奏でる 音耳より記す
白鳥の死せる最後の声が 彼女に伝う
こうして生きるなら、死すれば産みし
黒体の水鳥
今この墨液の溜まりに浮かんだ理想を待ちわびて 生きては背き 往く果てさえ背き
今ここに黒曜石と化した。沈む鎮魂 あなたのもって生まれた永遠に
しめやかに 妖女の笛が 湖岸よさざなむ 音耳より記す
黒体の水鳥、
湖底に沈む 森が墓標を築き あなたの持って生まれた永遠に 白鳥(しらとり)の声に
ささやく 羽衣 白き女体 鎧の中枢 性器 ゆうらぐ楓
わたしに手をさしのべてください! と
精いっぱいの声で
わたしからは無理なのだから わたしはここにあるすべてで
もうたくさんだから
どうかわたしをこれ以上苦しめて欲しくはないのです。
言葉のくちばし 愛と憎しみをついばむ糞
はしたない愛憎を 一文わたしにむけて 閉じ込めたわたしを
窮屈にさせて
そのひとは あげくにも その気取りであの世に逝きて背き
さよならも言わず 劣悪な一文をわたしに投げつけ あの世に逝きて背き
言葉のくちばしをはしたない一文で
わたしを腐らせた・・・愛憎のくず
在りし立つ 風の悲しき 楓(かえで)の女
そなたを憎み 我逝かん
言葉愛しき くちびる噛むに
去るのが 情愛にして最愛であるに
己が野暮に見えるとも
そなたは 波間の美しき御身
己が暗がりに見えるとも
そなたはさやけき真昼にぞ
そなたを慈しむるとき そなたは太陽にも勝らんと
なのに私は そなたを憎み
すべてをねたみ この卑しむる心を
御身にさらすのみ
そなたを憎み 我逝かん
言葉愛しき くちびる噛むに
生を滅するが 情愛にして最愛であるに
そなたを憎み 我逝かん
そなたを憎み 我逝かん
愛の森は いつもくすぶり、わたしは 波間に揺うらぐ楓
神様わたしに手をさしのべてください。 せいいっぱいなのです わたしからは無理なのだから わたしはここにあるすべてでもうたくさん
私の体を剥ぎ取って下さい。 冷たく
性器 森 愛欲 匂い
静かにわたしを埋めて下さい。
きっと心を透かして見てください。 もうこの森にわたしのすべてを埋めて下さい。
どうかお願いです! どうか! どうか!
嗚咽 気狂い涙
楓の女 森の墓標、言葉の杖で 情念を地面に穿つ
無言のまま妖女は肩からその女を抱き、 天の羽衣に包まれる
楓の木が 小さく小さく崩れ
安堵の涙がほのかに女の目からこぼれ落ちる、「アナタノトコロニ」
囁きながら
その女は温もる体が もとより強く抱き寄せられ
妖女はそっと女の息を吸い、
冷たくさせる
森は溶け 楓は土くれ、情念は風に消ゆ。空は膨らみ 黒煙の雨が降りしきる
黒体の水鳥 妖女の笛 すべての災いを警笛に吹き替え、狂の楽園に
遠吠えを呼び覚ました。
創世記は獣から始まり、言葉の泉は感情の意思から発する 互いその所在を
認めあわねばならないという意思が、明快に喉に汽笛ともいえるその狼列車に
くゆ 燃ゆる 煙は吐く息に、山河の獣覇者らが 喝采の遠吠えに、
足よつ滑走 黒雨の洗礼が注がれ 湖畔のみずばしらが立ちのぼる。
弧弓のしなりに・・・・矢の指す胸に
はざ身にまとう案山子が
刈り取られた稲穂を懐かしみ ヒックヒック、しゃくり上げて泣く 案山子から
決死の拷問 妖女の前に出向いてすがる人頭の案山子
包帯がぐるぐると頭に巻かれ 案山子のその決死の拷問は
口もとはふさがれ 鼻盛りは削がれ 顔面表皮はめくりめき
削がれた鼻の痛み 穴からひゅーひゅーと
開閉する鼻腔が音を立てる。風の笛
うちわの柄が、二つ目を突き抜ける かんざし
両耳は削がれ 風のこめかみを突き抜ける 穴
感覚の痛みが ひたひたと混血の雨にしきりと落ちて
ケイレンする身体肉片 かしぎ くずれる 骨の残骸…
飛散する がらくた
そうしたすべての苦痛は あたかも人間界のさしむけられた没落の地にて
果てしれぬ恐怖心を抱いていたのだ
はざを掛けられた人頭かかしは 我自由を解き放て!
その成り行く果てが唱えられる
決死の拷問
変わり逝くそのときまで
妖女は弔い続ける
ひひっくひっくひっくひっく 泣くあぁぁー
わたしはどのみち人間ではないのです わたしはかかしでもなんでもないんです
わたしはわたしでもなんでもないんです なのにあぁぁーひっく
人間に化け、おどけていた私は もういらない アァァヒック
人間に化け、恐怖に怯えていた私は もういらない アァァヒック
人間に化け、この服も 足も この頭も
こんな身づくろいもういらないんです アァァヒック
こんなみじめなわたしを化け物と思わんでください アァァヒック
アァ 人間から離れよう こんな無残さをさらさないでおくれ
こんな恐怖も 怯えも なくなって
あぁ 空よ消えよ …この心もいずれ消えよう
いずれ無感不覚のうちに ・・・・この心もいずれ消えよう
そして おやすみ 稲穂のはざよ あなたがたの温もりもまた消えよう
あぁ稲穂を懐かしみ ・・・・この憧憬もいずれ消えよう
さよなら 稲穂たち あぁ稲穂よ 今の私をさらさないでおくれ
さよなら 稲穂たち おやすみ 稲穂たち
かかしがかかしでなくなる。 一体の詩をもって その役を その恐怖を断ち切る
かかしの体は 不言物となった 木の葉、ぼろ、棒きれ、藁、砕けた残骸、
かかしは人間の近づかぬ不言物となった。
人間の寄りつけぬ、不言物 狂の楽園に 踊り過ぐ風
魂の変遷、がらくた
永却 無限 の 地平 に 転がる 木の葉、ぼろ、棒きれ、傘、
永却 無限 の 時 に のせて
風化せらるる 物と詩…
すべてが妖女のもとへと届かれる 肢体の詩
灰に埋もれる 黄疸 落ち葉 を 絵筆に採って
鏡にむかい、ゴッホは 耳を剥いだ 彼は しかと見てその 自画像を描く
寡黙の包帯がキャンパスに塗り込められ、朴訥と、表情はにんげんの顔になっていく
灰に埋もれる 褐色 黒い髪 絵筆にとって
タヒチの女にむかい ゴーギャンは 酒瓶に茶色い唇をかぐ その芳しい肉体を具象する 血色の裸体がキャンパスに塗り込められ、温度と、呼吸に 南国に 彼は陶酔する
灰に埋もれる 教会 外壁 を 絵筆にとって
路地を歩き ユトリロは 精神薄弱を嘆いた 彼はその外路地にイーゼルをたてる
真っ白な家がキャンパスからはみ出し、少しだけ空がのぞく
救われし補色よ ユトリロの白
灰に埋もれる 夢魔 イメージ を 画ペンにとって
岩石の世界を歩いた ルドンは 創世記ドラゴン を描いた。すべてが始まりすべてが終わらぬ神秘の黒 その光をやどす黒はルドンの成しえた色。
灰に埋もれる 透明 女馬 を 絵筆にとって
子供の眠りを歩いた シャガールさん あなたのゆるぎない想像を 永年の意思として
青く瞳を開かせ 人々は宙に浮き 踊り ゆるぎない意思を残して夢は続けられて
灰に埋もれる 玉依 絢爛 を 絵筆にとって
娘を描いた 岸田劉生 彼はすべてのものから魂をくり抜く。変遷万化する色とりどりは
キャンパスに塊と化す。生きたまま呼吸したまま時間を止めて息づく象がある。
灰に埋もれる 太陽と血 を 言葉にして
空前絶後の凶変詩を残して いっときランボーは 情熱の嵐を酒樽の船でかけぬけた
彼はナポレオンを敬っていたかもしれない。私と同じ生誕の日 天才詩人は東洋さえも敬っていただろう。
灰に埋もれる ランボーの詩 を 歌にして
パティー・スミスは女性にして新たな感性を多衆に投げかけた。ストイックにあらゆる体験を受け入れ、生きたままに作品は 声になる。ワタシノソレハナンデモナイ と叫び
メロディーに乗せて
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130125_199_6652p
>膨大な知識の海の前でこれらを連想させた時点ですでに魅力を失っています。
>規定によって来月にならないと投稿できない次の作品で、彼女を少しだけ登場させていることもあって、この部分はどうしても納得できません。
お買い求めをお急ぎと
テレビだけがいやに賑やかだ
愛されるとか、愛するだとか
それ以前に僕ら、愛を買わなくちゃ
資本主義のフィクション、フィクション
愛こそすべて
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130123_164_6649p
>資本主義のフィクション、フィクション
>閉塞感、圧迫感を感じて、楽しみ方がわかりません
>本来論理的に解析すべき体験を、結果としての表層の次元で感情によって感情的に受容しようとするとこういう詩ができあがるのでしょうか?僕はそうだ、と考えてしまいます
【塵】
いつか隕石学者がやって来て、新種発見だと騒ぎ、ひとつの呼び名を与えるのかもしれない。ほうぼうに散らばるおれのかけらに。土星だった頃は周りを高速で回転する環の存在など気にもしなかった。闇から吹き狂う風と引力とのバランスを取りながら、軌道に沿って廻りつづけていさえすればよかったのだ。今では飛来した巨大な隕石によって粉々に砕かれ、空間中をさまよいながら、どこへ向かっているのかもわからないままに、表面温度は徐々に失われはじめている。このまま急激にどこかで廻りつづける惑星へと引き寄せられ、環を構成していたおびただしい塵と化した場合、天文学者はおれを何と名付けるだろう。発見するだろうか。
【目】
目を見ていた。伏し目がちな女の目を。おれを見上げる時の目が何より魅力的だった。水晶体に埋め込まれた漆黒のダイヤ。一つの完全な円を描いてたたずむ、潤みがちな瞳孔が麗しく輝いていた。おれは女を心から欲した。逢うたびに抱きしめ、そして見つめた。女も見つめていた。しかしある日、女は突然倒れこみ、抱き起こし呼び掛けようとも、すでに心臓の鼓動は聞こえず、一切反応を返さなくなっていた。瞬時の出来事だった。あまりにもあっけない幕切れに、女の亡骸のそばでおれはただ茫然とするしかなかった。開ききったままの女の目には真っ青な冬晴れの空が広がり、その中でおれは一本の木のように立ちすくんだままだった。
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130107_718_6606p
>鳥さん、読ませていただきありがとうございます。
>書くという行為の・・芸が細かいという印象を受けました。
>土星の欠片が・・実に面白い発想だと思いました。現在の観測技術でも、・・分かるのかも知れませんね。
>そして「目」の方ですが文字通り視覚的イメージ・・哀しくも美しいですね。
>率直に言いますと、一連はすごく音読しても気持ちよく、・・書かれていると感じました。
>二連は要推敲かなって思いました、もっと書けるんじゃないかと。
>生意気言ってすいませんが、感想を述べさせていただきました。
>文章そのものには‥
>勉強になります。
>素敵な作品を‥
>駄目。何のために語り手を‥
>何のための‥
> …いつか隕石学者がやって来て、新種発見だと騒ぎ出し、
>二つの惨文いやいや‥
>障害や不自由のある閲覧者だけでなく、さまざまな閲覧環境(ハード・ソフト・操作機器・モバイル等)への対応性を指す(ウィキペディア)
撫ぜる表面に、黒点を数える。
永く包み込む。放す。
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>田中宏輔様
(固まらない粉雪が踏み潰されて鳴く音にどこか似ていた)
開かれたバインダーの数字と目が合う
淡々と馴染む体温
ここはえらく日当りが良くて
裏を返せば何もないということ。
今日は沈んだ白に埋まっていて
スリッパの中の爪先は悴んで丸まる
2つのルール上、頑なな彼/彼女が吐いた450円が私を苛んでいて
無意識の与り知らぬ毒の蓄積は
伸び過ぎた爪で私のぬるみを抱き潰そうとしている
(蛍光灯に透かした。おざなりに書類机の上を払う。ビニールはねっとりと指の記憶に不快感を植えつけて、光の色になる。今日は重すぎる白が、刃を錆付かせ粘ついた。取ろうとして指先を痛める。
〈承認〉の押された書類を一束。真ん中に―(報告書は滲んでいる)―置く。
何の感情もない目で。ゆっくりと手を振り上げた。湿度の調整は、不十分だ)
窓から見える景色には
飛ぶ鳥の影すら居ない
(ハハもチチもひとりでいいです)
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仄暗い 深夜の魚
止まるでもなく 淀んで続く
ぷかり吐く 丸は割れない
漂ってまた どろり流れた
殻つつく 幻聴実音
口づけの 酸素見開く
望んでも 届かない底
ならいっそ 水面を蹴れ
怒って嘆いて 笑って泣いてよ
ゆっくり死んでく 浸かった足から
鼓動を殴って 悲鳴を叫んで
振り子が止まれば 見えなくなるでしょ
揺らして揺らして 振り子を揺らして
冷却速度の 熱量突破で
飛沫を飛ばして 走って消えるな
世界を巻き込み 揺らして転がれ
存在質量 ぬるい水揺らせ
ここに居ること ただその事実
証明の鐘よ 打ちのめしてくれ
足りない 足りない 足りない 足りない
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前生の森へ
縷々と離俗する
烏の群
暮夜を目送する
郵便配達夫も
徒爾ならざる
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森のなかで消えてゆく向日葵の吐息が
とてもせつなく感じられるのであれば
きみよ
虹色の風をもういちど友にすることだ
光には影があり影のない光はない、と
たくさんの人が言うけれど
影のない光や光のない影だってあるのだ
オゾンの香りが漂う 山とよばれるところで
わたしたちは はじめて ひとつになったけれど
その香りがオーロラとおなじ動きをしていることに
今日の今日まで気づかなかった
わたしたちは まいにち どうでもいい事象を相手に
むしろ操ら気味に暮らしているけれど
隠され続けている真実を
おあいにくさま
よーく知っている
あした わたしたちは山に登る
つぎの日 わたしたちは海に潜る
また つぎの日 わたしたちは風に乗る
その つぎの日 わたしたちは虹色になる
ミストのなかを
ゆくえをなくした幽霊のように彷徨っている虹色のわたしたちが
血の色に染まってやせ細る初夏
向日葵は輝きをなくし
白く横たわっている
ぱたぱた ぱたぱた
ぱたぱた ぱたぱた
ぱたぱた ぱたぱた
ぱたぱた ぱたぱた
ぱたぱた ぱたぱた
ぱたぱたぱた
ミストの漂う樹海で あなたは遠い風を想うのだろうか
向日葵のころ あなたは遠い遠い記憶を書き綴っていたのだろうか
向日葵のころ あなたが初めて書いた恋文は いまでも空にうかんでいるのだろうか
蝶は その恋文を探して今日も青空へと飛ぶのだろうか
夢は年を重ねるごとにやせ細っているし、夢の子供は生まれはしない、と
おせっかいな雲が繰り返すとき
明日からの風は
昨日までの風と
激しくぶつかり合い 渦巻いて
今日という日を創っていることを
わたしたちは充分知っている
夏の光が消えてから七年が過ぎて
あれほどうるさく見舞いに来ていた天道虫も青空も海も風も
ぱったり姿をみせなくなり
すべてが わたしをすっかり忘れてしまったころ
初めてやっと見舞いに来た月のところへわたしはお嫁にいくんだけれど
どんなかわいいレオタードの女の子が空から落ちてきたって
どんな素敵なフィギュアスケートのあの子が落ちてきたって
わたしは ほとんど完璧に驚かないだろうし まして今日、母の日に
風を食べる鳥が見つかったとして
そいつがサントウカサントウカなんて啼いたら さあ 出かけよう
今夜は金環食とわたしの結婚式との前祝を兼ねて
太陽を喰らうのだよ
風がふく
風がながれる
風がなく
わたしたちの風は
いつも
風を
探している
ふく風は
たぶん
あなただろう
ながれるのは
間違いなく
わたしだ
なく風は
おそらく
わたしたちだろう
天道虫のころ
ふたりは
風であった、と
あなたが
今日
断言した
とことこ にこにこ 歩いてくるのは初めての春だ
その後ろを両手で庇いながら吹いているのは桜
そのまた後ろで無表情の手をさしのべている永遠
永遠が明日を提示したその日 春は 過去と未来がぶつかり合い渦巻く今を
魔法のように約束するのだ
透きとおった過去なんかいらない
過去と未来がぶつかって渦巻く今がいい
時が一瞬だけ留まるところがいい
ポキン、と音たてて崩れ去る血たちの空が いつまでも青であるように
きみよ
いつまでも
いつまでも
虹色の風であれ
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130130_258_6656p
>向日葵のころ あなたが初めて書いた恋文は いまでも空にうかんでいるのだろうか
>蝶は その恋文を探して今日も青空へと飛ぶのだろうか
土曜の夜には
湖の
底の底まで降りていって
あなたの
骨を抱きます
知っていますか、
その窪みに
耳をあてると
さらさらと砂の
こぼれるような音のすること、
両手を
皿のようにして
掬いあげたかったのは
湖面に
吸いこまれていった雪片
すこしずつ
失われていった海底都市に
眠ったままの
あなた
化石のようにまるくなって
眸をささえる
表面張力に
はじかれて
消えてしまったわたしの
視線が、肌を
呼んでいるけれど
湖面は
しずかすぎて耳を
澄ますことしかできないのでした
覚えていますか、
あなたが
肺呼吸をはじめた日のこと、
呼気は
泡となって
水面に
ひたひたとまぎれた、
わたしの
足の裏がつめたいのは
きっと
欠けた月のせいで
どうしてかんたんに
からだは浮かんでしまうのだろう
まだ
生まれていないあなたに
ありふれた名前をあげたい、
こぼれていく砂を
拾い集めて
なにもかもをゆるしてあげる、
夢だけを
みる、季節の
流れていくはやさで
いつだって、
ことばだけが死んでいる
あなたの
湖はくちぶえをふいて
ほら
また、
週末には帰ってくるよ、
しずかなひかりに
洗われて、
蛹化するわたしの骨
遠ざかるまぼろしの水、
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130114_998_6634p
>土曜の夜には湖の底の底まで降りていってあなたの骨を抱きます
>週末には帰ってくるよ、
>湖面はしずかすぎて耳を澄ますことしかできない
>かんたんにからだは浮かんでしまう
>わたしの足の裏がつめたいのはきっと欠けた月のせい
>あなたにありふれた名前をあげたい、
>なにもかもをゆるしてあげる、
>眠ったままのあなた
>まだ生まれていないあなた
>まだ生まれていないあなた
>あなたにありふれた名前をあげたい、
>
親戚の家に行く時は蒸気機関車に乗り、二つ目の駅で下車した。ひたすら砂利道を歩き、途中で山道に分け入った。薄暗い山道を息を切らして登っていくと、大きな杉林のある地獄坂と呼ばれる場所があり、そこを登りきると親戚の藁葺き屋根の家が見えてくるのだった。
親戚の家には老犬だが、大型犬がいつも吼えていた。私はその犬が苦手で、外で祖母が来るまで待っていたのだった。玄関で何度か飛びつかれて泣いてしまったが、祖母は笑っていた気がする。今から思うと私が来たので犬は喜んでいたのだろう。
祖母はガラガラ声でいつもクンクンと鼻を鳴らしている人だった。昔から肉体労働はしない人で、ひたすら家の中のあらゆるところを雑巾掛けして過ごしていた。だから古い囲炉裏付きの家だったけれど、そこらじゅうは磨かれていてピカピカだった。
親戚の家には離れの小屋があった。そこには曾祖母がいた。離れの小屋に一人で住んでいて秘密基地みたいな小屋だった。曾祖母はとても小さくて、目が凹んでいて魔法使いのような人だったし、あまり話をした覚えもない。
曾祖母の小屋の横にヤギが飼われていて、葛の葉を持っていくととても喜んでぺりぺり食べていた。
ヤギの乳を飲め、と祖母が乳を搾ってくれて、良くそれを飲ませてもらった。少し青臭い乳だったけれどとてもコクがあって好きだった、でも、良くおならが出た。
親戚の家には祖母の他に叔父と叔母がいた。性格も顔もあまり似ていない兄妹だったが、昔は戦争などのため、よくあることだと後から聞いた。
叔父は軽自動車で格好つけて車を運転し、時々頭が痛くなるほどアイスを買ってきてくれた。一度に十個以上買ってきた。最初は美味しいけれどだんだん厭になってきて。でも叔父は、全部食えや、と無理やり食わせた。叔父のもてなしを断ることはできず我慢して食べた。
叔母は未だ若かった。嫁に行きそびれていたのは少しお転婆っぽかったんだろうか、よく解らない。でもやっぱり活発で、バイクに乗っていたし、風を切っていた。叔母がバイクで花見に連れて行ってくれると言うので、バイクに乗せてもらった。祖母は心配して、右に曲がる時は左に体を傾けれ、とアドバイスしてくれたものだった。石だらけの土埃の上がる道を下っていくと、小さな発電所があり、桜並木があった。
親戚の家は山の中の一軒家だった。
隣の部落の村祭りがあると、叔母は私を連れて懐中電灯を灯し山道を歩いていった。どこをどう通っていったのか、さっぱり解らなかったけれど、田圃の真ん中に小さな小さな鎮守様があり、太鼓を叩くやぐらがあって、明るい提灯がたくさんぶら下がっているお祭り広場にいた。知らない人の中で私だけが明るいところにぽつんと立っていた。叔母はニコニコしてどこかのお兄さんと仲良く話していた。
月日がめくられると、昔のあの藁葺き屋根は壊され、叔父は小さな家を下の部落の端っこに建てた。叔母は遠いところに嫁に行き、クンクン鼻を鳴らす祖母と、ぶつぶついつも小言を言う叔父の二人だけとなった。
いい年になった叔父もお嫁さんを貰った。コブ付だったけれどなんだか結構嬉しそうで、お嫁さんを車に乗せたりしてドライブしていた。
お嫁さんには大きい男の子が居たが、直ぐ居なくなった。
何年かして、叔父とお嫁さんの間に初めての女の子が出来てとても幸せそうだった。でも、お嫁さんはとても活発な人で、家の中でじっとしているのは嫌いだったから、いつも二人は喧嘩していたようだった。
十年ほど経ち、また家の中は祖母と叔父だけになってしまったようだった。
それでも、叔父はいつもいつも小言を言い、文句を言い、何かを呪い、起きている時は怒っていた。
ある日、叔父は田圃の作業中に畦で亡くなったそうだ。叔父はきっと、田圃で作業しながらも厭な事を考え、怒っていたんだろう。世の不条理を恨み、そして神様は一本の管に鋏を入れてしまったんだろう。叔父はカメムシのようにカラカラと死んでいったんだ、そう思った。
祖母も大分生きたようだが、施設で死んだそうだ。
猟期の最終日、私は親戚の家の手前辺りからカンジキをつけて歩いていた。親戚の家の位置には雪が覆い、真っ白に均された雪原となっている。親戚の家のうしろに大きな杉が何本かあり、小さな尾根になっている。この尾根のうしろを通り、叔母と山道を歩いて村祭りに行ったのだ。
大きな杉の木から、初春の陽射しにくたびれた雪の塊が落ち、雪面には私の影が長くなり、セッケイカワゲラがおびただしく雪上を徘徊していた。
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130128_228_6655p
>そう思った。 のほうが物語の中心なのかもしれません。だとすれば、男の子の描写は必ず入れなければならないわけです。
何もないところから落ちてきた水滴が
まぶたの上に花を咲かせたので
アタシは浸透圧の暴力に抗えず
空を見上げたまま測定され記録される
「もうそろそろ終わりだよ」とキミが言う
帰る家のない子どもたちへの死刑宣告
(楽しかったね、とても楽しかったね)
彼らは花畑の記憶を愛しそうに抱えて
ひとり、またひとりと弾けていく
(パチン、パチン、パチン、という音)
アタシは泣きながら彼らに謝る
ごめんね、ごめんね、お前たち
朝焼け、青空、曇天、夕暮れ
空が物凄い速さで点滅している
夜明け前に死ぬ夢で目覚めると
また左眼の奥で星が力尽きて
アタシは冷蔵庫の中の孤独を
今すぐキミと分かち合いたくなる
誰のために、何のために、それらは
何もないところから生まれてくるのか
子どもたちが消えた広場に満ちる銃声
アタシはいったい何に祈ればいいのか
バロウズに寄り添うパティ・スミス
あのモノクロ写真に十字を切ろうか
カチャカチャと金属が触れ合っている
アタシの中を掻きまぜる天罰の音
ただ人を好きになっただけなのに
アタシはいったい何を叫べばいいのか
何もないところに咲いた花々を踏みつけ
アタシは今日もキミの抜け殻と愛し合う
本当はキミの顔には見覚えがなくて
優しいキスは砂の味がするのだけど
理想の姿のキミはクスリのように微笑み
安心したアタシは力尽きて沈んでいく
水面で溺れる虫の動きを真似て
何もないところへと沈んでいく
※今までとちょっと違う芸風の詩を書きたくて、それ専用のキャラの「もとこ」名義でも作品を投稿させていただいていました。でも、この名前でやりたかったことは、ほとんど終わったようですので、このハンドルでの投稿はこれで最後にしたいと思います。一応、二つのハンドルを使うにあたっては、あくまでも「中の人」を基準にして毎月の投稿数や投稿間隔、それに互いの投稿や批評対象がカブらないようにといった最低限の約束事は守ったつもりですが、酔っ払い投稿などもありましたので厳守できたかと言われたら自信がありません。とにかく、複数ハンドルの使用は現時点で完全禁止ではなくても推奨されていませんから、今後はもう一つのハンドルに統一します。今まで「もとこ」名義の拙い作品を読んでくださった方々、そして批評していただいた方々に心から感謝いたします。
ドット原井
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130201_297_6664p
【深い淵のほとりで】
おみあしが ふたつあるように
おみみが ふたつあるように
太陽が ふたつある
ひとつは るりのため
もうひとつは るらのため
るりと るらは 双子の姉妹
母さんは いつも 子供たちを食べる話をして育てた
そしてある日 子供たちを食べていた者は
神になった話をして
育てた
深い淵のほとりに 岩がある
人々は その岩を 子捨て岩と呼ぶ
岩の上の断崖絶壁の見晴しの良い岩の上で
るりの歌は ヘブンブルー
るらの歌は 鬼の歌
ふたりとも死んだけど
母さんは 笑っている
神のように
笑っている
いまでも
母さんには
ふたりの声が
聞こえている
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130126_213_6654p
>そしてある日 子供たちを食べていた者は
>神になった話をして
>育てた
>太陽が ふたつある
>そしてある日 子供たちを食べていた者は
>神になった話をして
>育てた
>太陽が ふたつある と言うイメージは お気に入りですので 気に入って 幸いです。('13/01/28 15:02:32 *1)
>なにか 他にも お気づきのことがあれば ぜひ どんどん教えていただければ嬉しいです。
>自分ではなにも 気ずきもしないところが私には あります。
>子供を食べるような者が神になる。そういう話は ほんとにあるので、困ったものです。
>岩の上の断崖絶壁の見晴しの良い岩の上で
俺にとってSEXとは
まあ何と言うか
ボーリングみたいなもの
てゆうかもっと
軽いノリかもしれない
知り合った女をそう
ボーリング場にでも誘う感じで
「ホテル行こうやっ!」
気が付いたらもう
スッポリ穴に指を入れて
ベッドの上で転がしている
ボーリングとかビリヤードとか
何つうか微妙な・・・
スポーツって呼べないような
娯楽ってあるでしょう
SEXってそんな感じだ
今まで一緒にプレイした
女の数は軽く片手を超えている
はあ?案外少ないって
なに言っちゃってんの
もちろん
指一本100人単位だからね
最近は顔とか
スタイルとか
声とか
もうどうでもいい
けど
あそこに鼻を近づけた瞬間
ゴルゴンゾーラ!
臭いのだけは勘弁して欲しい
ブルーチーズ!
まあそうだとしても
結局
反吐を飲み込みながらでも
やる事は
やっちゃうんだけどね
口で息をしながら
慎重にスペア取るみたいに
それから俺
舌先で女のヘッドピン
ぺロッて舐めたら
病気の奴はすぐに分かる
ピリピリって
危険な感じがするんだ
そういう時は終わってから
思いっきりおしっこを出した後
尿道にイソジンを流し込んでいる
こないだなんか
国立の大学病院の
ナースさんが
物凄い性病持ちだった
いったいこの国も
どうなっちゃってるんだろうね
まあ何だかんだ言って
してる時だけが
普通に楽しいって
君にわかるかな?
我儘な俺は
1回やったら
もう同じ女いらない
そばにいて欲しくないんだ
早めにスプリットしたい
一日に違う女4人と
SEXしたことがあるよ
ターキーどころじゃねぇ
ワンショットワンキル
これが俺のピンアクション
だけど困った事に
そろそろ
ちん毛に白いのが混じってきた
もうガター連発って感じ
大好きなボーリングも
ヤング相手じゃ限界が来ている
昨日の夜はゲーム中に
女子大生に白髪を抜かれて
笑いものにされちゃった
わかってるんだよ
わかっているんだよ
こうなったら
アベレージを上げて
この俺と同じ具合に
あそこにちらほら
白いのが目立ってきている
熟女達と遊んでみようかな?
ともに白髪の生えるまで
なんてね
とも白髪
とも白髪
案外
ストライク!
かもね
人生の
パンチアウト!
なんてね
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130204_366_6674p
>わかっちゃいるけど このリフレインは >とも白髪 と共に訴えかけてくる力のあるフレーズだったと思います。
>あそこに鼻を近づけた瞬間
>ゴルゴンゾーラ!
>臭いのだけは勘弁して欲しい
>ブルーチーズ!
思い出すために
草むらの 草の
根もと辺りを
見ている
何を
思い出すために?
明るい粒子が 少し
暗い粒子が 少し
やや薄い濃度で
さらさら広がり
朝も 昼も 夜も
ない 問いかけ
それが
泡立つ波
となって
砂浜を
見るものを その
内奥を
脳の
視床下部の辺りを
洗っている
何を
思い出すために?
何も
なかったこと
つい さっき
世界は
生まれたこと
そのこと を
思い出してみた
補足
吹き寄せる砂に埋もれつつ
枯れ葦がわずか
根もとに記憶を絡めている
それは
風にうつろう不定形の記憶である
記憶とは
ともすれば甘い妄想と
あり得ない未来
の影に過ぎない
そういう僕が
既に赤い夕闇に呑まれようとする影
漆黒の影の群体のひとつであり
海鳴りは轟くのだ
高鳴る潮流の質量が歴史の空白を充たし
ついに夜が来る
完全な夜が来る
*1月31日、一部修正しました。以下、修正前
思い出すために
草むらの 草の
根もと辺りを
見ている
何を
思い出すために?
明るい粒子が 少し
暗い粒子が 少し
やや薄い濃度で
さらさら広がり
朝も 昼も 夜も
ない 問いかけ
それが
泡立つ波
となって
砂浜を
見るものを その
内奥を
脳の
視床下部の辺りを
洗っている
何を
思い出すために?
何も
なかったことを
つい さっき
世界は
生まれたと
いう ことを
そのこと を
思い出すために。
補足
吹き寄せる砂に埋もれながら
わずかばかりの枯れ葦が
根もとに記憶を捉えている
それは
風にうつろう不定形の記憶である
記憶とは
ともすれば甘い妄想に過ぎず
あり得ない未来の影に過ぎない
そういう僕が
既に赤い夕闇に呑まれようとする影の
漆黒の影のひとつであり
海鳴りは轟くのだ
高鳴る潮流の質量が歴史の空白を充たし
そしてついに夜が来るまで
完全な夜がやって来るまで
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130126_202_6653p
> 何を
> 思い出すために?
>(_ _)<<('13/02/04 04:28:39)
>観想とは、
>わたしが語る、でなく、たたその者と出合う、瞬間瞬間のみ、接触の、その交渉語りかけ、ダイアローグ、
>てきめんに観察者のどんな隙もなく、みえない、みせない面、けっして彼岸ではない、わたしとあなたとがそこに手を重ね合わせた、その絶対表面が、'と胸'のここに、我が身の前に、忽然と存在しているのだから。
>孤独を、
>そっと
>空に投げ
>「観察者のどんな隙もなく、みえない、みせない面」この部分の文意が伝わりません。
>「絶対的な表面」という言葉を見ると疑問が生じます。表面は絶対的な客観性を持っているかもしれませんが、言葉は絶対的な内容を持っていません。文脈に浸食されているからです。
>「体験としての純粋さ」をポエジーと考えるなら、それを伝えるには瞑想での雑念をそのまま言葉に定着させても意味はありません。言葉を精選し、そういう純粋さを体験させるような仕掛けを作らなくては。言葉の本質は、本来の事物の認識の個人による差異を仕掛けによって無効化する、あるいは無効だと仮定させることにあるのだから、純粋な個人の体験を伝達しようとするならそれを逆手に取る他はないわけです。「仕掛けによって伝達する、あるいは伝達されたと仮定させる」という逆転を試みるしかないわけです。
死んでしまった悲しみに
今日も現代詩に降る雪よ
寒いぞなもし
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130207_431_6682p
>かささぎに渡せる橋におく霜の白きを見れば夜ぞふけにける 新古今集 と言う非常にすぐれた短歌があるのですが、
>ふうううぅぅ
>ふううぅぅ
>ふうぅぅ
>ふぅぅ
>ふぅ
夢なら醒めておくれ。この現世の悲哀を背負うしかないのか。
夜の輝く星たちが流れ星となり涙を流すとき、日の光を待ちわびる。
お日様が顔を出し、自然や町や人が、活気づくなら朝日の昇るのを待とうではないか。
いくら暗闇に身を置いても光は見えないのである。
おお、太陽よ。私たちを照らし給え。
太陽は、植物に動物に私たちに光を与えている。無償の愛で。その寿命が尽きるまで。
太陽が照らしていた海に乱反射した光、
波打ち際で、小さな魚を捕まえ、貝殻を拾っていた記憶、
校庭に咲いていたあの優雅な向日葵をもう一度見てみたい。
光に身を照らされた時、暗闇で覆われた天空に一つの流れ星が現れた。
ああ、さらば闇よ。暗闇よ。
暁が光と闇を分けるのだ。光は、闇を退けるのだ。
闇は問う。「君が闇を呼んだのではないか。」と
ああ、「契約は破棄だよ」と光はただそう呟いた。
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130202_338_6666p
トンボになって飛んでいた。
桜の木もすっかり葉を落とすころに。
翅は なんにも思考せずに
ただ
トンボのこれからをひたすら羽ばたいていた。
大きな樹の小さな木陰で
すこしばかりの休息をとっていると
いきなり
あの漱石先生が顔を出して
「門」とか「それから」とか
うるさく説教しだしたから
鬱陶しくなって
また
飛ぶことにした。
とても広い川の上を飛んでいると
おおきな岩の上にノボリが見えたので
下降してそれをよく見てみると
「空あります」
そう書かれていた。
だれが空を商っているのか
おおいに興味があったので
ほとんど一週間 飲まず食わずで
ホバーリングしていた。
もう諦めかけていた その時
のっそり、と
「空」が顔を出した。
目があったぼくは
吸い込まれるようにそいつを買ってしまった。
それからぼくは
なぜだかそいつと一緒に
ぼくの中のぼくへと
旅立っていったのだった。
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130206_402_6677p
桃の花は麗らかに
色香る髪をまくしあげ
さやさや笑う澄んだ目に
私の身体は心地よく
心地よく小さな指でくすぐられる
蜜を身ごもる桃の花
お前の秘密を開いておくれ
恥じらう裸を咲き乱したら
この胸一杯に溢れだす
したたりやまぬ熱を冷ましておくれ
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130204_360_6671p
>したたりやまぬ熱を冷ましておくれ
>私の身体は心地よく
>心地よく小さな指でくすぐられる
>私の身体は心地よく
>小さな指でくすぐられる
>この胸一杯に溢れだす
>胸一杯に溢れだす
>蜜を身ごもる桃の花
>お前の秘密を開いておくれ
>恥じらう裸を咲き乱したら
>胸一杯に溢れだし
>したたりやまぬこの熱を
>どうか今すぐ冷ましておくれ
>お前の息で冷ましておくれ
1
赤トンボたちが
飛行機のルーツのように飛行している
一日ごとに冷たくなる風が
透明に流れている青空の清れつさと
黄いろい木々の退廃を同時に包含している
秋の午後
パズルのピースのようにばらばらにちぎれた
みじかい溜め息と秘めた言葉の切れはしが
そのままに流されてゆく
うろこ雲がほそく連なっている
ぽろぽろと剥がれ落ちそうに
なりながら
やがて尾花のように垂れ落ちてきて
あからさまな諦めとなって
そうして、また、
ふたたびに円環する
2
この街の橋から見える海は
とても青く澄んでいて
この街の橋から見えるあかい夕映えはどうやら
世界でも三番目ぐらいのうつくしさ(らしくて)
橋をわたれば
かつて半年間だけ働いていた
あのホテルがリニューアルした装いで見えくる
さらに歩いて駅が見えてくると
いつも駅とオレは混交する
(古ぼけた駅は オレそのものだ
目の前にひろがる大通りの店さきどもは
生ぐさい潮風で錆びついたシャッターを常に降ろしてしまっている
この街の炭鉱からかつて採れた石炭は
もはやとっくの昔に時代おくれのものとなり
それさえももはや底を尽きてしまった
オレは半ばゴーストタウンとなった街の駅そのものだ
そしてそれ以下の存在だ
なぜならばオレの許なんかには
もはやだれ一人として訪れもしなければ
降り立ちもしないのだから
きょうも人々の詰め込まれた電車が
オレのホームの前をただただ通り過ぎてゆくばかり
視えもしないものを描きたがった結果が
ついにこれなのだ
オレはかつての昭和の栄光をとどめたまま
朽ちて風化した残骸だ
オレはもはや――)
3
部屋に戻って
机の上で履歴書を書いた
履歴書はいつも嫌いだ
本当に書きたいことは
なにひとつとして書けはしない
たった一文字だって
間違えることなんて許されてはいない
胸のなかで
ひそかに降り積もっている
許されていないことそのものへの
(どうして「?」)、という素朴な疑問符、
くしゃくしゃになった
何まいもの苛立ちが
クズカゴのなかにうち捨てられて
押し込められている
机の上には
小さな四角い写真の中で
写真うつりの悪い
写真の中の自分
ありありと見せつけてくる
見たくもない現実
レールを踏み外してしまった
あのとき
罅の入ってしまったものが
拳以外にもあったのかもしれない
なぐられた顔よりも
むしろなぐった拳のほうが痛くて そうして
ひび割れてしまったままの
屋根には霧雨が頻繁に降りしきる
読みあさる詩句さえも錆びてその色彩をうしなう
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130209_465_6687p
>小さな四角い写真の中で
>写真うつりの悪い
>写真の中の自分
>企業側の体育会系的な底意地の悪さが見え隠れしているような気がします
「オブラアトだ、
諸君。
オブラアトだ」
ごくごく薄い一枚のそれが
世界を包み飲み込む
その感触を
憶えているか
それはジアスターゼに溶かされた
王城のものがたり
ではない
雨が降りやまぬ
雷が鳴りやまぬ
ゆがんだ膜が季節を覆っていった
ものがたり
ではない
欠けた月と満ち足りた太陽が
公転周期を間違えて
あわやニアミスをしそうになった
時代から
遡ることもなく
ジアスターゼ
ジ・アステーゼ
という提言の中を
溶けていく唾液のなかで
分解されてサイズを変えていく
被捕食者のたわむれとかなしみ
「オブラアアト
喉もと過ぎれば
忘れてしまう
、の?」
トイレの蓋をしめたまま
してしまった。
乾いていく
時間がない。
酔いすぎた
流れはとどまり
拭かなければならない
手を汚さなければならない
こびりつかせてはならない
キヘンさせてしまったら
それはもう終わりが始まって
紙芝居のようにめまぐるしく展開して
ああ
キヘンさせてはならない
手を
汚さ
ねば
なるまいという
ペーパーはどこだ
それとも雑巾か
雑巾に雑菌が
では、なにか
繁殖しているのは、悪徳
栄えるのが
ジュスティーヌの受難
だ
としたら
滅菌するには
アルコール
アルコールでふけば
アルコールが原因で
こんなことになったのに
アルコールに
ああ キヘンする
アルコールに頼らねばならない
「今夜も飲みますか?
飲んでみますか?
世界に一枚
ひらりと
挟んで」
ジアスターゼ。
ジアステーゼ。
ジアス氏とターゼ氏の提言が
日常と呼ばれ
毎日と呼び
お日様と
お月様の鬼ごっこ
その周期を断定して
提言が
宣言に
時間を被膜化させる
assは来ますか?
アサは来ました。
assは来ますか?
わかりません。
分からぬことへの果てしない欲望が
二人を駆り立てる
(そして、このまま終わりを告げた
(ジアス氏とターゼ氏による
(クロスカウンターの応酬で
(今日も日が昇り日が沈む
(今日も月が昇り月が沈む
「よれていくオブラアト。
キヘンしてしまう」
カリウムには利尿作用があるそうです
排泄していく事が
人間には必要です。
包めば、におわない。
「息をとめた」
窒息するまで数を数えようか。
「オブ、、1、2、3、、、ラ、ア」
傷が癒えるまでの過程で
最も大切なのは
静かに血小板がそれを覆っていく瞬間だ。
隠す
事が癒す事だと
理解しているのだ。
その生命の内側に
貼りつく一枚の
「オブラアト」
〜ココカラ、ピッタリ、貼リ付ケマショウ〜
目蓋の内膜が
風景を置き去りに
上下して雨が降る
しと、
と
震える
背中に潜り込み
熱を盗んだ
したたり、が
見ることのなかった朝焼けを
カラスの羽根にのせた
街灯は
ちらついて
虫もたからない
音が聞こえるのは
小さな粒子たちの反発で
たおやかなる失墜の
瞬き
覆った渇きを
逃さぬように
はたして、泣いています
わたしは、ないています
踵は折れてしまった
伝線してしまった
上へ走るその渇きの裂け目が
本来ならば温めていた
飲み込めない しずく に
たまらずに
溢れ出して
溶かされていく
風景と距離と
〜ココデ、ペリリト、剥ガシマショウ〜
剥がれる前の 饒舌に
溶けていく薄っぺらな魔法
「オブラカタブラ」
荘厳な王城の壁に取り付いた
冬眠できなかったヤモリは
下瞼から現れる瞬膜を上に持ち上げ
ケットー
と
鳴き声をあげることもなく
朽ちてしまった
その覆われた瞳に映ったモノの
話は始まらない。
「飲み込めますか?
引っかかりませんか?
そればっかりが、心配です」
敬虔なる信者に
恵みを垂らせ ジアスターゼ
祈る口角に唾液の泡を浮かべ
ぶくぶくと溶かし
その悲しみの
消化酵素
ジャンケンで決めた
明日の信仰は
(括弧たるものとして)
((
選ぶ事を拒絶する
ディスタンス
ダンス
))
「唾液の交換で
愛を語るな
体液の交換で
愛をつなげるな
それは
貼りついて
やがて溶けていく
オブラートのかなしみ」
穴だらけになりました。
神様、
と呼ぶことも出来なかった
もったいなくて
畏れおおくて
救いを求めることも出来なかった
祈ることさえおこがましくて
この世で一番不信心なわたしこそが
この世で一番信仰心が篤かったなんて
ご存知だったんでしょう。
バカなことをいうなとおっしゃるんでしょう。
叱ってください。
叱られるためにわたしはいます。
どうか。
「どこに貼る?」
(オナニー)思春期を終え、人前に出るのが恥ずかしくなりました。私は人よりも少しだけ性欲が強いのです。(マスターベーション)そのことを看破されるのがどうにも恥ずかしくて、私は人前にでれなくなりました。(ジイ)生来、引っ込み思案だったと思います。(モノオルガスム)。不感症でも冷感症でもありません。妊娠経験もありませんし、生理はちゃんと定期的にメンテナンスをしてくれます。(半透明な私の性欲)
ねえ、神様。
私の罪をゆるしていただけますか?
「たった今、有罪判決が下されたところです。
敗訴の原因は、オブラートを
未装着だったからなのです。
現場からは以…」
自涜というのですか、禁じられた行為。
その行為が自分でも本当に歯がゆくって。
好きなんです。
私に。
罰をください、。
罰を、ください、。
罰を、。
「そこに貼れ。
目蓋に瞳に鼻の穴に耳に唇に性器に
覆い隠し、
飲み込みにくいモノを
飲み込むために」
『一般的には知られていませんが、料理店などでは焼き魚の鮮度が悪い時に腹が落ちてしまわぬように補強のために貼ることがあります』
腐った腸の圧力が
重力との拮抗に
その膜を
やぶった
舌の上に広がる
ああ、苦い苦いテーゼ
ジ・アステーゼ
が
溶かし溶かし
破れ目から不穏な提言が覗く
「オブラアト。
諸君。
オブラアトなのだ」
変わらぬ
テーゼが鎌首をもたげ
滴らせた唾液で
とかされていく
飲み込むのは
むつかしい。
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