◇ No.269 , '11/06/24 03:49:43 作成

5227 : ヨルカの木  新貝 常 '11/05/17 20:14:20 *39


くちびるを曳き瞼のなかで受愛する
(モージナ?
青銅の彼方ゆめゆめ忘れられて
殺してくださいと
僕は神様に二度お願いをした
遠い記憶のなかで
。
憤墓する
負をわけあえば
悩むだけ悩ませて
苦しみを苦しめた 。
子羊は、堪え忍ぶ茨を根付かない無花果に背負う
生まれながらにして丘を越えるひと
石泉に足踏みの予感映せば
血を堰止めたのは罪じゃない
燃えつきるまえに葦は逃げ
罪は肥沃する
大地を盾に築き
雷の王は羊たちを導いた
騎兵に跨り囚われびとの門をくぐる
夜には白狼が漏と薄く染めあがり黄金色流れて
いまようやく生まれ変わろうとしている
。

*


(ミーシャ !ミーシャ ! )木漏れ日輝いて手折れるしなやかな絹の糸 (小川を揺らぐ二つの影が、耳鳴りのように白樺の枝を抜けて懐かしい声で叫んでいた )。
血まみれになって倒れている父のかたびらを踏みしめ、僕は茫然と立ちつくしていた 。
妹の連絡を受けてやって来た警官のひとりは、僕の表情を見てとると、何事もなかったように冷静に事をみつめている様子だった 。
ぴくりとも動かない父を、妹が差し出した毛布に包んでべつの馬車に運んだ。
事の大きさにいつのまにか家の周囲には人だかりができている。
人々の視線が血まみれの親父に向けられているのか、事を成してしまった僕に向けられているのかさえわからない。
皇帝を暗殺しようとして捕らえられたテロリストが、青空を背にして堂々と顔を晒して刑務所に入ってゆく。そんな風体に写ってもいるのだろうか
馬車に乗り込もうと差し出した両腕に、その警官は手錠をかざそうとはしなかった 。それは、まるで僕と父の未来を予感していた様に… 。

あたまのなかで大きな渦がフィルムを早回しに巻いていた。さんざん虐め抜かれた父親の記憶が一瞬浮かんでは夢のように消え失せる。
まるでワルツを刻む蹄
馬車はひと殺しを引き連れて遠ざかってゆく。警官と会話する妹の姿が、実を零す無花果の枝の隙間から、生まれてはじめて見る様な他人の顔に変わって見えた 。

広大なロシアの牧草地には朽ちた柵が延々とつながり、白樺の林を抜けると、ひときわ高い教会の赤い切り妻屋根が顔をだす。そこを右手に折れて行けば、乾いた土埃が舞うこともない石畳の大通りに出る 。
暗い雪底に耐えていたユリの芽が、藁のちぎれから息を吐く。草原を隔てる小川の辺で馬車は立ち止まった。腕を反す度に遥か遠くウラル山脈から流れてくる水を、馬は鼻を鳴らしながら長い舌で粒に巻き散らしている。ミーシャを乗せた馬車は来た道を一度だけ振り返った。大気は暖かく、空は碧瑠璃に高い。眠りから覚めた5月は、もうすでに輝いていた。

降誕祭樹のお祝いに羊毛の帽子を買ってくれたのは母だった 。
それ以来、母親のいつも哀しげな顔は思い出せなかった 。
僕に父親なんていらない。
クリスマスの夜、ヨルカの木に母は一体僕に何を告白したのだろう 。無花果の実を捧げた。それさえ忘れている 。
「キリストに召されし少年よ…」と、神父が言ったことだけは、確かに覚えていた 。

教会の扉は開いていた 。
なぜか神父だけには見届けてほしかった。開いた扉のうす暗い奥には小さな祭壇と金色の額縁しか覗けなかった 。(あぁすぐにでも神父の足元に駆け寄り、汚れた靴の底にくちづけながらすべてを打ち明けたい…) いまはそれさえ、叶わなかった。

見馴れた様な顔がよそよそしく歩き去って行く 。
馬車が通りすぎるのを横目で訝しげに見るだけで、伺うこともしない 。警官のひとりが鼻を鳴らしながら無表情でパイプに火をつけた。 街の景色が遠い記憶を打ち消すように流れてゆく。路肩で眠る人々 。ただヨルカの木だけが、風に揺れて大きくそよいでいる 。
(これでようやく 僕は地獄に辿りつける )。そう思うと、なぜか見知らぬ地が肩に舞い込むように、世の中の出来事がいつもより聡明に見えた。そんな気がした 。


*


いま ゆめゆめの夜空は蒼く
輝きはいつまでも極点と極線がむすびあう
薄く紫の 時夜が明ける
雨雲は溶けて 水に流れ
誰を降らせば 語ることばを (語らない 月に還る葉擦れ音(ね)が胸をさす 。
ただ何を悔やめばいいのだろう
誰も居ない家や庭の面影だけを辿っている。
ひとりになりたかった
それほど、ひとりが暗く冷たい夜のなかでは冷静に考えることができた。
モージナ(あの丘の上に立つ、無花果の実を忘れてはいけない)
と、
生まれ変わった僕の手のなかで、薄灯りに揺らぐもみの木が
静かに格子の外から囁いた 。
( ミーシャ
ミーシャ )
淋しさのなかで
はじめて黄金色に頬が濡れた 。











※ ヨルカ ( もみの木
モージナ (いいでしょう)
雷 (いかづち)
黄金(こがね) 色

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5242 : こちらフクオカ  koe '11/05/24 21:47:18 *1

 フクオカより 世界へ
 さあみんな 出てくるんだ
 フクオカより 世界へ
 もう誰も アテにするな
 
 インチキな大人たちは全員 処刑した
 デタラメな政治家たちも全員 自殺した

 笑うがいい、この事態を
 戦争が始まっていることも忘れてしまいそうだ
 我々は廃墟を作ってしまった

 我々は決して浮かれてはいない
 我々は冷めたドンキホーテ
 冥界の魔物 プルトニウム
  

 終わらない朝がつづいている これは夢か?
 太陽は遠のいて リアルな幻ばかり

 見ている

(そんなことはわかっている)
(そんなことはわかっている)
(そんなことはわかっている)、、、

もうだれが敵か味方かわからないんだ
(そんなことはわかっている)
みんな答えてくれ
何が起こっているのかさっぱりわからない
(そんなことはわかっている)
何かの手違いでもあったのか?
チャンネルはどれも同じ録画放送ばかり繰り返している
(そんなことはわかっている)

(だが我々は何も怖れてはいない)
(だが我々は何も怖れてはいない)
(だが我々は何も怖れてはいない)、、、

銀行がストップしてもう給料も支払われていないんだ
(だが我々は何も怖れてはいない)
バリケードが築かれて町では市街戦が始まっているんだ
(だが我々は何も怖れてはいない)
ボコボコ人が死に始めているんだ
(だが我々は何も怖れてはいない)

(そんなことは忘れて放っておくことだ)
(そんなことは忘れて放っておくことだ)
(そんなことは忘れて放っておくことだ)、、、

ここは血の匂いがなく、しかも致命的である
(そんなことは忘れて放っておくことだ)
英雄もおらず神話もない、むき出しの荒れ野
(そんなことは忘れて放っておくことだ)
「コレハ、ジカンノモンダイナノデス」
「モハヤ、ジカンノモンダイナノデス」
(そんなことは忘れて放っておくことだ)

見世物はいずれ終わるから戦いの準備を
イバラをまとうほうき星が見えるだろ

 「オレタチハホウイシテイル」
 「オマエタチヲホウイシテイル」


  オレタチハ スクナイガ

  オレタチハ オマエタチヲ ホウイシテイル

  ドウ リョウリシヨウカト イマ センジュツヲ ネッテイルトコロダ


    「デンキヲトメロ」


  オレタチノセカイガハジマル




                                


                                2011/6/8/改稿 

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5244 : とりろーぐ  雛鳥むく '11/05/25 11:34:07

i
水を撒く、
あなたの地球儀を
絞殺したのは
わたしではなく
わたくし、
であって
緻密に、
ただ緻密に、
あなたは欺かれ
白紙になった
太平洋で
立ち止まった海水は
沈没するのでしょう。


絹糸の
不確かさを
ひた隠しにするために
虫食いを
さしむけた銃口が
火を吹くとき
乾いた滴が
地図のうえに
流されたのだった
火葬する消火器
避難
できなかった避難経路
ひとつとして
痛みをともなわない
干からびた、
陥没がおとずれるばかりで


対話との対話を
繰り返す赤子の
指はたいてい傾いていて
そこから
とろとろ、と
三人称が零れている
わたしや、
あなたや、
それら。
公平に殺めることは
どうしようもなく
不可能だったから
いつも
地球儀を
天恵と呼び
白地図のうえで
浮上するのです。


はうる、
書き記すことが
答えという言葉の
答えだというならば
はうる、
風が渦を
巻いていますその中央で
横たわっているわたしは
今まさにこうして
わたしはゆるやかに死にました
と
書き記すことができる
わたしたちは
たくさん死にました
わたしも
わたしもわたしも
わたしたちみな
地球上にいるわたしは
絶滅しました と
 
(余白に、)
 
はうる、
あなたは
憶測の記憶であり
繁茂する水の
渇きでもあるから
はうる、
自らの名を
いずれすっかり
わすれてしまうのでしょう。


i
虚偽を
降らせる
flow
fluorite
、
たとえば
蛍石の主成分は
フッ化カルシウムだが
しかし、
わたしにとってそれが
ときに事実ではなかったり
あなたにとってそれが
ときに無意味な事実
だったりする
ひとつだけ言えるのは
蛍石の
やわらかなかなしみを
かつて、あなたはあいしていたこと
かつて、あなたがあいしていると言っていたこと
かつて、あなたがあいしていたとわたしは認識していること
そう記憶しているということ
flow
降ろう
虚偽を降らせる
そして
いつだってわたしは
わたしや、
あなたや、
それら。
を
虚偽として絞殺し、
trilogue
渇いた井戸や
単純な経度は、
白地図のうえで
なだらかに科学されるのでしょう。
 
 

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5212 : 魚  南 悠一 '11/05/12 15:32:12

魚は、青かった、
とめどなく、
どこかに消えていった、矛先が
盾に重なって、
鱗ができた、
私はその衣で、
とめどなく、
青かった、

歯止めのかからない、青さに、
私、私、
もう、しにたい、さけたい、
死に、咲け、
鯛、鯛、
止まらない連句、
もう、しにたいなんていわないで、
さけておくれ、転じて、
遅れ咲け、

桜の真っ直中、
青かった、私は青かった、
青いということが、
裂けて、内臓が飛び出した、
続けて、死にかけた、魚が、
跳ね回る、祝宴の鯛、
おまえは、やりたい放題、

桜吹雪に虚ろな瞳、
青かった私は死んだ、
肋骨を食い破って、
鯛が肺にかじりつく、
呼吸が、止まらんよ、
止まらんから、
苦しいのさ、
尽きるまで、その衣で、
私の顔を覆え、

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5243 : 円を成す  破片 '11/05/25 01:42:05

丘陵の頂上に建つ家屋が
ぶっ壊れたりしないなら、
星風はその湾曲した屋根群に沿って
今日ものぼっていくんだろう
帰って来なくていい、のぼり続けるんだ
y=xの2乗、
吹き出すくらい単純だろ
屋根のその整った放物線を ずっと奇妙だと思っていた

雲が晴れない 空には蓋がされた
どこで途絶えるかわからないまま
少女は「世界」を口にする、
コントラストの潰れた部屋
雨に晒され続けたサンダル 黄砂を塗した窓ガラス
おきにいりのぬいぐるみ 背を押されて呟いた、世界
風はやんだ

惑星や恒星間の距離を手に取れる
指先で弄んだ宇宙はとても小さい、
入り込む隙間のない風が吹き下りてくる
そんな日はとても晴れていて 流れが出来る
丘の上にたくさん たくさん
空はどんどん乾いていく 人々は濡れていく
星から来る風、
ひとの目に舞い込む埃は
何色なんだろうね

次々と風が追い出されて わたしたちの
頭上に空きができると、風は、
そうやって屋根を伝って上を向くんだ
地上に染みた水分を連れていく
少女は風にあおられる 顔をあげる
涙を流さない ことばを殺されて、
わたしたちは次々にミニチュアの
宇宙を取り上げられながら

帰って来なくていい、
わたしたちの奇妙な放物線に
少女のつぶやいていない世界が
吹き下りてきたなら
ねえ それは星風 ひとりひとりの
間隔を目いっぱい拡げて、
おだやかな色彩の揺りかごにとても、
とてもわらいながら、
少女の長く細い睫毛を
揺らす
放物線を描いた

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5205 : 闇機械  熊尾英治 '11/05/11 00:34:25

コンピューターを蹴跳ばして
独り
雨の日
ののしった
くの字に映る
四角い窓

ボロいコンピューター
何ができるって
色々無駄なこと
やってみたのは

ただ
動かないのはコンピューター
今も
動かないのはコンピューター

壊しちまって
悲しいと
かちかちかち
かちかちかち

かちかちかち
と
泣くのです

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5240 : エレベーター  ロボット '11/05/23 23:43:12

廊下に敷かれた朱色の絨毯は
闇に向かってのびていた
背中のエレベーターは
開閉を繰り返している
扉に合わせて
廊下は朱色を明滅させ
エレベーターは
誰も運ぼうとせず
誰も迎えにいこうともしなかった

廊下の奥の闇の遠くで
部屋の扉が軋む音がした
男の話し声が洩れてきた
その声は囁くようにかすかでありながら
耳元で話されているように
嫌にはっきりと聞こえた

 「ケッキョク、タスケラレナカッタジャナイカ」

責めるような
嘲笑うかのような声だった

男の薄ら笑いが
視界の隅を掠めた

不意に恥ずかしいという感情が
分けもなく湧き上がった

それは知っているような
それでいて初めて見るような
どこか茫漠とした顔立ちだった

 「この顔は…」

思った瞬間
腹の底でそれまでとは全く別の
激しい感情が
怒りが
逆流した排水溝のように
音もなく胸の底にとぐろを巻いたかと思うと
一瞬のうちに羞恥も疑問も駆逐し
身体のすべてを支配した

突き動かされるように
廊下の奥の
闇の向こうにいるはずの
男に向かって歩き出した

エレベーターの開閉音が次第に遠ざかった
部屋の明かりがわずかに漏れた扉が見え始めた
あそこだと思った
足を速めた
と
目の前が暗くなった
思わず立ち止まった
扉が閉じられたのだ

見計らっていたに違いない
忌々しい
片っ端からドアを開けて
どうにか見つけ出して何か言ってやろうと思った
しかし、自分の中にはその男に言うべき何物をも持っていなかった
振り返った
開閉を繰り返していたはずのエレベーターは
もうそこにはなく
廊下が急に奥まで伸びたように見えた
闇が皮膚に吸い付いた
こめかみが脈打った
脈にあわせて鋭い痛みと言葉が脳髄を貫いた

 「もっとうまくやれたのではないか?」
 「もう少し慎重であれば助けられたのではないか?」

どこからか際限なく言葉が雪崩れ込んだ
だが、何を助けるべきだったのか
何を慎重にすればよかったのか
その肝心なところが
どうしても思い出せなかった

 「いったい何の罪がある?」

男がせせら笑う

 「デハ、エンザイダトデモ?」
 「オマエハ、シッテイル。ケッキョク、タスケラレナカッタ ト」


エレベーターの扉が開く音がした
ふたたび闇に朱色の穴が開いた
中から浴衣を着た小さな男の子とその母親らしい若い女が現れた
男の子は手に吊り棒の付いた提灯を下げ
エレベーターの扉が閉まると
提灯の灯りだけが取り残されて
男の子の顔と母親の浴衣の裾がぼんやりと浮かび上がった

二人はしきりに何かを話しているようだった
その会話をどうにかして聞きたいと思った
そうすれば何かが思い出せるような気がしたからだ
しかし、届いてくるのは断片的な言葉ばかりで
なかなかうまく文章にできなかった
そんな中

 「金魚は焼きましょう」

母親のやさしい声でその箇所だけがはっきりと聞きとれた
この母親は金魚を焼いて食べる気でいるのだった
口の中で焼いた金魚の味がした
それは覚えのある味だった
蝋燭の燃えるにおいがした
提灯はすぐそばまで近づいてきていた
子供のもう片方の手には
金魚が入っているらしい透明の袋の水が
提灯の鈍い光を反射させていた
母親の顎の線が闇の中でわずかに見えた
笑っているようだった
男の子も笑って何かを答えていた
だが、その声はまったく聞こえず
通り過ぎた二人の背中はすぐに色を失い輪郭だけになり
母親が消え
やがて男の子も闇に消えた

金魚の味と蝋燭の匂いは鼻腔に漂い続け
それは記憶を引き寄せつつ同時に霞ませていた


「五年前、イギリスのハイドパークの芝生に座って私が申し上げたこと、あなたはもうお忘れになったのでしょう」

女が部屋に入りながらシャツを脱ぎ
落ち着いた、それでいて少し剣のある声で言った
黒い彦帯を締めた大柄な男はそれに対して何も答えず
ただ黙って畳に正座をして文机に面していた

海外になど一度も行ったことのないこの男に
そんな記憶があろうはずがなかった
あろうはずのない記憶を忘れようもなく
忘れようもない記憶を忘れたとなじられる覚えもなかった
けれど、男は反論一つしなかった

女は下着も外すと半裸で窓辺に立って
レースのカーテンと両開きの窓を開け放った
塞き止められていた風が一気になだれ込み
カーテンと一緒に女の髪をなびかせた
女の背中で男は立ちあがると隣室に出て
ソファの背もたれに軽く腰をかけ
懐に入れていたガムを取り出し
口に入れた

 「夕食、ミネストローネでいいなら僕が作るよ」

窓辺の女は男の言葉には応えず、自分の話を続けた。

 「大きなリスがいたでしょう。楠の根っこのところに。生まれてはじめてよ、さすが外国ね、あんなに大きなリスを見たのは。イタチほどもあったかしら。私そこであなたにこういったのよ。『もすごたりすとしたら、あなたはひたみしていかいとしてね』」

男は肝心なところだけがうまく聞き取れず、
それでも何かしなければならないことを言われたのだということはわかって
薄暗い玄関のほうを睨みつけながら聞いた言葉を意味のある文章に直そうとした
エレベーターが到着した高いベルの音がした
暗く伸びた廊下が蛍光灯の光に遮られた

彼女はいったい何を言いたかったのだろうか?
思い出す声をどんなにパズルのように組み合わせてみても
何の意味も見い出せなかった

確かに何かを忘れている
それはもう
間違いのないことだった

 だが何を?

問いかけてみたが
その疑問は答えではなく
空白と不安を呼び
ざらつく胃に吐き気を覚えた

 大事なもの?

脇から攻めた
いや
きっと
取るに足りないもの
忘れても物語に何の影響もない
つまらないもの

そんな気がした

だが
背景色のない
肖像画のように
思考も記憶もみんな浮ついて

どこにも行けないでいる
誰も運ぼうとせず
誰も迎えにいこうともしない
エレベーターのように

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5123 : 小さな檻  とうどうせいら '11/04/05 15:19:08 *1

あなたは
きつく抱き締めたけど
わたしが
蝉の抜け殻のように
ぐしゃりと潰れる前に
そっと緩めた

わたしより
ひとまわり年を取った
その腕は
口をつぐんでしまうから

音色のない小さな声を
ひとつずつ
読むしかない

チャコールグレイの夜が
姫君のペチコートのように
さらさらと
透明な波紋を立てて
揺れている


心臓を潰さない程度まで
ぎりぎり力を入れた
硬い腕

浅い呼吸



まだ朝は来ていない
あなたが作る小さな檻に
手を伸ばしてそっと

鍵をかける


 

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5237 : 美香抄1  織田 和彦 '11/05/21 20:01:15  [URL]



朝
とても不機嫌な美香がいる
何に腹を立てているのか
わからない

多分
ぼくは
その理由をよくわかっている
でもわからない振りをするのだ
ずるいからだ

美香は怒っている
何も知らずに
無垢なまま
少女のように
振舞っている
それを怒りと呼ぶぼくが
きっと間違っている

お盆に食事を運ぶ美香
着物を着て
美しい所作をする

わがままで
自由で
うそつきで
乱暴な
少年のような荒っぽい魂を持つ
彼女のどこに

女がいるのかを
ぼくはいつも
彼女の中に探している

見つからなくても
困らない宝物
そっと彼女がその仔犬のような目で
秘密を打ち明けてくれるときだけ
僕の心は
光に満たされている気がする

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20110521_236_5237p


5137 : 春と双子  yuko '11/04/11 18:24:27 *1

雪解け
の真みずを飲みほす母は
耳もとに咲いた
花をついばむ嘴で
ちいさな足に
生年月日を刻印する

とんとんと、
角灯を倒していく
降り立った
ベランダで冷たくなった
少女たち
網膜の欠損した
わたしたちの眸

閉ざされた境界に
集約された嘔吐の
王国
ごくごくとのどを鳴らして
雪がれていく
残照
わたしたちは、
花の名前を知らないまま

春が来ます
しあわせの羽を落として

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5229 : 万華鏡の風景  田中智章 '11/05/18 11:33:14



遥かの山の上空に
広漠な思念のような霞雲
体が浮いていると錯覚させられる
点在する緑の隙間に風の蛇腹が見える
季節という定位が不似合いだと言う
小さく分離した雲の無言
私は今はむしろ
曇った万華鏡のようなものであって
覗く者などもちろんいないが
ただむらのある反射に身を明け渡しているばかりで
同時にそのすぐ脇で
訳のわからない必要に駆られて言葉を並走させている
しばらくの間 大きな音が訪れないことを期待して
目に見える世界が 常に微細に振動しているのだと気づいた
気づいたように思えた
それは自分が振動しているからだろうと
自身の血液の震えを想像した
ぼんやりとした決して広くもない筒を覗くと
白色灯のように 遠くの雲だけが清冽に眩い
 
 

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20110518_110_5229p


5234 : 火の始末  Q '11/05/21 00:09:59

皿の上に蜘蛛が上る。蜘蛛は無数に口を開き、小蝿を吐き出し、一匹が女の陰毛に止まって宿をとる。
蜘蛛が上った皿は、女の頭めがけて投げつけられ、割れる。こんなことはあたりまえだ、と一人の男が蝿に語りかける。
男の奥歯の影で、ヘルペスが花開く、彼の口はもう毎晩、ほかの男達の歓喜の中で、水泡がはじける。
水泡の中に、多くの子供達。お前らの子供だ、みてみろ、こんなにも醜い!
体も頭もあったもんじゃない、どろどろの中に、腐った魂がへばりついてようやく、生きているだけだ!
排水溝で、せいぜいもがきくるしんで死ぬだろうよ、女や男の髪の毛を衣にして、ながされるだろうよ。

貴方からの終わりのない、
暴力の、あたたかさ、
と、女が言うので、
思いっきり頭をなでててやった、
お前の尻はいつでも、青ざめて、
天使どもがまともに堕落でもできずに、
酒場で酔っ払っているように、
「私は神に給仕した」と、叫ぶ天使の、
肌の黒いこと、あいつは、クロンボ、
アフリカの大地で、真っ黒焦げにこげちまって、
もう、白にはなれないだってよ、
そんな与太話は聞きたくないってか、
くだらない、くだらない、あまりにもくだらないって、
蝶々が言うから、羽をむしって、女の頭に髪飾りとして
くれてやって、奴は妊娠しやがったんだよ!
妊娠したが最後、女の腹を祝福でみたせってもんで、
酒場中の酔っ払った天使どもが、女のあそこにキスさせてくれって
大騒ぎだ、
あいつらは、絶頂をしらないのさ、
いつも、祝福に満たされて、インポなんだよ、
神は、あいつらに絶頂をあたえなかった、
だけど、俺たちには与えた、
そして、最後にはそれも全部奪い去りやがる、
まとめて全部だ、よぼよぼになったじじいどもが、
女の肌に触るだけで満足するように、
天使どもは、いつだってじじいなんだ、
やつらは、乞食、俺達の、絶頂を見つめては、記憶の中で、
拾い集めて喜んでやがる、

「ねぇ、君の、三丁目は、
 夕日の中で、夕日の中で!」
「君らの日本語はあまりにも、
 潔癖症だから、私のこの、
 肉体はいつだって、存在しない、
 ことを前提に、便器の上で、上で!unnko!」
「山ちゃんは、三陸海岸の、ヒットラー!」
「鬼ごっこさせて、ベネチアを、下る」
「日本語について、まじめに答えよう」
「日本語には、体が無い、肉体が無い」
「夜は、曙、昼は水鳥」
「引用される、私の身体」
「へーどれがどうしたの」
「ここからは工場の映画」
「煙はずっと、くだをまいて、世界中のヤクザどもの、
 千の涙を集めて、君は」
「ずっと風になる」
「風になったまま、私達は」
「いつだって、ここからは、工場の映画」
「煙はずっと私達の肺を満たして、」

ぼくはですね、(そう、朴訥に!とってもお上手なお前!百点だ!)
はっきりいますが、日本語が大嫌いなんですよ、
この不器用な言葉が、いつだって、
草葉の陰で、泣いているのを、
「うえーんうえーん」
と、「はは」
「はははははは」

「まーたん、まーたん」
「夕日の中で、あんな糞みたいな
 三丁目は、燃やしちゃおうよ」
「にくまんの額に、キンニクマンが、降りてきて、
 そして、星の王子は、三回もおねしょをしたんだって、
 だから、彼の髪の毛は金髪で」
「うるさい、黙れ」
「孤独は依然として、瓶にそそがれたまま」
そして何度も「私は」「私は」を繰り返す、
「さやちゃん!」

もくもく、煙、どこまでも、
煙のない、土地、
砂漠は、夜の貴方のためにある、
「えー、はやこちゃん」

「明るいね」
「冷蔵庫も、扇風機も、すべてが明るいね」
「ここにある言葉は全部がらくただけど、」
「それが明るいね」
「優しい言葉を」
「うるせぇ!世界中のろくでなしが、
 まとめてかかってきても、
 逃げちゃうから!」

そして、きぶんが落ち込むんです、(唐突にですよ、唐突にですよ!)

チュルクン、
苦し紛れに、
パータ、と、倒れる、
事への、「傍観」
が、百回、

水平線で、捻じ曲がる、
牛乳、

クマルリ、
瞬きの、パチャへの、
冒頭からの引用が、
千度、

教室を開こう、
塗りつぶされたばかりの、
床に、広がる、
光の中で、
果実が実る、
都市が実る、

「わーい、わーい」

「ょ、ってつけたらかわいくなるって思ってる
 糞みたいな書き手を全部ぶっ殺したい
こんな俗っぽい本音を正当化するために、
長々と書くんですよ!
分かりますか、諸君、世界は、くだらない
描写で埋め尽くされて、
まさに、ウンコカスですよ、諸君!」

ここから拾い始める、
あらゆる都市の、
中で、歌われる惨禍の、
始まりを、

あなた、おまえ、
わたし、の、
口に、

ここには、灰がない、

「ねぇねぇ。とりあえず、ょ、ってつかってみよっか」
「わたしぃ、あなたのことがだいすきだょ!」
「汚物は消毒だコラ!」

土の中に、
埋められた、震災の犠牲者のその瞳が、
いっせいに、この、東京の、
道路やビルの壁に花開いたら、
きっと多くの人が、気持ち悪いって言って、
逃げ出すだろうけど、
正直、そんな風景を望んでいる

ぼーいみーつがーるに、
らぶあんどぴーすの、
壮絶なる全生命体への復讐劇を待ち望んでいるんですよ、

はらきりさんまの、
金閣寺!

めのなかに、
あるゆきの、
ふしぎなあたたかさの、
おわりから、
はじまって、
ずっとはじまりのない、
このりょうど、

―ユートピア

「ここは、星座の始まり」
「貴方の終わりの無い暴力からはじまる」
「紙はもうとっくに、真っ黒でいつも真っ白」
「貴方は、過去形に彩られた、星座」
「流れ星は、少しばかりの母」
「恒星の、物語」
「ずっと飛来する、ばかりで、
「飛ばないことだけを、
「括弧を決して、閉じない
「教室は、いつのまにか、
「教師達ばかりで満たされ


プゲラ、ウンチョ!
モスキート!フルスコバッコ!


この放送は江戸川の腐った香りのする、
松戸の安アパートから!


駅構内に点在する、空白地帯、
浮浪者たちが、我が物顔で、
座り込む、連絡口の、
壁面に飾られた、市民の、
優しい絵、

おい、お前らとりあえず、
手芸でもやろうぜ!
みたいな、そういう、口笛の間に、

奈々子
「生まれて26年、ぶっちぎりの処女」
つとむ
「生まれて30年、ぶっちぎりの童貞」
山崎
「世界が球体としての意味を失った時、
 僕の包茎は、初めてやさしく開かれる」
まさと
「俺が、ろくでもない暴力を、振るう時、
 世界はこっそり泣いてくれる」
ゆうじ
「ギャルをナンパして、シカトされときに、
 浴びせる罵声の心地よさ」
りな
「公園の砂が、決して海の砂でないのは、そこに、
 子供達の汗と一緒に、犬のウンコが入っていて、
 それを掛け合いながらも笑い合っている子供達の
 笑顔があるから」
まな
「私が双子でなかった、きっと世界の均衡は、
 とっくの昔に失われていて・・・」
ベンヤミン
「同時にまた、もしかするとその付加語は、その
 要求に応じられているであろうもうひとつの領域
 、神の記憶という領域への、指示を内包しているかもしれない。」
ワンピース第612話の人魚達
(何が入っているのかしら・・・)
(宝物なら宝箱でしょ?大切な樽なら高級酒でしょ?)
総合英語Forest P354
―この日本語を否定文にしなさいと言われたら、一番最後に否定表現を加えて
「ぼくはおなかがすい"ていない"」


ぼくはおなかがすいていない
ぼくは、けっしておなかがすいてはいない、

大岡昇平―差別・その根源を問う(上)―
「人間性を失っても、やはり現実には人間ですよ。
 ただその場合にも、強いていえば、差別がある。
 篭城でも、飢饉の場合も、まず、女子どもが食われる。
 フィリピンでも、日本兵はまず敵であり、また弱いフィリピン
 人を、しかも女をと考える。」

たのしいおりがみ135 日本折紙協会 P274
おにの折り方のページから
「人が想像してつくりだしたおには、きばやつのがあって、
 おそろしいかいぶつとされているんだよ。」


ここまで読んでくれてご苦労様

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5217 :   「 夜明け前 」  びりーぶによせて    ひかり。 '11/05/14 09:24:13 *30


濡れた手で蛇口を閉めると
ぽつん、ぽつん、と
雫が一滴

        湖に落ちていく
            水面に達する前に
                        やわらかな花弁となり

下弦の月のわずかな輝きの夜に
差し出された白い腕の中から 転がる
 
            感覚、のスローモーション

   波紋、 ひろがり、 ゆくえ


最後に会ったのはベージュのカーテンで仕切られた一角
パイプベッドの側面には40�兪宛紊猟省�体の箱が取り付けられ、貴女と其れは分かたれることなく、何本もの太いチューブで堅く結びつけられていた、
半濁した赤褐色を薄めながら沈殿していった帯が、箱の半分以上を満たして、わたしは今にも溺れてしまいそうになる。 息苦しくて、呼吸できなくて、
ベッドの足許には光を遮った特殊な点滴が掲げられ、それはまるで正義のように ( でも、 一体誰に、)
もうひとりのわたしはコンピューターのように止むことのない解析を続けながら、どこかうつろな表情で、マウスを扱う科学者の目付きでそれを眺める
酸素マスクが転がる、

  「 ああ、このひともう、そんなに長く生きられないんだ 」

貴女はそれをまた口に当て、酸素吸入の目盛りをひと目盛り減らそうと試みては苦しくなって、また元のように増やしてください、とわたしに哀願する
これまでも、そうして、わたしを
その縋りつくような声を聞きながら、ふと、わたしは目を外にやる


***
病室の窓から、風が、ざわめく
ただれたような紫に熟した葡萄の房の半分を、母の背中から取り出した。
傷跡は今もなお、身体に、引き裂かれた天使の運命を刻み込んでいる
両手の中にすっぽりと収まる双房、三面鏡に映らない陰影
けれども貴女はそれをわたしたちに決して見せようとはしなかった
今も、そしてこれからも、ずっと、


浮かべた花びら
恥じらい色に染まり こいびとたちは 舟を漕ぐ

  よおーそろー  よおーそろー

下弦の月は 水面におよぎ
かけらを拾おうとしては たがいに身を乗りだして

  転覆しそうになりながら
               幻視を 続ける
                          ようーそろー   


調律を必要としない
超音階の無音の短波が
                  見えないピアノ線  
            、高く張られた

通り過ぎて いく から


朝一番の新幹線に乗り、病院に駆けつけた、
部屋に鍵を掛け、明かりを消してよそいきの靴を履く、喪服をバッグの底にこっそりと収めて。 
他所で離れて暮らすわたしに掛けることばなど持たない、それは、わたしも、
わたしたち、真新しい毛糸玉を内側と外側から、引いても引いても、もはや出逢いまでの距離があまりにも遠すぎる。


ほんの微かな月明かりに岸を離れた舟は 危うい均衡を保ちながら
ゆるやかに流されて
いつとも知れない朝を待つ

  いつ/とも/し / れ ない


西の端線に月は吸い込まれ
星々が燃えては無くなる 夜空を映す瞬き、
明けの明星がひときわたかく ひかり、を増すけれども
それは僅かいっときのこと
やがて、木々の合間から
抜け出た大気が、ふかい闇に繁茂しはじめて
わずかに墨汁を垂らした薄ずみ色が
地平線からそっと顔を覗かせる  

半回転した母のいのちは、ぼろぼろとカラダから崩れはじめて
苦しい息つぎのまどろみの、なか
なんども 微弱な陣痛をくりかえす


  「 夜明けまえ 」
           一瞬だけのかがやき


一呼吸後に、そらが    
しらみ始めて
涙腺が、わたしとあなたに越えられない線を引く

そうして
わたしたちはあたらしい明けに、すこしづつ  
すこしずつ 染まり始める
                        あさ、に

                   

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5252 : オルゴールの夜(削除済)  ひろかわ文緒 '11/05/28 03:15:24 *2


※大変申し訳ありませんが、個人的な事情により削除させていただきました。
 コメントしてくださった方、読んでくださった方、本当にありがとうございました!

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5255 : (無題)  摩留地伊豆 '11/05/30 23:31:09

「ペペロンパペロンポヨヨンロンパチーノ」

〜ホース〜

馬鹿野郎!!ニンジンが先だ!

俺の名は誉れ高き馬車馬ペペロンパペロンポヨヨンロンパチーノ!
引っ張るシャーシは二階建てバスユニット
紳士淑女やらボーイズやらガールズにはやたらと優しいが
お前だけにはとても厳しい伊達男

そう!お前ってのはお前だよ お前
何時までも同じ所をグルグルと回っている札持ってそうなオヤジ
はっきり言って俺はお前の年収よりもニンジンが好きだ
アンタにだって欲しい物があるだろう口にだして言ってみろ
ニンジンだろ?

おお、あそこに居るのは麗しの
ハイ!ナタリシア!競走馬だったんだってね?
なかなかいいよ?そのプロポーション
今でも毎日のトレーニングは欠かさないって?
ホースか、ホースか
なんちて馬だけに…ハハハ

おいおい黙り込むんじゃないよ片足だけサイボーグみたいに元気がいいオヤジ
ほらほら自慢の財布から札が飛び散らかってるぜ?見ろ見ろ八百屋がニンジン持ってスッ飛んで来たよ

よし、乗ってきなオヤジシャンプーは二階だぜ?
またな、ナタリシア今度は一緒に夜のトレーニングだ
夜のって?普通の筋トレさ…バーイ
ニンジン食ってうまっうまっなんちて馬だけに…ハハハ

馬鹿野郎!!石鹸は下だ!

〜ペペロンパペロンポヨヨンロンパチーノ〜

よう!店員さん
明日は愛しのナタリシアのバースデーだからな
ビシッとバシッとイカしたお洋服を見繕っておくれよ
おっ、そこの王冠なんか良いね
金の土台に赤やら緑やら青の…って、オイ!
羊羮じゃないよ!
羊羮の隣のヤツ!!
お・お・か・ん!!
まあいいや、羊羮もおくれよ
ん?うん、じゃあピンクのリボンで
あとは…そうだな、そこの膝上まである靴下と、
あ、エナメルのブーツの踵はもっと高い方がいい
ルンルンルン♪と…
どうだいこの馬子にも衣装!
気品が漂ってるだろ
キヒーーン!!(ヒヒーン+気品)
いやいや、そんな恐い顔で俺を見るなよ店員
とりあえず銃を降ろせ、なっ?なっ?
ほら、今ゆっくりと金を出すから、ゆっくり出すぞ?
よーし、で、ちゃんと金額は合ってるかな、と見せ掛けて

パカーーン!!

〜バーボンズ〜

坂路も整備したし洋服も買った
うーん、でも明日は年に一度しか無い
麗しのナタリシアのバースデーだ
もう1つぐぐっと心ときめかせるアトラクションが欲しいモンだね
たとえば生のバンド演奏をバックにチークタイムとか
ん…?耳を澄ませばゴキゲンなミュージックが聴こえてくるじゃないか
見回してもこの辺には酒飲んでるオッサン五人しか…
…出てるよ、音、コイツらから!
どっから?ビン?ノド?
まあ、いいや腕は確かみたいだ
すいません、明日…ええ!?OK?
まだ何も言ってないですけど
報酬は?酒?はあ、バーボンで
ハーパーとかですか?
はい?ローリングKで?

随分安い口だな!!

〜バースデー〜

来たよ来たよ来ちゃったよついにこの日が
緊張して三日位眠れなかったよ

よし、とりあえずバンド!
サウンドチェックだ

ターラーリラーって
何か音薄くない?
良く見ると一人足りないし…

え?二日酔いって
お前らずっと飲みっぱなしじゃねえか!

やっぱりベースって重要なんだな

「ピンポーン」

き、来た!オイっ、オイっ照明落とせ!
スタンバイOK?バーボンズ
いや、パーンて!

クラッカーは未だ早い!!

〜バースデー(2)〜

全くお前らと来たら、え?
ベースは二日酔いで出てこないわ、
ドラムはカウントワンで泡吹いてぶっ倒れてしまうわ…
せめて二回カウントしろ!テンポが分からないよ!
それで、ボーカル飲みはラッパ飲みの背中を擦りに行ったまま
未だ帰って来ないのかい?
まあしょうがない、
ナタリシア、今日はせっかくの君のバースデーだ
気を取り直して乾杯と行こうぜ?
え?いらない?
そうだよな…俺だってこんなのを見ちゃったら、
アルコールを嫌悪するよ
それにしてもギターだけになると、アイツ下手だなあ
待ってなナタリシア
今水を汲んでくるよ
本当ボーカル飲みだけは理由が分からねえ…
普通に歌えないのかな?

ゲーゲーうるさいよラッパ!!

〜バースデー(3)〜

しかし、あんな歌俺にだって歌えそうなモンだけどな
hii〜n♪hihi〜n♪
ン、ン、ア〜〜♪

曲名:井戸ふたご
(作詞、作曲 しぐれ)

(A)井戸のロープを手繰り馬

(サビ)桶に愛しの 井戸ふたご

ふたごぉ〜♪ってなんで
人間の赤ちゃんが桶にふたりハイ!ベロベロバー
どういう事?双子ちゃんかい?

あらま、すっかり井戸も枯れちゃって…
だがそうじゃ無いそれもあるけど

お前らーーーー!
棲むなよ!!
俺んちの井戸に!
子供迄作っちゃってもう信じられない!!
大きくなったら学校は!?
学校はどうすんだよ!?
え?あそこ?
結構お金持っているんだな…
違う違う違う違う
ナタリーシアー!!

ちょっと来てー!!!!

〜クリスタルボーイ〜

ちょっと来てくれよナタリシア!
バーボンを飲みながらエックスの紅のツインリードはもういいから、
何だ二人ともHideじゃないか!
うわっ!入って来ちゃったよ!
どうやって井戸から上がって来たこの蒼白き輝きを放つクリスタルボーイ
アンドシャイニーガール
何?車の鍵をよこせ?
馬鹿野っ…分かった…渡すよ…
チャイルドシートはクローゼットの奥だ、俺独身だけど
説明書は机の一番下の引き出しだよ!!
お〜…何とかしておくれよ、ナタリシア…って
ナタリシア!!
何でアイツの事掛かり付けのハンサムな歯科医者を見るような目で見てるの!?
アイツ妻子持ちだぜ?
オマケに人間だぜ?
俺たち馬だし…
それでも構わないの?

複雑だねえ
大人の恋は…

〜フィナーレ〜

車は奪われちゃったし
ナタリシアは追い掛けて行っちゃったし
テンション下がる〜ララララ〜♪
この、人が落ち込んでいる時にやたらと軽快な音楽は…
バーボンズ!復活したのか!!
ベース飲みも遅れたけど良く来てくれた
さあさあ、もう仕事は終わりだ
皆で羊羮でも食おうぜ?

明日こそ、きっとイイ事、あるヨーカン(予感)

おいおい爆笑するなよ
どうしていいか分からなくなるだろ(笑)!

また頼むよ!!

ー完ー

<参考文献>

「バンドで一番重要なパートは?」バンド板(2chスレ)

「ベースって要らなくね?」楽器、作曲板(2chスレ)

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5250 : あるおんなとの会話録  谷垣 '11/05/27 22:04:25

私が子供の頃はそれはそれは玉のように美しくて純粋だったのよ今もそうよ
あらあなたちゃんと聞いてるの?それなら良いわ話を続けるわね
鳥類のおばさまは滑らかな羽毛で私をなでてくれたのだけどとても快感だったの
そうそう爬虫類のおじさまはいつも舌をペロペロと出し入れしていたわ
さあ暑がりだったのかしら?汗をかいている姿を見かけたことはないわ
え?ああ私には両親がいないのよ初めから生まれたときからいないのよ
不思議じゃないわだって事実なのだから不思議がっても仕方がないわ
そうねあれは私に三つ目の乳房がつきはじめた頃だと思うけれど
熱海にある別荘にあそびにいったのもちろん私一人でいったのよ
するとね目を見張るような美しい少年が別荘の中で眠っていたの
それは知らないわ壁でもすりぬけたのかしらとりあえず美しかったのよ
思わず私はその唇を指先でなぞってみたのだけれど今でも覚えているわ
ええあらやだドキドキしてきたわもう恥ずかしいったらないわね忘れてちょうだい

お互い惹かれあったのかしら四つ目の乳房が生えるまで時間はかからなかったの
あらそれは聞かないでレディーに乳房の数を聞くのは失礼なのよ覚えておいて
それから貝類の泣き声があまりにもうるさいものだから私達は海亀になったの
竜宮城で宝箱を見つけたわあらやだ私は物欲がないのだから開けたりしないわ確かよ
そうね寝室が数えきれないほどあったわ満室だったと思うわこれは確かじゃないわ
そこで私達震える魚類を見つけたものだから抱き締めてあげたのだけれど
瞬く間に息耐えてしまったのああどうか責めないで善意のつもりでやったのだから
それよりあれはどうなったのかしら?ほらあれよあれ
まあ忘れてしまったのなら仕方がないわそれも運命よ
もう一度砂漠の海に溺れたい気分なのすこし一人にしてくれないかしら
あらやだ本当に一人にしないでよこの薄情者もう知らないんだから

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20110527_365_5250p


5249 : uta  南 悠一 '11/05/27 17:33:40

ルビィから滴り落ちる血の
ようにあなたの瞳は澄み、
 /黒ずんでいた、猫の
       瞳に刻まれた
模様は時を告げ、灰の
彼方に閉ざした歌声の都を、
いにしえに捧げた、

口、ひとつ、噛む、人つかむ、くち、のいろ、に、イロニー、の、濁点、
時、時、ひらく、頤、おとが、いい、きもちいい

瞳の、
黒いものよ、
その色彩を、
死者に、分け与え給え、という
ことづてで、
青く染まれ、黒猫を
見る女の瞳のように、
(比喩が限界に達している、
灘にある声の、
届く世界の青ざめた水平線、
そこに這うように、光を投げ打って
咲かせばいい、
ウミユリの化石を、)

三葉虫が、
バージェス岩盤を愛撫して、
四つ葉が生えてくる、
そんな機密な時代の融合に、
歌、は、咲く、
現実、は、
その透度を、裂く

(お前は歴史を知っている、
結晶に、成り切れないまま、
やさしい肉球で時間軸の
なだらかな道を駆け抜けてきた、

(お前の名前をまだ知らない、
知らないけれども、黒猫は、
太陽のかたちに合わせて
瞳の数を変えてきた

帰す)Kiss)私はそこで連句を断ち切って、
詩に(始めよ、そして直ちに(オワレヨ、我
よ、おお、我よ、追われよ、お前の魂の生を、
私が微かな死骸から感じることができる、息
を潜めている間も、地の底からそれを聴くの
だ、割れよ、ルビィよ、マントルの底で、燃
え盛る金属となれ、やがて私の血の底で滲み、
熔鉱炉へ吐き出されて銃に生まれ変わる、軍
服の熱の中で、弾丸となった汝は我を追う、
我は追われる、生われよ、終れよ)つながれ
た鎖を外し、そこで静かに息を引き取った。
引き取った後、引き返した。再び立ち上がっ
た。歩き出した。死んだと思っていた、けれ
ども死んではいなかった。死んでいたのは、
私の息であった。息は既に絶えていた。まだ、
死んだことにして片付けることのできない残
滓が、残っていた。それは地平の彼方に佇む、
途方もなく巨大な猫の目玉だった)瞳のくろ
いものへ、顔へ、その声の轟きを殺すな、猫
が――そこを横切るのだ。その歌を聴け

>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20110527_364_5249p


- ealis -