例えば、あの窓の隙間から零れる光を小瓶に入れて飲み干したら、僕は少しだけ優しくなれる気がします。
もちろん、それは、叶わないので。僕は小瓶に一輪の矢車菊を差して、自分も、何かを愛するはしくれになれたかのような、そんな気分に、浸るのです。
日差しは白く、漂う余韻は、青紫。
ちほちほと、まあるい卓上にあらわれるのは、藁で作った小鳥の巣。淡々と輪郭持ち始めた頃、僕は思い出して、胸の扉を開いて、その冷蔵庫みたいな所から、一つの小さな卵を取り出しました。
昼下がりから黄昏へ、移ろう琥珀の光の筋が、薄い殻を透かして、その奥の凍て付く金色の内蔵器官を、僕の目に、見せてくれて。
僕は泣きそうになって、でも嬉しくって、笑って。卵を、その巣に載せてあげました。
すると、卵のなかからりんりんりん。殻からりんりん鈴の音。ぬくもって、まあるいまあるいたまごから。
それを聴いたら、なんだか僕も、やさしくなれそうな気がして。
卵は巣に載り、巣は僕の膝に乗り、卵はよろこびのうたを歌い、僕は矢車菊を指揮棒にして。
「卵よ卵、金色の螺子を巻いておくれ。やがて大いなる未来を奏でる、新世界の、卵」
僕はみらいのうたを歌う。
>> permanent URI: http://bungoku.jp/ebbs/20100630_563_4501p
>卵は巣に載り、巣は僕の膝に乗り、卵はよろこびのうたを歌い、僕は矢車菊を指揮棒にして。
>「卵よ卵、金色の螺子を巻いておくれ。やがて大いなる未来を奏でる、新世界の、卵」
> 僕はみらいのうたを歌う。
>田中宏輔さん
>空丸ゆらぎさん
>inuさん
>黒髪さん
おまえの幸福はここにあるのだろうか、
(リルケ『レース』�機�高安国世訳)
単純な答えなどない。
(アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ!』第二部・14、中田耕治訳)
人間はいったい何を確実に知っているといえるだろう?
(フィリップ・K・ディック『時は乱れて』6、山田和子訳)
しかし、わたしは幸福を感じていた。
(シャルル・プリニエ『醜女の日記』一九三七年一月二十四日、関 義訳)
*
やがて思い出に変わる この
瞬間とは何だろう
(ヒメーネス『石と空』第一部・石と空・8・思い出・1、荒井正道訳)
いち早く過ぎる日々こそ最も美しい
(L・M・モンゴメリ『麒麟草の咲く日に』吉川道夫・柴田恭子訳)
人生には、恋をしている人々が常に心待ちにしているような奇跡がばらまかれているものだ。
(プルースト『失われた時を求めて』第二篇・花咲く乙女たちのかげに・�機β莪貮堯⇔詭敍刺�訳)
*
幸福な歳月は失われた歳月である、
(プルースト『失われた時を求めて』第七篇・見出された時、井上究一郎訳)
本当の楽園とは失われた楽園にほかならないからだ。
(プルースト『失われた時を求めて』第七篇・見出された時、鈴木道彦訳)
*
喜びは孕み、悲しみは産む。
(ブレイク『天国と地獄との結婚』地獄の格言、土居光知訳)
きみはわが最上の歓びにして、いまはわが最大の悲しみ。
(シェイクスピア『ソネット』48、高松雄一訳)
*
あそこにいる人間はばかなのか、
それとも恋をしているのか。
あんなにも悲しそうな、たのしそうな、
たのしそうな、また悲しそうな顔をして。
(ハイネ『セラフィーヌ』高安国世訳)
われわれをうたがい深くすると同時に信じやすくするのが恋の特性であって、われわれは愛するひとをむしろ他の女よりも早くうたがい、愛するひとが否認することにむしろたやすく信を置くのである。
(プルースト『失われた時を求めて』第四篇・ソドムとゴモラ�機�井上究一郎訳)
私の愛情の大きさは、それはそのまま私の心配の大きさ。
(シェイクスピア『ハムレット』第三幕・第二場、大山俊一訳)
*
不幸な人はどうしてあんなに言葉たくさんなのだろう。
(シェイクスピア『リチャード三世』第四幕・第四場、大山俊一訳)
愚者は言葉を多くする、
(旧約聖書『伝道の書』一〇・一四)
それにしても、目立つ愚かさと目立たない愚かさとがある場合、どうして後者を選ぶことをしないのだろうか?
(モンテルラン『独身者たち』第�吃堯Γ押�渡辺一民訳)
愚かな者は自分の愚を見せびらかす。
(旧約聖書『箴言』一三・一六)
*
恋している人間と狂人は熱っぽい頭をもち、何だかだと逞(たくま)しゅうする妄想をもっている。
(シェイクスピア『夏の夜の夢』第五幕・第一場、平井正穂訳)
愛には限度がない
(プルースト『失われた時を求めて』第六篇・逃げさる女、井上究一郎訳)
限度を知らないという点では、狂気も想像力もおなじである。
(ジャン・デ・カール『狂王ルートヴィヒ』鳩と鷲、三保 元訳)
自分の妄想のとりことなっている人間ほど不幸なものがまたとあろうか?
(パスカルの『パンセ』第二篇・八七に引用されているプリニウスの言葉、松浪信三郎訳)
愛もある限度内にとどまっていなければならない
(プルースト『失われた時を求めて』第四篇・ソドムとゴモラ�機Ν供⇔詭敍刺�訳)
*
平和とは黙って愛することだろう。だが、意識があり、人格がある。つまり語らねばならない。愛することが地獄になるのだ。
(カミュ『手帖』第五部、高畠正明訳)
地獄というのは、奥さま、もはや愛さないことなのです。
(ベルナノス『田舎司祭の日記』三野博司訳)
どんな愛にもそれなりの深い悲劇があるということ、それはしかしもう愛さないということの根拠ではない。
(ヘッセ、一九〇三年六月二十一日付のチェスコ・コモ宛の手紙より、ヘルマン・ヘッセ研究会訳)
*
心というものは、それ自身/一つの独自の世界なのだ、──地獄を天国に変え、天国を地獄に/変えうるものなのだ。
(ミルトン『失楽園』第一巻、平井正穂訳)
出来のよい頭脳はいずれも、自らのうちに二つの無限、天国と地獄とをになっており、そしてこの二つの無限のどちらかのいかなる映像を示されても、ただちに自分自身の半分をそこに認めるのだ。
(ボードレール『リヒャルト・ヴァーグナーと『タンホイザー』のパリ公演』三、阿部良雄訳)
ぼくらはめいめい自分のなかに天国と地獄をもってるんだ、
(ワイルド『ドリアン・グレイの画像』第十三章、西村孝次訳)
duae naturae in una persona.
一人格における二つの性質。
(『ギリシア・ラテン引用語辭典』)
*
愛は僕らをひきよせる。
(ジョン・ダン『砕かれた心』高松雄一訳)
愛する対象が人間たちを動かす
(ヴァレリー『ユーパリノス あるいは建築家』佐藤昭夫訳)
幸福とは、愛することであり、また、時たま愛の対象へ少しばかりおぼつかなくも近づいていく機会をとらえることなのである。
(トーマス・マン『トニオ・クレーゲル』高橋義孝訳)
*
「ねえ」と映話をすませたマルチーヌがいった。「なに考えてるの?」
「きみが愛するものは、生き生きしてるってこと」
「愛ってそういうものなんでしょ?」とマルチーヌはいった。
(フィリップ・K・ディック『凍った旅』浅倉久志訳)
愛は、不可欠なものであるばかりではなく、美しいものでもある。
(アリストテレス『ニコマコス倫理学』第八巻・第一章、加藤信朗訳)
美しい?
(J・G・バラード『希望の海、復讐の帆』浅倉久志訳)
マベル、恋をすることよりも美しいことがあるなんて言わないでね
(プイグ『赤い唇』第二部・第十三回、野谷文昭訳)
*
どんな人間の言葉も真実ではない。
(ペール・ラーゲルクヴィスト『星空の下で』山室 静訳)
ぼくだってどこに真実があるかなんて知っちゃいないさ。
(コルターサル『石蹴り遊び』41、土岐恒二訳)
そも人間の愛にそれほど真実がこもっているのだろうか。
(エミリ・ブロンテ『いざ、ともに歩もう』松村達雄訳)
言葉は虚偽だ。
(ヴァージニア・ウルフ『波』鈴木幸夫訳)
詩は優雅で空虚な欺瞞だった。
(ルーシャス・シェパード『緑の瞳』4、友枝康子訳)
世の恋人たちを見るがいい
やっと告白がはじまるとき
もう彼等は欺いている
(リルケ『歌曲』富士川英郎訳)
*
あなたというひと、あなたのちょっとした身動き一つでも、私にはこの世で人間のこと以上に重大なことのように思われたのですよ。
(フロベール『感情教育』第三部・六、生島遼一訳)
どんなにしばしば、ひとつの存在が、みずからは知らずに
その目や、その身ぶりで
他人の、それとも気づかぬ遁走(とんそう)を引きとめることだろう、
明白な瞬間をそのひとの内部にもち込みながら。
(リルケ『おお、わたしの友よ……』高安国世訳)
人は一つの微笑、一つのまなざし、一つの肩のために恋をする。
(プルースト『失われた時を求めて』第六篇・逃げさる女、井上究一郎訳)
おまえはいつも愚かな頭のなかで、ありもしない人間の間の絆を実在するかのように考えてしまうらしいな。それがおまえのすべての不幸のもとなんだ。
(マルキ・ド・サド『新ジェスティーヌ』澁澤龍彦訳)
*
不幸な愛という言い方があるが、これは歪んだ表現である。片想いの愛は、愛する人を不幸にするけれども、愛そのものに不幸があるのではない。
(ジンメル『愛の断想』45、清水幾太郎訳)
*
芸術作品はすべて美しい嘘である。
(スタンダール『ウォルター・スコットと『クレーヴの奥方』』小林 正訳)
といってもそこにはなんらかの真実がある。
(プルースト『失われた時を求めて』第四篇・ソドムとゴモラ�機�井上究一郎訳)
どんな巧妙な嘘にも、真実は含まれている
(A・E・ヴァン・ヴォクト『スラン』10、浅倉久志訳)
このうえなく深い虚偽からかがやくような新しい真実が生まれるにちがいない、
(ブロッホ『ウェルギリウスの死』第�敬堯∪鄲柴麩彩�)
*
「愛されている人」というのは、厳密に考えると、愛とは何の関係もないまったく別の問題である。愛は、愛している人にだけあるもので、
(ジンメル『愛の断想』52、清水幾太郎訳)
われわれの愛と呼ぶものを構成する思考の大部分は、恋人がそばにいない時間のあいだにわれわれにやって来るものだからである。
(プルースト『失われた時を求めて』第六篇・逃げ去る女、鈴木道彦訳)
肉体の愛は反応にほかならない。
(E・M・フォースター『モーリス』第四部・43、片岡しのぶ訳)
*
愛情深い人間なんてほんとうにいるのでしょうか。
(モーリヤック『ホテルでのテレーズ』藤井史郎訳)
人間が真実の相において愛することができるのは、自分自身なのであり
(三島由紀夫『告白するなかれ』)
愛とはそれを媒体としてごくたまに自分自身を享受することのできる一つの感情にすぎない。
(E・M・フォースター『モーリス』第四部・44、片岡しのぶ訳)
*
人が理解されようとねがうのは、愛されようとねがうからであり、人が愛されようとねがうのは、相手を愛しているからである。ほかの人たちの理解は問題外であり、そんな人たちの愛はうるさくさえある。
(プルースト『失われた時を求めて』第六篇・逃げさる女、井上究一郎訳)
愛が去ったとき、それはもはや愛として記憶されることはない。べつのなにかになってしまうのだ。
(E・M・フォースター『モーリス』第二部・24、片岡しのぶ訳)
記憶は、うすれるにしたがって、相手との絆をゆるめる、
(プルースト『失われた時を求めて』第六篇・逃げさる女、井上究一郎訳)
私は、ジルベルトのために、ゲルマント夫人のために、アルベルチーヌのためにつぎつぎに苦しんだ。つぎつぎにまた私は彼女らを忘れ去った、そして異なるさまざまな存在にささげられたただ一つの私の愛だけが持続したのだった。
(プルースト『失われた時を求めて』第七篇・見出された時、井上究一郎訳)
愛されることはほろびること、愛することは持続することだ。
(リルケ『マルテの手記』高安国世訳)
「そんなに、なげくのはやめようよ。
別な恋がまた ふたりをまっているのだよ。
そのときはやっぱり、かこち嘆くことなく、
憎しみつづけもし、愛しつづけもすることで──
永遠は、ぼくたちふたりのまえにあるのだ。
人間の霊は、愛情であり、不断の別離なんだもの。」
(イエーツ『蜉蝣』尾島庄太郎訳)
*
しかし、幸福というものも、他の心的状態と同様、簡単に繰返されるものではない。明日、新しい幸福を作り出すことが出来る人だけが、明日も今日と同じ幸福を持つことができる。
(ジンメル『日々の断想』127、清水幾太郎訳)
*
おそらく、苦悩はつねに最強のものなのだ。
(マルロー『アルテンブルクのくるみの木』シャルトル捕虜収容所、橋本一明訳)
苦しみは人生で出会いうる最良のものである
(プルースト『失われた時を求めて』第六篇・逃げさる女、井上究一郎訳)
魂の他のどんな状態にもまして、悲しみは、人間の性格や運命を深く洞察させる。
(スタール夫人『北方文学と南方文学』加藤晴久訳)
増大する苦痛が苦痛の観察を強いるのです。
(ヴァレリー『テスト氏』テスト氏との一夜、村松 剛・菅野昭正訳)
*
地上の人生、それは試練にほかならないのではないでしょうか。だれが苦痛や困難を欲する者がありましょう。
(アウグスティヌス『告白』第十巻・第二十八章・三九、山田 晶訳)
人間がときとして、おそろしいほど苦痛を愛し、夢中にさえなることがあるのも、間違いなく事実である。
(ドストエフスキー『地下室の手記』�機Γ后�江川 卓訳)
*
私はふいに、はっきりした理由はわからないけれども、十年の間、自分を欺いていたことを知ったのである。
(サルトル『嘔吐』白井浩司訳)
われわれにもっとも暴威をふるう情熱は、その起原についてわれわれが自分を欺いている情熱なのである。
(ワイルド『ドリアン・グレイの画像』第四章、西村孝次訳)
愛は何物でもない、苦悩がすべてだ
(ラーゲルクヴィスト『愛は何物でもない……』山室 静訳)
苦しみをこそ、ぼくは愛している。もう、きみなんか愛していない。
(デュラス『北の愛人』清水 徹訳)
わたしの神よ、わたしの苦痛よ、
(ニーチェ『ツァラトゥストラ』第四部、手塚富雄訳)
*
悲哀のあるところには聖地がある。
(ワイルド『獄中記』田部重治訳)
*
人間のもっとも美しい行為は、あくまでも悲痛なものである。幸福の物語などなんの役に立とう? 幸福を準備するもの、それからそれを破壊するものだけが、語られるに値するのだ。
(ジイド『背徳者』第一部・9、新庄嘉章訳)
*
不幸は情熱の糧なのだ。
(ターハル・ベン=ジェルーン『聖なる夜』9、菊地有子訳)
情熱こそは人間性の全部である。
(バルザック『人間喜劇』序、中島健蔵訳)
不幸はしばしばもっと大きな苦しみによって報いられる。
(ルネ・シャール『砕けやすい年(抄)』水田喜一朗訳)
わたしの不幸は期待以上だ。
(ラシーヌ『アンドロマック』第五幕・第五場、安堂信也訳)
不幸は俺の神であった。
(ランボー『地獄の季節』小林秀雄訳)
*
ひとは、幸福でしかも孤独でいることができるだろうか?
(カミュ『手帖』第四部、高畠正明訳)
つきつめて分析すれば、人はみな他人とは隔絶されている。
(フィリップ・K・ディック『ジョーンズの世界』10、白石 朗訳)
自分の皮膚のなかに、独りきりでいる。
(D・H・ロレンス『死んだ男』�機�幾野 宏訳)
何事も頭脳の中で起こる。
(ワイルド『獄中記』田部重治訳)
すべては主観である。
(マルクス・アウレーリウス『自省録』第二章・一五、神谷美恵子訳)
われわれは孤独に存在している。人間は自己から抜けだせない存在であり、自己のなかでしか他人を知らない存在である、
(プルースト『失われた時を求めて』第六篇・逃げさる女、井上究一郎訳)
不幸は耐えがたく
幸福はさらに耐えがたい。
(ヘルダーリン『ライン』川村二郎訳)
*
「所詮人の一生なぞなにものでもない」
「しかしその一生がわれわれをなにものかにするのです」
「いつもそうとはかぎらないさ……きみは一生からなにを期待するのかね?」
(マルロー『王道』第�吃堯Γ押⊂昇衙�隆訳)
いったい、おれは何を望んでいたのだ。
(ユイスマンス『彼方』13、田辺貞之助訳)
俺の災難はもっと遠くの方からやって来る。俺自身からやって来るんだ。
(ジュネ『囚人たち』水田晴康訳)
*
人は一生、暗やみと、悲しみと、多くの悩みと、病と、憤りの中にある。
(旧約聖書『伝道の書』五・一七)
悲哀の背後には常に悲哀がある
(ワイルド『獄中記』田部重治訳)
われわれにとっては、ただ一つの季節、悲哀の季節があるだけである。
(ワイルド『獄中記』田部重治訳)
*
悲しみは、一回ごとに一つの法則をわれわれにあかすわけではないにしても、そのたびにわれわれを真実のなかにひきもどし、物事を真剣に解釈するようにさせる
(プルースト『失われた時を求めて』第七篇・見出された時、井上究一郎訳)
世界はすべての人間を痛めつけるが、のちには多くの人がその痛めつけられた場所で、かえって強くなることもある。
(ヘミングウェイ『武器よさらば』第三四章、鈴木幸夫訳)
苦悩は祝福されるのだ。
(フロベール『聖アントワヌの誘惑』第三章、渡辺一夫訳)
苦痛の深部を経て、人は神秘に、真髄に達するのだ。
(プルースト『失われた時を求めて』第六篇・逃げさる女、井上究一郎訳)
*
愛することもまたいいことです。なぜなら愛は困難だからです。
(リルケ『若い詩人への手紙』高安国世訳)
地上の子 私はどうやら
愛するように 悩むように作られている。
(ヘルダーリン『故郷』川村二郎訳)
よく愛するがためには、すでにくるしんでいなければならなく、また信じていなければならない
(バルザック『セラフィタ』三、蛯原��夫訳)
多感な心と肉体を捻じり合わせて愛に変えうるのは苦しみだけ
(E・M・フォースター『モーリス』第四部・42、片岡しのぶ訳)
*
もっとも多く愛する者は敗者である、そして苦しまねばならぬ──
(トーマス・マン『トニオ・クレーゲル』高橋義孝訳)
愛が單なる可能性にすぎない以上、それはしばしば躓きやすいものだ。いや寧ろ、躓くことによつて愛は意識されやすいのだ。
(福永武彦『愛の試み愛の終り』愛の試み・情熱)
愛していなければ悲しみを感じることはできない
(フィリップ・K・ディック『流れよわが涙、と警官は言った』第二部・11、友枝康子訳)
現実とは、愛の現実よりほかにないのだ!
(ブロッホ『ウェルギリウスの死』第�敬堯∪鄲柴麩彩�)
*
人間であることはじつに困難だよ、
(マルロー『希望』第二編・第一部・7、小松 清訳)
おお、ソクラテスよ、なんの障害もあなたの進行を妨げないとすると、そもそも進行そのものが不可能になる。
(ヴァレリー『ユーパリノス あるいは建築家』佐藤昭夫訳)
いかなる行動も営為も思惟も、ひたすら人を生により深くまきこむためにのみあるのだ。
(フィリップ・K・ディック『あなたをつくります』7、佐藤龍雄訳)
そもそも苦しむことなく生きようとするそのこと自体に一つの完全な矛盾があるのだ、と言ってもよいくらいである。
(ショーペンハウアー『意思と表象としての世界』第一巻・第十六節、西尾幹二訳)
*
苦悩はいとも永い一つの瞬間である。
(ワイルド『獄中記』田部重治訳)
創造する者が生まれ出るために、苦悩と多くの変身が必要なのである。
(ニーチェ『ツァラトゥストラ』第二部、手塚富雄訳)
苦しみは焦点を現在にしぼり、懸命な闘いを要求する。
(カミュ『手帖』第四部、高畠正明訳)
苦しむこと、教えられること、変化すること。
(シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』不幸、田辺 保訳)
意志と思惟はいっさいを変容させた。
(アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ!』第二部・15、中田耕治訳)
これから先、変化はどんどん早くなる。
(ロジャー・ゼラズニイ『砂のなかの扉』1、黒丸 尚訳)
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>元の作者と作品名の提示が面倒であった
>喜びは孕み、悲しみは産む。
>きみはわが最上の歓びにして、いまはわが最大の悲しみ。
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infinitude(抹消)
entrance(抹消)
nerve(抹消)
deposit(抹消)
star(抹消)
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船首のない船が浮かんでいる 大砲の軌跡も浮かんでいる
雲の影が船にうつる しみゆく夕やみの赤い海
細い雲が巻返っている 船の近くで巻返っている
空はまだ青い 浮上していく赤におぼれていく船雲
海は静かに広がり やがて船は底にしずむ あの青もまたしずむ
暮れの静けさの海の底で 人は動き 赤が欲しい赤が欲しいと
船を見ながら窒息する
赤にしみる船影のそのむこうの白と青は ためらうように目を細める
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>魅力を全く…
>あの水に溶いた極彩色の絵の具が渦を巻く
うるさいなあ詩人は
しょーせつかよりうるさい
すこしだまればいいのにな
丘や、性愛や、
紙や、世界が
そんなにだいじなのかよ
おまえのやわらかい部分が
たいせつでしかたないんだね
みんな弱いことがすきだ
詩は
変な世界だ
詩人は変だし、
みんなきもちわるい
「へへへ。空」
そんなやりとりだ
「たまには、大衆」
そんなきもちわるさだ
大嫌いだな
詩人には、ならないし、
ちかづかない
くさぐさのかおりがするところへ
学校へかようものは
うかつにはちかづかないんだ
お金のにおいがするところへ
詩人がちかづかないように
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心に単位があるなら 明日と同じ大きさだろう
お花畑の真中で小さな花びらを描いている画家の後ろ姿を撮っている写真家の姿がTV画面を流れている
何を変え 何を残すか
新しい出会いをいちいち振り分けながら それにしても富豪はなぜ金の使い方を知らないのだろう
動物を人に例えた方が 人のことが分かるかな
長針と短針ののんびりとした戯れを秒針がくるくる邪魔をする
葉が揺れ雫が落ちる 私のせいではない
朝から大雨 運命とじゃんけんして いつまでもおあいこ
なぜか 名刺と墓碑が重なって たしか もうすぐ標識が見えてくるはずだ
大きな紙に 大きな字を書き TV画面のこちら側では新人のカメラマンが大汗をかいている
名字があり 住所があり 国籍があり 星があった
某月某日のことでした 特に何かしたいわけではないけれど いろいろ勝手にやってくるもので
喜びと涙 悲しみと笑顔 真夏と手袋 無表情な窓ガラス
そういえば冷蔵庫にわらびもちがあったんだ きなこ
誰もいない部屋 カーテンが揺れ 世界はそのままを誇示する
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>葉が揺れ雫が落ちる 私のせいではない
>葉が揺れ雫が落ちる 私のせいではない
あなたではない、友達がいます。
そんな当たり前のことを口にすると、彼は手の平でわたしを見るかのようにそっと近づけて、近づけた手の平をそっと引っ込めました。誰でもそんなことを言われたら、さみしくなるでしょう。わたしにはわかりきっていましたが、どうしても彼がしきりにわたしを知りたがることに、うんざりしていたのです。うんざりしていたという言い方はまた、わたし自身にもかなしみを落とします。
それだけやっかいな程、わたしと彼とには年月が流れていたのです。一体全体、何年もの間にひとつの契約も交わさずに、そばにいるということがどうしてできるのでしょうか。実を言うと以前にはわたしたちの間にも契約があったのかもしれません。にもかかわらず、わたしたちは今はじめて契約を交わすかのような、静けさの中にいました。それであなたに、友達というのが他にいるのは、皆さんが知っている事実でしょう。今朝なんか、あなたが生まれてから四ヶ月ばかり過ぎて、こちらに生まれて来た、あなたが決まって、四ヶ月の待ち人と、呼んでいる女性に挨拶をしたところなんです。彼は、自らと、わたしが引き起こした、静寂に、取り付かれないようにと、いつもより早口で喋るのでした。わたしは下を向いていました。本当に伝えたいことを、小鳥の飛ぶように話すのは、真実のところ、このように幾多の木々に小鳥を休ませねばなりません。そのうち休んでいた小鳥の方が、木々で、遊んでみたり、隠れてみたり、はじめるのです。わたしたちは、その小鳥を追うように、歩きはじめました。考えもなしに、向いている方向に、足を動かしながら、並んでみたり、わたしが後ろになったりと、角を何度か曲がり、同じ道を通っていました。向いている方向が、前なのですから、至極まっとうに歩いていたわけです。いつの間にか、他愛のない、話がはじまりました。時にそれは退屈な夕食の話であったり、森の小さな井戸の噺でもありました。わたしが、一際、耳を傾けていたのは、やはり、もっとも広い、草原の匂いのする、お話です。ついつい、互いに、よもや世界中の話をするに至る時です。彼は、足を、ゆっくりと、緩めました。指をとんとん、とわたしは、何か言いたげに、右の角を見つめていた時です。そして、口を、開いたのでした。
そんなことよりも、今は、三月ですから、時間で言うと、まだ、夜明けです。
言われてみれば、確かに、そうなのです。歩いている間に、誰にも、会わなかったのも、そういうことでしょう。わたしたちは、まだ、おやすみ、おやすみ、と言って別れました。それから、それぞれ、家の門をくぐり、おはよう、おはよう、と、ドアを開けて、誰ひとり、起こさないように、ドアを閉めるのでした。小鳥が、やっと、巣の中に、戻っていました。
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CDの裏面の
湾曲している虹色を
思い切って水に溶いた
明後日の方向を向いていた
ワイヤレス式スピーカーから
割れた音が漏れだして
なりを潜めて笑いだす
胞子達を一掃する
それらひとつひとつの憧憬が
痛みだけを捻出しては
蓄積される
毎夜毎晩
鼠使いに渡される
カツ丼の上に乗っている
パセリという名の菜の花を
奇跡と呼ぼう
痛みは何処に向かったかというと
くるぶしのあたり
およそ床から15センチ上空に
淀んだ様子で
停滞している
思い出してくれただろうか
言葉数の少なかった営みを
まだ見ぬ様子で眠りについた
残りの灯りをともす作業を
明るい世界の営みを
誰かに教えてくれたのだろうか
例えば
誰かに湾曲してしまったところの
取り戻せない格子を抜け
手渡しで
バットの代わりに
何かあるなら
チェックメイトは逃れられるか
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偏屈な隣人を愛さずして
世界の為に募金を行う
その博愛快楽よ
ビニールいっぱいの空缶を背負った老人が
橋の先に立つ真剣な青年へ投げた一瞥は
皮肉や恨みや苛立ちや悲しみもなく
ただ大声に反応した一瞥でした
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>まずひとつ。
>ふたつめ。
>みっつめ。
>読者のガード
>顔も知らん他国を救う前に、自国の真横で缶拾ってるガリガリのおっさんに箱ごと渡せ。二、三日分ぐらいの食費にはなる…ぐらいには思いました。
>僕はこの詩の、そういう程度の低い陶酔
、目を開ければ、鮮やかな光、が、
届く、といいね、
ティアドロップ、さよなら、だよ、
(サキはじめたら、止まらない、ね)
いつか、この空間を、飛べるとおもう、
不可解な線を越えて、点在する世界の上を、はじめて、
飛び越してゆくのだ、
ココロを貫いてゆく、些細な衝動から、
震える振り子に、気づいて、温めるその動作まで、
わたしは、彼方に、去り行く気がして、
乱される、その温度には、
rolling、
気づかれないよう、呼吸して、
(未来は沈んでいくって、なんだろ)
過去は暗がりへ、吸い込まれてゆくのを、
微睡みながら、見送る日、
何かを忘却し、ため息をつく、大空へ鳥が霞んでゆく、
静寂が、耳を、切り裂いてゆく、よ、
白い鍵盤が、たたかれる度に、無音の祈り、が、
そして目を伏せながら、
最果てを、おもう、
breath、
(ab≠baの世界では、狂っていない)
現地点は、誤作動から始まり、
うまくデザインされた途を、避けてきた、わたしの、
消失点を計算しながら、コンパスを片手に、
flight、take off、
うまく鍵がはずれないドアを、懸命に叩きながら、
トクリ。
胸の奥で、鳴る、
意味を求めないことで、わたしをつくってきた、
わたしの、硝子の内側を、傷つけることのないよう、羽根をつけて、
飛ばしてしまおう、とおもう、
face to face、never、never mind、
消えてゆくよ、ティアドロップ、さよなら、だよ、
かなり短めの周波数で、光、
さしだされる右の手のひらを、圧倒的な確率で吹き飛ばして、
グルグルと星が哭くのを、空のもっと上で聞いた、
雨上がりの、消えてゆく虹の向こうは、
やっぱり同じ景色が、連なっていて、
light and flight、
吹き飛ばされた破片は、散り々に、きっと、
光は、それさえも貫く、
ティアドロップ、さよなら、だよ、
ねえ、前へ歩き出した、あなたの顔が、みえない、、
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賑やかな何処かの国の大通り
スーツ姿にサングラスをした僕達「なんでもコピー・バンド」は
大通りのあらゆるものを楽器にして爆音を奏で
大声で絶叫して唄う
ヘロインでイカれた野郎も精神病を患っている野郎も
「こっちに来なさい!!」と叫ぶ警官の向こうの
君という死神達に向かって行進するのさ!!
全てが僕
全部が僕一人の仕業と妄想
橙色のタンバリンを鳴らして世界中を行進するのさ!!
アフガニスタンの戦場の戦車の前を行進し
アマゾンのジャングルをたった一人で行進し
宇宙ステーションの太陽パネルの上を行進し
世界一有名な僕のブログを更新…し
君だけの為に君だけとテレパシーを交信する
全ては僕の戦利品
「“こっち”に(帰って)来なさい!!」と叫ぶ心優しき人々
戦い、カフェインとの壮絶な冷たい背骨の為の戦い
瞼を無理矢理開けとく為にセロハンテープでも貼ろうかな
新たな未開地の発見
僕の可能性という名の能力の上で発見
南総里見八犬
苦手な外国語で叫び続けるよ、バウワウ!! バウワウ!!
世界を一周してもまた新たな冒険が始まる
今度はホントのロック・バンドを組みやがって
たった君だけの為に唄うのさ 僕がね♪
おぉ怖い、怖い、ヘロインもドーパミンも切れちまったら
何もかもが死神色に染まって見えるんだ
合法ドラッグ、「カフェイン」を大量摂取して
寂れた此処に在った君の国の裏通りを驀進するのさ!!
「“こっち”に(帰って)来なさい!!」、「“こっち”に(帰って)来なさい!!」
「“こっち”に(帰って)来なさい!!」、「“こっち”に(帰って)来なさい!!」
いやこの道が僕の進むべく現実なのさ
いやこの妄想が僕の創り上げる「未来」なのさ……
指先から心臓へ煮え滾るような血液がナポレオンの軍隊の行進の如く
ナチスの戦車の群れの如く近付いて来る
彼等は僕にこう絶叫する
“Get Back!! Get Back!!”
僕の本心が想像力を狂わせ、逆立てるようにネロのキリスト教徒迫害の如く
戦時中の日本兵の南京大虐殺の如く凄まじい殺意と快楽に溺れる
彼は僕の中でこう炸裂する
“屈辱的な過去への復讐を!! 屈辱的な過去への復讐を!!”
復讐の為の過去への回帰願望、復讐の為の過去への回帰願望
怒りの炎は消えない、怒りの炎は消えない
青きイノセント・ワールドは劫火に包まれる
復讐すべき人間は未来永劫苦しみもがき続けるのだ
ポールの怒声が四方八方に飛び散り、僕の死刑囚達は夜な夜な恐怖と絶望に苛まれる
“地獄へ還れ!! 地獄へ還れ!!”
ジョンとジョージが掻き鳴らすエレキギターの音色は電気椅子が彼等を焼き焦がす音
リンゴが叩き鳴らすドラムセットはギロチンが彼等の首を切り落とす音
ザ・ビートルズは彼等の死刑執行人
黒焦げの死体の大海原を渡る、断末魔の生首の大草原を泳ぐ
過去の君の元に還る為に
過去の君の元に還る為に
ナポレオンの軍隊を引き連れ、ナチスの戦車を操り
ネロの迫害を受け継ぎ、日本兵の大虐殺を再現し
僕は君の元へ還る
怒りに虐げられ続けた心
醜態と化した肉体
全てを収められるべき場所へ戻す為に
僕はゼロになる
僕はゼロになる
僕はその為に過去へ回帰する
僕はその為に過去へ回帰する
悲しみの雨は絶えない
悲しみの雨は絶えない
赤きダーティ・ワールドは劫雨に沈む
祝福されるべき人間は刹那にして見神の域に達するのだ
見上げた窓に満月が映っている
マシンガンでその満月を蜂の巣にしたい気分
僕の心に拡がり続ける不愉快な事物を破壊したい衝動
撃ち殺す快感をドーパミンによって想像
偽物の神をぶっ殺せ
悲しみや寂しさが発酵してできた鬱積した怒り
そいつを兵器にしてこの世に巨大な想いを投下しよう
ヒロシマ、ナガサキ、譬え様のない感情の模様
僕達は現代の生ける屍だ
武器を持ち、悪と戦い続ける日々には、善人の死がつきものさ
僕は闇の世界で生きる不揃いな目をもつ、未来の独裁者だ
偽りの無い思考だけで生きていくことが、どんなに快感か
君達には分かるまい、嘘に塗れた欠陥人間共よ!!
お前達の本心を見透かしただけで吐き気がする!!
僕はその吐き気のせいでこの世の片隅に蹲って居る
暗闇の中、僕はただただ、自分の欠点の墓守をしている
噴き出された透明な血
一人、人間が死ぬことで胸のつかえが消えて逝く
僕はもう何千万人殺戮したか分からない
大きな通りで見上げた窓に新月が映っている
その窓に頬を付け、体温と均一にしたい衝動
僕はクリスマスの夜に一人、夜空を見上げる…
サンタ・クロースの白髭を血で染め上げた後の
絶対的な後悔と罪悪には耐えられない
警察に告白しても、信じてもらえる訳が無いのさ
空の定義が分からず、あらゆる記憶に対して怒りが煮え滾る
八つ当たりの法則によりこの世が滅びるという回答が導き出される
僕とは正反対の思想をもつ、集団に捕えられ
そろそろ処刑の時間です
「殺され方を自分で選べ」と言われたので
「マシンガンで月のような蜂の巣にして下さい」と頼む
壁の前に立ち、御望み通りの処刑が終了した瞬間
見上げた空には太陽系の心臓が浮かんで居た
見えない戦闘機が轟音で地上を震わせ
見えない爆弾を投下し
爆発音だけが轟き、人々は死んで見えなくなる
僕はそんな心象を抱き、戦地となった町の空を見上げる
虚しさの血が全身をぐるぐると廻っている
本当の気持ち等、布団の奥に隠し
溢れんばかりの偽りを垂れ流す僕
君と今夜、会いたい
微塵切りにした知識と恍惚感で精神を安定させ
空っぽのまま、明けない夜を共に過ごしたい
ラヴ・ホテルが一軒、此処に立つ為に、この世は創られた
白い羽を潜った、僕の欲望は冷たく満たされた
僕の心の扉はこの世の深海の海底に在る
その為、悲しいこと、嬉しいことがあれば
扉が開き、しょっぱい水滴が流れるのだ
僕は亀裂の入ったショーウィンドウの前に立ち
その扉から自分の内面世界へ入った
無数の戦闘機の轟音が人々の鼓膜を破り
正義や悪の兵士達は銃よりも刃物で彼等をいたぶるように殺す
爆風で吹き飛んだ彼等は死んだフリを続けて居る
ラヴ・ホテルで僕の心の扉はレイプされ
挙句の果てにぶっ壊される
この世に果てが在るのだとしたら
僕は喜んで毒薬を仰ごう
時間、という概念の存在しない世界ならば
僕は苦しみながら暗闇を増殖させよう
もう死ぬことを恐れることはなくなったのだ
虚無に恍惚を感じる、変わった人間である僕
明けることのない寒い夜は、やがて吹雪で君の満月を隠すだろう
空白の空間
僕は不安になりたい
来る新世紀のメイン・メロディー
世界は一変する
悲しみに似た虚無感が視界から取り込まれる
絶望が蔓延している、僕の先入観が凡人へ嫌悪感を抱かせる
他者の胸の奥には暗い失意が時計回りに渦を巻いている
憧れに瓜二つの後悔は今でも心を締め付けている
未だ見ぬ理想の君への想いのピントが合わずに正常に生きて居る
憂いを帯びた新世紀のメイン・メロディー
無性に胸の奥が疼くんだ
君という旧世界はこれから先も何も期待せずに居るのだろう
僕等過激集団が破壊願望のみで君を犯したとしたら
満ち満ちた幸福感の代わりに銃弾を撃ち込まれ、はい、サヨウナラ
何が間違っていたのか、死体となった僕達を善人が取り調べする
計り知れない怒りで自爆、死者、善人全員…
厭世的で廃退的な僕達の思想、それに付いて回る新世紀
夢の中の現実で溺死した僕は最早、現実の幻想の中でしか生きる術がない
徘徊する青空、無人の街で靴を鳴らし続ける夜…
何もかも失った僕は宇宙を内包する無と成る
青い心臓の中で、大多数の悪と少数の正義が争いを続けている
あらゆるもの達は欲望の塊を融かし、他者を退きのうのうと生きて居る
「善いこと」をする正義は結局、己の欲を満たしているだけではないのか?
繰り返される新世紀のメイン・メロディー
鋭利な思考の突端、心の二つの瞳で旧世界の息の根を止め
新世界を創造することもなく、新世紀が失望するのをほくそ笑む僕
時代と距離を置き、駆け続ける希望と恐怖の日々
前を走っているのか、それとも置いて行かれているのか分からないが…
未だ見つからない君という新世界
己と向き合う時に真実を映し出す、すぐに腐食するラヴ・ポエム
暗い中、心の底を抉り続けるコードネーム、「自己防衛機能」
この僕にも、こんな陳腐な世界を彩る目的があって生まれてきたのだろうか?
誰に訊いても返事は同じ
限りない無力感と古傷の喪失感が負の想像力を掻き立てる
悪と正義の狭間で揺らめくこの憂鬱さは僕に、再び破壊の幻想を擁させる
長い夢から覚め、神の存在証明の事や貴女への苦しい想いが希薄になり落ち着いた、万物が起伏を立てて流れている寒い夜。僕は思わず毛布を首元まで上げ、瞼と眼球と鼻腔が冷たくなっていることによる新鮮な感覚に感銘を受ける。じっと天井の模様を睨んでいると、心は大声で泣き叫び、自分はとても弱い人間なのだと改めて実感する。目を瞑り、万物の潺にじっと耳を澄ませていると、何処へ漂流し、辿り着くのか無意識の内に空想していることに気が付いた。
ベッドの柱で揚羽蝶が僕の呼吸に合わせて羽を動かしている。今年最後の其れ。飼育ケースに視線をやると、蛹の殻が組み体操のように上手くバランスを保っている。急に現実に引き戻された心臓と其れが放つ熱。視界を更に狭め、揚羽蝶の存在を忘れようとする。窓の中には神秘的な深夜の風景。三日月が寒さで夜空に溶けて滲んでいるように見える。貴女を愛し続ける覚悟を決め、神の存在証明によって僕自身の混乱を沈める為に、掌に握る婚約指輪に体温が移動しこれが愛の温度だと納得する。そろそろ学会で発表する理論をまとめなければならない。強い寒風が窓を叩き付け、遠くの街灯と此の心臓の心象を重ね合わせる。
ちょうど今頃、暗闇の世界から変態し、光の其処にいる貴女はどんな一日を過ごすのだろう。心が其の光に侵されていき、太陽が地球からその姿を現すのが思い浮かんだ。平穏な日々。美しいエレキギターの調べが流れる。オレンジジュースを絞ったような朝。日溜まりに浮かぶ食卓。繰り返される美しいエレキギターの響き。揚羽蝶のワッペンはこの目を何度眩ませたことか。魅力的な唇に付着したクロワッサンの皮を紙ナプキンで拭い、ナチュラルメイクを施し、折り畳み式の自転車で長い長い坂を下っていく─、そんな光景が脳裏にありありと浮かび上がったが、窓の外で誰かが空き缶を強く蹴り飛ばす音が無限の空間に虚ろに木霊した為に、其の心象はあっという間に消えてしまった。
眠れない。暫く空き缶の音のようなものが喉の奥に引っ掛かっていて痛みも伴っていたので、少し全身が汗ばんできた。この寝室、いや、この肉体は何処へ漂着したのだろう? ─既に神亡き世界にだろうか? 瞼を閉じると真っ白でその中心に拡大し続ける宇宙が見える。それはまだ小さな黒点だ。万物は胸元すれすれで細長く棚引くように流れている。其の源泉を探すと、遠く向こうで男と女がそれぞれ、ストラディバリウスを奏で、その音色に唄声を乗せるように歌い、それが万物へと変態しているのである。小さな黒点の方角から微かに爆発音が聞こえ意識をそっちに向けた一瞬の内に、男と女は姿を晦まし、瞼を開けると鼻の上に揚羽蝶が羽を扇いで此方を見つめていた。
此の蝶は貴女や神と同じ性であった。生命体達が生き続けなければならないのはどのような理由からか? 種の保存が神の目的なのだろうか? その過程を生きている僕達はアンカーではなく、単なる次の世代へのバトン渡しなのだろうか? 何故貴女から卵を貰い手塩掛けて育てたこの揚羽蝶は美しいのか…。外の風景に目をやると、空のケースが分解し、明るさを取り戻しているようだった。この蝶々が残り短い生涯のうちに海を渡り、貴女の元へこの想いを届けてくれたら…。そんな願望よりも大きな無意識の理性が、揚羽蝶を鼻の上から手の甲に移し、昇り来る朝日を/沈みゆく夕日を/じっと見つめ続け/サングラスをして自分の影と共に長い長い坂を駆け上がっていき/窓を開け、手を出し、冷たい空気が入り込んできた寝室で一度大きな深呼吸をすると、揚羽蝶は自発的に外界へ飛び出して行って/眩い世界で僕がプレゼントした揚羽蝶のワッペンを、坂の頂上で光に当てて貴女は微笑んでいる。
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夜を解体するあなたの腕が、こまやかに分たれて腐食していく、長い髪が放射状に散らばった水面に、月がぬらぬらと白く光っている、その胸に穴があいて、ぽこりぽこりと音がする、潮が満ち、その陰でひそやかに花がこぼれだす、ひとつふたつみっつよっつ、とお、
わたしはそこに横たわったまま
浅く目を閉じてそらをみている
死んだ生物が群れて、あなたの下腹部を泳ぎまわり、どうしようもないのに腐臭がする、海は荒くなにかを隠すようで、泳ぐ指さきが熱をもち、震える、壊れはじめた夜の破片が、音もなく沈み、消え、そしてまた花がこぼれる、ふたつみっつよっついつつ、とお、
ほしが墜ちるその
おとをわたしほんとうは聞きたくなんてなかった
銃声のかげで不完全なひとが泣きながら笑っている
べとべとになったわたしの首をそのよごれた手で絞めて
そのまま海に沈めてください、夜は
解体されつづけている、花が咲きそしてこぼれみっつよっついつつむっつ、とお、
わたしの呼吸がとまる
そのときまで眠りにつかないでいて
水面がぼこぼこと沸きあがり、弾ける泡が悲鳴のようだ、あなたの両足はしだいに感覚を失い、もう境目がわからない、その腹は大きくふくれ、空間を時間を圧迫する、欠けた夜はもう夜ではなく、そしてまた花がよっついつつむっつななつやっつ、とお、
息ぐるしさをかかえ
ながら強く祈り続けていたのは
妊娠線がはりめぐらされたからだを、解体された夜が解放する、こぼれつづける花に、ゆっくりと水面が閉じていく、その中心でわたしたちは、つぎつぎにほしを孕む、むっつななつやっつここのつ、花を手向け、とお。
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>始まりが好きです。リズム感もあり、どんどん最後まで読まされてしまいました。笑
>「感慨」ってものがなかった
>上手いだけではなくて、心にドカン!と来るような作品が読みたい
>なんだか「きれいすぎる」「つくりものっぽい」という印象が、終始残ってしまう
>完成度とか多少落ちてもいいから、何か生々しいもの、ざらつくもの、泥や血の匂いのするもの、それこそドカン!と来るようなものを放り込んでくれないかな
>がんばってイメージしたのですが、とお、のところでいつも、誰かがドロップキックをくらわすので、そこだけ浮き上がると云うか、引っかかってしまいます。
>とてもしっかりとした感触のある、それでいてこじんまりとまとまりすぎることなく広々と描かれたイメージ
>ただ リズムは意識されたのでしょうが、この語りをビジュアル的にイメージするならばあまりに急ぎ過ぎていないかな‥ リズムが‥ どこかで息継ぎのポイントが少しあってもいいような気はいたしましたが‥
>全体的にはおおきなテーマとして、死、と言う現象がある
>最後のところに出てくる花の手向けが、とても面白い意味を持ってくるのだと思えて、この部分がすごくうまいなあ、と思いました
>10は、完結する数字なので、完結したい願望みたいなものが、だんだん満ちてきて、最後は、ひとつずつ数えられるようになってとうで終わる。というのは、よく考えられていると思える
>わたしはそこに横たわったまま
>浅く目を閉じてそらをみている
>ほしが墜ちるその
>おとをわたしほんとうは聞きたくなんてなかった
>わたしの呼吸がとまる
>そのときまで眠りにつかないでいて
>息ぐるしさをかかえ
>ながら強く祈り続けていたのは
>夜を解体する
>古月さん
>実はこのふたりは同一人物なのではないかと考えました。
>「腐食」「腐臭」「孕む」「手向け」という言葉の使い方も軽率
>中途半端に妥当性があるような言葉を極力排除していくこと、そんな姿勢が必要なのではないでしょうか
>「雰囲気」はあるけど「力」が無い作品になってしまっている
>適切な場所に適切に配置されれば活きてくる描写なんじゃないでしょうか
>基礎的なものを感じない、ドカン!とこない理由は、そのあたりにある気がします。
>肝心なのは yukoさんが、コメントをどう解釈するのかじゃないでしょうか?
>どのようにも変革していける可能性に、私は魅力を感じます
>なにか飛び抜けるような書き方が出来るようになれば、完成型として、超一流とよべるのではないでしょうか
>この作品はとてもリアルな現実に、いろんな装飾(イメージ)をかけている、そういう手法なんだと思います
>何か、経験やら見た出来事やら、想像した出来事でも、現実という根っこがどこかに表現されれば、説得力のようなものがでてくるのかもしれません
>「一体何が起こっているのか」、読み手にはそれが分からないということだと思いました。
>イメージや比喩などはやっぱり現実的な説得力を高めるための手段なんだと思います
インテリ、来る。
暴きだされた正体をもてなす
まっくろなはらわたは上手に隠してね
そうそう
成す術を知らない子羊ちゃんの群れの先頭に立ち
「いっせーのーで!」と号令をかけたい
そしたら何が起こるだろう
たぶん指先から溶けだす
誰も見てない、静かな場所でだ
湿った苔がまつげにのる頃
ようやっと気がつく
日はとうに翳る
日常レベルのあれやこれやで
きみがその深海に小さなトラウマをいくつ植え付けられようとも
それもまた愛すべきかよわい誰かの明日の話題を生むんだよ
そういう誰かに
ぼくはただなりたかった
幼稚な呪詛が口をついても
ずっと明るい窓の外を睨みつけている
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光が
あふれて
両手をひらいたら
光があふれて いるような気がした
静かにイマジネーション
心はやわやわ ふらふら
頭 くらくら
しっかりしろ 両手を握る
君の姿 見てない こえも きいてない
僕のあたまの中の全ての妄想
歳なんて関係ないさ
うたかたの 泡と消える身さ
いっしょにいたい離れていたくない ぐるぐる疑問
もし聞けば 爆発
もし見たら 熔解
暗黒の空に 隔てられた星
いっしょになりたい 出会うなら
手をつないで 中に光を包み込んで
そしてこぼれた喜びに 光るもの
世界中の涙の上に 虹をかけてしまえ
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>君の姿 見てない こえも きいてない
>もし聞けば 爆発
>いっしょになりたい 出会うなら
>世界中の涙の上に 虹をかけてしまえ