あやまちなどひとつもなく、
おそろしい精度で
どこまでも正しく列べられた
タイル、いちめんに咲く文脈と、
そこへかたくなに交わりつづける
いくつかの脊椎が灯火する街は、
放射のみどりにあおられながら、
より大きなまちのなかに遍在する、
正しく遍在する、
(母の骨格を、
(抱きかねる、語り手、
(を、抱きかねる、かたりて、
雲ひとつない快晴、
海底から見上げる水際を
鳥の影絵が旋回している、
風、波の幻視のさなかへ
祈るように目を閉じたまま、
次々に身を投げる
鳥ではないとりたちの列、(分岐図、
がらんどうの記号たちの
比喩、あるいは胎盤のなかで、
がらんどうのきごうたちが
豪雨しているのが、
わかる、明るい空へと
私は腕を伸ばす、
濡れた音が鳴る、途端に、
腕が縦に裂ける、
(噴き出す青い血液、)
凍えるような豪雨のなかで、
あたたかい、すなわち、
温度のない血は、
うそぶく祈りに触れ
しだいに日本語されていくから、
ちの飛沫もまた豪雨する、
おとが鳴る、私は裂けた腕を
伸ばす、(いらない、)
おとが鳴る、途端に、
うでがさらに細かく裂ける、
(信仰が流血するのを留めることができない、)
裂けたうでを持つわたしはもはや記号だった、
記号はきごうだった、(いらない、)
切り分けられていく
影絵には体温がない、
ただ凍えている、
凍えてすらいない、
(まどろみのなかで、)
乱立する白い建物のひとつに
母は眠っている、酩酊の、
母は抱かれている、
より大きなははの遺言に抱かれている、
陽がおちることのない窓辺の
ひどく鮮明な母の黎明のうえで
風にもてあそばれる薄いカーテンが
昏睡と覚醒の波を繰り返し描いている、
(わたしはそれを観ている、)
延々と、
他殺に晒される母の隣に、
遂げられない自殺が積もっていく、
水気を失って干からびた、
からからに乾いた記号たちが、
私が、わたしのうでが、
母の細い首を絞めている、
(わたしはそれを観ている、)
彼女の病理は、
より大きな病理に蝕まれつづける、
晴れわたる空、
音叉の産声、浸水、
声ではないこえ、が
仄暗い臓器に残響している、
塹壕している、
(の、)
誤った日本語をすり抜ける
誤った対話だけをここに留めて、
白いとり、 黒いとり、
(あらゆるとり、)
散乱する寓話たちの
産卵、に、灯が点って、
鬼火と呼ばれるようになったら
やがてそれらは数列するのですか、
散華の花弁の中心から溢れだす、
黒蝶の片翅はみな壊死しているから、
まばゆい快晴のしたには異形ばかり、
影絵、奇形の影絵は繁茂して
腕のないわたしはどこまでも正常だった、
(ゆるされるということ、
その斥力の彼岸へと伸ばした
わたしのうでは縦に裂ける、
割り算は数字が可哀想だから、
といって、ただ、
ただ掛けあわせていくわたしも、
割られる、割れる刹那の
便宜的な数字でしかない、(いらない、)
延々、わたしを
わたしで割りつづける母、母の
過失がこの身体をすり抜けて、
軽い金属の落ちる音が
何度も私の身体に触れた、
わたしのからだに触れた、
雲ひとつない快晴のしたで
タイルの秩序を繕う腕が
さまよって、
累加する
幾千もの無精卵から
孵るひなどりには嘴がない、
交わりもないまま、
奇形の影絵たちは
文脈の勾配に沿って
日本語の墓場へと巣立ち、
やがて、ここには
うつくしさへと復讐を
つづける卵の殻だけが留まる、
(それら破片を、
(繋ぎあわせ、
(元のかたちに
(戻そうとする私は、
(母と同じように、
(かげをかげの係数で割りつづける、
割りつづける、
(とりは鳥の訃報をたかく歌い、
音もなく歌われたうたが
ぱらぱらと結晶し、そそぐ、
豪雨、
の中心で、
あやまちは、
誤った形式を通過しながら、
影絵で遊ぶわたしの
青い血液を焚書していく、)
つぎはぎの神話は、
病室であわく灯りながら
しだいに暮れていく波紋の中心で
いつまでも小刻みに震えつづける母の
わずかな呼吸さえ止めてくれない、
言葉を失って久しい母の
よごれた利き腕が
さらさらと赤い砂になって
窓辺からの風にさらわれていく、
青い血液の枝が渦を巻く、
罪はゆるすことも、
ゆるされないこともなく、
ただ窓辺から空の水際へと
さかしまに投身自殺を繰り返す、
繰り返す影色のとりの、
はねが、さらさらと赤いすなに
なって、かげはかげを
映せないから、といって、
さかしまにとうしんじさつを
する、めいし(たち)が、
絶えるから、絶えてから、
それでも、変わりはない、
といって、ははの細い首に、
ゆびを絡める、はくちゅうに、
ははの、となりに、
今更、立ち尽くしている私の、
私の身体は赤い砂にかわる、
わたしのからだは赤いすなにかわる、
(凪いだはずのかぜにさらわれ、)
ははのはな、(留めて、)
ははのはね、(留めて、)
ははのはは、(留めて、)
物語性は、
血を吐いて横たわっている、
乱立する白い建物のひとつで、
(あちこちで、)
ひのてがあがる、
つめたく燃えるみなそこ、
うでを伸ばす、
おとが鳴る、(途端に、)
ただひとつの自殺は
既に遂げられていたのだと
気づく、陽が、
暮れることのない窓辺で、
私の、母に似た、
ははの、
瞳の、深淵の、
水のなかで泳ぐ
日本語たち、
黎明の背中が
裂けては産声が響き、
またひとつ、またひとつ、
手折っていく、水際から、
ぱらぱらと赤い砂がおちて、
しだいに、罅割れた
タイルの街に積もっていく、
(影絵はより大きな影絵の逆光へと呑まれ、
記号はより大きな記号の失語の前に無力だった、
だった、と、こうして、
語りはじめたきごうが、
ぱらぱらと空から降る、
降ってくる、豪雨する、
そのさなかで、夜を待つ、
待つ私の、青い血の飛沫、
ひらがなが洪水する、
洪水する、母が、
翳した、利き腕から、
ひらがなが洪水する、
わたしの、
背中から、ひらがなが、
洪水する、まるで、
とりのはねみたいに、
すみずみまでゆきとどいて、
母が、母する、母に、
かしずく、鳥の生身だけが、
赤い血を流している、
ちを、流す、という祝日に、
かしずく、わたしの生身が、
あたりには散乱している、
産卵している、)
昏睡と覚醒の波を描くようにして
凪いだ風にまどうカーテンの
はざまから片翅の黒蝶があらわれ、
ははのはなに留まる、
ははのはねに留まる、
吐血する、
ははの口からは、
青い液体が垂れている、
音もなく黒蝶はそれを吸う、
ははの、ははの、ははの、ははは、
街の正しさを水で充たしていくから、
乾いてしまったははの身体は、
水から逃れるようにして、
みずから空の深淵へと
さかさまに投身していく、
落ちていく、
(わたしはそれを観ている、)
よく晴れた日、(豪雨、)
水面にぷかぷかと浮きあがるははの、
とりの、平たいからだ、(影絵、)
それを底からわたしは見上げ、
また、しだいに浮かび上がっていくわたしの、
ははの、とりの、平たいからだを、
こどもたちが底から見上げている、
(それはわたし、)(あなた、)
(ひらがなが旋回している、)
(流転している、)
鳴りやまない雨音が、
ゆるやかに肥大して、
タイルを打つ、たびに、
あざやかな喧騒を取り戻していく
眩暈のさなか、
母が投げこまれた空、
異形を拒まなかった空の、
正しさ、は、乱れ、
しゅんかん、拡がる、
うつくしい、と、
形容できる、波紋、
音叉の、図形が、
拡がる、空の、枯れ枝を、
見上げ、
呆然と、
意味もなく、
その意図もなく、
鳴く、響く、
がらんどうの、
タイルのまちの、
元の高さに、
戻っていく、
正しさへと、
浮かびあがって、
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121225_549_6574p
>語り手、(を、抱きかねる、かたりて、
>語り手、(を、抱きかねる、かたりて、
>次々に身を投げる鳥ではないとりたち
>がらんどうの記号たちの比喩、あるいは胎盤のなかで、がらんどうのきごうたちが豪雨している
>ただ凍えている、凍えてすらいない、
>母は抱かれている、より大きなははの遺言に抱かれている、
>彼女の病理は、より大きな病理に蝕まれ
>母は抱かれている、より大きなははの遺言に抱かれている
>あやまちなどひとつもなく、おそろしい精度でどこまでも正しく列べられたタイル、
>より大きなまちのなかに遍在する、正しく遍在する、
>(それら破片を、(繋ぎあわせ、(元のかたちに(戻そうとする私
>それら破片を、(繋ぎあわせ、
下方から朱色に照らされる雲。知らなかった。太陽は、地上から随分と近いところを通る。閉じられた視界に焼きつく暗緑の幻影を見失わないように、ひとびとは太陽と併せて暮らし、眠る前にその緑色の淡い残像をからだの深い処に沈着させる。掻き抱くみたいにして寝返りを打つ。そのとき星たちは一体どうしている? 嘘みたいに遠い真空で。暁光さえ無い。
じっさいにぶつからない風
別の世界から降り注ぐ嘘
たぶん、って言う為の呼吸
屋根から滑落する人の幻
飛躍した人間は星と呼ばれ
本当の星は動けないまま
/昼間に星が見えない/夜から星が奪われる/
誰も明るい正午に星明りを思い出そうとしないので、天体には嘘が満ちている。星々の方に嘘はない。星から吹く風、今日は何だか、ほんとうにやってきそうな。
真昼の陽射しが差し込む部屋は冬でも暑い。小刻みに窓が震える。風が、今日は強いみたい。オレンジ色のセーターの袖を肘まで捲ったら、部屋の温度が一度上がる。外気の温度は一度下がる。ひび割れに忍び込むような鋭い風が頭上をひっきりなしに飛び交っている。多分。
小春日和。雪の匂いは未だ訪れない。星ってやつは気難しいもんだから、太陽とは仲が良くないし雪とも折り合いがつかないのさ、/一拍の呼吸/たぶん。他の光が我慢できないんだろう。そんな風にして人々の目線を釣り上げてきたから。
投身自殺と明け方の青み
蜃気楼でないためのBフラット
世界から一切の音が消え、
この場所から一切の色彩を
手放すための、呼吸を一つ
でもきっと、そこまでしても
何一つとして、望んだように
消えることはなく
/望んでも消えない/望まなくても消える/
唯一の無限線分に根ざす星たちの実存と葛藤を誰も見ようとはしない。「いつか」ということばに嫌気が差して死んでいったひとがいるとしたら、そのひとは本当に星になったことだろう。前触れなく遭遇した小春日和にセーターの袖を捲るひとを見つけて、見続けて、自分の方は見つからない。いつだって、見つからない。
自らが輝いていると知っている星なんてありはしない。ひとびとに輝きを指摘された星、瞬きと瞬きとの間に五回星の明滅を数えた後、そこから一つの星が流れた。たぶん、それは同じ星。瞬きの後の世界が全く別の知らない世界でないのなら。肺胞に取り込まれた吸気には、星から降りた風が30ml、百五十分の一の真空はとても冷たい。誰にも指さされることなく流れた星の。それはすべての解釈を拒絶する痕跡。
星から降りる風
それは見える?
色は誰かが決めてくれる
デブリに汚れていたって
星の息吹、人工の気配、
煌めくおほしさま、
どうしてそんなに輝くの?
ひとびとが存在するから
誰かの心臓が二十億の、役割を終えてしまったから、誕生日が命日に上書きされた祖父母は少なくないから、夜、眠り、そして目覚めるたびに、自意識の存続と、記憶された暮らしの形跡とから、世界の様態が途切れていないことを知り、あなたは安堵するから、脳で発生した腫瘍に眠らされている彼が、尋常じゃないほどの大きな鼾をかきながら、夢らしきものを見ているのかどうか、知る人はいないから、十年付き合ったあいつが、トラックに撥ね飛ばされる前、リペアから返って来たストラトで最後に、掻き鳴らしたのがBフラットだったから、マールボロの匂いと一杯のウォッカを、一晩の睡眠に代用する彼女が、何故、眠らないのか少しだけわかる気がしたから、可愛い顔の同僚のあの子が、オフィスビルの屋上で大して見えない、星を見上げていたから、そうだろ、だから星は光る、それを星は一体望んだだろうか?
太陽がわたしの右上を通る。本当に動いているのかわからない速度で。星は一つも見えない。とうとうセーターを脱ぎ捨てた小春日和。星は一つも見えない。ハレーションとしての活動。埃っぽい。舞い上がる煙草の灰と細かい羽毛。いつになっても。青く濃すぎる空に星は一つも見えない。星だって死ぬ。流れ星。翠色の尾を引いて星は流れる。それは一瞬でひとびとを焼却できるほどの超高熱で燃えている。なのに涼やかに。優しげな速度でついと滑落する幻。嘘から生まれた輝き。熱くて冷たい宝石みたいな星風。誰にも記憶されないまま。
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121206_171_6531p
> 下方から朱色に照らされる雲。知らなかった。太陽は、地上から随分と近いところを通る。閉じられた視界に焼きつく暗緑の幻影を見失わないように、ひとびとは太陽と併せて暮らし、眠る前にその緑色の淡い残像をからだの深い処に沈着させる。掻き抱くみたいにして寝返りを打つ。そのとき星たちは一体どうしている? 嘘みたいに遠い真空で。暁光さえ無い。
> じっさいにぶつからない風
> 別の世界から降り注ぐ嘘
> たぶん、って言う為の呼吸
> 屋根から滑落する人の幻
> 飛躍した人間は星と呼ばれ
> 本当の星は動けないまま
> /昼間に星が見えない/夜から星が奪われる/
> 誰も明るい正午に星明りを思い出そうとしないので、天体には嘘が満ちている。星々の方に嘘はない。星から吹く風、今日は何だか、ほんとうにやってきそうな。
> 真昼の陽射しが差し込む部屋は冬でも暑い。小刻みに窓が震える。風が、今日は強いみたい。オレンジ色のセーターの袖を肘まで捲ったら、部屋の温度が一度上がる。外気の温度は一度下がる。ひび割れに忍び込むような鋭い風が頭上をひっきりなしに飛び交っている。多分。
> 小春日和。雪の匂いは未だ訪れない。星ってやつは気難しいもんだから、太陽とは仲が良くないし雪とも折り合いがつかないのさ、/一拍の呼吸/たぶん。他の光が我慢できないんだろう。そんな風にして人々の目線を釣り上げてきたから。
> 投身自殺と明け方の青み
> 蜃気楼でないためのBフラット
> 世界から一切の音が消え、
> この場所から一切の色彩を
> 手放すための、呼吸を一つ
> でもきっと、そこまでしても
> 何一つとして、望んだように
> 消えることはなく
> /望んでも消えない/望まなくても消える/
> 唯一の無限線分に根ざす星たちの実存と葛藤を誰も見ようとはしない。「いつか」ということばに嫌気が差して死んでいったひとがいるとしたら、そのひとは本当に星になったことだろう。前触れなく遭遇した小春日和にセーターの袖を捲るひとを見つけて、見続けて、自分の方は見つからない。いつだって、見つからない。
> 自らが輝いていると知っている星なんてありはしない。ひとびとに輝きを指摘された星、瞬きと瞬きとの間に五回星の明滅を数えた後、そこから一つの星が流れた。たぶん、それは同じ星。瞬きの後の世界が全く別の知らない世界でないのなら。肺胞に取り込まれた吸気には、星から降りた風が30ml、百五十分の一の真空はとても冷たい。誰にも指さされることなく流れた星の。それはすべての解釈を拒絶する痕跡。
> 星から降りる風
> それは見える?
> 色は誰かが決めてくれる
> デブリに汚れていたって
> 星の息吹、人工の気配、
> 煌めくおほしさま、
> どうしてそんなに輝くの?
> ひとびとが存在するから
>誰かの心臓が二十億の、役割を終えてしまったから、誕生日が命日に上書きされた祖父母は少なくないから、夜、眠り、そして目覚めるたびに、自意識の存続と、記憶された暮らしの形跡とから、世界の様態が途切れていないことを知り、あなたは安堵するから、脳で発生した腫瘍に眠らされている彼が、尋常じゃないほどの大きな鼾をかきながら、夢らしきものを見ているのかどうか、知る人はいないから、十年付き合ったあいつが、トラックに撥ね飛ばされる前、リペアから返って来たストラトで最後に、掻き鳴らしたのがBフラットだったから、マールボロの匂いと一杯のウォッカを、一晩の睡眠に代用する彼女が、何故、眠らないのか少しだけわかる気がしたから、可愛い顔の同僚のあの子が、オフィスビルの屋上で大して見えない、星を見上げていたから、そうだろ、だから星は光る、それを星は一体望んだだろうか?
>太陽がわたしの右上を通る。本当に動いているのかわからない速度で。星は一つも見えない。とうとうセーターを脱ぎ捨てた小春日和。星は一つも見えない。ハレーションとしての活動。埃っぽい。舞い上がる煙草の灰と細かい羽毛。いつになっても。青く濃すぎる空に星は一つも見えない。星だって死ぬ。流れ星。翠色の尾を引いて星は流れる。それは一瞬でひとびとを焼却できるほどの超高熱で燃えている。なのに涼やかに。優しげな速度でついと滑落する幻。嘘から生まれた輝き。熱くて冷たい宝石みたいな星風。誰にも記憶されないまま。
>下方から朱色に照らされる雲。知らなかった。太陽は、地上から随分と近いところを通る。閉じられた視界に焼きつく暗緑の幻影を見失わないように、ひとびとは太陽と併せて暮らし、眠る前にその緑色の淡い残像をからだの深い処に沈着させる。
>誰も明るい正午に星明りを思い出そうとしないので、天体には嘘が満ちている。星々の方に嘘はない。星から吹く風、今日は何だか、ほんとうにやってきそうな。
>/昼間に星が見えない/夜から星が奪われる/
>真昼の陽射しが差し込む部屋は冬でも暑い。
>ひび割れに忍び込むような鋭い風が頭上をひっきりなしに飛び交っている。多分。
>世界から一切の音が消え、
>自分の方は見つからない。いつだって、見つからない。
>誰にも指さされることなく流れた星の。それはすべての解釈を拒絶する痕跡。
>誰かの心臓が二十億の、役割を終えてしまったから、
>優しげな速度でついと滑落する幻。嘘から生まれた輝き。熱くて冷たい宝石みたいな星風。誰にも記憶されないまま。
>脳で発生した腫瘍に眠らされている彼が、尋常じゃないほどの大きな鼾をかきながら、夢らしきものを見ているのかどうか、
>十年付き合ったあいつが、トラックに撥ね飛ばされる前、リペアから返って来たストラトで最後に、掻き鳴らしたのがBフラットだったから、
>マールボロの匂いと一杯のウォッカを、一晩の睡眠に代用する彼女が、何故、眠らないのか少しだけわかる気がしたから、
>真昼の陽射しが差し込む部屋は冬でも暑い。
>投身自殺と明け方の青み
他人の悲しみを感じながら、後暗い想いは隠せず、心の奥深く何かが沈み込んでいく
いつまで続く悲しみだろうか
後暗い同情の行き場がない、やるせない
助けられず、ただ錆び付いていくだけの鉄のパイプライン
心の暗闇を手探りしても、確かなものは何も探り出せず、ただ小さな痛みがあちこち感じられるだけ
人と私の境遇の違いは、心を区別しない
むしろ隔てるものは他にある
違いによって、つながるものがある
つまり心は、空の雲のように、地上の物たちとは違い、重なり合うこともなく、不安定な形で浮かんでいる
吹けば飛ぶような儚さだ
風によって隔てられる
そうであったのかと、愛する存在を失った人に、同じことが私にもいつか起こるだろうと、深く思いを馳せる
念仏を唱えたり祈りを捧げたり言葉にできない気持ちをなんとかしようとする、浮かべた笑いの裏にどんなにか泣いた記憶が隠されているのかと思うと、私もあなたを、想っているのですと、口にしてしまいたい
笑い顔の瞳が暗く陰っているのを見ると、私の瞳はどんな形をしているのだろうかと思われてくる
一瞬の笑いは心にとっては虚偽である
言葉もどこかうわべだけだ
感情の交流をもってしても悲しさは癒えない
そんな深い悲しみは、川のように流れていて、だから海へとつながっている
悲しみとは個人的なものであり心の痛みであるからだ
すべての悲しみは、行き場所を失い深く湛えられる
悲しさが繰り返し思い出されてチクチクと刺す
洋上には他人が操る船が浮かんでいる
顔の温かさを、ただ現実の表れから計ることは出来ない
あなたは一人で私も一人である
中立の表現で歴史は知らぬ顔に記されていくが
言葉の優しさが湯に浸かったように悲しみを癒していく
時の流れは忘却だ
一つの栄光によって高められた感情が、傷をふさいでいく
一人じゃないのに、唯一の人間としての高みに登ろうとする
そんなとき悲しみは気づいたかのように心の中でまたも暴れまわる
甘ったれた自己憐憫の醜さでしかないとしても
死んでいくときに気づく最後のメッセージだとしても
積み重なった想いはきっと人を太陽に向けて飛び立たせるような至高へと導くのだろう
人は自らの心を思い出す
深い海の底に沈んでいく
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130108_746_6612p
>悲しさが繰り返し思い出されてチクチクと刺す からの四行で、飛躍が過ぎたのではと思われる部分は、
>積み重なった想いはきっと人を太陽に向けて飛び立たせるような至高へと導くのだろう
狂た人参は人間を操作して自分を売り場に運ばせた。ジャガイモも人参と同じ病状を示、自分を売り場に運ばせた。玉葱も同じよに狂てたが、特に狂てたのは、トレーの上に乗てた肉だた。自分との極親密な結びつきを切断して、市場が決めた大きさで分割させるよに、人間を操作しちゃた。
売り場に出た狂た食材は共謀して人間を操作しちゃて、茶色い固形物や隠し味の某など買わせ、人間に狂たカレー作らせた。
狂たカレーを拒絶した人が、時計の針を予定の時刻を指すよにテープで完全に固定しちゃた。心身二元論者だた時計の心は、透明な時計の針となて、幽体離脱のよに、固定からは逃げれたけど、明確に定められた時計のとしての動きは続けなくゃならなかた。
透明な針に正確に刻まれちゃてた時間はキャベツに似てた。そのキャベツは、電波を使い、無脊椎かつ非外骨格系の比喩で書かれたプロトコルで対話対象の時間と随時交信した。キャベツの方は随時狂てた。狂たキャベツのよな時間はまるで、見えない時計の針で自らを刻、一定の短い間隔で無限に自傷を繰り返すよだた。
狂たキャベツの千切りのよな時間は、機械的な正確さで次々と刻まれ、昨日の晩の狂たトンカツと一緒に皿の上に乗せられちゃた。狂たトンカツは、キャベツの千切りのよな時間を全部残すよに人間を操作した。意味もなく刻まれて捨てられるだけだと悟た時間は狂いそだた。
発狂しそだた時間は、某時某分間以内には住所地がテープで予定時刻に固定された時計の針先に変更される精神病院に入た。患者は幽体離脱の幽体離脱を止める注射打たれ待てた。予定の時刻と自分が重なたとき「自分は狂てない」と確信できると言われてた。
今にも狂いそな食べ残されちゃたキャベツの千切りのよな時間は、精神病院の昼食時に漂うカレーの匂いを嗅ぎながら、自分が正常に戻ることを待ち望んでた。
面会室で待てた私には、時計の針先から出た正常な声のよなのが聴こえちゃた。小声だたから、テーブルの上で寝てた時計に耳つけたけど、声は聴こえなくなてた。時計を持て、カレンダーの今日の日付、まともそな位置に近づけても同じだた。
少、美味しそなカレンダーだたし、昼、狂たカレーを食べるのを拒絶してお腹が減ちゃてたから、暦、舐めてみよかな、黒ぽい平日は苦味ありそで、赤い日曜日は熱そで、やぱり冷たそな土曜日かなて、だけど、音、が聴こえ振り向くと、狂た服着て狂た化粧した母親のよな人が入てきた。
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130107_711_6602p
夜の底に顔が歪みながら沈んでいった
底に湧く赤い蟹の群れが屍肉を啄み咀嚼し
残った緑の輪廻群が浮き上がって月光を浴び
赤児が生きることを是認するように呻くから
羊水の代りに下水が夜の底に流れ込んでいき
下水に浸された輪廻が幾億回も交叉して
創りだされていく怪物は
歪んだ顔で生を受けたことに苦笑する
夜の底で奇形花が月光に照らされ咲いている
腺病の子供が変態して咲く蒼白い奇形花を
摘み作られた首飾りが夜に垂れて空に揺れ
大人達は次々に首に花飾りを結わって
満足げに上空に曳かれていってしまう
夜空に吊るされた大人の首が千切れて爆ぜ
赤い血が飛散して地面を染めていき
死体が放散され地を律動的に鳴らしてく
全ての命がたった一夜のために失われる事を
教えられてしまった怪物は
歪んだ顔で生きることに苦笑する
夜の底の怪物が光を求め朝に向かった
夜の果てから朝に続く道で怪物は啓示を受け
聖母の肛門より救世主として地上に生まれ
歪んだ顔で生きていくことに苦笑して
その笑顔を微笑みだと勘違いした人間達が
幸せそうに業火に罪だけ焼かせ
天上から垂らされている花飾りを
胴に結わい救われていってしまう
怪物は地上に残り罪を背負い続けて
永久に業火に焼かれ続け
永遠に救われない己を
歪んだ顔で苦笑し続ける
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130110_794_6617p
ふと僕たちは南青山のアスファルトに影を置き忘れて来たんだと、突然そんな気がした。そのことに気付いたのは午前二時に雷が鳴った雨の日のことだった。虹色に染まったのはきっとあの日あの場所に居合わせた人たちの声だったのだ。町角の珈琲店ではゼンマイの壁時計が軋んだ音を発てていた。砂漠色の瞳で外を眺めているといつの間にか暖かい虹色に寄り添っていた。
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20121122_690_6489p
>ふと僕たちは南青山のアスファルトに影を置き忘れて来たんだと、そんな気がしてふり返る。
広大な、目もくらむ雪原に
ウサギは待っている
静かにたたずんで
暖かい日差しをうけながら
黙って目をとじているのだ
降る雪の晩を、指折り数え
肉食獣の足跡に身を震わせ
雪の中に固まっていたのだ
コシアブラの樹皮を喰らい
苦いブナの皮をかじり
ウサギは跳ねる
逃げる、跳躍する
大腿筋をふくらませ
雪煙をあげて
真っ黒な、目玉を白黒させて
耳をピンと張る
ウサギよ、ウサギ
死ぬなよ。
生きていろよ。
狩人に殺されるまで、
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130110_798_6618p
>『広大な、目もくらむ雪原に
>『ウサギは跳ねる
>狩人に殺されるまで、
>死ぬなよ。生きていろよ。で締められていないのはなぜなのか。
潰れたボーリング場の裏にある
公園のベンチでいちゃついていた
高校生のカップルを
ボコボコにしてやりました
男のほうは
口から血の泡を吹いて
小声でフガフガ言っていた
壊れたおもちゃみたいに
「お俺は悪うない・・俺は悪うない・・」
女のほうは俺に
オッパイを握りつぶされて
乳首から変な汁を出していた
声一つもあげられないで
(心の中)タスケテ!お母さん、お母さん
「ヨイショ!お母さんはいつも肩が凝っていたから、
俺はいつも一生懸命だったね。」
それから
どこをどう歩いたのか
気が付いたら誰かの家の
裏庭に据え付けられていた
古くて大きな洗濯機の前にいた
シャブをばっちり決めた俺は
中に入りたくてしかたなかった
フタを開け片足ずつ突っ込んで
そのまま体育すわりをした
すうっと手を伸ばして
スタートのスイッチを押したら
ザーと水が出てきて
キシィーキシィー
右に左にちょっとずつ動き出した
・・・・・
「お前の母親は、一番しんどい時に逃げ出した。」
遊園地のティーカップの中で親戚のおばさんが言った
「弟だけが悪いんやない、あの女の所帯が粗すぎたんや。」
おばさんは続けた
「お前は渡さへん、うちら側の男やからな。」
優しげな曲に合わせて
ティーカップが滑るように動き始めた
だけどおばさんは
ひとっつもハンドルを切らないので
ティーカップは全然まわらないんだ
ドーン
洗濯槽が俺の重みに負けて
落ちてしまった
洗濯機はもう
うんともすんとも言わない
へへへ
お母さん
今頃どうしているかな
へへへ
べちょべちょだよ
へへへ
懐かしい
笑いながらずっと
頭にフタを載せたまま
洗濯槽から首だけ出して
裏庭の塀を見ていた
その時の俺はキレキレだったから
ざらついたブロックの表面を
細胞レベルまで見ることができていました
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130108_743_6610p
>「お前は渡さへん、うちら側の男やからな。」
�機�幻想の髑髏
薬が切れて
コップの水で新しいのを飲み下した
やわらかになっていく感じ
夢の中へ逃げていく
血が目にしみる
お前の、背中が見える
涙に溶ける血の赤色
痛みが積み重なって
欲望に操られて
消えていく、口にできなかった想い
消えていく、つぶやいた心
怜悧な空気の中へ立ち上るかげろう
息が苦しい
心が壊れていく
多くの願い
愛想を尽かすお前は
現実主義者で空想を嫌う
騙すつもりはなかったの
きまってる覚めたセリフ
君といることに何の意味がある
その瞳の輝きに何のわけがある
巨大な宇宙はみなまやかし
真理の壁に跳ね返される
関係を精算する
先に始めてる
真っ赤なワインのボトルを冷やしてる
寒いからここへおいでよ
下心なんてほんとにないんだ
お前を知ってたなんてとんだ勘違いだった
輪廻の渦に巻き込まれ溺れかけてる
赤恥のクラッシュ
お前だって夢が欲しかっただろう?
風にひるがえしたスカートはとても美しい
�供∋爐料或┐�
幾度目の絶望か
ハードな世界
死神におくるわいろ
資本主義はスローガン
受け入れるトロピカルな死
麻痺してる頭
尊厳死なんて俺には似合わないし
狂った死
鏡に映った顔は無限の迷路の百面相
尖らせた口で呟く悲しい言葉たち
春の雪のようにはらはら落ちる
希望降り積もり
悲しみを踊れない
君の顔を見たい
太陽みたいに闇の行き場を消して
例えば冬に寒さを毅然さへと変えるような
もう二度と逢えない、あなたは赤い唇を
朝の光が差し込んでくる
ざらざらした手触りの朝がまたやってくる
まるで船のように徐々に姿を見せる
乗り込んでしまえばどこかへ行ける
大陸行きの切符
ゆらめく瞳が燃える
ロマンスこそ希望
死の接吻はバラの香り
何よりかぐわしい印象だ
�掘�言い訳
誓いのキス?
何も言えなかった
沈黙の俺に向かって君は裏切りと言った
ディスコミュニケーションを言い訳にできなかった
だんだんと遠くなっていくあなたの存在
許して
二人のあいだの
最後の
言い訳
考えてる
君の姿を忘れない
それは精一杯の言い訳
�検�希望(CONCLUSION)
笑顔の跡残る
二人は何を間違えたのか
何も悪くないって言って
悪夢の果てに希望は消え去ってしまった
あまりの儚かさゆえに
最初からわかっていたこと
泡となって消えるけどそんな自分を可哀想だと思う
この世の運命をあやつる神は全てを知っていたのか
俺には予想外のアクシデントだった
教えてくれる人もなく自分で考えるほかない
気苦労ばかりかけて何もあげられなかった
予感に怯え静かな安らぎを待つ
俺には能力を作る力はない
整列したビリヤードのボールいつか弾かれる
叙景と死と言い訳をみんな心で包んで
きみとパンを食べた良い日が
また訪れますように
二人の嘘と二人の幻想を互いに否定して
たった一つの真実とたった一つの現実にする
ながい時間の後でただひとつの輝きに収斂していく
あの日舐めた飴玉にすべての世界が含まれていた
またそんな夢を見てる
もういりません、小判や金貨、紙幣と株券
愛の代金青天井
天板抜けて宇宙が見える
宇宙旅行のサテライト
闇に降る雨
全てを、少なくとも必要な限りのことを、見通す目を、手に入れたんだ
囁く雨の中、闇が限りない、叫びをかき消す雨音、それさえもが愛おしい
プールサイドに立って、俺は、今にも飛び込もうとして準備運動をしている
水の中にはいれば限りなく優しい感触に、抱かれるだろう
もう何も言う必要がない
心は水浸しになって
涙は見分けがつかない
もう一度愛してると心につぶやく
滴る水の中しょっぱい想いが側溝に吸い込まれていく
新しい抱擁を授ける世界は徐々に明けていく
ロマンスは世界をつくる
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130102_629_6593p
>ゆらめく瞳が燃える
>ロマンスこそ希望
>死の接吻はバラの香り
>何よりかぐわしい印象だ
> �機�幻想の髑髏
> 薬が切れて
> コップの水で新しいのを飲み下した
> やわらかになっていく感じ
> 夢の中へ逃げていく
> 血が目にしみる
> お前の、背中が見える
> 涙に溶ける血の赤色
> 痛みが積み重なって
> 欲望に操られて
> 消えていく、口にできなかった想い
> 消えていく、つぶやいた心
> 怜悧な空気の中へ立ち上るかげろう
> 息が苦しい
> 心が壊れていく
> 多くの願い
> 愛想を尽かすお前は
> 現実主義者で空想を嫌う
> 騙すつもりはなかったの
> きまってる覚めたセリフ
> 君といることに何の意味がある
> その瞳の輝きに何のわけがある
> 巨大な宇宙はみなまやかし
> 真理の壁に跳ね返される
> 関係を精算する
> 先に始めてる
> 真っ赤なワインのボトルを冷やしてる
> 寒いからここへおいでよ
> 下心なんてほんとにないんだ
> お前を知ってたなんてとんだ勘違いだった
> 輪廻の渦に巻き込まれ溺れかけてる
> 赤恥のクラッシュ
> お前だって夢が欲しかっただろう?
> 風にひるがえしたスカートはとても美しい
> �供∋爐料或┐�
> 幾度目の絶望か
> ハードな世界
> 死神におくるわいろ
> 資本主義はスローガン
> 受け入れるトロピカルな死
> 麻痺してる頭
> 尊厳死なんて俺には似合わないし
> 狂った死
> 鏡に映った顔は無限の迷路の百面相
> 尖らせた口で呟く悲しい言葉たち
> 春の雪のようにはらはら落ちる
> 希望降り積もり
> 悲しみを踊れない
> 君の顔を見たい
> 太陽みたいに闇の行き場を消して
> 例えば冬に寒さを毅然さへと変えるような
> もう二度と逢えない、あなたは赤い唇を
> 朝の光が差し込んでくる
> ざらざらした手触りの朝がまたやってくる
> まるで船のように徐々に姿を見せる
> 乗り込んでしまえばどこかへ行ける
> 大陸行きの切符
> ゆらめく瞳が燃える
> ロマンスこそ希望
> 死の接吻はバラの香り
> 何よりかぐわしい印象だ
> �掘�言い訳
> 誓いのキス?
> 何も言えなかった
> 沈黙の俺に向かって君は裏切りと言った
> ディスコミュニケーションを言い訳にできなかった
> だんだんと遠くなっていくあなたの存在
> 許して
> 二人のあいだの
> 最後の
> 言い訳
> 考えてる
> 君の姿を忘れない
> それは精一杯の言い訳
> �検�希望(CONCLUSION)
> 笑顔の跡残る
> 二人は何を間違えたのか
> 何も悪くないって言って
> 悪夢の果てに希望は消え去ってしまった
> あまりの儚かさゆえに
> 最初からわかっていたこと
> 泡となって消えるけどそんな自分を可哀想だと思う
> この世の運命をあやつる神は全てを知っていたのか
> 俺には予想外のアクシデントだった
> 教えてくれる人もなく自分で考えるほかない
> 気苦労ばかりかけて何もあげられなかった
> 予感に怯え静かな安らぎを待つ
> 俺には能力を作る力はない
> 整列したビリヤードのボールいつか弾かれる
> 叙景と死と言い訳をみんな心で包んで
> きみとパンを食べた良い日が
> また訪れますように
> 二人の嘘と二人の幻想を互いに否定して
> たった一つの真実とたった一つの現実にする
> ながい時間の後でただひとつの輝きに収斂していく
> あの日舐めた飴玉にすべての世界が含まれていた
> またそんな夢を見てる
> もういりません、小判や金貨、紙幣と株券
> 愛の代金青天井
> 天板抜けて宇宙が見える
> 宇宙旅行のサテライト
> 闇に降る雨
> 全てを、少なくとも必要な限りのことを、見通す目を、手に入れたんだ
> 囁く雨の中、闇が限りない、叫びをかき消す雨音、それさえもが愛おしい
> プールサイドに立って、俺は、今にも飛び込もうとして準備運動をしている
> 水の中にはいれば限りなく優しい感触に、抱かれるだろう
> もう何も言う必要がない
> 心は水浸しになって
> 涙は見分けがつかない
> もう一度愛してると心につぶやく
> 滴る水の中しょっぱい想いが側溝に吸い込まれていく
> 新しい抱擁を授ける世界は徐々に明けていく
> ロマンスは世界をつくる
水槽照らす
春の陽光やわらかく
あちらこちらで明滅し
アクリル板のそちらがわ
像乱れて生命をさらす
点描画のひとは歪み
折れて砕けてもはや
懐かしき断片となり
新参の漂流物となる
黒く骨ばった親指は言霊を感傷的な独白を
(ああ、ある断片のわたくしは母なる海にいだかれて
ああ、ある断片のわたくしは今も航海しています)
みなもにたたく
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130111_859_6623p
>ああ、ある断片のわたくしは今も航海しています
>『点描画のひとは歪み
おちんちんマンやってきた
おちんちんマンここにやってきた
おちんちんマンちんちんマン
ちんマンちんマンちんマンちんマン
ちんマンこ
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130111_848_6622p
>(あえて無記名にします。2ちゃんで叩かれますので。)
>僕も80過ぎのBBAのマンを見せられたら非常に不快に思いますので
単位で数えられる挨拶をする植物群の、植木はかさの据わりが悪い
青い塗り立てのドアを押して牛のように
餌が運び出されそれは捕食器官としての個人を自覚し、
神社とプールの地続きの、町の人はとても笑顔犬が部分的な
尻尾を振って、それほどの重量もない針が、どこを回っているのか
これは部分的な私の中の数字「市民権」という言葉が好きだ
その財布の両端を崩したような中身に触れて校庭で相撲をとる生徒は未だ居る
押し出しの腕が掘れる土は白球の腰の重さほどもない 私の身体が
いつもそのように形容されることに先生は疑問を抱いた
(もう少し、腰を低くして)野球と一緒だ 折り紙の教室は学校の行事
虫のつく手を払ってこんなに鶴を折るのなら、と捕食としての手が伸びる
叩かれることがわかっている事を私はあえてしない それがハンカチを忘れる
あの子の尤もな舌、濡れた舌だから、そう思うの 捕食の姿勢に私たちが
遠くなる それは夏のプールで泳がせる生徒達をみてほしい 笛の、私たちの
喉にある笛をころころ移し替える生殖のうしろめたさはここからはじまったとも
思わせるような大量の種に見まがう糞(学校のプールは汚いと言われてしょうがないわよ)
あなたたちは余りにも言葉を憶えていて先生びっくりするわ わ わ
先生の車で、毎回すぐれない生徒が運ばれて行くその車に
私のなにかを乗せて欲しいと思う欲情がわかりません(教育と新聞って
嫁ぎの娘を女として見るような左目と右目だと思うの)
学校から見る鳥ほどの無口がどの女の子にも私は
あると思っているから 今朝の挨拶に鶏も失禁するわ
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130111_843_6621p
>あなたたちは余りにも言葉を憶えていて先生びっくりするわ
>教育と新聞って嫁ぎの娘を女として見るような左目と右目だと思うの
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回転子◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回転篩◎◎◎◎◎回転扉◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回遊魚◎◎◎回転異性体◎◎◎◎回路◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回転対称◎◎◎◎◎回転磁場◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回復◎◎◎◎◎◎回旋曲◎◎◎◎◎◎◎◎回答◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回転運動◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回帰分析◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回虫◎◎◎◎回漕◎◎回帰年◎◎回想◎◎◎◎回文◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回礼◎◎◎回避◎◎◎◎回章◎◎◎回春◎◎◎◎回転◎◎◎回覧◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回転機◎◎◎◎回国◎◎◎回帰性◎◎◎回訓◎◎◎◎回折像◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回生◎◎◎回議◎◎◎回忌◎◎◎回収◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回転軸◎◎◎◎回路素子◎◎◎転◎◎回転変流機◎◎◎◎回転計◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回線◎◎◎◎◎◎回軸回◎◎◎◎◎◎回送◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回転木馬◎◎◎◎◎回帰年◎◎◎転◎◎◎回帰熱◎◎◎◎◎回転半径◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回折◎◎◎回帰◎◎◎回教◎◎◎回診◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回転儀◎◎◎◎回顧◎◎◎回帰線◎◎◎回航◎◎◎◎回想録◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回瀾◎◎◎回付◎◎◎◎回心◎◎◎回状◎◎◎◎回読◎◎◎回遊◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回部◎◎◎◎回勅◎◎回帰率◎◎回天◎◎◎◎回腸◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回折格子◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回転資金◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回米◎◎◎◎◎◎◎回天角◎◎◎◎◎◎◎回報◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回転偏光◎◎◎◎◎回転椅子◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回廊◎◎◎◎回転楕円体◎◎◎回路図◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回転窓◎◎◎◎◎回転面◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎回転体◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎▲◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎∴◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎∴◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎・◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎|◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎|◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130108_759_6614p
おもしろおかしく生きて死にたい
地のレベル──犬の視点──から世界を見ると、どのように見えるのだろう。
イアン・ジェフリー「写真の読み方」
モリエールはおもしろくない。おかしくもない。少なくともおれをふるいたたせてはくれないから七階の窓から放った。いやいやながら医者にされ、だ。地上の小屋のうえをおれの投げた塵芥がみえる。チーズの包み、サーディンの罐、領収書、よごれきった下着、嘔きだしたもろもろたち。仕事はない。なにもなかった。やることといえば近所のどでかいスーパーマーケットで喰うものをかっぱらいにいくことだった。午に眼を醒ますと、いつも弁当はない。ひどい飯場だ。入って一ヶ月もまるまる食い扶ちをまわしてもらえない。おれはいっぴきの、どでかい蠅をみつけた。そっと手をのばした。しかし地獄よりもそいつはすばやかった。まるきりついてない。おれは廊下へでて、その出口に立つ。頭上の扇風機がかすかにかぜを起してた、夏のさかりにはどうにもならない。ああ、しかたない。また店へいって商品を見てこようか? きょうあたりはジンが呑みたい。さてどこを狙おうか。
おれは服を着て夏帽をかぶり、階下へと降りた。セメントづくりの小屋で老人夫がシャワーを浴みてる。窓がらすもないから、はっきりとみえた。
あんたも仕事なしかい?
ええ、入ってひと月もね。
おれは三回だ。これじゃあ、どうにもならん。
そうですね。まったく。
とんこしようかとおもってるよ。
いちばんちかいショッピング・モールはずるぬけだった。まずはスパゲッティをやって、障碍者用のひろく清潔な便所で喰う。つぎに酒屋へいってミニチュア壜を三本はいただく。そしてしまいにチーズを一袋。仕上げに本屋でブレヒトは三文オペラをすっとばした。しかし、まだ午過ぎだ。おれはいったん引揚げる。そうしてオペラを甞めながら夜を待つ。とてもじゃないが、仕事のある連中といっしょに飯を喰う気にはなれなかった。わいわいがやがや、どこにだってそんなやからがいる。
盗賊が乞食の娘とねんごろになったとき、おれは階下へ降り、事務所を覘く。どの釘にもおれのなまえはぶらさがってない。くそ色の髪をした、ちびの管理人は、ちゃちな耳環をゆらしてこちらをみた。こちらもやつをみた。
すみません、明日もありません。
そですか。ではまた。
ちびのことばに顎で応え、おれは狩りへでた。まずはいささか遠いスーパーマーケットで酒の肴を仕入れ、パンと鯨のベーコンを懐にし、ふたたびモールへ。酒のコーナーで唐辛子入りのジンを手にして寮に帰った。むしあつい夜だ。
そもそもおれがこんなことをしなければならないのは、初日に来た仕事を断ってしまったからだ。運転手だ。しかしおれはまともに車を転がした経験がなく、おじけづいてしまった。そのために管理人にも営業にもきらわれて、このていたらく。運がつかないのもさもありなんといったところだった。
かっぱらいと読書にあけくれてるうちに一ヶ月は過ぎ。寮費の無料期間がなくなった。一日三千五百円がおれにのしかかる、おれ用の水牛だ。こいつをどかすには、トンコするか、待つしかない。そんなときだった。ようやく仕事がお目見えしたのは。しかしあまりよいことにはおもえなかった。
休憩室のテレビジョンは子殺しを報せてた。またか、とだれかがいった。おれにも憶えがある。公園で母親にやられたのがあったっけ。今度は雨のなかで少女が死んでたという。雨のなかのひと殺し、──レイモンド・チャンドラー。まあ、どうだっていい。
どうせ、また母親がやったんだろ。
ああ、そうに決まってる。
女ってやつは歯止めがきかねえんだよ、まったく。
しかし雨のなかってのは、あまりにも──。
水を呑みながら始業を待つ。飲みものを買う金もなかった。拾いものの、ペットボトルに水道水とくる。まあ、どうだっていい。とにかくがらす工場は機械を入れ替えるあいま、手作業で材料を運ぶやつらを欲してた。うなり、熾き火を秘めた釜のまえに、天井からダクトが降りてる。材料のガラス片はそこから落ちてきた。はじめは少しづつだったのいが、しだいに大きな流れになった。スコップではどうにもならなくなって、ベルトコンベアがおれたちの手で運び込まれた。流れてくる材料をスコップでさらに奥へと掻きだす。高熱のなか、ひとつきりの幸運は二十分ごとの交代だった。
おれはすぐにばててた。きらめくくず山をみつめ、呼吸を整えようとする。そのとき、老人が怒鳴る。──おまえも動けよ!
休憩は屋上の小屋でだ。分煙のためか、室の半分にビニールが垂れてる。そのむこうから男の声が寄ってきた。
きみ、いくつ?
二十四です。
若いってことがなにか罪悪のようにおもえた。男の顔は赤黒く、疣があった。ちいさな疣だ。
ほかに仕事なんていくらでもあるだろうに。
ないですよ、宿なしじゃ。
夢とかないの?
詩とか短歌とかでなんとかやっていきたいですね。
小説は書かないのかい?
ながい文章は苦手なんですよ、書きたいのはやまやまですが。
その日のことが終わると、下着まで濡れてた。びたびたびたと皮膚にくっつき、歩きづらい。われわれのワゴンの隣にはラリー仕様のミニ・クーパーが深緑して坐ってた。これみよがしの態度。女のいやみのようなやつだ。おれは水を呑み、べつの男が喋るのを聞いた。車は南にむかって走る。
おれがきみの齢のころはあぶくでな、
どこいっても大金で雇ってくれた。
面接で「おまえ、いくら欲しいか?」訊かれて、
「五十万」っていったら、むこうは「雇ってやる!」。
そんな調子で毎晩、高級な酒場にいって味もわからねえたかい酒を呑んだ。
家も二件建てたし、息子もできた。
なにやってもうまくいく、いい時代だったな。
かれはまるで今日の一切がないかのように話しつづけた。かれの家族がいまどうなってるのか、どうやって飯場に落ちたのかはおれのあたまに残った。
きみはまだ若いんだ、
パチンコ屋の棲みこみになればいい。
おれが中学のころ、パチ屋の息子が友達でな──。
おれはほほ笑みで応え、眼をそらした。これ以上がまんならなかったからだ。もういい、昔話なんぞくそくらえ。牛のけつに話しかけてればいい。
寮にもどるとふたたび狩りにでた。五つもまわって壜いっぽんとパン一個しか得られなかった。そろそろ潮時らしい。おれは食堂にいってカレーライスを喰った。だれかが見てるような気がした。事務所へいっておれは前払いのぶんをとりにいった。二千が手に入るはずだった。
あなたはまだ一回目の出勤ですよね?
ええ、そうです。
それなら前払いは千円になります。
どうしてですか?
決まりだからです。
五回以上出金すれば二千円だせますよ。
くそったれ。こんなわけで逃げだす金も得ることはできなかった。翌日もおなじところに派遣されたが、それきりだ。まだ何日もそこの仕事はあったが、おれだけはずされた。営業曰く苦情が来てるという。いくら力を使ったところで。ないものはどうしようもないことに気づいた。
なんとかあたまをさげておれはうんと遠くにある、廃棄物の処理にあてがわれた。飛び交う蠅たちのなかで塵芥を仕分けるのだ。まずは空き罐だ。とにかく臭かった。くさった液体がそこらじゅうを流れ。おれの顔に飛びかかる。そへ蠅がおれの口や耳の穴にむかってくる。こわい。──さておつぎは家具や鞄や買取不可のおもちゃどもだ。材質ごとにでっかい箱にわけていく。とにかくおれはのろくさかった。たった二日、北へむかっただけでお払い箱にされた。仕分けられたのはおれ自身だった。
おれは町へでた。図書館があった。万引き対策の本をみつけた。たしかこんなことが書かれてあったともう。──犯人は世間とはずれた、あるいは汚れた服装をしている、とあった。おれは便所へいって自身を鏡にみる。靴がそろそろお役ごめんだ。その夜さっそく靴屋にでむいた。手に入った。
くらい室に入り、とがった皮靴を磨きながらおれはおもった。これは生きた気分じゃない。死んだものの気分だと。入寮以来はじめてテレビジョンをつけ、夕べのニュースを眺めた。自殺の話しはない。靴屋の話しもない。そしておれの明日についての報せもなかった。よい気分ではないが、そうもわるくない。死体もわるかない。おそらく。おれはズボンを降ろし、シャツを投げた。じっくりとまたぐらをつかみ、おもいうかべた。むなくそのわるくなるほど照明の効いた室で、まず装飾つきの木椅子がおかれる。二脚だ。いっぽうにおれが坐る。そこへ二十歳過ぎの童顔の女が現れる。とにかくばかげた、幼稚なかっこうをしてる。お帽子つき。少女めかした、そのおもざしがおれをやさしく蔑む。ふいにかの女の御足がカッとひらめいた。ぬかるみを通ってきたかの女の白い運動靴がおれのまたぐらをしっかりとらえ、おさえつけてる。おれはそのまたたきに茎を温くさせられてしまい、──あとはかの女のされるがまんま、しかし仕返しはたっぷりとくれてやる。二回戦。引き分け。薄洋紙がなくなった。
疲れているときにむりな射精はしてはならない。それを忘れてた。肛門から痛みだしておれは便所へ駈けこんだ。いきんだ。なにもでない。いきんだ。なにもでない。でそうなさわりがある。この症状のなまえを教えてください。二十四歳・男性。当方無学。だが一時間ほどでそれはやんだ。手加減してくれたんだ、だれかが。残ってた酒をきめ、もういちどかの女と姦りあおうとしたが、勃たなかった。身を横たえて深夜まで眠った。戸を叩く音で起きた。そとに中年が小男が立ってた。おれが黙ってるとやつはささやきはじめた。
きみ、仕事全然ないんだってね?
ええ。
おれら、会社に抗議しようとおもってんだ。
むだですよ、そんなの。
とにかく数でいきゃあいいんだ。
そんなものですかね?
そう。労基だってうまくいきゃあ、動くし、金だって入る。
それでぼくはどうすれば?
いま、会合やってる。とりあえずでて欲しい。
そのまんまおれはついていった。ふたりして階段を降り、四階の室に招かれた。そこでは男が四人、狭いなかで話し合ってた。みな中年のぎらついた男たちだ。そのすべてが憐れなる落伍者なのだ。おれだって? おれだってもちろんのこと、そのうちっかわさ。もういきようがなかった。
かれは?
首長らしいのがおれを指した。連れてきたやろうが早口に説き明し、さっそく話しが始まった。おれはできるだけ、加わらないように、加わってないようにみせた。
すでに追い立てを喰らってるやつもでてきてる。
はやくしないとこっちにまで来ちまう。はやくバックをつけないとな。
おれはほうぼうの非営利に電話して反応を待ってるところだ。
でも待ってるんじゃどうにもならねえよ。
あちこちでおなじようなことが起ってるからな、忙しいんだ。
いっそのこと、全員で生活保護受けにいけねえか?
ばかやろう。──いくらそういうのが多い、この土地だろうと、
宿なしは施設をたらいまわしにしておわりだ。
おい、若いの、おまえ、なんかいい案はねえか?
おれはくびをふった。ありませんです、だ。
やっぱりむりなんじゃないですかね。ここの全員が事務所や本社にぶつかっていかないかぎりは。
使えないやつだな。
もっとあたまを遣えよ。
こわいんじゃないのか、おまえは。
おれにはかれらに協力するつもりはなかった。ただ与太を飛ばす、五人の男にでくわしただけだとおもった。かれらは罵りあい、褒めながら時を過ごす。食堂や教室にいる手合いと、ほとんどなにもちがってはなかった。だから午前三時をまわったころ、おれはその場をむりくりに退け、じぶんの室にもどった。酒はなかったが、ありがたい孤立だけは健在だった。さっそくメッキー・メッサーの気分で本をひらいた。
そのあとの三日間おれは会合を断った。そのかわりにほかの派遣会社にいって仕事を求めた。どこもくそったれな携帯電話を要としてた。そんなもの、もったこともない。しかし、面接のことをうっかり事務所にいた営業に話してしまった。
つまりここをでたいということだね?
いいえ、それではどこもやとってはくれないので、
あくまでここにいて金も貯めて寮費も清算したいのです。
でもきみは苦情がですぎてる。都合よすぎるとは?
しかし生きていくには仕方ないですよ。
でもきみはまだ若い。ほかにだって当てはあるじゃないか?
ぼくだって、広告に「軽作業」とあったからここに来たんです。
文なしでそとにでたら死んでしまいますよ。
でもこちらだって苦情のでる人材は欲しくない。
なら給与、払ってくださいよ。
もう寮費でなくなった。
死にやがれ。アスホール・パワーのばかどもよ。黙っておれは七階にひっこんだ。ふたたび温くなった、またぐらをもみしだき、勃たせようとした。しかしおれの内なる女らは、みなそっぽをむいてた。しかたなく、階下へでると、狩りにでかけた。その日は白葡萄酒で飛んだ。贋キャビアもおまけだ。上出来だ。
夜、またも会合に呼ばれた。しかしおれは手痛く断った。──傷を甞めあうのはごめんだといって、その小男をさえぎった。やつはおれを殺したかったにちがいない。冷たい背中をみせながらいった。──裏切りものがいる。
翌日になって営業の男がおれを訪ねた。色黒で髪を逆立てた、眼の鋭いのが、おれを見据えていった。──いま、何人ものひとにいってまわってる、──退去してくれるひとを。
でもぼくは文なしですよ。
すると男は財布をだして千円札をだした。
これはおれのポケットマネーだけど。
おれは受け取ってしまい、おまけにやつのだした、自主退寮者のリストにもなまえを書いてしまってた。なんてこった! その日のうちにでていかなければならない。しばらくして雨が降りだした。おれはまたでかけてウォトカを盗みだした。そしてしたたかに酔ったころ、その声々は聞えはじめた。
裏切りものがいる!
おれたちのことをたれこんだやつが!
そいつをつかまえろ!
いきなりにおれの室がひらかれ、中年男が飛び込んできた。──こいつ、酒呑んでる!──営業から金貰いやがって!
かれらはいっきに事務所へとなだれ込み、管理人をどやしつけた。やがて本社の連中が大慌てでやってきて、かれらに金一万円がだされた。おれはただみてるしかなかった。雨はさらに激しくなった。おれはでるしおを喪い、酒を呑んだが、いっこうに酔わせてもらえなかった。しかたなく鞄を手に入れにいった。五千円のがただになった。翌日の朝、月曜日に営業の、ほかの男が室をあけようとした。おれは鍵をかけてた。覘き窓から男が声をだす。──なんでいるんだ!
おれは寝台に横になってそれを眺めた。けっこうな眺望だ。まるい眼の男はわめく。
きのうまでだっていったろうが!
なんでいるんだ?
雨が降ってたんですよ。
そんなの関係ない。
でもあれじゃあ、でられない。
関係ない!
おれは金だってないんだからな。どうしようもないんだ。
とにかくここをでろよ。
おれは芥葛を冷蔵庫に隠しておもてへでた。一階の階段のうらへ立ってたら、やつは芥袋をもって降りてて来た。
よう、とおれはいった。
どういうつもりなんや、おどれは。
こんなことしやがって。
怒りたいのは、──とおれはいった。おれのほうだと。
きのうのやつらみたいに金がもらえると思ってんのか?
貰うんじゃねえ。対価を払えってんだよ、くそ。
あのな、寮費でおまえのはぜんぶ消えたんや。
はよう、いねや!
イネ? どういう意味だ? そりゃあ。田舎ものめ。
失せろってことや。
ふざけるなよ。だったら苦情がでて、こっちに金のある時点でいえよ。
──とにかく失せろ、警察呼ぶぞ。
やつが携帯電話に手を展ばした。おれは逃げた。すると路上でおれに千円をやった、営業にでくわした。
いまからでるのか?
ええ、そうです。
なんとかなりそうか?
さあ、わかりません。
でも若いんだからな。大丈夫だ。
おれは終始笑顔で答えた。やつはきっとおなじような科白を携えて、また千円で、追いたていくところなにだろう。けちくさいくそやろうどもだ。そのうち、やつらの本社がみえ、女子社員がでていくのがみえた。なかなかわるくない。おれは自然に声をかけてた。
おい!
女は蔑みきった眼でおれをみた。
おれはさっきまであんたんところの飯場にいたんだ。
それがなにか?
なにかだって?
おれは金も貰えずに追いだされたんだぞ!
なるほど。きのうの騒ぎに喰いっぱぐれたひとね。
おれにも一万くれよ。
ばかね。終わったのよ、ぜんぶ。
でもおれのなかでは終わっちゃいねえんだ。
どうしろっていうのよ?
いまさらうえに掛け合ってももむだ。
あんただって若いんだからすぐに仕事なんて見つかるわ。
宿なしでもか?
もう小銭しかないんだ。
あら、そう──。
おれは次第に距離をちぢめ、かの女の横になった。──どうしてくれるんだ、おれの人生を。生活を。日常を。
お似合いじゃないの?
あんたのようなひとはどこへいったっておなじよ。
流れもののくせに口だけは達者ね。
死ねばいい。
おれはかの女を社屋の脇にある、くらがりに誘い込んだ。急に劣情を催した。いや、欲望に優劣をつけるべきではない。かの女に懇願した。
あんたみたいなきれいな、
若い女にくそみそにされたい。
実際、かの女はそう若くもなかったし、きれいでもなかった。しかし、それのほか科白はおもいつかなかった。少しばかり喜んだようだった。
だめだって!
こんなところじゃあ。
でもおれはとまらないんだ、お願いだ。
ふたりの顔が火照っててる。
ちょっとだけなら。
勝ったもおなじだ。おれはかの女のストックキングから、かの女の女陰を味わった。いいいお味だ。つぎに上半身をまさぐり、胸に顔をうずめる。おれたちは服を皺だらけにしながら息を荒くした。上出来だ!
抱き合ってしばらくかの女が顔をそむけた。
はなして。
やっぱりだめ。
その顔はもとどおり、冷たい。ああ、まただめなんだ。
あんたとじゃできない。
かの女の両手がおれを突き飛ばした。うしろには側溝がある。浅い流れを眺めながらおれをそこへ背中から落ちてた。かの女のあざけりが聞える。なにをいってるのか、ほとんど聞えてこなかった。やがてさいごの笑い声がながくひびき、かの女はいなくなった。汚濁が背中や足へ染む。おれは十分間、そのままにしてた。うごけなくなってたのだ。
日の光りがいまいましかった。公園の便所にいってシャツを洗い、ズボンをタオルで拭った。そして作業服に着替え、夜を待つ。腹のぐあいがわるくなってた。上腹部が脹れてるようなさわりがある。残った金でポカリスエットを買い、呑んだ。なんにもよくならなかった。夜になって、おれは量販店へでむいた。酒は呑めそうになから、ダンボールをもらうことにした。
やや混み気味の列に、空身のまんまくわわる。店員のけげんな両の眼にさらされながら、おれは順番を待ってた。するとおれの手前の客が店員に突っ込み始めた。対応に問題があるらしい。客は食器片手に相手をどやつける。みんな、怒るのが好きなんだ。ほんとうはどこかでだれかをやっつけたいとおもってる、おれだってそうだ。やがて憎悪が客へとふくらみはじめたとき、助け舟がきた。ボスらしいのがやろうを別室に連れ込んでいった。
なにかごようで?
おもてのダンボールをひとつ欲しいんですが。
あれは購入されたお客さまのためのものでして。
お願いします。どうしてもいまいるんで。
ちょっと聞いてきます。
店員はさり、うしろの列がおれをみつめてる。なんと感じやすい背中なんだろうか。しばらくして戻ってきた店員は、いちまいかぎりを条件にゆるしてくれた。さっそくおれはもてにいっていちまい、しかしでかそうなやつを撰んだ。
公園のベンチに腰をおろす。さいわい仕切りはない。本をひらく、盗賊は釈放された。物語は終わった。そのつづきは現実のなかで探すとしよう。おれは陸をひき、作業着をかぶった。
夜もそうとうふかまったころ、おれはおれにのしかかるもので眼を醒ました。ふとった小男がおれの胸にかおをうずめ、またぐらをいじくってる。くそ! まただ!
なにをしてる!
なにって愛しあおうというわけさ。
そんなつもりはない。さっさと失せろよ。
なにいってんだ、勃つものはいずれにせよ、勃つんだよ、ルンペン。
わからねえ理屈とばすんなら公民館で演説でもしてろよ。
こいつはおれの肉体だ。共有可能なんてよたもとばしたことはねえよ!
やつには表情も顔もなかった。なにも聞いてないふりで、おれのけつの穴をズボンのうえから指でおしあげる。おれはやつの右肩むけて蹴りあげた。男は叫ぶ──おれはただ愛しあいたいだけなのに!
革靴でやつの睾丸を半分潰し、やつの失神を確かめた。札入れには二千円しかなかった。おれは千円だけをとって、そいつをもどし、ダンボールをひきずって歩きだした。つぎの公園ではなにも起こらなかった。ほもやろうに狙われたのはこれで三度目だ。いったいどこにかれらを興奮させる要素がおれにあるというのか。そんなむだな考えを打ち切っておれは朝を待った。
明けてすぐおれはスポニチを買った。求人欄のためだ。ちかくに三軒の飯場をみつけた。そのひとつにむかった。しかし一日でくびになった。事務所へ自己紹介する時間をまちがえてしまったのだ。
おれはもうひとつのやつにひっかかった。場所はアスホールから、まったくはなれてなかった。おれは水を呑んだ。はらわたが温くてしかたがない。そして息も苦しい。寮夫妻はやさしいひとたちだ。食堂でラーメンを喰いながら話しをする。
きみはまだ若いんだ。こんな仕事はさっさとやめたほうがいい。
金ができたらまともな職に就くんだ。
そうよ、まだいくらだって可能性はあるわよ。
そのとき、妙な生きものが床を走るのをみた。なんだこれは? そいつはくそ忙しく走り回ってじぶんの餌場をみつけた。ねずみの一種らしい。
すみません、胃薬ありませんか?
寮母から散薬をもらい、すぐに流し込む。まだ夕方だったが、横になりにいった。よくないことばかりだ。はらわたが温い。水を机においた。テレビジョンは病院から払い下げられたもので、ものでつくりが風変わりだった。画面が異様に小さく、音を聞くのに手間がかかる。
しばらくして眠ることができた。しかし夜中になってそれはまわってきた。痛みだ。鳩尾と背中がいっぺんに痛み、締めあげられたかのようだ。どっちにからだをむけても痛みはやわらがない。それでどころか、どんどんふくれていった。いそいでおれはノートを破くと、簡単な遺書を書いた。このままでは死ぬとおもったのだ。──父、母へ、葬式はやらないでください。書きものはみな棄ててください。
死を待つにしても苦しみは過大すぎた。おれは階下へ降り、おもてへでる。病院をさがしはじめた。幸いにしてちかくそれをみつけた。夜間救急つき。そいつが開くのを待った。老婦人がふたり、おれをけげんにみた。おれは見返さなかった。ただなにもかもが過ぎ去って消えてしまえることのみが望みのように感じられてしかたない。何時分かが過ぎて、ようやくなかへ通された。おれは免許証をだし、文なしと告げた。
ロビーには灯りがなかった。おれの顔には脂汗がしたたり、坐っているのもむずかしかった。──あの子、ぜったい盲腸よ。老婦人がささやく。くそ、なんだってこんなことになるんだ! さらに一時間待ってようやくおれの診察になった。血やレントゲンなんかをこなしてついた病名は、急性膵臓炎といった。まるではじめて聞く代物だ。一ヶ月の絶飲絶食。すぐに寝台が用意され、点滴がはじまった。痛み止めがよく効いた。ふたたび眠りに落ち、明日がやってきた。
ほんとうのところ、痛みは二日目がいちばんだ。おれはさらに機械へとつながれ、全身コードだらけになった。夜、意識が混濁するなか、親父がやってきた。
遺書があったって聞いてるから、
どうせ妙な薬でも呑んだんでしょう。
やつが医師に勝手なことをべらべらやってるあいま、おれは浮浪者として入ればよかったと悟った。医療保護にでもあってればこんなくそったれと顔を合わすこともないのだ。三、四日経って一般病棟に移された。痛みはまだひどい。しかし一日中、なんども痛み止めを求めるほどではない。コードもはずされて身軽になったおれは毎日、障碍用の、ひろくてきれいな便所で、灯りもつけないまんまみずからをなぐさめた。喰ってなくともでるものはでたし、あいかわらず空想のなかの女らはいかしてた。つらいのは空腹だった。おれは病室にもどると、すぐに料理を喰い、女らと語らう光景を思う浮かべてた。
一ヶ月経って外出がゆるされるようになった。おれは本を手に入れ、読み始めた。「燃えつきた地図」はおもしろくなかった。「賭博師」はなかなかいいようにおもえた。「ライ麦パンのうえのハム」は愉快だった。「ありきたりの狂気の物語」は、──。
ある夜、医者がおれを呼びだした。若い看護婦をひきつれて、別室で横にならせた。 これから股の毛を剃ろうとおもう。
医者も若かった。
ズボンとパンツを降ろして欲しいんだ。
え? ここでですか?
おれは看護婦をみた。かの女たちには顔がない。
わかりましたよ。
両方を降ろしておれの陰部があらわになった。看護婦が陰毛の一部をそぎ、そこへ点滴針を突き刺した。
これで一日に何度も刺したりせずに済むだろう。きみにとってもいいことだよ。
陰部、そして仮性包茎をみられた恥ずかしさでおれはまた便所に駈けこんだ。あたらしいネタで二回抜いた。
もう退院だというころになって飯が来るようになった。質素なものだった。米と汁と漬物。それでもおれには豪勢だった。毎日の楽しみが飯だけになった。ある夜、またしても親父がやってきた。
おまえこからどうするつもりなんだ?
どうって?
ここの入院費だ!
いまは払えないよ、またべつのところにいって稼ぐまでだ。
おまえなんか、いったいどこが使うんだ?
さあね。求人欄をみて、ぶっつくだけさ。
まったく無責任だな。それでどうやって生きていくんだ。
姉は大学院までいってIBMだっていうのに。
おまえには野心がないんだ。
だからどこにいったって首になる!
おれは恥ずかしいぞ、息子がこんなくずだったなんて。
いつまで作家のものまねなんぞをやってるんだ!
おまえの存在そのものを忘れたい。
しかたないじゃないか、おれはあたまがおかしい。
それだけだ。
ふざけるな!
いったいどうしてくれるんだ、おれの人生を!
おまえはそれを破壊しつづけてるんだぞ、わかってるのか!
どっちにしたっていつかはくたばるんだ、おなじだよ。
おなじじゃない!
あとは黙って、やつが叫び、なじるのを聞いてた。おれは病院からどう逃げだすかを考えてた。また数日経って、ようやくまたぐらの点滴がはずされた。おれは荷物を整理しだした。飯場へもいっておいてきぼりの鞄をとりにいった。
若いのに、死のうだなんて考えるな!
老人がどやしつけた。おれはすみませんとだけ答えておもてへでた。そしてまたモールで酒をくすね、そのミニチュア壜を三つ干した。もうなんともなかった。翌日、置手紙を書いて病院をでた。なけなしの金で電車に乗り、中心街をめざした。
そこではじめて盗みがばれてしまった。おれは監視員の中年女にひきずりこまれ、警官どもを呼ばれた。しかしそれは連行されずに終わった。
さまよいのうちに夜は早かった。おれは商店街の入口に腰を据え、眠りに入った。作業着入りの手提げ鞄を枕に、本やなんやの入った鞄をそのままにして。
夜明けまえに起きると鞄はなかった。おれはどっかに落ちてないか、棄てられてないかを探った。どこにもない。バーボンを手に入れ、そいつを呑んだ。朝がやってきた。またしても求人をめくった。ひとつ、よさそうなのがあった。公衆電話にかけ、手配師を呼ぶ。公衆電話を切る。金がほんとうになくなった。文字通りにだ。
ほんとうに若いな。こういう仕事は?
経験は?
まえにアスホール・パワーという飯場にいましてね。
追い出されたんです。
仕事がなくて。
おれんとこもその系列だよ。
え?
営業とでもけんかしたのかい?
ええ、そうです。そんなところです。
いちど訊いてみるよ。
お願いします。
男は電話をかけ、おれのことを照会しはじめた。しずまりはすぐにやんだ。
わるいな、兄ちゃん。だめだとさ。
たったそれきりで車はでてしまい、おれにはもう頼るものがない。おれは知っていた。 それだけだ。世間で通じるひとびとはみな、どちらかの椅子に坐っていて、物事を色分けしたり、なまえをつけたり、指をさしてあざ笑える人種だということをだ。セアドーとかいう詩人のいってたとおり、おれも「犬を笑えない」のだ。みじめさを味わい、それを掴みとったものは、どんな犬もどんなきちがいも、それを視とめるのみだ。さもなくば怒ってそのかいなをふるだけだ。そんなときには上も下も、右も左も、醜美も突き破られる。ひとを虚仮しているやつらには一生、わかりようなどあるまい。歩いているうちに日は天井に来た。おれはどや街にむかって歩いている。そこならいくらだって手配師はいるだろうからだ。とにかく居場所が要る。寝食と職が要る。そうしてなにがしかのもの、あるいはあらかじめ喪われているものを手に、おもしろおかしく生きて死にたい。だれかおれにいってくれ、まだ間に合うと。
もう正后過ぎだ。
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20130107_730_6609p