◇ No.22 , '05/11/25 13:33:49 作成

707 : 早春  雀絽 '05/11/07 22:38:05



深く
深く

山奥

雪解け水で
足場は悪い

まだ寒くて
すこしだけ
顔がいたい

僕は彷徨う




深い
深い

木漏れ日だけがたまらなく温かくて
そこだけ地面が呼吸する


濡れた枯葉踏みしめる くしゃり くしゃり
こずえから雪の玉水 ぴしゃり ぴしゃり


積雪のすきま
ふきのとう
埋めてた顔を
ようやくあげた




行けども
行けども
そこは
深い山


桃色やら
黄色やら

まだ春の
はなつ音
動き出す
そんな音


聞いていないから
うつ伏せで寝てる
まだ雪はあるけれど
焦がれた 春の衝動

そこに住む住人が
やまびこを聞いた

胸 躍る
眠り呆けた
頬杖の後が
消えない




深い
深い
山奥

あけぼの
うす暗い
もうそこ
すぐそこ


音が聞こえる
声が聴こえる
それらは、


710 : 彼女は空をみていた  FM7 '05/11/08 22:01:06

彼女は空をみていた

レジへと続く
レジのみえない列で
中学生が
土産のお菓子の缶を取り巻き
大袈裟にふざけ合っていた

他に誰が気付いたろう
夕べ 東京にはじめて
熱い雪が降ったと


702 : 鯨幕  鈴川夕伽莉 '05/11/07 00:57:54  [URL]

「お亡くなり」って
何で彼女の名前の枕詞なの?
同窓会のメーリングリストが
数年ぶりに来たと思ったら

翌日久しぶりの0番ホームに立つ
背後で訛った少女達がはしゃぎ
あの町の数年前まで引きずり戻される

一時間ちょっとで視界を奪われる
雪雪
雪雪雪
家家は肩を寄せ合い
それぞれの灯火にはそれぞれの命が
互いの距離感について
安堵なり憎悪なりを蓄積させている
のだろうか

吹雪の駅前ロータリーにて
シルバーのPOLOが辛うじて点灯
友達だ(この子は生きている)
こんなことでもなければ
三年だって五年だって会わないところだった

まずコンビニに寄る
ふたりともストッキングが伝線

今日ほど「久しぶり」という事実を
有難いと思う日はないだろう
「懐かしい」話題には事欠かないからね
でも到着すれば
こんなところに葬儀場あったんだねえって
そこだけ私達の世界は一新されたのだ

黒服の集団は同級生達
案内ありがとう
そうか私達の服装だってこの場にぴったりだ

ところで彼女に会いに来たのだよ
それなのに何故白粉なんかしてる?
普段彼女は化粧なんかしなかった筈だよ

あんたは彼女じゃない

とても冥福なんて祈れやしない日だ
明日も仕事だからもうお暇します

会話の中で同級生の名前を取り違えた
教授の名前を忘れていた
記憶は建て増しを放棄されるジェンガ
彼女については「死んでしまった」という
未確認の事実のみによって
辛うじて遺棄を逃れたというのか
友達にさようならを言う
駅前ロータリー
「ゆかりは変わっていないみたいで良かった」
そんな風に言わないでよ

老朽列車はふたたび夜を裂く
こんな時間だから家家の灯火まばらで
眠っているだけなのか誰も居ないのか
これが最終便だからもう確認出来ない


712 : 自画像  小松原 吠 '05/11/09 00:09:20  [Mail]

初めて起きて此の方
無意味な街ばかり通ってきた
音が響いて此の方
無意味な言葉ばかり感じてきた
他者と接して此の方
無意味な人間ばかり覚えてきた
規律を教えられて此の方
無意味な違反ばかり連ねてきた
男と女が分別されて此の方
無意味な愚痴ばかり垂れ流してきた
夜と朝が切断されて此の方
無意味な苛立ちに悩まされてきた
夢が現実に支配されて此の方
無意味な機械化ばかり強要されてきた
この詩の意味を反芻して私は
無意味な詩ばかり綴っていたのだと知った


706 : 夜の巨人  七乃 '05/11/07 17:12:48

夜の巨人がやってくる
大きな足音を立てながら
大地に夜を引き摺りながら

今日も彼のマントは真っ黒だ
風に靡かれ真っ暗だ
夜が来た

夜が来た

その日の気分にもよるが、
今日はきっと良い月を拝む事が出来るぜ
見てみろよ、今日の彼のマントは
星の模様が煌めく特注品だ

星の煌めき靡かせて
夜の巨人がやってくる
風の匂いとやってくる

今宵も夜がやってくる


700 : 一つの風景のスケッチ  樫やすお '05/11/07 00:02:56

硬質な林檎は凝結している
手にとって捧げる物は
並木道に人々は傘をさして行く
紅いハイヒールの逆光を感じ
塵が宙を移動する
格子の目を瞑り
そっと静まりかえって
森が固い感触を持ち
「私」の塑像が
多彩なカーテンに包まれて
白さを増してゆく
観念であり
芝生の複雑な緑に囚われている人々の
「原像」は「時間」と「音」であり
「私」は「原像」を所有していない
(ベランダに立ち
並木道に降る雨を聴く)
深部に消えて行く印象に
追いすがり 抽出される
piano 月
土に 落とされてしまう
雨に混じっている
レールが軋んでいる
区別するとすれば
それは 一掴みで逃げてしまうだろう
植物を手に取ると
『理解できない感触』
或いは
『何らかの感情を探る』
この枯葉は「死」か「孤独」か
「私」は隠喩にまみれて
歪んでいる 歪めている
痴人の識別する無我の我
言葉の無い裏づけ
裏づけの無い言葉が発音され それは意味する
写真を何枚も燃やし
煙が色を含んで立ち昇る
体が膨張していくような開放感が
次々と闇に葬っていく
空虚で内面が研ぎ澄まされてゆき
それは 限りない球体のはじまりの地点でもある
真空の内部を「音」が掻き乱している


672 : 少女へ  ゆま '05/10/28 22:16:34


寒いので
私はふぅと上着をはおる

読みかけの詩集に栞はなく
その辺にあった領収書をはさむ
インフルエンザの検査費は高く
夜間診療の診察費は高く
押さえて考え込む私の鼻は低く

相変わらず背すじは寒い

少女よ
美しい詩が読みたいのかい
君にとっての私の詩が
美しくは感じないように
私にとっての君の心が
美しく感じないわけではないのに

ただ毎日のささやきに足を止めて
春一番の風に乗せれば

私の元へと届く頃には
満開となっているかもしれないのに


H17.2.24


708 : 日光宝石  キメラ '05/11/08 19:46:34

あかいしんごう灯のさくらん
ふらふらあたまのすぐそばでかわりゆく
いとましく尖ったざっとうに
はいりこむりんせつにとり乱す
なみだし儚い花びらが電脳をつき抜け
なんじかんオレはさまよっていたんだろう

あしもとから水滴が逆流する狂気
おかしげなはしらをたちあげ
ものすごいスピードで上空へ吹き上がる
どうやってきもちをつたえようか
まちがえをいしきするほどに
おろかしいとりつくろいに
ひかりがうばわれてしまうなら
ためいきをつく夜の行列で佇んでいた
あのひとみから
どうしたらえいえんをつかめるのか
そんな刹那的ないいわけすら
君をかくそうとするオレをのみこみ
香りが脳髄をしげきしながら
闇をたのしげにおよぐ
オレはいそいで手をのばし
幻影はまぼろしをさしのべ
純粋なんて無垢なんて
しんじてはいなかった

きずつけるようにまたきみを汚しながら
どこかで遭難した赤ん坊が啼きわめいている

こんやどこまでゆくの
もうわからない
クリアな微笑みを
きずを舐めあうように
せめぎあう裸体に
くるくる
くるくると
こどうがどんどん速度をあげ
けだるい熱帯をまきこんでいる
ほこりっぽい大気すらかき消し
血流はパヴァーヌ
めのまえにいるのは
きみだろう

どうでもいいほど日々が
こんなにもないていたのはなぜだ
もうわからない
性交を終え
安堵のきみを
ゆかに投げたおしすぐまた犯す
さよなら
さよなら
あしたになるまえに
きみになにをつたえよう
星輪に天使の雨水がむおんをきりつけ
君にひざまずき
つめたい足先
きす


もうすぐ
きらきらゆるしがおりてくる
そんなこと
わかっていた
わかっていたはずなのに


だきしめて呉れ


721 : 白き恍惚  !! '05/11/11 21:28:16

みつあみのゆるゆると解けてゆくおと、
白ゆりの淡い匂い、
やわらかな穂先で輪郭をなぞり
そっと浮かび上がらせた影

角砂糖ひとつ含んで
つめたい甘さに浸っていれば
あの日出会った恍惚に
再び出会える気がしたのだ
事実甘みに脳は痺れて
酔った心地も味わった

けれどもやはり、
それとこれとは違うもの。

あのなまめかしい筆づかい
揺らぎや眩暈を感じる白が

欲しい、
ほしい、

あの雲よりもまだ高いのに
僕は必死に手をのばす
届かないのは
わかっているのに


719 : 断ち切られたら  ケムリ '05/11/10 09:12:08

西日の丘から伸びる教会の影が
十字に伸びる世界に唾を吐いている
熟れた背中を蹴り飛ばした沈む林檎の匂い
月がドラッグされていく

星を隠した生まれたての掌
滲み始めた灯りを憎んでいる人がいるよ
カスミソウをひとつ 手折っていく
錆びた線路を枕にして

歌うひとは世界から剥がれていく
警笛が鳴り響く
長い夜に別れを告げた子ども達
眠るあなたを蹴り石にして

夜の淵は送電線の向こう側
誰かが繋がろうとしている
カテーテルが突き刺さった鼻腔を並べて
歌いながら剥がれていく

電話ボックスが吊りあがっていく空
羽虫が光を纏いはじめた
指先に群れた星を掻き散らして
子ども達はもうヘッドフォンを外せない

路地裏の糸を引いて 誰もがエクソダスを歌った
大腿骨咥えて嗚咽を堪えたら
滲む灯りを一つずつ舐めとって
歌いながら剥がれていく 断ち切られた 世界へ


725 : 手淫童子  リョウ '05/11/12 13:50:14

エグルクブルグルブの都に住む 手淫童子
小さい頃から続けた 其 のお陰で
今は最早 見る影も無い程に小さく縮こまり
手淫童子 今日も薄ら笑いを浮かべて
特大のバイブを腰にぶら提げている

エグルクブルグルブの都に住む 手淫童子
一年のうち11ヶ月は吹雪に閉ざされる土地
今は最早 ジッポの火ですら着きはしない
手淫童子 今日も薄ら笑いを浮かべて
縮こまった其の原因を他に探している

エグルクブルグルブの都に住む 手淫童子
一週間溜め込んだ 其 を出すのが唯一の快楽
今は最早 三度の飯よりも早く出したい
手淫童子 今日も薄ら笑いを浮かべて
きらきらと光る手を眺めている

エグルクブルグルブの都の大地を
手淫童子 手淫童子
お前の 其 で染められたのでは堪らない
手淫童子 手淫童子
美しい女をお前に差し出そう

エグルクブルグルブの都の都に住む 手淫童子
まだ本当の快楽を知らない 其 を上げて
向かうはこの世で7番目に美しい女性
手淫童子 手淫童子
最早彼は手淫童子では無くなり
手淫童子ではなくなった
エグルクブルグルブの都に
手淫童子
眠るように溶けて流れて行った


722 : オニキス  苺森 '05/11/11 21:36:12


続かない友情綻ばせてメタリックな爪先
選ばれたサテンの夜に戯んだ真鍮、続きのない夢をみた


濁る月さえ瑪瑙の様 輝かしい夜だった


そうやって点けた火も忘れて燻らせる煙草
気怠い君の癖、もう厭き足りた

亜鉛の夕暮れ、


隣人の肩がやけに小さくみえて

やがて鎮まる熱、その耳に黒光るオニキスに声をかけた



夜は選ばれていたかった

夜は何をも、


何もかもをまるごと呑み込み――手放しはせず、
刻満ちて手放すときもやはり選ばれるので何をも呑み込んで


私ごと連れ去った


720 : 小父さんと私  tomo '05/11/10 20:52:32  [URL]

インポテンツな
小父さんが
待ち伏せしている街角
今日は
中署の通りから
急な階段を駆け上がって
お店に入る

「すみれさん指名が入っています」
「はい」
丸裸で向きあって
マウスウォッシュを口に含む
お客さんはフレッシュミント
を望むけど
私は琥珀色のイソジンが好き

雨音を数えながら頭を振る
11月の雨は気まぐれだから
抜けそうで抜かしてくれはしない
それでも
小父さんは彦七が顔して
「噛み殺されても本望だ」
と通いつめてくれる

「大丈夫まだ時間残ってるから」
そう言って
小父さんの差し肩に顔を凭れかけると
「すみれって 目大きいんだね」
小父さんは そう言って
結構長い睫毛を引っ込める
「そうよ」
私は決まって そう答える


709 : 橙色  黒澤 あや '05/11/08 21:49:35

幼い頃に限らず
なりたいものがあって
人だけに限らず
きっとこの渋柿も
甘い柿になりたかったんだろう

私にもなりたい名前があった

ぽ、つん
口に出してみる
やっぱり似合ってる気がする
あの人の姓は
私のこの名に

言うのは
いくらでも出来るのに
それはだけど別人だから

夕暮れがそっと頬に触れて
帰っていくように
あの人もこの胸にきれいな色を残して
人混みに消えた

鳥がついばんだ柿が散らばり
どこもかしこも橙色
この庭の柿の木は
私が生まれた歳に種を植えたんだと言う


ねえ母さん、
うんと甘い柿が
食べたい


723 : やっぱりおおかみ  Canopus(かの寿星) '05/11/11 23:47:16  [Mail]

(佐々木マキ、73年、福音館書店)


0(プロローグ)

(おおかみは もう いないと
 みんな おもっていますが
 ほんとうは いっぴきだけ
 いきのこって いたのです
 こどもの おおかみでした
 ひとりぽっちの おおかみは
 なかまを さがして
 まいにち うろついています)


1

影のない おだやかな光に包まれたみちは
明るすぎて あまりにもなつかしい
くろい影をおとすのは ただひとり
ひとりの おおかみの子供だった
両手をポッケに つっこんで
まだ生えそろわない牙を もぐもぐさせて
仲間を探して 毎日うろついて
(どこかに だれか いないかな)
います


2

ウサギの街に着く 交差点でも
影が おおかみなのか
おおかみが 影なのか
ややこしや ああ ややこしや
ガラス窓にだって おおかみはいるけど
だれも 答えられやしないんだ
ウサギ連中は白すぎて 影なんか
持ちあわせちゃいないから
および腰で 背中をむけて
扉を閉めちゃえば
万事解決すると 思ってるんだ


3

(け)

小さな おおかみは
ウサギも 赤ずきんちゃんも
丸のみなんて できやしないよ

(なかまが ほしいな
 でも うさぎなんか ごめんだ)


4

午後1時25分 ヤギの街で
陽は おだやかに高く
そうごんな そうごんなまでの
平屋の教会に ヤギはつどう
おそろいの あおい僧衣と
おそろいの しろいあごひげ
たんたんと たんたんとすぎる 昼
おおかみは ひとりぽっち


5

ブタのバザールは いつも盛況
おもいおもいに テントを張って
さあさあ なんでもあるよ
花屋 肉屋 八百屋 パン屋
せともの屋 古どうぐ屋 コーヒー店
通りは買い物ぶくろを抱えた ヒトの波
じゃなくて ブタの波

(みんな なかまが いるから いいな
 すごく にぎやかで たのしそうだ)

毎日開催 ブタのバザール
よってらっしゃい みてらっしゃい
なんでもあるよ 老若男女のブタさんがた
ブタさん ブタさん 子だくさん
第1と第3にちようびは おやすみです


6

バザールを行く ブタの波に
この身を ゆだねたい

けれども ひとりぽっちだから
街のはずれまで きてしまった

買い物かごを下げて ブタがひとり
壁に あおいチョークで
たのしく らくがき
おおかみを みつけて 逃げていく
無言のままで

(け)
黒いおおかみには 染まらない


7

ヘラジカ中央公園は おおきな森のなか
ヘラジカ中央駅から シカの脚で1分です
すこしだけ おおきな崖も こえます
公園には ひろい道路も 
噴水もあります
みんなの集まる広場も
遊園地も
レストランもあります
シカのパラダイス みわくのでんどう
というのは 冗談ですが
上品で おちついた
歓声のたえない 公園です

(もしかして しかに なれたら
 あそこで たのしく あそぶのに)


8

おれは こどもだから
遊園地は大好きだ たとえそれが
ヘラジカの 遊園地であって
おおかみの それでないとしても

たとえここで 風船が 天たかく風におよいで
アイスクリーム売りが ベルをならしたとしても
それは おれのものでない

観覧車が 空をあざやかにいろどり
メリーゴーラウンドが よろこびを回して
手オルガンが 楽しいしらべを奏でたとしても
それは おれのものでない

くろい影の おおかみの おれは
両手をポッケに つっこんで
枯れ葉を 踏みしめる


9

(おれに にたこは いないかな)

ヘラジカの遊園地が 閉園するまで
一日中 そこに いてしまった

どうしても 去ることができなかった


10

夜の
ウシの街を あるく

さびしいのは なれてしまった
なんども なんども
そんな夜を あるいてきたから

はらぺこなのは いつものこと
おおかみが はらぺこなのは昔から
さけられない 宿命だから


11

だんろは こうこうと燃え
灯りのした
ウシの家族が 食卓をかこむ

とうさんウシ かあさんウシ
にいさんウシと こどものウシ
みんなそろって もくもくと
ええ ウシですから もくもくと
ささやかな夕食を たべています

食後のお茶の用意も できています
かあさんウシは あみかけのマフラーを
隅の 小さな丸テーブルに 置いています
花びんの花が 咲いています
柱時計が ちくたく ちくたく
午後6時44分のことでした

こどものウシは にこにこ
笑っています

すべては
そう すべては 窓のむこう
ウシの家での できごとだった


12

はらぺこだった
あしは 棒になった
おおかみの仲間を探して
おれの 居場所を求めて

道に迷った わけじゃ ないけど
ここが どこだか わからない

(おれに にたこは いないんだ)

街のはずれ 一夜のやどを
墓場に もとめて おれは
ごろんと 横になった

おおかみの ご先祖が
会いにきて くれないかな
仲間の ゆめを みたいなあ


13

「詩中詩:おばけのロケンロール」

ぬばたまの ぬばたまる夜
ぬばたまった おばけの 影はしろい
なぜなぜしろい? おばけだから しろい
さけ もってこい
りんご もってこい
ドーナツ もってこい
リードギター ひとだまシャウト もってこい
ぬばたまの ぬばたまりけり りんご
のめや うたえや
さわげや わらえや
わらった わらわらうくちもとが
ぬばたまる歯なしじゃ はなしになんねえ
歯なしは しゃれこうべから かりてこい
それが おばけのおしゃれ
しゃれや うたえや
おどれや わらえや
ひとだま つかんで ぐるぐるまわせ
琵琶の かたりに ぬばなみだ
ながす 目なんか もっちゃいねえ
しゃれた 歯ならび かちかちならして

かきならせ ぬばたましい


14

おれは ねていた
墓場で おれは ねていた

おばけの 夢をみた
おばけは おれに 似ていない

おおかみは 夜に とけるから


15

旅のはて
旅のはてなんて だれが決めた
空は 今日も流れているのに

また しろい朝がきて
ひとけのない ビルの屋上を
ただひとり 両手をポッケにつっこんで
ぷらぷら 歩いていると
ひとり 屋上に つながれた
ひとり乗りの 気球を みつけた

ひとりぽっちの 気球と
ひとりぽっちの おおかみと


16

ビルのうえ つながれた気球
あかい レモンの風船
あおい 三角の旗が ひるがえる

気球にのって このまま ここから
おさらばしよう とも思ったさ
おおかみは もういないし
おれに 似たこは いないし
みんなが わらいさんざめく 姿をみるのは
つらいし

でも な おおかみは 強いんだよ
たとえ 絶滅寸前でも まだ おれがいる

(やっぱり おれは おおかみだもんな
 おおかみとして いきるしかないよ)

気球は 気球で ひろい空を 駆けてくれ
おれは おれで ひろい世界を 駆けていくよ


17

つながれた ひもを ほどいて
気球は 空に のぼっていく
おれは 気球に のらなかった
おれは ビルの屋上から
気球を 見送った

気球は ぷかぷか 空におよいで
小さくなった

(け)


18

気球は 気球
おれは おれ
おおかみは おおかみ
やっぱり おおかみ

ひろい ひろい 空
ひろい ひろい 世界
たくさんの いきもの
やっぱり おおかみ

(そうおもうと なんだかふしぎに
 ゆかいな きもちに なってきました。)

きょうも はれ


701 :  鋭利  葛西佑也 '05/11/07 00:46:34  [Mail] [URL]

雨が降った休日は
居場所を失う気がして
あんまり好きじゃない
逆上して弟を殺した
カインのように
なってしまわないかって

林檎の果汁の跡が
かすかに残っている
果物ナイフを
待ちわびていたように
洗っている

裸で横たわる飼い犬は
滑稽な格好をしているんだな
さむくはないのかなと
このときはじめて
気になったのだった

蛇口から滴る水と
少しだけ弱まった雨は
いつまでたっても
隙を見せてはくれない

お湯が沸いたら
熱い紅茶を飲もう
とびきりあついやつ
それからもう一度
林檎の皮をむいて
そこからもう一度
はじめよう


726 :   樫やすお '05/11/14 00:01:57


手を洗う



息を吸う



山を見る



窓を拭く



日が沈む



手を握る


718 : 血みどろ臓物  一条 '05/11/09 17:16:53

あたしは、公園の滑り台の上に突っ立っている。中指は半分隠されて、連中の具体的な財産を狙っているバイク野郎は、ヘルメットを違うふうに被って、日差しがあいつらの横に大きな影を作った。長い時間が来ると、あたしの国は、白髪の紳士に骨抜きにされるんだけど、その頃にはとっくに、なんだか新しくて、あたしたちに変わる生き物が、あたしたちを支配しているんだって、あたしのママが言ってた。暴走族はバイクを乗り捨てるし、乗り捨てられたバイクが都市開発のあおりを食ってゴーストタウン化した街の入り口と出口付近で、自主的に衝突してるって話は、都市伝説の一種に過ぎないんだけど、そんなことより、いつの日か、あらゆる利便性があたしたちの個性を追い抜いていく。あたしがここにいる、という確かな実感が、確かな確からしさを無邪気に担保するのは、あたしがここにいる、という実感でさえここじゃないどこかに保管されているということ、に置き換えられてしまっている。あたしは、なんだか、夢中になって、片っ端から与えられた書物のページをめくった、それで、あたしがあなたに与えることが出来るのは、ページがめくられるたびに生起する風の音だけ。そうやってれば、いつかどこかに辿りつくと思ってるの。そうやって、ひたすらページをめくってれば、どこかに保管されているあたしに辿りつくと思ってるの。あたしの脳みそに最新の電極をぶっこんで頂戴。Aの次はB、Bの次はCだから、あたしは、公園の滑り台の上に突っ立っているから。あなたの腕は、まぬけな男みたいで、白髪の紳士が骨抜きにした淑女みたいで、その腕にからまって身動きがとれなくても、ママは、そこらにケチャップをぶちまけて、気の違ったやり方でくちびるに口紅を塗りたくっている、ママは、巡回セールスマンとの乱交の白昼夢にびっしょりだけど。あたしが育った街に、あたしが生まれた面影はない。公園の滑り台の上に突っ立っているあたしは、いつの日か、暴走族になっているの。あたしは誰よりも速い暴走族になって、ストライクを三つ見逃して、いなくなる。あたしが、いなくなっても、あなたはあたしのこと、覚えていてくれる?


727 : まやかしの城砦  小松原 吠 '05/11/14 00:29:22  [Mail]

夕闇の紺青に切り刻まれた絆を時が縫合し
天壌無窮に開いた壮麗な薊舞い散らし
自然の摂理に抗う叡智を隠して穢土に汚れ
陶酔の息吹は楽園微睡ませ夜の濃度を薄める

汝、現し身の幻影、不実の音奏でしセラフィン、
原初にして高貴な、終末にして卑賤な聖女よ
私は世界を遺棄せし季節にも、零すだろう、
遂にまやかしの城砦に戦意を破損されたのだと

時が縫合した絆を夕闇の紺青が再び切り刻み
暫時開いた醜悪な薊を捨て置きて擾乱し
人工の掟に従順な頸木を隠し蛭は水飴で浄化され
廃残の息吹は地獄覚醒させ朝の濃度を高める


703 : 8番  鷲聖 '05/11/07 04:48:26

待ち合わせのプールバーで
虚仮威しのような酒を呑みながら
待つ
肩のタトゥが隠れるほどドレッドを垂らした店番は注文以外の話をしない
一時間遅れであいつが雨に濡れて来る
途中、傘がぶつかったなんだと駅前で難癖をつけられたと切り出す
傘を捨ててきたことはどうでもいいんだ
あいつはビリヤード台と自分の腰で見知らぬ女を挟みレクチュアーを始める
耳元で軽率な契約とユーモアを囁いてるのかもしれない
彼女はくすぐったそうに笑う
俺はいい加減に呑みすぎていて
適当なキューをひっこ抜くと
勝手にエイトボールを始めた
あいつは端正に微笑むと俺でも女にでもなく云い放った
この女を賭けようか
洗練された高尚な暇潰しだ
ダブルクッション
緻密に計算されたゲームとあいつの横顔を交互に見比べた女
勝利を確信した様子で
あと数時間後の情事に思いを馳せながらグラスを合わせるふたり
俺は反対側で強い酒を干しながら出番を待つ
あっと云う間だ
あいつは8番を落とすポケットを宣言する
そしておそらくミスを犯すだろう
あいつの背後に立つ女が
無精髭の俺を見下した瞳で射た
迷い無く玉を弾いた音
8番は落ちない
あいつは女のほうを見ずにグラスを空けた
俺は打ち方を構えると云った
おまえ、別にその女が欲しかったわけじゃなかったろ
じゃあおまえはどうなんだ
無言の8番が落ちたとき
あの女はとっくに居なくなっていた
あいつはまた別な女に話しかけている
俺は雨が上がったら帰ろうと云った


735 : 月灯りの下  あやき '05/11/14 20:12:21

月灯りの下
犬が独り何か考えてるかのように
佇んでいた

光で銀色に染まった毛を持つ
その犬は何かに向かって
吼えていた

暗く音も無いその世界では
時間の流れがとても遅い
長すぎるだろう

悲しみがあるのか
憂いがあるのか
誓いがあるのか
君は何に向かって吼え続けるのか

躯を支配するのは最早精神のみ
精神が躯を凌駕する

風を感じることも
光を感じることも
音を感じることも
熱を感じることも
最早無理なのか

月灯りが無い日でも
病魔に蝕まれていても
躯中が傷だらけであろうとも
吼えるのを止める事は無い

君はいつまで吼え続けるのか
幾分幾時間幾年でも吼え続けるというのか
星が堕ちるその日まで


733 : 干され柿  逆剥 '05/11/14 17:11:59

さて あれは何時の話だったのかは知らぬ
兎にも角にも庭の柿は既に熟れきってゐたので
梯子を掛けてもぎにいったのだが
丁度おれの背丈の分 手が届かぬのよ


親父はこの郷に冬の領地を得ておった
数ヘクタアルの不実の中にポツンと
おれと柿の木があり続ける不条理よ
雪は毎年腰まで積もるというのに


知らぬだろうが 雪掻きは第一に心に堪えるのよ
二時間も続けばまず狂う 白以外の色が堪らなく恋しくての
時という座標はずいぶんと頼りないもの 冬の天井はかくも深い
あの柿が落ちるまでは と 足腰のふんばりはどうにか残っておる


肌が黄色くなるまで蜜柑をたらふく食った
柑皮病と言うのだぞ と親父はいつも呆れておったが
こいつらの幸せを思えば仕方ないことよ
行き遅らせてしまった娘は外で凍えておる


ここの冬を越すコツはな 絶対にカレンダーを見んことなのだ




はたして 熟れた柿は春を迎えておった
腐敗を越え風化に移行しながらもなお
奇跡的な惰性を以って未だぶらりと其処に在る
ときおり誰かを反映などしつつ

さて 冬の間に梯子は接いでおいたのだが

ああ仕方あるまい そうだ おれは



其処で実り続ける 誰かに似た不実を愛してゐたのだ


731 :   リョウ '05/11/14 13:18:50 *1

もしも不二家のペコちゃん人形に
高速パイルドライバーを仕掛けて
世界の不条理を叩き込もうと暴れる豚がいたら
それはきっと俺だから
「落ち着けよ」って言ってやってくれないだろうか

仮面をつけて生きるのが苦しいって言って
何処か別の場所でも何かしら仮面をつけてるのが現状
一番奥の便所で「紙が切れた」って言って
無表情のピエロみたいに泣いてる豚がいたら
それはきっと俺だから
「これで拭けよ」って言って
便所紙を投げてやってくれないだろうか

生きてちゃいけない気がする
けれど
死んじゃいけない気がする
次々と豚が噛み付いては
嗤いながら去ってゆくんだぜ

殺意も愛情も無い日が過ぎてゆくよ
足がどんどん地を離れてゆく
もがけば もがくほど!
仕方なしに今日もベッドにもぐり 震えている豚がいたら
それはきっと俺だから
「泣くんじゃねぇよ」って言って
寝るまで傍にいてやってくれないだろうか

もしもケンタッキーフライドチキンのカーネルおじさんに
高速でコブラツイストを仕掛けながら
世界の理不尽や真理、定説をわめいている豚がいたら
それはきっと俺だから
「落ち着けよ」って言って
煙草の一本でも分けてやってくれないだろうか

それはきっとお前だから


739 : 閉めよう  ワク '05/11/15 01:05:03  [Mail]

講義が自分の中で終わって教室を出る
視認出来ない温風をがんがんと吐き出す暖房器具
教授の声を教室全体に届ける小型マイク
黒と赤の油性マジックで意味不明な言葉が書きなぐられているホワイトボード
B5版の板書が一向に進まない30枚綴りのノート
私はそれらをシャットアウト

ここは3階の教室
中ではいまだ多くの生徒が講義を受ける
真面目に聞く物
机に伏せて動かない物
机の下で講義と関係のない活字を目で追う物
教壇に立ち眼鏡をかけた白髪混じりで黙々と説明を続ける物
私はその物達を振り向かずドアを閉めてシャットアウト

階段を下りる
3階から2階へ1段ずつ
2階から1階へ3段抜かし
不規則なテンポで
気まぐれな歩調で
足の裏は階段を蹴る
私は両腕にぶら下がる堅苦しい気分をシャットアウト

校舎を出る
肺に取り入れる酸素
吐き出される二酸化炭素
赤い陽を放つ太陽
未だ明るい空にただいる色白の月
私は体内に満ちる精神的気だるさをシャットアウト

私の目には何が映る
私の足は何処に向かう
私の心は何を感じる

私は一つ溜め息を吐き
私の思考をシャットアウト


729 : 未ダ満チ不  ANDO '05/11/14 11:19:19  [URL]

1.
別に泣いているわけじゃないんだ
これが俺の言葉なんだよ
伝えるべきことを
然るべき手段で伝えてるだけだよ

「ママ、おっぱいをちょうだい」
オギャァ
オギャァ

2.
男の子は青で
女の子は赤の上履きを履くんだよ

ピンクのリボンをつけてきた子には
「かわいいね」って言うのがルールなんだ

女の子だって青空は好きだし
夕焼け空を眺めてるのは
どちらかって言うと男の子なのにね

3.
僕がどうやって作り出されたのか
その謎がこの黒いテープの中に隠されているそうだ

お母さんはそれを
汚いもののように扱うし
お父さんは
テープの中身を知ってるはずなのに
毎日再生ボタンを押すんだ

「時期が来れば、そのうちわかるよ」って言うけど
時期が来てもわからなかったら
責任とってくれるのかな?

4.
早く大きくなりたい
早くもっと大きくなりたい
奴等は俺よりも背がでかいというだけで
俺のことを見下しやがる

だいたいお前の話しはつまんないんだよ
月曜9時からのドラマの見すぎなんじゃないのか
しまいにゃ「1人で大きくなったと思ってんじゃないぞ」
などと言い出す始末だ
俺は今そんな話をしてんじゃねぇんだよ

いつまでこんな奴等の相手をしなきゃいけないんだろう
いっぱい食べて早く大きくならなくちゃ
あー、給食の時間まだかな

5.
今日は5回もあの娘と目が合った

6.
俺はなんでこんなに満員の電車に乗っているのだろう
こんなに息苦しい思いをしてたどり着く場所は
さぞかし素敵なとこなんだろうな

この電車が突然、逆行したらみんなどうするんだろう
きっとみんな慌てて「一体どうなってるんだ!」なんて怒り出すんだろうな
でも多分誰も逆行する電車から降りようとはしないだろうね
だってみんなそうなることを頭のどこかで期待してるんだから

7.
昨日は3人のバカとすれ違ったし
今日は4人もバカを見つけた

まったく、この国にはバカしかいないのかねぇ

先生によく言われたよ
「もう少しじっくり考えてみな」って…
もう付き合いきれないよね

デカルトは「全てを疑え」って言ったそうだけど
彼の気持ちはよくわかるよ

そういえばデカルトってなに人だっけ?
外国にもバカはいるんだね

8.
君、よくそんなダサい服着れるね

9.
カラスの鳴き声は
家路につくにはちょうどいいきっかけだね

トマトスープが飲みたいけど
きっとそんなものは用意されてないんだろうな

「またね。」なんて気軽に言える
ここは平和な国だね


717 : 饗宴  丘 光平 '05/11/09 16:05:05  [Mail]

ほどける栗色の巻き髪 舞い散る水の花しずく
もの静かなピアノで猫はかかとを小さく鳴らす
そして食卓からこぼれ落ちる白いハーブの一粒

窓の向こうへ ぼくらは庭を片足で飛び越え
れんが造りの街並みに坂道をくだってゆく
手のひらの小枝でいくつもの輪を躍らせながら

陽を眠らせ雨を降らせようとする夜のこどもたち
ぼくらの合図に彼らは一瞬で燃えるダイヤモンド
するとハープが母のようにやさしく鳴り渡った

たなびく風と風 ぼくらは楽園にそっと迷い込む
住人のねずみたちから甘いチーズをごちそうになり
貝殻のグラスで琥珀のぶどう酒を飲み干した

赤らむ夜空 筏にのって月の指揮者はやってくる
ぼくらはみなフルートやヴァイオリンを手に手に
奏ではじめる 風船のように頬を膨らませながら


736 : 秋冷  テュート '05/11/14 23:10:59

僕は君に
透き通るような
冷たいキスをする

君は冷たい氷に
顔を摺り寄せて、
何かを確かめる。

ここは、淋しい
ぼくは、淋しい


そんなとこで
君が言う。


”何か知りたい”


僕と同じに
なればいいのに。


737 : 1981年 長津田  コントラ '05/11/14 23:43:22


母はガスレンジをひねり
鍋のなかのアジフライが
はねはじめた

暗い街灯をたどって
33号棟に着く
グレーの背広

ベランダから遠く
消防署のあかりが消えるのをみた

キッチンの壁は黒ずんで
景色は油膜がはったように
ぼやけてにじむ


728 :  分離  葛西佑也 '05/11/14 10:45:29  [Mail] [URL]

赤信号はぼくを止めてはくれない
焦る心はいつまでも落ち着かず
宙ぶらりんの空中ブランコのように
手を離せずにいるぼくを不意に

駅に向う交差点でだった
機械的に歩く人たちにまじって
誰にも悟られないように
何も考えないということをする

不意に信号機の音楽が流れ出し
取り残されたぼくの体は
先に行ってしまった心を追いかけて
急ぎ気味に歩き始めたのだった

行ってしまったものと
取り残されてしまったものとを
区別できないまま
ぼくはやはり
何も考えないということをする


- ealis -