◇ No.299 , '11/12/06 23:44:38 作成

5686 : 亡国  Lisaco '11/11/09 13:29:59

明日の朝、
振りはらわれることを知らないまま
屋根につもる寝息の確か、
街灯が照らさない
路の片隅に灯る鼓動、
小さな体躯に広がる
世界地図は雨に打たれたまま
羽ばたきを知らない、


小国の小さな太陽があたためない
部屋で生まれる子供たちの
声なき産声を聞かない
亡国で
朝、火柱に焼かれる
陰影の水音が
空の明るみへ、
一筋の
無音の灰を
標として

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20111109_532_5686p


5684 : 末 路  草野大悟 '11/11/08 22:32:07

ひまわりは もう 空いろのじてんしゃを こがない
それが すっかり あかね色にかわってしまったことを知ったから

風をたべていた鳥は 夢をたべはじめるようになってからずっと お腹をすかせ
風は その鳥をたべたせいで 空を吹けずに 地を這うようになった

おおくの男たちと肌をあわせてきた女は
収納ケースから ほつれた糸をもてあましている 綻びた男をえらびだし
雑巾にして 零れたミルクを一度だけふき
涼しい顔してゴミ箱に捨てる

それぞれの末路が それぞれの殻をつけたまま
漆黒の海のなかをただよっている

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20111108_521_5684p


5701 : 僕は街路樹になりたい  笹川 '11/11/16 11:45:15

  僕は街路樹になりたいと思います
  僕でも飽きずになれると思います

  行きかう車の窓に 人を探してゆきたいです
  汚れた服を着ても 懸命に働く人を応援します

  こころの疲れた人や 子どもや お年よりは 和んでくれるでしょうか
  夏の暑い日は 木陰をつくってあげられるでしょうか

  僕は 汗まみれになって 作業車を木陰にとめます
  陽射しの遮断された空気は涼やかで 僕は アスファルトに じかに座り込み
  落ち葉の散乱したそこに寝ころびました

  旧県道の駐車場は ひとけがなくて
  街路樹が ひときわ力強く感じました

  僕は 森の木々には なれません きっと 飽きてしまいます
  道路を飾る緑になって 人の心に潤いをあげたいのです



楽園が遠くにあるのなら
行ってみたいと思います
動物園でも 水族館でも 遊園地でもかまいません

僕は たいてい ひとりぼっちで
公園のベンチから海をみます

いい人たちと出会えたな 人に優しくできたかな

お母さんに感謝します
ほんとうに ありがとう

たいしてお金を稼げないから
冗談ばかり言ってました
喜んでくれて ありがとう
褒めてくれて ありがとう

お父さん おばあちゃん 弟へ
愛してくれた人達に

僕は あなた達に 何ができたのでしょうか

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20111116_709_5701p


5704 : 川沿いの聖堂  コーリャ '11/11/16 19:05:54

聖堂の夜会に踊りに行こうと、あなた以外の右手が誘い出して、音をたてて破裂した日の名残り。俯かせた顔の影絵。錆びた蛇口みたいに固まった猫が見つめ。
祈りとオリーブ色がまじった夜がゆらめき始まる。

車はやっぱりキャデラック。キャラメルを流したように滑らかな道。速度と光を暴いていく。交差するクラックションはあの4文字みたいにきこえる。性交よりも良いサンドイッチをよこせよ。約束されたタイミングでの笑いが買われる。それでも自分たちは卑しくないと信じながら。夜のもっと深くに。
そんな手振りで漕ぎ出していく。

注ぎ過ぎたコーラの炭酸みたいに、夜会が溢れかえってる。割れたステンドグラスが聖母の顔の輪郭を探している。アルコールで建てられた塔たちはお祭りを囲んで照らす。仮面をつけた男女が入り乱れて新しい色を発明していてる。葡萄畑まで祝祭の火が舞う。口元から零れた色水の数滴が、開かれた白い胸で柔らかに着地する。誰かがなにか叫んでいる。酒盃の縁が薬指で弾かれたら、シンバルが砕ける音がして。魚みたいに泡を吹いて倒れたひと。戯れに尖塔の鐘を突くひと。などをない交ぜにする不吉な音楽の。
糖衣を一枚はがしていくと、便所にこもったままの男がずっと手を洗っている。

友達は知らない女と葡萄畑に消えた。闇の奥を冒険するらしい。どこかで怒声がして、夢の水面から鳥がひとなぎで飛び立つ。欲望の渦潮の中で、みんな自分の感覚にしか興味がなくなる。仮面のかぎられた視界は僕たちの暗やみを寄せる。自分の海に溺れているんだとおもう。塩の味がする夜。掻き傷のついた銅のような笑顔を貼り付けている。僕のなにかがざわつくと。後悔はさざなみのように寄せてくる。海にいきたい。冬の海に、いきたい。砂の城なんかつくって。月の城なんて名づけて。汚れてないことを、汚れないことを。祈って。グラスがまた砕け散る。鳴り止まない水の音。どうしてそこまでして手を洗がなきゃならない?
すこし吐き気がする。

バックヤードはすずやかに闇を呼吸する。ひきのばしたような貧しい川が身を横たえている。白すぎる星の原に風が鳴る。水に、手を、泳がせる。波紋の野火が白光を川面に散らした。ちいさな波を掠めながら静かに消えた。いつのまにか対岸に女の影が立っている。手をひっこめる。僕は立ってそちらを見つめる。相手も僕を見つめる。女はなぜか裸足だった。後ろで誰かが僕の名を呼んでいる。振り返る。誰もいない。また前を向く。女はいなくなっている。彼岸の先では聖堂が灯っている。そして僕の前には。
川が残酷のような姿をして流れている。

俯くと、水とアルコールの混血児が僕の首に手を回してくる。誰かが僕の名を呼んでいる。鼻の奥から麻の匂いがする。僕たちはあやまっていたんだろうか?なごやかにすべてなかったことにする陽の暮れ方や。恥ずかしさをだしぬけに与える夜の訪れ。かみさまに手紙をだしたはずだ。ワイン瓶の中で身を硬くする手紙。かもめの行き先。海岸の最果て。振り向いたときの表情。斜光。
そんなものたちを弄んだ両手が燃えている。

音楽が鳴り止まない。頭のなかに宿した海の。右耳の裏側。汀がいつも鳴っている。そのことにきづいたときから、僕たちは岸辺に閉じ込められていた。長い岸辺。広がる岸のどこにも、やわらかな砂にささったワインボトルなんて生まれない。城なんてないし、しあわせの国もない。波がなにもない浅瀬になじんでいく音をききながら。みとどけながら。燃える両手をどうすることもできず。彼岸の光をみつめながら。僕たちは。
僕たちを繰り返している。

知らない女が戻ってくる(あなたは戻ってこない)僕は冬の海に行こうと女を誘う。
女はひとつくびをかしげ、泳ぐみたいに聖堂へ戻っていった。

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20111116_730_5704p


5690 : 半分  黒江 '11/11/11 21:13:15 *2

 
半分の生活

半分しか生きていない

半分のあたまはそのことを知らない

不完全に知らない


貴方はここにいるでしょう

鏡の向こう側にもいるので

鏡を外すと

向こう側にも

ここにもいないですね


私たちは乗客だった

人生という時間の


数えきれない

羊は人になって「寒い」といった

人は羊になって「怖い」といった

変わらない教訓話の筋を

もう追うことはしない


コンサートがあった

交通事故があった

日が沈んでもめくった新聞

自分は死者だと信じているのは生者だけ


テレビが突然消えた

これはついに視聴者の要求に応えた

毛布を脚にかけて眠るが

本当は

貴方の半端な思い出にもぐり込みたい

もう一度だけ

貴方に初めて会うために

名前と体を忘れたい


半分のあたまはそのことを知らない

不完全に知らない

 

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20111111_576_5690p


5699 : 羊の保険  飛黒 '11/11/15 23:45:57

先回りする想像
遅れる理性
筋張った不安
つけ込む善意
あるいは
死の商人?

生きるか死ぬか
さあ勝負
半か丁か 裏か表か 1か0か プラスかマイナスか
唆されて
はまり込む二次元
その意外な自由に
何の不満が?
待っているのは安心ですよ

身体をなくした言葉に
説き伏せられる
白痴の羊たち
額ずく羊に思想を与え
二次元の自由を感化する
詩の証人?

馬鹿な
筋張った詩/死体になんの魅力が?
そこに美が?

かつて
華道の家元をしている友人が
生け花はネクロフィリアだ
と言った
彼はこう続けた
言葉を愛する文学も生け花と同類だ

私はあまりに牧歌的な羊の鳴き声に
笑い声で応えた
実家の斜め向かいにあった
ストリップ小屋を思い出していた

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20111115_695_5699p


5616 : 拝島界隈  鈴屋 '11/10/17 00:21:35 *5

あなたは行方不明をくりかえす。あなたが食べ残したポテトチップスの塩味に指をしゃぶりながら、さて、わたしは遅まきの恋愛に悩み、ウォトカをすすり、あなたの臍の右上7cm、臙脂色の痣をサハリンに見立てて一人、夜の旅に出る。駅前を右へ、やや行って左へ、坂を下って軒と軒の隙間、こめかみあたりに十一月の月は高く、身と心の由来をとおに忘れたあなたは、帰化植物が繁茂するこの街に擬態しているので見つけることができない。そうだよ、あなたもわたしも民族の子ではなかった。

サハリンの火はいまなお消えず、と鼻唄まじりにそぞろ歩いていくはずが、いつしか声もあがらず酔いも醒めて、見つからないあなた、あなたはわたしの知らない男達のせいでいつも湿っていたから、薬臭い水が追いかけてくる路上に、カーテンが破れている仕舞屋に、瞳を見開いている道路鏡に、股のあたりから饐えてとろけて菌のようなものをなすりつけていくから、ほらあんなふうに闇の奥のどこまでも青錆色に光る点々をあとづけて。

この世で一番うまいものは水と塩だ。あとは幅の問題にすぎない。引き戸一枚、小窓一枚、風が帯のようにすり抜ける小部屋のベッドで、うつ伏せの背中に耳をあてると川が鳴っていたあなた。仰向ければ投げ出した二本の脚のつけ根から額まで海峡のように裂けていたあなた。肉と草はいらない、水と塩にあなたを漬けて、タバコをくわえながら窓から見える電柱の2個の碍子をひどく欲しがっていた遅い秋の一日。雪よ降れ、屋根という屋根に雪よ降れ、雪が降れば当節に馴染めることもあるかと、わけもなくおもっていた初冬の一日。

夜が明けていく。立ち枯れたオオアレチノギクの空き地の向こう、国道16号拝島橋を渡っていく大型トラックのテールランプが、あなたのふたつの瞳の奥で遠ざかる。あなたには心なんて贅沢すぎる、かなしいだの、うれしいだのは身のほど知らず、とついこのあいだ悪態ついたばかりで、それでもこのミルク色の薄明はいくらかでもあなたに安らぎを与えているだろうか。あなたの手をひき、枯れ草を踏みしだき、工場跡地を抜け、その先の角を曲がり、長い万年塀に沿って行くとき、近づいてくる踏み切りの向こうのいまだ眠っている街、あれが社会なのだとわかる。

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20111017_851_5616p


5682 : 恋の温度  黒髪 '11/11/08 17:24:18  [Mail]

バスルームの、泡でできたアーチをくぐって、
俺は今、川岸に立っている。
お湯を追い炊きして温めるように、俺は記憶を温める。
沸騰寸前まで行って、今は冷めてしまった記憶の温度。
その中には甘美なものも、苦しい記憶もごっちゃになっているが、
俺の心がまた心臓にたたき込まれたから、こうして今日も生きている。
恋、それは淡い文字。泡のように消えていく物事。
それを確かなものにするためには、文字を燃やし尽くさねばならない。
俺は君と炎を抱いて踊ろうとしている。
炎よ踊れ。まるでマグネシウムリボンの様にもえろ。
生の蕩尽は、意識的になされるものだ。
今日の日は過ぎゆくとも、新しい日をまた迎える。
またお湯を炊こう。薪は拾ってくればいい。
燃やして炊いて、冷めたものを温めて。
炎のように愛。
俺はそいつを二人で抱えたい。
夢のように愛を食べる獏が。迫ってきて。
足りなくなったら言ってくれ。
また抱いてやるから。

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20111108_516_5682p


5705 : ドクターモロダシ島  後編  大ちゃん '11/11/16 19:09:37 *9

前編までのあらすじ

最悪の毒婦、ばばあの言葉責めにより嬲られた俺は、復讐鬼と化し、
自らのペニスと足首を付け替える改造手術を施した。しかし、
ようやく探し当てた女は、尾羽打ち枯らし、老醜を晒していたのだった・・



               本編


「おビールでも飲みはる。」と                      
ばばあ                          
「うん。」と                            乾杯の後
俺                           彼女は三つ指をついて
なんか調子狂うな                    畳に額をこすり付けた

 
          「今日一日、夫婦の契りを結ばさせていただきます。
          不束者ですが、よろしゅう御願いいたします。」


             だってさ・・・


土下座した後
実に自然なアプローチで
スルスルと
俺のズボンを下ろすと
パンティに手をかけた


          「ちょっと待った、ここは俺じゃないと。」 

     
彼女のリードに
任せていたんじゃ
何の為の復讐劇だか
判んなくなっちゃう                         そ れ っ


             ばばあは少し仰け反っただけ

             
         「あ足首ですか、OK・OKやで、いける、いける。
          親指がペニスなのかしら?分かった、じゃぁ、
          ここフェラするわな。」


総入れ歯をはずし                        こそばいような
半分ビールの残った                     良い気持ちのような
コップに投げ入れた後                   むかし高校の池の鯉に
俺のアンクルサムを                  足の指を吸わせていたのを
パクってくわえた                        想い出していた


            とろける様なファンタイム
            今 過ぎて行きます
            ああ ここは
            天国に一番近い島 
   

                           ばばあはフェラをやめると
                               従順な犬のように
                                 仰向けになり
                                ベットベットに
                              ローションを塗った
                             性器を剥き出しにした


          「どうぞ、カムインや!」


ついに来たリベンジの時                            
おれはやる
やってやるぞ
前戯などはお構い無しだ                                                                                                         
                           ウラミハラサデオクベキか
                               いざ つかまつる
                                ジャンケンポン     
                                          
           足指じゃんけんはグーの形で
           いきなりインサートした
           ズボズボって音を立て
           一気に踵まで入って行く
           休まずにじゃんけんはグーとパーを
           交互に繰り出していた
               

ああ良い按配だ                          冒険だったが
今までは                          バックにも挑戦した
素股だかなんだか                        彼女を回転させ
ワカラナかったのが                     背後から腕をまわし
嘘みたいなグリップ力                   干し葡萄を摘みながら
やっぱり俺                         高速でピストンした
オペして良かったかも


             はずれない
             外れないよ
             いくら試しても
             すぐに外れていたバック
             それがどうだい
             自由自在だ


プレイ中の彼女                     「大丈夫。」って聞くと
死にかけの猫みたいに              「あんさん、気持ひウィ〜〜。」
グーって唸っていた                     嗚咽を漏らしている
痛いのかな?                       どうやら俺の取越苦労


             しかし 
             ちょっと待って
             俺 今
             大人の女性を
             満足させている?
             こうなったら絶対
             イかせてみたい


             もう少しだハニー
             最後の体位は決めてある
             人類49番目のラーゲ
             究極奥義その名も
             ヨ シ ム ラ


老女体をもう一度                      さらに彼女の身体を
180度回転させ                   ややリクライニングさせた後
こちら向きに騎上位にし                俺はベンチプレスのように
仰向けになった俺の               荒々しくその両足首を掴み挙げた
曲げた膝の上に                            今ここに
手を付かせた                       ヨシムラは完成を見る


                                
             高射砲の強度で下方から
             白髪混じりの陰部めがけ
             何度も腰を振り続けた
             「タカイ、タカーイ。」
                                               
                         
ゾンビみたいに
白目をむいている彼女の
だらしなく開いた口から
次々に涎が流れ落ち
キラキラと輝いていた


             つま先までタトゥーを入れた足が
             俺の気まぐれ次第で
             閉じたり開いたりしているのは
             まるで孔雀の羽根


俺は今このヨシムラで
霊鳥と化した彼女を
涅槃の神々への贄とするのだ


             カーム
             限界点が見えた
             往こう一緒に
             好きだ
             好きだ
             好きだ


         エンジェルズ カーム, ウイアー ヒィィィアー

    
             暗黒が訪れた





波止場への帰り道
二人寄り添って歩いた


「ねぇ、ハニー、質問があるの。         「実はな、若い時分、レズ仲間に
どうしてあんなにズッポリ、巨足を        尼サンがおっての、その娘の頭を
入れることが出来たの?」            入れていたんや。せやからあんさ
                        んのは、わて史上2番目かな。」


             100%解(ゲ)シュタポ


思うに彼女
腕の良い女王様だったのだろう
何人のM男達に
至福の時を与えてきたのか


             しかし寄る年波には勝てず
             思うようなプレイが
             出来なくなった頃
             心に1匹のマムシを
             飼うようになった
             プライドという名の
             えげつない神経毒を持った


                          そんな時とても不幸な事だが
                         ピュアだった俺は彼女と出会い
                      完膚なきまでに地獄に突き落とされた


その後は
彼女自身も
転がり落ちるように
風俗の奈落に
沈み込んで行った


             風俗に慣れているから
             風俗でしか働けないから
             そしてやっぱり
             風俗が好きだから
             生きる為に
             生き残る為に 
             プライドすら
             かなぐり捨てたのだろう


                               ああ哀れなおんな
                                    そして
                              なんて哀れなこの俺


彼女は下垂した瞼の奥から
ぼろぼろと涙を流し
こう言った


          「あんさん堪忍やで、うちがあんなこと言わなんだら、
          こんな身体には・う・う・。」


気付いていたのか
でも
もう良い
もう良いんだよ


             おしゃぶりな口をKISSで塞いだ


さっきのプレイだって
ただ
気持ち良いだけじゃなかった
恐かったし
しんどかっただろう
だけどじっと
我慢していてくれたね


             息も歯茎も
             もう何もかも
             臭かったけど
             愛しくて
             愛しくて
             舌を絡ませ
             チュウチュウと
             吸い上げた


          「君に、取って置いて貰いたい。」


俺はミイラになった
足の親指を差し出した


                                 彼女はそれを
                              ティッシュに包むと
                             シワシワの胸の谷間に
                                捻じ込みながら


         「肌身離さず持っています。火葬される時も一緒やで。」

おお!
ディア・グランマ
その心意気や良し


             今の貴女は性格美人
             愛され度200%の
             ダーリンウーマンだ



船の上から俺は
小さくなっていく彼女に
千切れんばかりに
手を振っていた


                                 さよなら俺の
                                伊豆の踊り子よ
                              (MIE県だけど)
                            もう逢う事もないだろう


           「俺達、良いSEXが出来たね。」





エピローグ


あれから男としての
自信を手に入れた俺
それなりに順風満帆


             おもしろ半分
             You tubeに投稿した
             股間の巨足で
             サッカーボールを
             リフティングしている
             セミヌード動画が超受け


                               見る見る火が付き
                         その道の指南書「JUON」の
                              カリスマ読モとなり
                      「呪怨スーパーボーイ」にも選ばれた


最近ではTVにも進出し
お茶の間のサポーター達からは
「魔羅ドーナ」と呼ばれている


             プライベートのほうも
             ぬらりひょんガールの
             「貞子ちゃん」と
             ヨシムラできそうな
             良い雰囲気だ

 
                                    だけど
                                一つ難を言えば
                                  あの日以来
                               ジョニーの指の間
                         ジュクジュクの水虫が治らない


             ふふふ
             まったく
             あのババアって奴は
             いったい・・・



                   完






参考文献

女がたまらずヨガリ泣く、SEX新体位「ヨシムラ」驚異のアクメパワー
週間大衆2010年11月29日号

ポーの一族 小鳥の巣   萩尾望都著

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20111116_732_5705p


5702 : スロープタウン  debaser '11/11/16 16:54:18



この街は、スロープだらけだ、スロープをいくつか通らないとどこにも行けない仕組みになっている、たとえば、スロープを五つ通らないと街のどの場所からも市役所には行くことが出来ないし、市外へ出る駅の中には、百を超えるスロープがあった、だけども五つのスロープを通って市役所に行って、職員になぜこの街にこんなにもスロープがたくさんあるのかを尋ねても明確な答えは得られないだろう、市役所には、市史の編纂室があり、そこは月に一度、市民に公開されている、しかし、そこにはスロープに関する記述を持つ資料はひとつもなかった、市民に公開される編纂室とは別に市役所の建物の地下にも部屋があった、そこに市民には決して公開できない街の秘密が隠されている、スロープもその秘密のひとつだ、という噂もあったが、それを真剣に考えるものはいなかった、なぜなら、この街では、スロープに手すりをつけることが主な市民の仕事であり、市民の生活はスロープの上で成り立っている、日々、市の職員によってスロープは、いたるところに作られる、十分ほど街を歩けば、その間に少なくとも二箇所か三箇所のスロープの工事現場を見ることになるだろう、職員は、白のヘルメットを被り、黙々とスロープを作っている、しかし彼らが作るスロープには手すりがない、手すりをつけるのは、市民の仕事だ、



私の父は、この街で一番腕の立つスロープに手すりをつける技師だった、むろん、腕の立つ技師は父以外にも何人もいたが、わたしの家には父の仕事に対する市からの感謝状がいくつも飾られていた、父は家では無口な人だったが、夕食後、機嫌のいい時などは、わたしに仕事の話をしてくれた、父は自分の仕事に誇りを持っているようだった、わたしの知っているスロープの手すりの多くは、父によって作られていたことを知ったまだ幼かったわたしは、実際にそのスロープを通るたびに、手すりにつかまりながら、いつもよりゆっくりと歩くことにした、そんな仕事熱心な父だったが、家庭のことは母にまかせきりで、それに愛想をつかした母は、他の技師と恋に落ち、家を出て行った、母が出て行く日、父は仕事で留守だったが、家の軒先から表の通りまで緩やかに伸びる父が作ったスロープの手すりを母は一度も触れなかった、わたしは、その時の様子を鮮明に覚えている、



わたしは、市の大学の建築学部に入った、勉強のほとんどはスロープに関するもので、スロープの構造の専門研究はもちろん、都市学におけるスロープ、文学におけるスロープ、教養として多岐にわたるスロープのことをたくさん学んだ、四年生になって初めて、手すりに関する授業が開始する、前期は、教科書を使った座学がほとんどだが、後期になると、学生は、建設会社の研修生として、実際に本物のスロープに手すりをつける作業に携わる、実際の技師の指示を仰ぎ、朝から晩まで働く過酷な研修だが、ここで挫折してしまうと、この街では生きていけないことをみんなわかっているから、誰もが黙々と作業をこなす、作業中に私語を交わすものはいないし、昼の休憩の間も各自、教科書の復習で休む暇もないほどだ、わたしは入学時から、父のせいもあって、気のせいかもしれないが、先生から特別扱いを受けていた、成績は悪くなかったが、研修先は、街で一番大きな建設会社を指定された、そこには成績上位の学生があつまり、技師もみな優秀だった、わたしは、鈴木さんのもとで手すりに関する基本的な実務作業を教わった、鈴木さんはとても優秀な技師だった、わたしが父の娘であることは、事前に聞かされていたらしく、何度か一緒に働いた時の父の仕事ぶりを懐かしそうに話してくれた、父がいなくなってから、父のことを考えることはあまりなくなっていたけど、鈴木さんが話してくれる父のことはもっと聞きたいと思った、



二月になると、卒業制作で学生は忙しくなる、わたしも例外ではなかった、卒業制作は一人でスロープの手すりをつけなければいけない、いくつか建設予定のスロープの中から、わたしは、市の郊外にある個人の邸宅から通りに伸びるそんなに規模の大きくないスロープを選んだ、老夫婦の住む小さな家だったが、今使っている西側にあるスロープの勾配が年老いた体には少しきつくなったという理由で、新しいスロープを東側に作ることになっていた、作業前日の夜、わたしは興奮したのかあまり眠ることができなかった、テレビをつけてスロープに関する映画を途中まで観て、それから有名技師がスロープに関してざっくばらんに語り合うラジオ番組を途中まで聴いて、それでもやはり眠れそうにないので家の外に出た、わたしの家は、高い丘の上に建てられていて、街の様子がくまなく見渡せることができた、わたしがまだ幼いころ、家族三人で時折ここから街を見下ろして、街のスロープに張り巡らされた手すりを眺めていたことを思い出した、わたしは父と母の真ん中で、手すりがなんのためにあって、そしてスロープに呪われてしまったようなこの街の特異について、なにひとつ了解せず、普通の街の普通の家族がそうするように、ただ街を眺めていた、



時計を見ると、朝の四時だった、まだ空は明けていないが、このまま眠ることはもうないだろうと思った、前日、卒業制作に取り掛かることを電話で鈴木さんに報告すると、鈴木さんは、頑張れよ、と言った、電話の向こうから子供の声が聞こえた、この家は、わたし一人には広すぎるし、スロープだってもう今となってはひとつあれば充分だ、部屋に戻って、スロープの教科書をぺらぺらとめくった、頭には何も残らなかった、いや、わたしの頭の中は、他に余計なものが入り込む隙がないほどにスロープのことでいっぱいだった、シャワーを浴び、この街の誰もがそうするようにわたしは黒いヘルメットを被った、新聞配達員がスロープをいきおいよく駆け上ってくる音が聞こえる、わたしは家の外に出た、わたしの目の前に広がるスロープ、父がとりつけた手すり、母がいなくなった日、そして父がいなくなった日、わたしは、なにごともないようにスロープを駆け下りた、朝の日差しが、スロープの半分に影を作った、この街は、スロープだらけだ、スロープをいくつ通っても、どこにも行けない

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20111116_719_5702p


5602 : (無題)  DNA '11/10/10 10:42:49  [URL]



リリィさん、今日もぼくたちの波止場で一羽の記号が息をひきとったね。
幾何学の身振りで生きながらえてきたきみのからだに 年老いた砂がまとわりつき
道行き、それは疾うにぼくたちの岸辺では役目を果たし終え
綴じられた〈 〉のほうから穏やかな〈 〉がまた漏れだしていく。
(これもまた生/活なのだ)
ミジンコの眼球にぼくたちの一切の希望が映るはずもなく
リリィさん、死んだ記号の亡骸にそっとあの石を供えてやってくれ。



」空転する さかさまの硝子ペンで
縁どられた空には きみのねりあげた碧 がいまにも崩落しようとしている。
(危うさ、とは無関係に
交 差する二本の白線)
行き止ま/りはどちらですか?
記号の振り返ったさきで小さな性交が終わりを告げ
埋められたボールのほうで哀しみの羽化する音をきいた気がした。



中野の線路沿いの喫茶店で 向かい合っていたきみたちは 白いシャツのうえに 白さを溢した。
夏の午前の陽光でぼくには何も判別がつかず
路上ではもう一匹の白さが干からびていた。


(風は、ときに残酷な行いをし)


ちいさきものども、きみたちの悔い改めた翌日に記号は死/ぬだろう。
ならば、せめて密航せよとリリィさん、あなたは云うのか。



見よう見まねで始められた分散する思考たち
きみからの短い手紙には一本の記号が杙を突き立てられ

「散開せよ。」とただ叫んでいる獣の群れ。

あまりの静寂のなかぼくは雨のさかさまに降るのをみた。




(チャル、チャル)


触覚に零度の信頼を置くことなどできないのだから
森を迂回することなく記号は黒さを纏うのだろう。
中継ぎはいつだって背中のほうへと捩れた場所から始められ


(チャル、チャルー!)


ここから港までに少なくとも千の黒さと沈黙に出合うというのか。

リリィさん、あなたの一番新しい手紙のなかでは二対の
黒く塗られた〈 〉が泣き叫んでいるように見えます。



わたしたちの鎮魂の踊りには右手の長さがいつも余ってしまう。
水に浸ければ少しはうまく作動しはじめるのだろうか?
構築された〈 〉は右手の余った長さの分だけ見遣るのも苦しく、
きみたちの告白はすで/にそこ/に在っ/たものとして発せられています。


(((しゅっぱつの笛は一度、ぼくやリリィさんからは遠い場所で鳴らされていたのかもしれません。



舗道の脇のちいさな向日性。
(最初に光があったという。その光の大きさをぼくはずっと知りたかった!



死んだ記号を舌のうえで転がす身振り、(そして そこから遠く離れろ!
円錐の突端と地中のアンモナイトの眠りとを同じ秤にかけることもできたはずだった。
ぼくの瑕疵の数だけ無尽蔵に海がおおきくなっていく。


速さとは無関係な行いを雲雀たちの旋回のように 擁護することができることなら((できたなら・・・


リリィさん、オソラク ボクハ アナタヨリサキニ ユクンダト オモイ マス 



潜航する きみの、記号の生まれた所在地へと (そこ、には名宛人のない手紙が無造作に散乱していると聞いた。


声ですらないひとつの呻きに人差し指を絡める。
狂/いだしているのはこの秒針のたてる音なのかその鼓動の音なのか。
あたらしい息継ぎにはあたらしい形式が必要です。
おはこんばんちは
おはこんばんちは
きこえていますか
おはこんばんちは



時にはこの逆流する船上の風について リリィさん あなたに報告しなければならないでしょう。


いまだ
途切れない
風の
期待する
白い記号、の
(嵐は一昨日のことだった
残された
ひとびと、の
息継ぎよ
転べ!


傍らの森では暗い鳥たちが盛んに河口に関する取り引きを始め
水先の案内人は始めから死滅していた。



見破ること のむつかしい碧さに貧/困を埋め込んだ〈 〉を日々喰らい続け
消化されない、透明な手紙たちよ!
河口は東であり同時に西であったから微睡むこと、それもぼくたちには許されており
数本の釘が刺さった銅板を方位磁針の代わりにしつらえ
風、きみの弱々しい詩情を薄汚れたマストのうえに素描する。



///あっ つい、リリィ さん あなた はいま どこです か いくつ?
になった きぼう は あまりに みじかい めいはくな あやまちの きごうが ささやくのは 虚偽 です///



終りを示すひとつの鐘の音が鳴り止まず
もはや運航されることのない蒸気船から 夜にだけ獲得された積荷をおろし
集まったちいさきものども きみたちが街を濡らしだすなら
さいしょ の光の大きさを探る術もあったはずだ。
街路樹の白い冷たさだけをあてにして歩くことはできない。
正確に計測すること あるいは 欲望のただしさでうがたれた杙。
道標はすでに千々の欠片と成り果てていたから
見誤らずにいてくれ。


リリィさん あの、まっすぐにのびた国道からはいまも海が見えていますか。



たどりつくことのできそうにない岸辺。
波間には死んだボウフラたちが漂い 狂って
しまった信号は、


     (みどり
      あか、いいえ
      てんめつつつ
      は ははい
      あかあ かか


again(再会)ということばはわたしたちの間では無効であって 


暗い鈍さの向こう側に片足をほうりだし
掴みとれるものなら朝に



(凍てついた水面にはなにが遺されていたと云うのか。


リリィさん あなたからの最後の手紙にはただ「リヴィング・エンド」
と書かれた看板の白黒写真が写り込んでいたね。


短さのあまりの遠さにぼくは少し目眩を覚え 行く先
はずっと彼方だと思い込んでいたがそれはひとつのの誤認だった。


始めから死んでいたのかもしれない黒や白や碧の記号たちを
引き連れてぼくは このボールを今日、ミシシッピ河畔に埋めます。



夜ごと書き付けられていただろう手紙の半分は船上に残し 
もう半分を 暖をとるために燃したことを告/白する(だが、いっだいだれに?
埋められたボールの裂け目から ぼくたちの見遣ることのできなかった全ての末路が漏れだしているのなら・・・


リリィさん、あなたが好きだった唄をぼくは
ひとつでも奏でることができただろうか?


     あなた の
     切り/開いた
     岸辺、の
     深い虚森の底 には
     赤煉瓦の図書館と
     崩れかけた城跡が 
     あった/ね ようやく 白い
     霧雨の
     覆いはじ め響いて いる?


     (チャル
      は ははい
      あかあ かか 
      チャルー
      お おはこん ばんちちは
      きこえて いますか
      おは
      こんばんち
      は!



               2008年11月〜2009年5月に作成        

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20111010_729_5602p


5677 : 水の寓話  リンネ '11/11/05 18:19:55 *6

熱帯低気圧の通り過ぎた午後、干され、そのまま忘れられた、誰かの母親の色落ちしたスカートが、車道に落ちて何度も轢かれている。風の吹くたびにしばし鼓動がうずく。蝿の羽音に似た貧弱な呼吸が、やはり蠅のように耳触りに震える。医者に渡された錠剤が、濡れた手に握られ、歪んでいく。

病室の薄いピンクの洗面台に、歯垢で黄ばんだ歯ブラシが、取っ手のないコップに二本差さっているのが見えた。きっかり二本。何者かの唾液が付いており清潔ではない。手に取ることはしない。こめかみにひたりと降りてくる鈍痛、こっそりと、火のついた煙草が、やに臭いくちびるに咥えられる。

排水溝の中、ちょうど一時間ほど下って歩くと、噴きだした汗が目の中に染み、呼吸が制御できず乱れる。排水管のくぼみに、昨日の豪雨の影響で、濁った水がたまり空をうつして、その中で、知っている人が、釣り竿を振り回している。背の高いヨシの群落をかき分けながら、通り抜ける風に押され、呼びかけようとするが、リールを巻く音だけがぎりぎりと口から出て、かなわない。

放たれた、釣り糸の先に、泥でこねられた赤ん坊が一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つと数珠つなぎになって引きずられてくる。複数の知らない顔、アルコールで赤らんだ相貌をして、前後に揺れ、ほどけ、各々がへそを軸に回り出す。浜辺には何十、何百の眼球が砕けた、二枚貝や巻貝にまぎれて捨てられ、ときおり思い出したようにまばたきをする。泣いているものもあれば、笑ったり、ただ転がっているだけのものもあり、全身に小蠅をまとえば、死んでいくが、波がすぐまた生きた眼球を運んでくる。

波止場から飛び立ったカモメたちが、浮かぶ。水に浸された空に、波紋をつくり、上昇したり下降したりを繰り返して、浜に打ち上げられた赤ん坊の、数を数えているのをベンチに座らされ眺める。

えらああああ

いっせいに何か泣く。顎が震え、下半身が崩れ、砂浜に膝をつくと、まもなく腰椎を破り皮膚を破り、真新しい鉄塔が、空に吸われて腰から伸びる。蜘蛛の巣のように、電線が絡み合いながら、雲の中まで緻密に引かれる。塔端で何か作業をしている父親たちが見えるが、吹き荒れる強風が、何人かを上空に舞い上げている。日が落ちる頃、塔の下に世界中の街灯が集められて、ふたたびやってきた夜を明かりで消し止めようと光るが、半時間後、煙となり闇に消える。

幼いころ、存在したはずの、老朽化の進行した、都営団地に、薄暗い、砂場のある公園の殺風景に、いま、ミッキーマウスの三輪車が倒れ、すでに地面に根を張って、何匹かのエンマコオロギがたかり、その根をかじり、咀嚼したものを吐き出し、繰り返し、次第に衰弱し、尿の匂いが、どんよりと空から降り出し、熱のない汗が、顎骨に湧き、息がつっかえ、咽頭の奥から、濁流音が聞こえ、えらああああと、何かが、のどぼとけを破って、公園の外に。

洗面台で手をつき、沼魚のような息を吐く。鏡の中を探すと、そこに自分を発見することがある。コップには歯ブラシが一本しかなく、あるいはもとから一本しかなく、ひねると、金属の蛇口は濁った水を淡々と吐く。何者かの髪の毛が絡まって以来、排水溝は日々出る汚水を流さない。浴室から、湿気たラジオ音楽が立ち昇り、咳をし、動き出す換気扇にも髪の毛が詰まる。頭蓋の嫌なくぼみに、ふやけた水がたまる。不思議と溢れることはない。ゆっくりとそこに手を沈め、顔を沈める。

えらああああ

指紋だらけの鏡の中、はからずとも彼と目が合う。病室の蛍光灯に照らされ、頬の斑点が波のように広がると、彼は呼吸ができない。そしてどうしようもなく悲しい顔を浮かべたかと思えば、すぐにまたほほ笑む。

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20111105_453_5677p


5672 : かれの場合  んなこたーない '11/11/04 20:47:00 *1

 <そこにかれはひとりでいた>

 そこにかれはひとりでいた。しかしそこにいたのはかれひとりではなかった。
 その屋外プールでは、半裸になったたくさんの人間が重なりあいながら水に浮かんでいた。脱色された外光のしたで、それはどこか死魚の群れを思わせた。事実かれらはひとり残らず死んでいた。死んで水に浮かんでいた。それは何者かが水中に劇薬の類を流しこんだからにちがいなかった。かれの妻もだらしなく死んでいた。死んで水に浮かんでいた。かれの目はそれを確かめずにいられなかった。なぜ自分だけ生き残っているのか、それはかれにもわからなかった。思い出せないことがたくさんあるのだ。
 ぼうぜんとその場を眺めていると、真夏の強い照り返しに目がくらみ、かれは反射的に顔をそむけた。目を閉じた。目を閉じるとそこにはもはやかれ自身もいなかった。

 <女は小走りに近づいてきた>

 女は小走りに近づいてきた。
 「大丈夫ですか――、血が出ているじゃないですか」
 かれはなんとも答えず、車道に直立したまま女を迎えた。
 「わたしの車で病院まで行きましょう、安心して下さい、わたしが付き添いますから」
 女の声は興奮していた。
 かれは自分の鼻が砕けていることを知っていた。のみならず、かれは自分がおかしてしまった事の重大さを、すでにはっきりと自覚していた。
 「さあ早く、私の肩につかまって」
 かれはこの見知らぬ女の親切心になにか苦々しいものを感じとらずにいられなかった。
 「どうしたんですか? お願いです、私のこと信用してください」
 女の車のハイビームが車道にいるふたりのことを照らしていて、それがかれの目には痛かった。
 かれは無視した。
 女は無視されていることに気がつくと、急に忌々しさをあらわにし、力ずくでかれを動かそうとした。かれはちょっとよろめいたものの、すぐにまた不動の姿勢に戻った。すると女は激昂し、かれの頬を思いきり張りつけた。憤激した女の表情にはどこか性的な興奮が匂っていた。かれの顔に軽蔑の色が浮かんだ。そしてかれは正面からまともに女を見つめ、冷ややかな声で話しはじめた。
「ご紹介にあずかりました、わたくし装飾デザイナーのFと申します」

 <うたた寝から目を覚ますと、巨大な段ボール箱を梱包している妻の姿が見えた>

 うたた寝から目を覚ますと、巨大な段ボール箱を梱包している妻の姿が見えた。ガムテープとホッチキスを巧みに使い、よほど頑丈にしたいらしかった。手袋をはめているのはあとに指紋を残さないためだろう。その計画性は手馴れたものだ。
 かれは起き上がり、半開きになっていたリビングの窓を閉めにいった。いつのまにか風が立ち、あたりからは夜の気配が感じられた。思っていた以上に長く眠ってしまったらしい。<劇薬>、それに<死んだ魚の群れ>……、か。
 やがて目覚めのあとにいつもおとずれる、あの不快さがまたこみあげてきて、かれは倒れるように安楽椅子に腰掛けた。そのあいだも妻は一心不乱に梱包をつづけていた。……しかし本当におれたちのアリバイは完璧だといえるのだろうか?
 床に落ちていた本を拾い上げると、次の一行が目に入った。
 「秘密の部屋で人知れず行ったことも、いつかは屋根の上で、あからさまに叫ばなければならぬ時がくる――」
 眠りに落ちる前にもそのページを読んだのかどうか、かれにははっきりとしなかった。

 <男の顔は見なかった>

 男の顔は見なかった。気づいたときにはすぐ目の前に男の後姿があった。
 黙ったふたりの男を乗せてエレベーターは快調に上昇をつづけていた。
 この男は何階から乗り込んできたのだろう。かれはふとその男の肩に手をかけてみたいという誘惑にかられた。エレベーターは上昇をつづけていた。なぜかかれにはその男がFであるように思えて仕方なかった。エレベーターは上昇をつづけていた。しかし事が起こってしまった以上、いまさらFと話すことなどなにひとつないはずだ。エレベーターは上昇をつづけていた。なにか言うべきことがあるだろうか……。思い浮かばなかった。エレベーターは上昇をつづけていた。かれは己の機転の利かなさに薄暗い不幸を思わずにはいられなかった。エレベーターは上昇をつづけていた。そもそもおれはこのエレベーターでどこへ向かっていたのだろう? エレベーターは上昇をつづけていた。思い出せないことがたくさんあるのだ。
 そのときかれの頭のなかに、水泳しているあの見知らぬ女の映像が、とつじょとしてよみがえり、そこではじめてかれは合点がいった。と、ドアが開きFは降りていった。思ったとおり、そこは十四階だった。

 <I keep singing them sad sad songs>

 「I keep singing them sad sad songs――」
 その曲はかれがオーティス・レディングで一番好きな曲だった。
 「――Sad songs is all I know」
 マイクの向こう側では十八歳のかれが額に汗を浮かべながら歌っているにちがいなかった。
 スピーカーのこちら側でその歌声を聞きながら、それが数年前の自分であるとはかれにはとても信じられなかった。かれは自分がついにSad songsを知りえなかったという事実に、悲しくも思い至らないわけにはいかなかった。<おかしてしまった事の重大さ>……、か。それでもなお十八歳のかれは歌いつづけた。
 「All my life I've been singing these sad songs Trying to get my message to you」
 だがそのときすでに聞いている者はひとりもなかった。

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20111104_432_5672p


5707 : 眼球茎  RetasTares '11/11/18 23:33:33 *3



どこからだ
このうるさい騒音は
おお 頭が割れる
宇宙から来るのだろうか
頭が振動している
ああ 脳が破れる…

胡桃のように頭が割れ
破れた脳からは
脳砂を撒き散らしている
方解石の粒が鮮やかに
キラキラ輝く中から
突然 松果体が飛び出し
第三の眼球となった
眼球には陰茎のような
茎が付いており勃起もする

「何なんだ この怪異は」

俺は悪夢を見ているに
違いないと思い
この怪器官を引きちぎって
やろうとしたのだが
激痛が繰返すだけだった


あくる日 俺は近くの
学校の正門あたりを徘徊した
そして気にいった
女学生を拉致し
以前から物色していた
化学工場の廃墟の一室に
監禁した

その部屋には床がなく
室内プールだけが設置してあった
プールの中には水ではなく
死海と同濃度の
高濃度塩水が貯水されている
ところどころに
キューブ状の
塩の塊が露出しているので
これをベッド代わりに使い
女を縛りつけた

女を裸体にして
全身を舐めまわした後
陰唇にあの怪器官を
挿入してやった
膣を抉り貫けると
赤い子宮の世界が見られる
はずなのに
何故かそこでは
クラゲの大発生の時の
海の中の様に
白いキューブが無数に
生理水の中を漂い
無機質な空間が無限に
拡張されていく
幾何学的な
計画された世界があった

漂っていたはずのキューブが
寄り集まってひとつの
巨大な壁が形成された
壁の中央には
テトラグラマトンで【YHVH】
と記された文字が
なぜか浮かび上がっている

プハッ
まさかこのキューブが
神だとでも言うのか…
そう思うと
俺は思わず笑ってしまった

オーガスム
子宮が激しく蠕動を繰り返す

壁はひび割れ
あっけなく砕け散った
すると又もとの
キューブの
漂う世界に戻った


恐ろしく寒気がする
仕方なく俺は怪器官を
引っ込め外界に戻った
だが戻った場所は
廃墟の一室などではなく
そこは見知らぬ
カプセルホテルの
一室だった
小さなキューブの中で
寝ぼけて飛び起き
低い天井に額をぶつけ
縦に割れた

「どうしてここにいるのだ
 何が起ったのだ」

とりあえず
あたりを見回すと
ゴミ箱が置いてあった
箱の穴に手を突っ込むと
取れたのは
かなり大きめサイズの
コンドームだった
そのコンドームを
ニット帽代わりに
ズヴぉっと頭から被った

血だらけの額には
もう 眼球茎は無く
傷口が女陰のように
ばっくり
開いていた

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20111118_810_5707p


5687 : ねじ  黒崎立体 '11/11/09 18:34:02  [URL]

ひとりじゃないんよ、と言われて
かえり道おなかをさすってた
おろせと言われても聞き入れなかった
そうしてうまれてきたんが
わたしのおにいちゃんです

予定日を過ぎてやっとはじまった陣痛
あんまり痛くって
かんごふさんに水さしを投げつけた
そうしてうまれてきたんが
わたし です

おんなのひとは赤ちゃんをうむと
頭のねじがにほんくらい ふっとぶ
それでちょうどよくおかあさんになれる

破けてしまったおかあちゃんを
おとうちゃんが病院へ連れていった夜
おにいちゃんの布団にもぐって
かみつぶしていた時間にうまれていたんが
わたしの おとうと

おかあちゃんはちょっと
ねじを外しすぎて
のびきったゴムみたい
おとうとばっかり抱きしめている
おかあちゃん呼んでも、心がひもじい

おかあちゃんが病気でたおれて
子宮を取ったと聞いた時
わたしはとてもほっとした
もう、なんにもうまれてこない

おかあちゃん、あとはもう死ぬだけだね

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20111109_538_5687p


- ealis -